殺人探偵?うっせぇ好きでやってんじゃねーよ!!   作:☆桜椛★

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第14弾 負けられない4対4戦(カルテット)

「よし、両チーム全員揃っとるな?これより、4対4戦(カルテット)を始める!!」

 

 

あの夏目先生に慰めて頂いた日から4日、ついにこの日がやって来た。俺の左側には影山くん達が緊張した様子で並び、右側には少し離れて自信満々な表情を浮かべて余裕そうにしている峰くん達がおり、全員が今回審判を務める暴力極道女教師こと蘭豹先生に注目している。

 

 

(この4日間は本当に大変だった……)

 

 

あの日、夏目先生と別れた俺は寮に戻ると早速影山くんに連絡し、『4対4戦当日まで、どんなものでも構わないから可能な限り峰くん達の情報を集めてくれ』と頼んだ。『超推理』で作戦を立てる為に必要だったからな。影山くんは突然のお願いに驚いていた様だったが、その翌日には情報が記載された大量の紙の束をを大きめの段ボールに入れて持って来てくれた。

でも『2日前に10円拾ってた』とか、『一昨日の就寝時間は午後11時12分51秒』とかは流石に要らなかったけどな。てかどうやって知ったの?

 

そしてその次の日には主税くんと風間くんも呼び、適当な任務を俺の指揮の下で行って貰った。まぁ『超推理』で推理して主税くん達に犯人捕まえて貰うだけの簡単な任務だ。やっぱり頭痛がヤバい事を除けば『超推理』は偉大だな。頭痛薬が必要になるけど、『超推理』ならあんな任務は簡単に完遂出来る。もう俺じゃなくて『超推理』が任務完遂してると言っても全然過言じゃないのだよ。

だからさぁ、帰って来た時からちょくちょく見せるようになった尊敬の眼差しってヤツ?それやめて欲しいんだけど。罪悪感が半端じゃないんだよ。

 

そして残りの2日間は、『超推理』で立てた作戦の準備を行った。主税くん達に作戦を伝え、昨日の夜まで影山くんが新しい情報を持って来る度に推理して調整しつつ、全員で試験会場にこっそりと細工を施した。作戦を伝えた時何故か全員顔が引き攣ってたが、『蘭豹先生には許可は貰ったので問題ない』と伝えると納得して無さそうな表情をしつつも賛同してくれた。

因みに、あの暴力極道女教師は爆笑しながら許可をくれたよ。流石に反省文とかは書かされるみたいだが、世界が滅ぶよりマシだ。

 

 

(まぁ、やれるだけの事はやった。後は俺の頭がどれくらい保つかだよなぁ……)

 

 

この4日間推理しまくった所為か、今も頭痛がするから今日はもう出来るだけ使いたくないんだよね『超推理』。でも使わないと絶対負けるから我慢するしかない。取り敢えず始まる前に頭痛薬飲んどこ。

 

 

「改めて説明するが、今回ウチ等(教務科)が定めたお前等がやる競技は『殲滅戦(デモリション)』や。ルールはシンプル。制限時間1時間以内に、相手の班が付けたワッペンをより多く破壊した方の勝利や。ワッペンを破壊された奴は、その後の戦闘に参加する事は出来ひん。指示を出すのも禁止や。準備時間は10分。このエリア内にある物は車やろうが道具やろうが何を使っても構わん。ただし、使う弾は非殺傷弾(ゴムスタン)のみや。非殺傷言うても頭に当たれば死ぬ事もあるから注意せぇよ?」

 

 

蘭豹先生はそう言うと、各人に銃に合った非殺傷弾が入った弾箱を手渡し、俺と峰くんに『No.1』から『No.4』と書かれた色違いのワッペンを4枚ずつ渡した。俺が貰ったのは青色のワッペン。峰くんは赤色のワッペンだ。

 

 

「そのワッペンは見える所に付けとったら何処でもえぇ。脱落者が出たらウチがそれぞれのインカムに連絡したる。ただし必ず体のどっかには付けとかんと即失格にするからそのつもりでおれ。分かったらとっとと所定の位置に行って準備しとけ。ブザーが鳴れば試合開始や」

 

 

蘭豹先生はそう言うと何処かへ去って行った。まぁ、多分どっかにモニター室的な所が有るんだろう。俺も影山くん達を連れて所定の位置に向かおうとしたが、その前に峰くんに声を掛けられた。

 

 

「ゆっきー!この試合、りこりん達が勝たせて貰うからね♪」

 

「あぁ、俺達も全力でやらせて貰うさ」

 

「くふふ♪実はゆっきーがどんな戦い方するのか前々から気になってたんだ〜♪楽しみにしてるね!」

 

 

峰くんは楽しそうに手を振りながらレキくん達を連れて所定の位置に向かって行った。楽しみにしている所悪いんだが、こっちは大勢の人間の命が掛かっているので、徹底的にやらせて貰うからな。覚悟してろよ!

俺は峰くん達を見送ると、今度こそ影山くん達と所定の位置へ歩き出した。

 

 

「………あの、綾辻さん。マジでこの作戦実行するんっすか?流石にやり過ぎだと思うんすけど」

 

 

道中、影山くんがかなり心配そうな表情で俺に問い掛けて来た。まぁ、ぶっちゃけ『超推理』で推理した結果じゃなかったら俺だって思い付かなかったよこんな危ない(・・・)作戦。でも仕方ないじゃん?こうでもしないと峰くん達には絶対勝てないって。

 

 

「過去に俺の作戦より凄いものがあった。それに比べれば、非常に小規模なものだ」

 

「いやでもコレ、本当に大丈夫なのか?」

 

「下手すれば死人(・・)出るよね?」

 

 

そこはまぁ、『超推理』先生の出番だ。それに峰くん達はAランク主体のチームだし、レキくんに至ってはSランクの武偵だ。そうそう死にはしないだろ。大丈夫、行ける行ける。

 

 

「いいからさっさと準備を済ませろ。時間が迫っているぞ?」

 

「あ、はいっす!」

 

「了解した」

 

「わかった」

 

 

俺が伊達眼鏡を掛けながら準備を促すと、影山くん達は自分の銃に非殺傷弾を込めたり、制服にワッペンを付けたりと、各々の準備を済ませて行く。そして全員の準備が整い終わった丁度その時、試合開始の合図であるブザーが鳴り響いた。

 

 

「……では、始めるとしようか」

 

 

ーーー異能力『超推理』

 

 

 

 

 

 

峰理子side…

 

 

「始まったね。じゃあ、レキュは作戦通り、狙撃ポイントに向かって。いっちーはあややんと一緒に丈夫そうな車を探しに行って、あややんはその車をちょこっといい感じに改造しちゃって♪」

 

「……分かりました」

 

「はいですの〜!」

 

「はいなのだ〜!」

 

 

そう言ってレキュ達はそれぞれの行動に移った。あたしの予想だと、相手側の司令塔はゆっきーで間違いないと思う。ゆっきー達のデータを見た限り、ゆっきーさえ撃破出来れば、残りは結構楽に倒せる筈。でもレキュと同じSランクのゆっきーをそう簡単に倒せるとは思えない。だからあたしは、無理にゆっきーと戦わない事に決めた。ゆっきーと戦ってワッペンを壊される危険を冒すより、他の子達を全員倒して、後はゆっきーから逃げ回れば時間切れを狙った方が、あたし達が勝つ確率が高いもんね。

 

そこでレキュには、このエリア内で1番高いビルの屋上から狙撃して貰う事にした。レキュの絶対半径(キリングレンジ)は2051m…まぁ、今回は非殺傷のゴム弾だからだいたい1800〜1850m位になってるけど、それだけの狙撃範囲が有れば跳弾狙撃(エル・スナイプ)弾丸弾き(ビリヤード)まで出来るレキュなら、ゆっきー達に近付かれる前に狙撃出来る。向こうにも狙撃科は居るけど、動く的に当てられないらしいし、狙撃範囲もレキュよりずっと狭いから狙撃の心配はないと思う。

 

いっちーとあややんには乗り物の確保とそれの改造をお願いした。改造が終わり次第、あややんが攻撃を担当して、いっちーがエリア内を走り回ってDランクの子を探して撃破。もしゆっきーに遭遇したら、即撤退するように言っておいた。射撃の腕もかなりするらしいから、最悪車を乗り捨ててもいいとも伝えておいた。

 

最後にあたしは昨日スタート地点の物陰に隠して置いた変装用の服やウィッグで軽く変装してDランクの子を狙う。今日は4対4戦がある生徒以外は全員休校だから、人は沢山いる筈。あたしはそれに紛れてDランクの子を探して、見つけたら背後から奇襲してワッペンを破壊する。

 

これがあたしが考えた作戦!更に念の為に他にも幾つか予備の作戦を立ててある。さぁて、あたしの作戦は何処まで上手く行くかなぁ?

 

 

「ふんふふ〜ん♪」

 

『……峰さん。レキです』

 

「うん?どうしたの?」

 

 

鼻唄を歌いながら武偵校の防弾制服姿から防弾繊維を使った別の服に着替え、自慢の金髪を隠す様に被った黒髪のウィッグを鏡を見て調整していると、レキュから連絡が来た。

 

 

『予定通りに狙撃ポイントのビルに到着しました。これより屋上に向かいます』

 

「お!早かったねレキュ!ゆっきー達に見つかってないよね?」

 

『はい。見つかった様子は有りません』

 

「オッケー♪じゃ、屋上に着いたらそのままゆっきー達を探して、見つけ次第報告して」

 

『分かりました』

 

 

そう言ってレキュは通信を切った。それと同時にあたしも軽くメイクでホクロとかを作る。ホントはもっと完璧に別人に変装する事だって出来るけど、ちょっと時間が掛かるから今回はこれで済ませる。

鏡を見て、短時間で済ませた割にはなかなか良い感じに変装出来てる事に満足していると、今度はいっちー達から連絡が来た。

 

 

『峰さん、丁度良さそうなトラックを見つけましたの。今ピッキングで鍵を開けてますの』

 

「りょーかい!ゆっきー達に見つからないように注意してね?」

 

『了解なのだ!』

 

『了解ですの。鍵も今開きましたので、早速平賀さんと改造を《ガチャ。ピン!カランカラン…》……へ?…わひゃぁぁぁぁぁぁぁあああ!?

 

に、逃げるのだぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!

 

「え!?ちょ、何!?どうしたの!?」

 

 

突然インカムから聞こえて来た2人の悲鳴に、あたしは驚きつつも何が起きたのか聞こうとした。でも2人の返事を聞く前に、ドカン!って遠くから大きな爆発音が聞こえて来た。びっくりして爆発音のした方を向くと、いっちー達が向かった方向から黒煙が立ち昇っていた。

 

 

『はぁ…はぁ…あ、危なかったのだ…!』

 

『間一髪でしたの……』

 

「ちょ!?2人共大丈夫!?なんか爆発したけど!?」

 

 

慌てて2人の安否を確認したけど、大丈夫だったみたい。ワッペンも壊れてないらしい。多分…て言うか、絶対ゆっきーの仕業だと確信したから、いったい何があったのかを聞いてみると、あたしは自分の顔が引き攣るのを感じた。

 

 

『トラックのドアに手榴弾を使ったブービートラップが仕掛けられていたのだ……!』

 

『しかも4箱程の箱と一緒に……おそらく中身は大量の火薬ですの』

 

ゆっきーはりこりん達を殺す気なのかな!?

 

 

閃光榴弾や音響手榴弾ならまだ分かるけど、そんな殺しに来る様なトラップを仕掛けて来るなんて!流石のあたしも予想外だよ!?そんなの一般人が引っかかったらどうするの!?

 

 

『どうするのだ?他の乗り物を探すのだ?』

 

「え?う〜ん……うん、そうして。もしかしたら他の乗り物にもトラップが仕掛けられてるかもしれないから、注意してね」

 

『了解なの《バスッ!!》むぎゃっ!?』

 

『峰班、平賀文!脱落!』

 

「……え?」

 

 

インカムから聞こえた蘭豹先生からのあややんの突然な脱落報告に、あたしは一瞬何を言われたのか理解出来なかった。そしてあややんのプレートが破壊されたって理解すると、あたしは慌てていっちーと連絡をとった。

 

 

「ちょ、いっちー!?いったい何が起きたの!?何であややんが!?」

 

『狙撃ですの!爆発に気を取られて足を止めてしまっていた隙を狙われましたの!事前に注意されていましたのに!』

 

 

しまった!油断してた!トラックに仕掛けられてたブービートラップは囮!こんな試験で殺意ありまくりのトラップが作動して爆発が起これば、いくら武偵のあややん達でも動揺して足を止めるだろうし、仮にトラップに気付いたとしても、驚いて固まったりする。そして足を止めて動かなければ、ゆっきー達の狙撃手(スナイパー)は弾を当てられる!

 

 

(でも何であややん達があのトラックを狙うって分かったの?最初は偶然だと思ってたけど、狙撃手が待ち伏せしてたって事はその可能性は低い。でもあたしだってあややん達がどの乗り物を狙うかなんて指定してないし、知らなかった。やっぱり偶然?それとも……)

 

『峰さん!どうすればいいんですの!?』

 

 

インカムからいっちーの焦りを含んだ声と一緒に、弾が着弾する音とライフルの銃声が聞こえて来る。

 

 

「……レキュに狙撃してもらう!いっちー!狙撃手の場所は?」

 

『狙撃手はどうやら赤い看板のあるビルの屋上に居る様ですの!今も狙撃が続いていますの!』

 

「OK!レキュ!いっちーが居るポイントの近くにある赤い看板があるビルの屋上に狙撃手が居るの!そこから狙える?」

 

『………煙が邪魔して狙撃出来ません』

 

 

なっ!?まさかあの爆発は、煙を発生させてレキュの狙撃を妨害する為でもあったの!?だとしたら、レキュの居場所もバレてる可能性も……!

 

 

「レキュ!すぐにそこを離れて次の狙撃ポイントに移動して!そこはもうバレてると思う!」

 

『………分かりました』

 

 

レキュは近接戦闘も出来るけど、犯罪組織を1人で壊滅させちゃうゆっきーが来たら分が悪過ぎる!ここでレキュまで失うのはマズい!取り敢えずレキュは逃して、狙撃手はいっちーが惹きつけてる間にあたしが直接倒して、その後はそのままいっちーと合流して……、

 

 

『……峰さん。狙撃が止みましたの。どうやら移動したと思いますの』

 

「〜〜〜〜っ!!!」

 

 

もう!どうなってるの!?あんなに考えて立てた作戦なのに、問題が次から次へと出て来て、しかも修正しようとしたらそれも上手くいかない!全部上手く行くとは思ってなかったけど、まさか本当に何1つ作戦通りにならないなんて!

 

 

「……いっちー、今からあたしと合流して。合流地点はコンビニの裏にある立体駐車場。何処にゆっきー達が潜んでるか分からないから気を付けて来てね」

 

『了解ですの』

 

(一点差を付けられちゃったけど、まだ残り時間には十分余裕はある。ここから巻き返して行くもんね♪)

 

 

あたしは最後にサングラスを掛けて変装を終わらせると、自然な足取りでいっちーとの合流地点へ向かった。

 

 

 

 

 

 

「……どうっすか?上手く出来てたっすか?」

 

『あぁ、完璧だったぜ』

 

『まさかホントに引っ掛かるなんて………流石は綾辻さんが考えた作戦だね』

 

「………ここまでは作戦(推理)通りだ。次の段階に移行するぞ。準備しておけ」

 

『了解』

 

『分かったよ』

 

「ラジャーっす!」

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー残り時間、42分52秒。


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