【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー45 蝶屋敷への差し入れ

メニュー45 蝶屋敷への差し入れ

 

1ヶ月の間にカワサキが店に立たない日は決まっている。耀哉の為に黄金のコンソメスープを作る3日間、これは絶対にカワサキが他の料理をしない日だ。カナエや、沙代に基本的な料理を教えカワサキが大丈夫と判断するまではその3日間は休みの日となっていた時期もある。

 

次にワーカーホリックの気があるカワサキを心配して獪岳が強制的に休ませる場合これも1~2日程度だ。

 

そして極々稀にカワサキ自身が息抜きに魚釣りに向かう場合。

 

この10日間にも満たない日数がカワサキの基本的な休みの予定である。しかしだ、お手伝いなどが増えてくると休めと言う者も多くなるし、何よりも実力行使をしてくるしのぶとかしのぶとか、良心に訴えかけてくる千寿朗とか、怪しげな薬を手にしているしのぶとか、悪意無く1000%の善意で休んだらどうですか? という炭治郎とか、休めえッ! と怒鳴る実弥とか、なんか変な色をした液体の入った瓶を手にしてるしのぶとか周りに余りに心配を掛けすぎていると言う事で休みを増やしたカワサキなのだが……。

 

「ふーん。こういう風に作るのかあ……」

 

その休みの過ごし方の大半は今まで見てなかった料理のレシピ本を見たり、屋敷の庭にピザ用の竃を作ったり、料理の試作品を作っていたりと、料理に関する何かを常にしていてたまーに様子を見に来た人物に怒られるまでがワンセットだったりする。そして今日も見ている間に作ってみたいという熱が生まれ、カワサキは料理の為に動き出してしまうのだった……。

 

 

 

休めと言われても俺にとっては料理は殆ど趣味に等しく、仕事と思う事ではない。色々と作り、そしてそれを食べて美味しいと喜んでくれる相手がいればそれで満足なのだが、労働基準法がない時代でも俺が働きすぎに見えるのか休め! と10人近くに言われれば判ったというしかなく。でもこうして寝転んでいても暇で、レシピを調べていると作りたくなるのが料理人の性という物。

 

「ちょっとこれ作ってみるか」

 

それほど難しくなく、そして何よりも蝶屋敷で働いているアオイ達の差し入れにぴったりだと思い。俺は勢いよく立ち上がり、厨房に足を向けた。

 

「えーっとまずはアーモンドパウダーと粉砂糖を振るうのか」

 

食材や調味料に関してはカンスト寸前までアイテムボックスに突っ込んであるので今回もアーモンドパウダーと粉砂糖を取り出して使う事にする。レシピ本を立て掛けながらアレンジなどをせずにレシピ通りに分量を計り、しっかりと作る。

 

「次はメレンゲか」

 

ボウルの中に卵白を入れて泡たて器で混ぜる。泡立ってきたらグラニュー糖を加えてまた混ぜる、グラニュー糖も1回で全部入れるのではなく2回から3回に分けてゆっくりと混ぜ合わせる。

 

「良し、OK」

 

泡たて器を持ち上げた時についてきてしっかりと固いメレンゲになっている事を確認し、粉砂糖とアーモンドパウダーをボウルを少しずつ中に入れて切るように混ぜ合わせる。

 

「なるほどなるほど」

 

ボウルを回転させてメレンゲを潰さないように気をつけて満遍なく混ぜ合わせる。

 

「ヘラを押し付ける? 変わった作り方だな」

 

ヘラで生地表面の泡を押し潰すイメージでボウルを回転させながら泡を潰す。

 

「……こんな感じか?」

 

生地が柔らかくなって来たと感じたらヘラを持ち上げる。その時に生地がリボン状に垂れ、見つめていると自然に消えていく頃合になれば生地が艶やかに光沢を持つのでこれを目安にして絞り袋の中に入れる。

 

「とっと」

 

生地は繊細で壊れやすいので余り袋を触らずに、丁寧に絞り袋の中にいれる。そしたらクッキングシートを敷いた天板の上に丸く絞り出すのだが……。

 

「あちゃあ。案外難しいな」

 

初めて作るので均一な大きさにはならなかったがまぁ、初めてならこんな物だろう。これをこの後自然乾燥させるので、大体1時間くらい見積もっていれば良いだろう。

 

「良し次だ」

 

抹茶とか、ココアとか色んな味があるがまずは基本のバタークリームを作ってみようと思う。これが上手く行ったら他の味に挑戦したいとは思うが基本の味が出来なければ応用編の味なんて到底無理なので、これをしっかり作ってステップアップしたいと思う。

 

「えーっと常温に戻したバターね」

 

ボウルの中に常温に戻したバターをいれ、そこに卵黄を加えてクリーム状になるまで混ぜる。

 

「シロップ? シロップを作るのか、珍しいな」

 

小鍋を手にして少量の水とグラニュー糖を加えて加熱する。すぐにドロッとしたシロップが出来るので、これを熱い内に少量ずつ卵黄の中に入れて混ぜ合わせる。

 

「一気に入れると固まる訳か」

 

シロップの熱で一気に入れてしまうとクリームが固くなってしまうようだ。ゆっくりと少量ずつ混ぜ合わせクリームがもったりとするまで混ぜ合わせて。

 

「ここに更にバターを入れるのか……すげえな」

 

バターでクリームを作ってるのに、そこに更にバターを入れるとかカロリーの暴力だなと思いつつ、常温に戻したバターを少しいれ、クリームと混ぜ合わせる。これを何度も繰り返しクリームが滑らかになったら絞り袋に入れる訳か、クリームを絞り袋に入れた後に乾燥させておいた生地を確認する。

 

「良し良し、良い感じだな」

 

指で触れてもくっつかないくらいに乾燥した生地をオーブンの中に入れ、その前に椅子を持ってきて座り込む。

 

「マカロン、上手く行くかねえ……」

 

マカロンと言えば女の子に喜ばれそうなイメージがあるんだが……蝶屋敷の皆は喜んでくれるかなあと思いながら俺はのんびりと焼き上がりを待つのだった。

 

 

 

蝶屋敷の仕事は朝から晩まで休む間もなく忙しい、朝は怪我をした隊士の手当てや食事の準備、昼は戦線復帰する為の機能回復訓練、そして夜は任務で怪我をした隊士の受け入れ準備と、本当に休んでいる暇がない。だけど、隊士として働けなかった私に出来る事はこれくらいなので、隊士として戦えない分も頑張ろうと思う。

 

「よ、アオイ」

 

パタパタと動き回っていると頭の上に手を置かれ、声を掛けられた。

 

「わっと、カワサキさん? 今日はお休みの筈では?」

 

「休みだぜ? だからこうして散歩ついでに顔を見せに来た」

 

私達と同じく鬼殺隊の裏方として働いているカワサキさん。だがその権力は実質柱と大差なく、西洋や中国と言った海外の知識を鬼殺隊に齎し、鬼殺隊のあり方を大きく変えた人だ。

 

「あ、カワサキさん! こんにちわー」

 

「また何か持ってきてくれたんですか?」

 

「カワサキさんだー♪」

 

「おう、すみ、きよ、なほ元気そうだな」

 

私がカワサキさんと話をしているのに気付いたのか、すみ達が満面の笑みを浮かべて廊下の奥から駆けてくる。

 

「アオイ、ほれ。おやつに食え」

 

「……しのぶ様とカナエ様に怒られますよ?」

 

差し出された袋を見ればカワサキさんの手作りだと判り、ジト目で言うとカワサキさんは楽しそうに笑った。

 

「ばれなきゃ大丈夫」

 

うん、その通りだと思うんだけど……すみ、きよ、なほがあちゃーっと言う顔をしているのに気付き、カワサキさんはじゃ帰るからと呟いたんだけど……。

 

「カワサキさん? 今日は料理をしない約束ですよね? 何をしているんですか?」

 

「……ダッ!!」

 

しのぶ様の底冷えするような声が廊下に響くと同時にカワサキさんは無言で走り出す。

 

「カワサキさん! 今日という今日は許しませんよ! 休みの日は大人しくしていてくださいってあれだけ言ってるじゃないですか!」

 

「だが断るッ!」

 

「何が断るですかッ! ちゃんと休まないと駄目なんですよッ!」

 

全集中の呼吸を使えないカワサキさんをしのぶ様が凄まじい速度で追いかけていく。

 

「カワサキさん、本当に呼吸を使えないのかな?」

 

「しのぶ様も追いつけないのに……」

 

「本当は引退した隊士なんじゃないのかな?」

 

「どうなんでしょうね? とりあえずこれは今日のおやつの時に食べるとしましょうか」

 

しのぶ様の怒号と共に伸ばされる手をひらりひらりと回避し、蝶屋敷の壁を跳躍して飛び越えて逃走するカワサキさん。その後を追って壁を乗り越えようとするしのぶ様に向かって声を掛ける。

 

「明日お店に行った方が良いと思いますよー!」

 

「……そうですね。そうしましょうか……」

 

カワサキさんが本気で逃げるとそれこそ柱が3人から5人必要になる。そもそも鬼殺隊の重要人物なのにふらりとどこかに行ってしまうので、かなりの頻度で逃亡劇が目撃されるが複数の柱がいてやっと、しのぶ様も1人では無理だと悟り屋根の上から降りてくる。

 

「とりあえずおやつにしましょうか。おやつに罪はありませんから」

 

「「「はーい♪」」」

 

休みの日にカワサキさんが料理をしていた事は許せない様子だけど、私達の労いの為に作ってくれたと思うとカワサキさんは悪くないし、おやつも悪くないと言うしのぶ様の言葉に頷き休憩の準備を私達は始める。カワサキさんが持ってきてくれた茶葉をいれ、教えて貰ったとおりに紅茶を淹れる。

 

「アオイさん、見てください! 綺麗ですよ!」

 

「わ、本当ね」

 

ドラ焼きとも違う小さな丸い1口くらいの大きさの菓子――和菓子ではない事から恐らくカステラ等の洋菓子の仲間なのだと判る。

 

「白くて綺麗ですね。じゃあカワサキさんに感謝しながら食べるとしましょう」

 

しのぶ様の言葉に頷いて私達はその小さくて丸いお菓子を手に取る。

 

「……」

 

カナヲもそのお菓子を手に取り、興味深そうにまじまじと見つめる。料理も見たことのない美味しい料理を作ってくれるけど、お菓子でも本当に珍しい料理を作ってくれると思いながらそのお菓子を口にする。

 

「ん、これは……なんと言えば良いんですかね……」

 

「面白い味と言えば良いのかな……」

 

「美味しいです!」

 

最初はサクリとした軽い食感で食べていると少しねっとりとした独特な食感に変わり、そして最後は口の中で溶けて消える。そんな不思議な食感だ。

 

「溶けました!」

 

「凄い、このお菓子面白いですね!」

 

食べている間に食感がころころと変る、生地の中に挟まれているのもしっとりとしていて、前にカワサキさんが作ってくれたしゅーくりーむと言うお菓子の中身に入っていた餡のような、でもそれよりももっと風味の良い餡が挟まれている。

 

「もぐもぐ」

 

カナヲも気に入ったのか普段と同じ無表情だけど、心なしか嬉しそうに食べているので気に入ってくれたようで何よりだ。

 

「でもやっぱり休みの日は大人しくしていて欲しいわね」

 

「カワサキさんも無理をする人ですからね」

 

蝶屋敷の私達以上にカワサキさんは疲れていると思う、早朝から深夜まで何時休んでいるんだろうと思った事は1度や2度ではない。どうしたらカワサキさんにゆっくりと休んで貰えるのだろうか? お菓子を食べながら話をしているとしのぶ様が怪しく笑いだした。

 

「姉さんに薬を飲み物に混ぜてもらおうと思うのだけどどう思う?」

 

何の迷いもためらいもない透き通った瞳で言うしのぶ様を見て、今度カワサキさんが来たらカナエ様が何かを用意してくれたら注意するように警告しようと思う。あの目は完全に捕食者の目をしていたのでカワサキさんの身が危ないと……心からそう思うのだった……。

 

 

メニュー46 岩魚のお柿揚げ~タラの芽を添えて~へ続く

 

 

 




マカロンと言う事で今回はここまでお菓子を作るのは難しいですね。あと話を書くのも難しいです、これも1つ良い勉強になりましたね。
次回は大筒木朱菜様のリクエストの岩魚のお柿揚げ~タラの芽を添えて~に挑戦してみたいと思います。これは元ネタがソーマらしいので上手く出来るか判りませんが、可能な限り調べて挑戦してみたいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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