宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲7 捕虜の改心

 宇宙基地ギャラクシー――。

 

 古代は、雪と共に久しぶりにギャラクシーの保育施設を訪れていた。

 二歳になった美雪は、他の子供たちと楽しそうに遊んでいる。

「ママ! パパ!」

 古代たちに気づいた美雪は、嬉しそうに手をぶんぶんと振っている。かと思えば、急に他の子供と追いかけっこを始めて、奇声を上げている。

「こ、こら。そんなに興奮しちゃ危ないぞ」

 古代は、美雪を止めようと、慌てて彼女の背後に走り寄った。すると、美雪の前に、一人の長い黒髪の少女が立ちはだかった。

「美雪ちゃん。そんな大きな声出して暴れると、危ないよ」

「うー。お姉ちゃん。ごめんなさい」

 美雪は、振り返って古代と雪の方を見て、怒られちゃった、とばかりに舌を出している。雪は、美雪の前にしゃがんで、いい子にしてなきゃ、とたしなめている。

 古代は、その黒髪の少女と目があった。

「ありがとう。君、名前は?」

 小学校低学年ぐらいだろうか? 見かけない子だな、と思った古代は、素直に名前を尋ねた。その少女は、まるで大人の少女のような表情になると、古代の足元に寄りかかった。

「オジサマ。随分、他人行儀じゃない。私が、誰か分からないの?」

 古代は、オジサマと呼ばれて、つい反射的に言った。

「お、おじさん? そう見えるかい?」

 古代は、二十代も終わりに近くなり、近頃は自分の年齢を気にし始めていた。そこで、少女の顔をまじまじと見て、古代はようやく気がついた。

「んん? 君は、サーシャじゃないか。何で、黒髪になってるんだ?」

 ふふーん、とサーシャは笑っている。

「見違えた? オジサマ。どう? どう?」

 古代は、若干苦笑いをしつつ、彼女の頭を撫でた。

「うん。似合ってるよ」

 急に彼女は、口を尖らせてむくれ出した。

「むー。子供扱いしてるでしょ」

「そ、そんなことないよ。かわいいよ」

 ぱっと笑顔になったサーシャは、再び古代にしなだれかかった。

「本当? ほんとにそう思う?」

「ああ。もちろん」

 サーシャは、嬉しそうに自身の黒髪を手で広げた。

「これママがね。染めてくれたの」

 古代は、一体何でそんなことをスターシャがしたのか、不思議に思っていた。

「これ、お父さんと同じ髪の色。だから、オジサマとも一緒だね」

 古代は、兄守のことを覚えていないであろう彼女が、そんな風に思っていることに、感銘を受けていた。

 そこへ、美雪が雪と共にやって来た。

「あたしはね。ママと同じ色がいい!」

 まだ二歳になったばかりの美雪も黒髪である。雪は、少し困った様子で彼女を抱き寄せた。

「美雪ちゃん、ありがとう。でもね、その黒い髪も素敵だよ」

 古代は、雪の金髪が遺伝しなかったことについて、少し思っていたことを尋ねた。

「そういえば、君の髪の色は、先祖の誰かの遺伝だったよね」

 雪は、頷いている。

「そうみたい。ひいお婆さんの時代に、外国人の血が入ってきたらしいけど、私のお母さんも黒髪だったから、隔世遺伝っていうの? 美雪ちゃんには、遺伝しなかったみたいね」

 雪は、そっと古代の耳元で囁いた。

「サーシャちゃんだけど、スターシャさんは、イスカンダル人とわかって、誘拐される可能性を心配しているみたい。だから、すぐに見分けがつかないようにしようと考えているんだって。ほら、イスガルマン人の件があるでしょう? ガルマン帝国への潜入任務なんて彼らはやっているから、逆にスパイがこの基地に忍び込んだりしないか、警戒しているみたい」

 古代は、ガルマン帝国のイスカンダル人の末裔が、奴隷として扱われている現実を思い起こした。スターシャたちにとっては、遠い星々の問題ではなく、自身の問題なのだ。

「デスラー総統と、スターシャさんたちは、ガルマン帝国で住民に反乱を起こさせようと企てているみたいだが、正直、僕には現実的な策だとは思えない。そんな危険を感じるなら尚更だよ」

 

 スターシャは、数名のガミラス兵たちと、基地内の農園の手入れを行っていた。ここで穫れた野菜や果物は、基地内のレストランなどに提供されている。スターシャは、女王の立場を離れて、普通の暮らしをすることに、喜びを感じていた。

 しかし、アベルト・デスラーはと言えば、相変わらず軍事作戦の立案に夢中になっている。部屋に兵士たちとこもって何度も作戦のシミュレーションを行っている。

 彼は、絶対にイスガルマン人を解放すると、力強くスターシャに誓っていた。一時は、スターシャ自身も同じ様に思っていたが、その実現がとても困難であることは、少しづつ彼女も分かっていた。デスラーが、再び苦しむ姿を見たくないと思っていた彼女は、少し消極的になっていた。イスカンダルの同胞が苦しんでいるにもかかわらず、である。

 そうやって、揺れる自身の感情を落ち着かせる為にも、彼女は農園での作業に没頭していた。

「こっちは、終わりました」

 そう言って、爽やかな笑顔を向けて来たのは、一緒に作業を行っていた一人の若者だった。中性的な印象の彼は、男性とのことだったが、女性にも見える。穏やかな表情の彼は、額の汗を拭い、その若さが輝いていた。

 スターシャも、優しく笑顔を浮かべた。

「ミルさん。いつもありがとう。疲れたでしょう。皆んなで少し休憩しましょうか」

 

 捕虜として、牢に入れられていたガトランティス人のミルのことを知ったスターシャは、デスラーに尋ねた。

「アベルト。彼は、もう何年もの間、囚人として扱われているとか。出してあげることは出来ませんか?」

 デスラーは、自身の執務室にやって来たスターシャの顔を見て、少し渋い表情になった。

「スターシャ。ガトランティスとの決戦の時、彼は邪魔になると思って惑星レプタポーダに置いてきたのだ。君たちがテレサと共に行った精神攻撃の際も、彼は、その影響下に置かれていなかった。つまり、あの邪悪なガトランティス人そのものなのだよ。戦いの後、旅立った私たちは、そのままにしておくのも危険だと思い、ここまで連れて来たのだ」

 スターシャは、つかつかと彼のデスクに近づいて、両手を置いて身を乗り出した。

「聞けば、ここ数年、とても大人しく、従順な様子を見せているとか。もはや、彼にはガトランティス帝国の後ろ盾も無く、生きる希望も無く、絶望しているのだと思います。監視をつけて、様子を見るのもいけませんか?」

 デスラーは、スターシャの剣幕に少し押されていた。彼も、あのガトランティス人がすっかり大人しくなっていることは聞き及んでいた。しかし、いくらスターシャの頼みとは言え、危険人物をわざわざ解き放つことに賛成することは難しかった。

「スターシャ。彼は、ズォーダー大帝の命を受け、私にガミラスとイスカンダルの攻略を手伝おうとさせていたのだよ。彼に逆らうのに失敗すれば、私の方が命を落としていた可能性もあった」

 スターシャは、微笑した。

「その大帝はもういません。あの時の、邪悪な心に支配されたズォーダー大帝は。それは私が保証します」

 デスラーは、スターシャの頑固さを分かっていた。イスカンダルの女王の立場を長く経験した彼女は、そのような意志の強さを持つようになっていた。デスラーは、目を閉じてため息をついた。

「分かったよ。スターシャ。兵士数名を彼の監視につけることが条件だ。それに、自由にこの基地を彷徨かせるわけにはいかない。場所を制限させてもらうよ」

 スターシャはにっこりと笑った。

「そう言ってくれると思っていたわ。ありがとう、アベルト」

 

 それから、既に一年は経過していた。ミルが許されたのは、この農園などの、施設の裏方に当たる設備のメンテナンスの仕事だ。多くのガミラス人や地球人は、彼がそうしていることすら知らない。

 スターシャは、こうして時々彼の様子を窺っていたが、真面目に働く様子は本当に信用できるものだった。最近、遂に司令官の古代にも、この事実を打ち明けた。彼に知らせないのは、失礼だと考えたからだ。その古代は、感動した様子で、ガトランティス人と分かり合えるんでしょうか? と嬉しそうに言っていた。

 スターシャは、これで本当に良かった、と思っていた。

「スターシャさん。貴方のおかげで、生きてるって感じがします。本当に感謝していますよ。この後は、汚水処理施設のメンテナンスに行ってきますので」

 ミルは、水の入ったボトルを口にしている。スターシャは、にっこりと笑って言った。

「それなら、私も、一緒に参りましょう」

 一緒にいたガミラス兵がたちが、それに反論した。

「スターシャ様。さすがに、それは我々だけで行きます」

「そうです。汚れ仕事は我々にお任せ下さい」

 ミルも、笑顔で言った。

「皆さんの言う通りです。私たちにお任せを。スターシャ様」

 ガミラス兵たちは、ミルの肩を叩いて笑い合っていた。すっかり、兵士たちとも打ち解けているようだ。

「分かりました。それじゃぁ、私は失礼しますね。皆さん、よろしくお願いします」

 

 スターシャが立ち去った後、彼らは立ち上がって汚水処理施設へ向かった。

 そこは、基地の基部にあり、大きなプールのような設備があった。彼らは、それぞれ持ち場に散って、機械の清掃などを行っていた。しばらく作業を行っていると、ミルは、機械の不具合に気がついた。

「あの。これ、ひびが入っていますよ」

 ミルが指差す先を、ガミラス兵の一人が覗き込んだ。

「フィルターのパイプを繫ぎ止めるアタッチメントか。この部品、あったかなぁ」

「テロンの奴らに聞いてみろよ。あいつら、こういうのちゃんとしてるから」

「元々は、我が軍の施設だっていうのになぁ」

「そう言えば、基地内に何でも製造可能な自動工場を作ったらしいぜ」

「ああ、あの真田って人の考案したあれか」

「じゃぁ、俺が言ってとってくるよ。お前、部品持ってくるまで休んでていいぞ」

 そう言うと、ガミラス兵の一人は、工具を置いて汚水処理施設を出ていった。

「じゃぁ、お言葉に甘えて、少し休んでいます」

「たまにはいいさ。ゆっくりしてな」

 再び、ガミラス兵たちは、持ち場に戻って作業を始めた。ミルは、施設を出ていった兵士の工具を持って、室内の隅の方へ移動して座った。

 ミルは、汗を拭いて汚水処理施設を眺めた。

 時々、ズォーダー大帝や、サーベラー参謀長官のことを思い出すことがある。彼らと一緒に、様々な星系を侵略していたことは、心の片隅に覚えていた。しかし、もう随分昔のことのような気がする。もう、彼らと一緒に元の生活に戻ることは出来ない。

 ミルは、ここでのこんな平穏な生活もありではないか、と思っていた。長い間、戦いに明け暮れた日々から遠ざかり、平和に仕事を真面目にするのも悪くない。いつの日か、もっと信用してもらえれば、自由にこの基地を出歩くことも許されるかも知れない。

 ふと、ミルはガミラス兵が置いていった工具箱を眺めた。すると、そこには、彼が持っていた通信機があった。

 ミルは、震える手で、それに手を伸ばした。こんな通信機で、何か出来るとは思えない。所詮は、兵士同士の通信が出来る程度のものだろう。それでも、前から思っていたことがある。大帝たちは、今はどうしているのだろう、という疑問だ。自分を置いていった彼らは、今はどうしているのか。同胞に会いたいという気持ちは、彼もまた同じだった。

 しかし、それが実現したとして、スターシャの信用を裏切ることになるのではないか?

 ミルは、通信機を手にしたが、震えが止まらなかった。そして、結局それをそっと元の工具箱へと戻すのだった。

 

続く…

 




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。

参照1 ミルについて
白色彗星帝国編15 デスラーの戦い
https://syosetu.org/novel/210483/15.html

参照2 宇宙基地ギャラクシーについて
ギャラクシー1 艦長の心得
https://syosetu.org/novel/215852/1.html

参照3 スターシャについて
白色彗星帝国編24 旅立ち
https://syosetu.org/novel/210483/24.html
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