鬼滅の刃~蒸の呼吸~【完結】   作:木入香

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 またまた遅くなり申し訳ありません。
 今度こそ最終回です。続きはありません。本当です。
 そしてまた、いつものように台詞回しや少しの動作等に改変を入れて、それっぽくさせているつもりです。
 長いです。というか手紙回です。最終回なのに……
 そして、サブタイ通りに柱達相手に手紙の中から煽り倒しますので、不快な思いになること必至です。くれぐれもご注意下さい。最終回なのに酷いサブタイだ……
 ただ、創里はそういう奴だということを、これまで読んできた皆様なら分かっていると思います。が、一応念の為忠告しておきます。


最終話 鬼だろうが柱だろうが煽ってナンボ

 両脇をそっくりな少女に支えられながら細身の男性、産屋敷家(うぶやしきけ)当主、産屋敷耀哉(うぶやしきかがや)竈門炭治郎(かまどたんじろう)、そして柱達の前に姿を現す。彼は、その光を通さない瞳で空を見上げ、嬉しそうに、それとも悲しそうに、あるいは見えない日差しに(まぶ)しさを感じたか、もしくはその手の届かぬ日の光を(いつく)しむかのように目を細めた。

 (のろ)い。

 産屋敷の人間として生まれた者は、ただ一人の例外なく(やまい)(おか)されており短命である。そして、それは目に見えて浸食しており、耀哉の顔の上半分は焼け(ただ)れたかのように荒れており、目も見えていない。そして、(じき)に立ち上がることさえ困難になるだろう。だが、今隊士達の前に立つ彼の立ち姿は、一見弱々しくもその心の中で燃える意志が支えとなり、誰よりも力強く立っているような印象を受ける。

 

「今日はとても良い天気だね」

 

 ゆっくりと、澄んだ空気に(ひた)るかのように声を発する。

 

「空は青いのかな……」

 

 どこか憧憬(しょうけい)の念を含むように、ほんの(わず)か、言葉を切る。

 

「顔ぶれも変わっていないようだね。全員変わりなく、こうして半年に一度の柱合会議(ちゅうごうかいぎ)を迎えられたことを、嬉しく思うよ」

 

 その(たたず)まいに、炭治郎は一瞬(ほう)けてしまうが、直後の衝撃に我に返る。風柱(かぜばしら)不死川実弥(しなずがわさねみ)が、彼の頭を地面に押さえ付けたからだ。

 炭治郎が抵抗しようと周囲へ目を向けると、先程までバラバラだった柱達が、横一列で綺麗に並び、片膝を突いて頭を下げていた。それは頭を押さえ付けている実弥も同様で、先程までの殺気はすっかり(なり)を潜めている。

 

「お館様におかれましてもご壮健で何よりです。益々のご多幸を、切にお祈り申し上げます」

 

 ついさっきまで殺気を振りまいていた人物と同じ者の台詞とは思えない言葉に、炭治郎は内心驚愕する。

 

「ありがとう、実弥」

 

 感謝の言葉を贈られたことで少しばかり彼の心の中が暖かくなるも、それを振り払い、どうしても聞いておきたいことを口にする。

 

「恐れながら申し上げます。柱合会議の前に、この竈門炭治郎なる鬼を連れた隊士について、ご説明があればありがたく存じ上げます」

 

 それは実弥だけでなく、当事者である炭治郎と錆兎(さびと)を除く、この場にいる全ての隊士の総意である。

 

「そうだね。皆には驚かせてしまって、すまないと思っている。炭治郎と禰豆子(ねずこ)のことは、私が容認していた」

 

 柔らかい表情を崩すことなく告げられたその言葉に、少なくない動揺が走る。

 

「そして、皆にも認めて欲しいと思っている」

 

 そう言って当主の口は閉ざされる。すると、数瞬も考える間もなく意見が出揃う。

 

「南無、例え、お館様たっての願いであっても、私は承知しかねます」

「俺も派手に反対だ。そもそも鬼を連れた隊士なぞ、派手か地味に関係なく認められる訳がない」

「わ、私は、全てお館様のご意向に従います」

「僕はどちらでも良い……かな……すぐに忘れるので」

「私はお館様に賛成します。竈門君の主張が正しければ、人を食わない鬼だったら仲良くなれると思うの」

「俺は、この場で意見を口に出来る立場にない。だから、どのような結末になろうとも男である以上決して後悔はしない」

「信用出来ないし信用しないし信用するつもりもない。そもそも鬼は大嫌い。これで十分だ」

「心より尊敬するお館様のご意見であっても、到底呑めないことであるし理解出来ないお考えだ! 全力で反対する!」

「鬼を滅殺してこその鬼殺隊(きさつたい)。竈門、錆兎両名の処罰を願います」

 

 それを穏やかな表情で聞き届けた耀哉は、自身の右に立つ少女、産屋敷ひなきに目を向ける。

 

「手紙を」

「はい」

 

 指示を受けた彼女は、(ふところ)から言われたものを出す。

 

「こちらの手紙は、元水柱(みずばしら)鱗滝左近次(うろこだきさこんじ)様から頂いたものです。一部抜粋して読み上げます」

 

 読まれた内容は、鬼である禰豆子の存在、そしてそれを連れた炭治郎。彼等兄妹を認めて欲しいというものであった。特に禰豆子の状態等の詳細が書かれ、そしてもしも彼女が人を襲うようであれば、その兄である炭治郎とその育手(そだて)の左近次。現水柱の錆兎が切腹にて詫びを入れるというものであった。

 だが、当初反対意見を述べた者は、やはり考えは変わらないようである。

 

「切腹するから何だというのだ。死にたいなら勝手にやってろ。何の保証にも証明にもなりはすまい」

「不死川に同意だ! 殺された人は戻らない!」

 

 実弥に続いて炎柱(えんばしら)煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)も意見を曲げない。

 

「確かにそうだね」

 

 彼等の意見は尤もである。そもそも鬼に身内を殺され、そして今も尚、身内が、人々が、そして自身が鬼の脅威に恐れ、怒り、嫌悪を(いだ)いている者が大多数を占める鬼殺隊。そしてその柱ともなれば、鬼への憎悪(ぞうお)は計り知れない。だからこそ、より多くの鬼を滅する為により強い力を求め、精進してきた。だがここに来て、鬼の存在を認めろと言われ、素直に頷くことが出来ないのは道理である。

 そんな彼等を納得させるだけの言葉を、今の耀哉は持ち合わせていない。だから、もう一つの札を切ることにする。

 

「炭治郎」

「え? は、はい!」

「君の家は、代々一つの鍵を受け継いでいると聞いているのだけれど、持っているのかな?」

「はい、ここに。竈門家を継ぐ者は、この鍵を常に肌身離さず持ち歩くよう言い付けられています」

「鍵?」

 

 鍵の存在は、同門である錆兎すらも知らないことであったのか、疑問符を浮かべる。そして、それが何だというのか、柱達は互いに視線を(まじ)わらせるも、結局は首を振るだけであった。

 

「にちか」

「はい。こちらに」

 

 耀哉の左に立つ、産屋敷にちかは、名を呼ばれただけで指示されたものを取り出した。これまで、どこに仕舞われていたのか不思議な大きさであるが、それは、少女が両手で抱える程の大きさの金属で出来た箱。それにより、とても重い為、ここまで(かくし)に運んで来てもらっている。今も座敷に鎮座するその箱には、一つの鍵穴があった。

 

「これは、産屋敷の金庫の奥で眠っていたものだ。その金庫は、代々当主のみに鍵が受け継がれ、当主立ち会いの(もと)でなければ決して開かれない。カナエ」

「っ! はい!」

 

 突然、名を呼ばれて驚きつつもすぐに返事をする花柱(はなばしら)胡蝶(こちょう)カナエ。

 

「しのぶの使う毒の資料も、ここに保管されていた。今回出て来た箱を当時の当主に願い出た者と、その資料の作成者は同一人物だ」

「へ……?」

 

 思わず間の抜けた声を出してしまう。

 

「およそ、三〇〇年弱昔。江戸時代初期の頃かな。当時の柱の一人が、未来へ(たく)すとして、書状が収められていると言われている」

「言われている?」

「そんな前から?」

「そんなものが、何だって言うんだ」

 

 口々に言う柱達を軽く流し、言葉を続ける。

 

「その柱は、箱を産屋敷に、そしてその箱を開ける鍵を、炭治郎の先祖に託した」

「は……?」

 

 その発言に、今度こそ言葉を失った。

 

「炭治郎、鍵を」

「は、はい! あ、でも手が……」

 

 すると、隠の一人が炭治郎の横に来る。

 

「どこにある?」

「首に提げてます。服の中」

「分かった」

 

 そうして、鍵を手にした彼は、顔のほとんどを布で隠しているにも関わらず、その目だけで緊張していることが分かるくらいにカチコチになりながらも、どうにか鍵を耀哉まで届けることに成功する。

 

「ありがとう。では、にちか」

「はい」

 

 鍵は挿され、回される。そして、彼女が中から取りだしたのは、一本の巻物であった。そのまま流れるような動作で紐を解いて、広げる。先程のひなき同様に読み上げるのかと思われたが、何やら固まってしまっている様子である。流石の耀哉も異変に気付いたのか、少し眉をひそめて聞く。

 

「どうかしたかい?」

「いえ、ただ……」

「ただ?」

「かなり過激な言葉の羅列、いえ、暴力が並んでおりますので、このままお伝えするのは……」

「ふむ。では、にちかなりに修正を入れても良いのだよ?」

「いえ、それが、巻物の冒頭に、原文のままお伝えせよと書かれておりまして」

「そうか。分かった。そのまま読んで」

「……分かりました。では、読み上げるにあたり柱の皆様には注意があります。これより、数々の暴言が飛び出しますが、非常に貴重な情報が含まれております。よって、最後までご静聴頂けたら幸いです」

 

 いよいよ、巻物の内容が明らかになる。しかも産屋敷家にしても貴重な情報、自然と柱の面々は身構える。だが……

 

雑魚(ざこ)柱の諸君。元気か?』

 

 その一文で空気が凍り付いた。

 

『俺は蒸柱(じょうばしら)創里(つくり)って奴だ。この巻物が読まれているってことは、竈門んとこの子孫が現れたってことか。時代はいつだ? 未だに江戸幕府は存在するか? それともまた幕府が代わったか? あるいは幕府はなくなって、別の人達が天辺を取ったか? それと、竈門の子孫、もしかしてお前、鬼を連れていたりしないだろうな?』

 

「っ!」

 

 淡々と読み上げるにちかだが、その口から出てくる暴言の数々、そしてその鬼を連れているかという文言で、炭治郎の心は揺れた。それは他の人、耀哉でさえも目を丸くして聞いていた。

 

『確かに、人食い鬼は悪だ。滅さなければならない。だが、人を食ってない鬼は果たして悪かねぇ? 人を食わない鬼か殺人大好き人間がいたら、俺は迷わず鬼の手を取って一緒に逃げるね。むしろそんな人間は、奉行(ぶぎょう)に突き出すだけだがな』

 

 無茶苦茶なことを言っている。誰もがそう思う。論理のすり替えである。だが、不思議と反論の言葉が浮かばない。

 

『だが、そんな考えを持つ者は非常に少ない。それに、人を食わない鬼なぞ、これまで見たことがない。まぁ俺はまだ若いが、恐らく俺の生きている間は目に掛かることはないだろうと思う』

 

 そう、その通りである。炭治郎の経験が稀なのだ。人をただ一人も食べたことのない鬼を、妹の禰豆子を除いて愈史郎(ゆしろう)しか知らない。そして、愈史郎が鬼になった経緯は特殊過ぎる。となると、純粋に鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)から直接血を受け取って、それで人を食わないというのはどれだけ異常なことか(うかが)える。

 

『だからもし、そんな鬼が現れたら、それは時代の答えだ。鬼舞辻へ繋がる道となるだろう。きっと俺は、その時代じゃなかったんだ』

 

 文章だけであり、それを読むにちかも淡々としているが、その言葉にどこか悔しさが(にじ)み出ているように思える。

 

『だが感謝しろよ? 雑魚柱共。この俺が、上弦(じょうげん)の鬼を二体倒しておいた。この巻物が開かれる時代には補充されている可能性もあるが、あれだけの実力者だ。下弦(かげん)(いち)と上弦の(ろく)との差は(まさ)に雲泥。完全に穴埋めをすることは出来ないと考えている』

 

 炭治郎が戦った(るい)は下弦の()であった。下弦の下位であってもあの強さだった。では、上弦とは一体どれ程強いのか。それは柱も同じ思いである。彼等は誰一人として上弦と遭遇したことがない。上弦と遭遇するということは、それ即ち死を表すからだ。そして、彼等の代以前も何名もの柱が上弦に挑み、敗れていったのが良い例である。明らかに自身よりも強い人でさえも、容赦なく食われた。

 

『倒したのは上弦の()と陸。それと、壱とは戦闘に入ったが、隊士を守る為に見逃すことになった。だが、後述する手段でこっぴどく痛め付けてやったから、右腕がなくなっているままのはずだ』

 

 だが、この巻物の主は、それを成し遂げた。しかも、内容から察するに単独で、である。

 そして聞き逃してはならないのが、右腕をなくした鬼のこと。鬼は強くなればなる程に再生能力が高くなる。だが、弱い鬼も遅いながらも再生する。不死身と言われる所以(ゆえん)である。それが、再生しないと言うその手段とは、一体何なのか。全く想像も出来ない。

 

『これは重要だな。鬼舞辻無惨の足取り。これは、そこの竈門の者にでも聞け。実際に遭遇して戦った俺から言えることは、大きさだけでなく性別や年齢も操れるアイツは、人間社会に(まぎ)れて生活している。だが、どれだけ姿形が変わろうとも、本質は変わらない。アイツは、小心者で臆病者で卑怯者。長く存在しているから経験と思慮はあるが、やはり他者への嫉妬と怒り、短気の歯止めが利かない、ただの我が儘やんちゃ坊主だ。まぁ、少々所ではないくらいにやんちゃだが』

 

 聞き捨てならない文言が、次から次へと飛び出して来て、整理が追い付かないが、無情にもにちかは読むのを()めない。むしろ、早く読み終えてこの暴言の嵐から解放されたいという思いすらある。

 

『ただ、慎重な性格なのも事実だ。今も隠れて過ごしているのだろう。だが、言っちゃ悪いが、その竈門の鬼は重要な(えさ)だ。恐らく、奴の呪いを外し、更に人を食わずとも成長しているのだろう? ならば、そのまま生かしておけば、必ずそれを手に入れる為に奴はお前等の前に現れる』

 

 恐らくと言っておきながら、何故そこまで見通しているのだろうか。

 

『柱の諸君の気持ちも分かる。だが、感情に身を任せて、重要な情報を取りこぼすのは愚の骨頂だ。そんな暗愚でないことを俺は切に願うね。その鬼は鬼舞辻の足取りを掴む重要な手掛かりだ。特に稀血(まれち)の風柱とか、ぶち切れて刀でぶっ刺したりしてねぇだろうな? もしかしてしたのか? まぁ(くび)さえ斬らなければ治るから別に良いがな。それと、その時に揉めに揉めて、正式な処分が下されていない隊士に向かって刀を向け、あまつさえ振ったりしてないよな? それ、隊律違反だからな? 斬った後に決めることじゃないからな? 鬼と違って無法者じゃないんだから、ちゃんとそこの所しっかりしてくれよ? 境遇は同情出来ても、それは他人には関係ないことだからな』

 

「い、一体……どうなってやがる!」

 

 実弥のことを如実に表すかのようなことが読まれていく。それに対し、彼は怒りと同時に、得体の知れないものへの恐怖で震えていた。それは他の者も同じだ。後で、正式に検分する必要があるが、それでも今、読まれている内容がそのまま書かれていることに間違いはないのだろう。でなければ、自分達が何らかの血鬼術(けっきじゅつ)に掛かっていると考えた方が納得いく。

 

『それじゃあ、お待ちかねの、お前等が強くなる為の助言だ。恐らく、当主様は、お前等の身を案じて(あざ)のことは伝えていないのだろう。俺もそれには同意だ。確かに痣を出すのは割と簡単だ。だが、未熟なお前等では意味がない。ということで、お前等にはそれをすっ飛ばして、一段上の強化をやってもらう。俺達はこれを透き通る世界と呼んでいる。これを使えば、上弦にも壱以外は余裕で戦えるようになるはずだ。ただし問題がいくつかある。これを使うには、無駄なものを全て削ぎ落とさなければならない。全てだ。全てを正しい動作で行うことで、その境地に至ることが出来る』

 

 産屋敷の当主が何かを隠しているということも聞き捨てならないが、それよりも更に強くなれる可能性のある手段がある。偽りの可能性もあるが、そんな誤情報をわざわざ産屋敷で長年保管することはないだろう。少なくとも、柱の面々は、機関銃のように降り注ぐ情報のラッシュを頭ごなしに否定することはない。整理が追い付かないのは相変わらずだが、否定するだけの材料がないことも事実だ。

 

『正しい呼吸。正しい動き。正しい姿勢。正しい持ち方。正しい構え。これを無意識で出来るようにひたすら繰り返す。そうすることで、一晩中戦っても疲れない身体が出来上がるし、刀も正しい軌道で振るわれるから折れることがない。良いことずくめだ』

 

 とはいえ、所々変な販売のような文句が出てくるので、否定することは出来ないが、信じて良いのかも疑問といった所である。

 

『しかし、先程言ったように無駄を全て削ぎ落とさなければならない。それは感情も同じだ。敵意、殺気、恨み、本来鬼殺をする上で必要とされるその諸々の感情は、この技術を習得する上では限りなく邪魔になる。まぁ上弦や鬼舞辻と戦うつもりがないなら、別に身に付けなくても良いがな。最初からやるつもりがない奴はどうせ、出来るはずがないと諦めている小さな奴だからどうでも良い。下弦だけ倒して御山の大将を続けるのならどうぞご自由に』

 

 ここに来て、伝説の(あおり)の呼吸の使い手にして、(アオ)リストの本領発揮である。それは鬼だけでなく、味方である人間にも使われる。

 周囲の柱、特に男性陣からは、青筋が浮かぶくらいの怒りが込み上げてきているのが分かる。

 

『こんなんで怒るんなら、その程度だ。感情を抑えられねぇ者が、この技術を身に付けることは絶対に出来ない。もし身に付けることが出来たら、その時は、見えている世界が変わる。相手の血流、鼓動、筋肉、神経の動きまで把握し、相手の次の動作を完全に見切ることが出来る上に、無駄な動作も力みもないから、どんな硬い相手でも、まるで豆腐を切るようにアッサリ斬れるようになる』

 

 先程のように、先読みをするかのような言葉に「うっ」と(うな)る声が聞こえた。

 

『あぁ、赫刀(かくとう)のことを忘れる所だった。ぼんくら共に講義をするのは疲れるな。まぁあれだ。火で炙ってみろ。それで色が変われば完成だ』

 

 雑!

 誰もがそう思った。

 

『一時的に攻撃力が上がり、この状態で斬ると、斬られた部分の再生が著しく遅くなる。他にも方法はあるが、それは、自分達で考えな。その為に頭に脳みそが詰まってんだろ? まさかアホみてぇに感情に任せて刀を振っていた訳ではあるめぇ?』

 

 もう炭治郎の中では、実弥への怒りなどほとんどなかった。

 ただ文字だけで、言葉だけで鬼殺隊の中でも指折りの実力者であると教えられた柱達の感情を動かしている。彼の鼻は、そういった機微を敏感に嗅ぎ取る。だから、その目まぐるしく変わる匂いの応酬に、若干酔い始めて来た部分もある。

 

『それと、俺が上弦と遭遇出来たのは偶然じゃない。ちゃんとした情報収集から得た結果だ。だから書類業務もサボらずやれ。小さな情報の積み重ねが、相手の行動を予測し、先回りすることが出来るようになる。まぁ細かいやり方は、ちゃんと考えてやれ。考えるのが苦手な脳筋野郎は、どうぞお好きに野山を駆けまわって、野生児にでもなってくだせぇ』

 

 後半になるに連れてドンドンと煽り具合が悪化していく。これを読むにちかは心労(ストレス)がマッハであるが、駄目押しとばかりに最後の煽りが入る。

 

『他にも知りたいことが色々あるだろうが、まぁ、これだけは言っておく。一から修行し直せ、馬鹿柱。じゃなかった、雑魚柱共。以上!』

 

「とのことです」

 

 巻物から顔を上げたにちかの表情は、ただ読み上げるだけのはずだったにも関わらず、酷く疲れた表情をしていた。そして、それを心配するひなき。口元を押さえて笑いを堪えようとしている父親の耀哉。

 しばらく固まった空気が留まるも、次第に解消されていく。そして、柱達から第一声が叫ばれた。

 

巫山戯(ふざけ)んな!」

 

 この後、原作よりもかなりマイルドな稀血の試験が行われた。あの巻物の内容が、実弥に対してどう影響したかは定かではないが、少なくともあの内容の通りにはならないと、自制の心を持って対応したことは確かであったという。そして、試験を無事に突破した禰豆子は負傷している炭治郎と一緒に、隠によって蝶屋敷へ運ばれていくこととなった。

 今後、彼等がどう生き、物語を紡いでいくのかは分からないが、少なくとも創里が思い描いていた、少しでもマシを実現出来たのではないかと心から願うばかりである。

 

 

 終




 大正コソコソ話

 終わりました。
 文句は色々あるでしょうが、最後は盛大にぶっ壊したいと思っていましたので、もし不快になられたのでしたら、柱達と一緒に「巫山戯んな!」と叫ばれることをオススメします。無一郎君もカナエも多分叫んでいるはずです。多分。
 実弥を虐め倒した理由は、一番に強くなってもらって弟の死を回避してもらいたいという思いと、創里が禰豆子推しであるということは、多分関係ないと思います。きっと。そして、決して煽ったら楽しいと思って書いている訳ではないはずです。はい。
 煉獄家には、炎の呼吸の使い手であり鬼殺隊最強の剣士ということが、少しですが伝わっているので、杏寿郎は創里の名前は知っています。詳しくは知りません。
 地味ににちかをキャラ崩壊させた初の作品ではないかと勝手に思っていますが、どうですかね?
 後、巻物には所々振り仮名が振ってありますので、子供のにちかでも安心して読めます。漢字能力不明ですからね。当然の配慮です。内容は頭おかしいですが、変な所で優しいのが創里です。

 一ヶ月とちょっとの間でしたが、何とか無事に終わらせることが出来ました。
 読んで頂いた多くの方々。しおりを挟んで下さった方々。ブクマ(お気に入り)に入れて下さった方々。誤字脱字報告して下さった方々。様々な感想を下さった方々。本当に感謝しております。
 私の書く創里達の物語はこれで終わりますが、もし、この設定使って創作したい等がありましたら、規約に反しない範囲であればご自由にお使い下さい。

 次の題材はまだ決まっていませんし、そもそも書く予定もありませんが、もし書くとしても鬼滅の刃はないかなと思います。割と満足しちゃいましたので。
 ですので、また別の作品で出会うことがありましたら、またよろしくお願いします。
 では最後になりますが改めて、最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。それでは、失礼させて頂きます。
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