カーク・ターナーの憂鬱   作:ノーマン(移住)

116 / 116
     【原作年表】
宇宙暦640 ダゴン星域会戦
宇宙暦669 コルネリアス1世の大親征
宇宙暦682 フェザーン成立
宇宙暦696 シャンダルーア星域の会戦
宇宙暦720 ★第一話スタート
宇宙暦726 730年マフィア 士官学校へ入校 
宇宙暦728 ジークマイスター亡命事件 
宇宙暦728 フォルセティ会戦    
宇宙暦730 730年マフィア 士官学校卒業  
宇宙暦738 ファイアザード会戦   
宇宙暦742 ドラゴニア会戦     
宇宙暦745 第二次ティアマト会戦

---- 以下オリジナル設定 ----

宇宙暦751 ミヒャールゼン提督暗殺事件
宇宙暦765 イゼルローン要塞計画破棄
宇宙暦767 ヤンウェンリー誕生
宇宙暦770 シェーンコップ 祖父母と亡命
宇宙暦776 ラインハルト誕生
宇宙暦786 カーク・ターナー暗殺事件
宇宙暦787 帝国フェザーンへ進駐
宇宙暦788 ウルヴァシーの奇跡
宇宙暦790 同盟軍フェザーン進駐
宇宙暦791 帝国でハイパーインフレ発生 カストロプの乱
宇宙暦793 フリードリッヒ4世爆殺事件 帝国、内乱へ突入
宇宙暦797 同盟軍帝国領へ侵攻
宇宙暦802 和平条約締結
宇宙暦804←★ここ

※星間図は『銀英伝 星間図』で画像検索すると出てくる帝国軍が青、同盟軍が赤で表現されている物を参照しています


第111話 それから (最終話)

宇宙暦804年 帝国暦490年 10月末

惑星フェザーン 編入政策局 局長室

ラインハルト・フォン・マリーンドルフ

 

「『第二次ティアマト会戦』の難易度設定の監修はヤン局長がされたと聞いたが?あの難易度は些か無理があるのではないかな?」

 

「はぁ。閣下がおっしゃっておられるのはナイトメアモードの話でしょう?あれはプロ向けの難易度ですからクリアできなくてもお気になさらずとも」

 

「気にせずにはいられない理由があるのだ。大使館顧問のヴェストパーレ男爵夫人とエリーゼ殿が親しいのは貴官も知っているだろう?前回の会食で『軍人なのにナイトメアモードがクリア出来ないなんて』と嫌味を言われたのだ。このままでは年末の会食の場でまた嫌味を言われる事になる」

 

「エリーゼさんはシニアクラスで唯一のマスタークラスですから比較する方が.....。それに所有しているプロチームの現役選手から細かくレクチャーを受けてもいますし」

 

「そう言う問題ではない。これは矜持の問題だ」

 

領土割譲に伴う希望者の帝国領への移動、立ち上がる編入領の統治。それを確認するような任についてからまもなく2年が経とうとしている。大使館の駐在武官長の任にありながら飛び回る日々だった我々の留守に、淑女の皮を被った悪魔が出入りしていた事を知った時はもう手遅れだった。

 

同盟に編入された旧帝国領内で『才能の発掘』を理由に多額の育英資金を提供してくれたエリーゼ・ターナー殿は、名目上の大使である姉上や政治顧問のヒルダをいつの間にか自分の信奉者にしてしまった。

 

芸術にも造詣が深く、フライングボールのプロチームまで所有している彼女と最初に意気投合したのがヴェストバーレ男爵夫人だったのも悪かった。

 

フェザーンの帝国大使館は女の園と言えば聞こえは良いが、お茶の時間に重要政策が決定され、どこからともなく予算が付く異常な状況であった。成果が出ているから苦言を言う事も出来ない有様だ。

 

「攻略動画は参考にされましたか?丁寧な解説ならラップの物がお薦めですが」

 

「攻略動画を見てクリアするのは貴国では邪道なのだろう?それに動画を見たと知られたらエリーゼ殿にまた何を言われるか......」

 

フェザーンに赴任して様々な同盟文化に触れたが、俺とキルヒアイスの関心を引いたのは『今日から提督』シリーズだ。家庭用のPCでも参加できるが、どこから聞きつけたのか、我々が関心を持っている事を知ったエリーゼ殿は特注の対戦設備を大使館に寄贈してくれた。

 

もちろんそれだけで済むはずがない。言葉巧みに対戦する様に誘導され、姉上とヒルダが見ている前でズタボロにされた。

 

「そもそも旧式戦艦で編成されたコーゼル艦隊のあの岩のような堅さは異常だろう?シュタイエルマルク艦隊はどう包囲しようにもすり抜けるし、艦列を維持するポイントを的確に突いてくる。他の艦隊も攻守ともにレベルが高い。あんな設定を士官学校のシミュレーターに導入すれば、勝てる候補生などいないだろう」

 

「コーゼル提督もシュタイエルマルク提督も同盟では人気ですからね」

 

「ユリアン、ナイトメアモードの『第二次ティアマト会戦』のシナリオのクリア人数は把握しているかい?」

 

「私の時は93番目でした。昨日の時点で138名でしたけど、もう一度やりたいとは思わないですね。ヤン提督、あのシナリオだけ、新しい試みとして疑似AIを入れてますよね?初期の攻略動画じゃ、もう参考にならないと思いますけど......」

 

局長の副官であるミンツ中尉が紅茶を用意しながら会話に参加した。前任は局長と結婚した事を機に退役したが、いつの間にか帝国大使館の女の園の名誉会員になっている。

 

「疑似AIとはどういう事なのかな?ミンツ中尉」

 

「『今日提』の競技人口はアマチュアを含めれば80億人近いんですが、その対戦結果を全部収集しているんですよ。それを疑似AIに分析させて、戦況に応じて最善手を取れるように日々アップデートしているんです。ヤン局長がラップ大佐の動画を薦めたのもそれがあるからです。初期攻略で有名なワイドボーン准将の動画はもう参考になりませんからね」

 

「では、時間が経つほど難易度が上がる訳か......」

 

「そうです。その分、クリアナンバーが後ろの方が実力者と見なされますから不公平ではないんですよ?」

 

「そうだね。親離れした子供のように、監修した私でも最新版を確実にクリアできるかは分からないからなあ」

 

「それは良い事を聞いた。つまりエリーゼ殿よりナンバーが後ろなら彼女に誇れると言う事だな?ならばまごまごしている訳にもいかぬ。中尉の紅茶は美味ではあるが、安易に飲み干すことを了承してもらいたい」

 

ミンツ中尉の紅茶はあのエリーゼ殿やヴェストバーレ男爵夫人も称賛する程の味だ。紅茶の良い香りに後ろ髪をひかれながらティーカップを傾け、局長室を辞する。ミンツ中尉と同じく局員のシェーンコップ軍曹が見送りに付き沿ってくれた。

 

「閣下、また『今日提』の話ですか?帝国大使館は女性ばかりが功績を上げているなんて声も漏れ聞こえています。他の事に注力された方が良いのでは?」

 

「シェーンコップ軍曹、貴官のフィアンセが『今日提』の名手だからそのような事が言えるのだ。持つものが持たざる者の心境を理解できるはずもない。助言には感謝するが、これ以上の提言は控えてもらいたい」

 

「もう......」

 

シェーンコップ軍曹の父親はフェザーンに駐屯している亡命子弟で編成された薔薇の騎士師団の大隊長だ。勇猛さで知られた部隊だが、幼年学校で無敗だったキルヒアイスが訓練に参加し、左腕を折られながらも師団長のリューネブルク少将から一本取った事がきっかけで交流が始まり、何かと機会があれば会食する仲だ。

 

大使館が女の園となり居場所が失われつつある事が、結果として同盟内部に人脈を作る切っ掛けになった。シェーンコップ家にもお邪魔した事があるし、軍曹が気安く声をかけてくるのもそれがあるからだ。だが、ヤン夫人が大使館に出入りしており、夫人と親しい彼女も当然その影響を受けている。

 

『戦闘なら実力行使が出来ますが、家庭ではそうもいきませんからな。娘には小官も何かと注文を付けられてげんなりしていますよ。閣下との会食なら公務とも取れますからな。帰宅が遅くなる口実としては最適です。これからも良しなに』

 

どんな陸戦の名手でも娘には甘いのか?それとも軍曹が口達者なのかは判断に困る。だが、少なくともエリーゼ殿の影響を受けているのは確かだ。婚約者を敵視するのはミンツ中尉に申し訳ないが、軍曹の助言は素直に聞く訳にはいかない。

 

それから『第二次ティアマト会戦』の攻略を進めた俺は、200番目にクリアする事に成功した。それに続く者が出なかった為に『今日提』の名手の一人として認知されることになる。

 

数年後から毎年開催される『銀河杯』の第一回大会に同じく帝国内で名手とされたロイエンタール准将とミッターマイヤー大佐とチームを組んで参加するのだが、それはまた別の話だ。

 

 

宇宙暦804年 帝国暦490年 11月末

惑星フェザーン 編入政策局

ユリアン・ミンツ(中尉)

 

『ターナー元帥かい?そうだなあ。私にとっては軍人と言うより財務委員長としての印象が強いね。血縁関係はないんだが、私の父にとっては父親と兄の間のような存在だった。私にとっては祖父のような存在だったかな。

 

存在感がとにかくすごかった。どちらかと言うと前に出るタイプじゃなかった私は、気後れしてしまったね。私にはまぶしすぎる人だったかな』

 

幼い頃に官舎が隣だった事もあり、交友が始まったヤン提督。父の教育方針で身に着けさせられた紅茶の試飲役をする傍ら、歴史上の人物の話をよくしてくれた事は今でもよく覚えている。年齢差は14歳。多産を奨励している同盟では、家庭によっては14歳差の兄弟も存在するけどさすがに一般的じゃない。

 

父と言うには歳が近く、兄と言うには歳が離れている。そんな関係の実例が、ターナー元帥とヤン提督の父親のタイロンさんの関係だ。年齢差は14歳。タイロンさん自身も証券業界で成功し、ミリタリーマニアとしても有名で、語られたエピソードは多い。歴史の授業を聞きなれていた私は自然と『730年マフィア』にも関心を持った。

 

『お隣に入居したヤン少佐はウルヴァシーの英雄だが、それ以上にターナー元帥のお孫さんの様な方だ。父さんは元帥には大恩がある。お独りでは何かと苦労もあるだろう。気づいたらお助けするようにな』

 

ヤン提督が隣に入居した事を知った父さんから真っ先にそう言われた事も記憶に残っている。当時はよくわからなかったが、成長するにつれてその言葉の意味が理解できた。父方のミンツ家は国父アーレ・ハイネセンの偉業、長征一万光年に参加した家柄だった。それを代々誇りとし子弟にもそう教育していた。

 

父さんもそう薫陶を受け、士官学校に入学した。ただ、任官直後にその家訓に反発する様に帝国からの亡命者だった母さんと結婚した。それに反対した父方の家族とは絶縁状態だ。

 

父さんと同じように帝国からの亡命者と結婚したターナー元帥は、長年勤めた財務委員長時代に同盟の高度成長期を実現させた。その恩恵は亡命者も当然預かり、経済的に豊かになった事で、陰では存在していた差別もだいぶ薄れたと聞く。父さんはその事を言っていたのだと思う。

 

もっとも、ミンツ家で厳しい薫陶を受けた父さんも、亡命者としての誇りを持つように教育された母さんも親としては厳しめだった。独り身で干渉もしてこず、多少の家事と紅茶を振舞うだけで様々な食材を分けてくれ、優しく色々な話をしてくれるヤン提督は、私にとって避難所のような存在でもあった。

 

『730年マフィアか。今の同盟には余裕があるからね。あんな奇跡のような集団が再び現れる事はないんじゃないかな?それは悪い事ではないんだが.....。どうせなら自分で調べてみたらどうだい?』

 

彼らが生まれた時代、同盟は多大な犠牲を払いながらも帝国の侵攻を跳ね返し戦力の回復に勤める傍ら、帝国に抗する事の出来る勢力の存在を知った亡命希望者の流入で様々な価値観がぶつかり合い、政情も決して安定してはいなかった。

 

そんな状況で当時は今以上に顕著に存在していた出身派閥を網羅する集団が、強い団結心の下で戦果を上げ続け、8人全員が元帥号を得る。小説の登場人物だとしても出来過ぎだ。

 

そして英雄としての業績だけじゃなく、人間味あふれるエピソードも多数遺してくれた。多くの同盟市民は『730年マフィア』を知る中で誰かを推すようになり、あれやこれやと議論するのもよくある光景だった。

 

「ユリアン?今夜はディナーの約束があるんだから残業はやめてよね?少し出てくるわ」

 

「ああ。行ってらっしゃいカリン」

 

思考に意識を向けていた私に、婚約者で同僚のカリンが声をかけて来た。それに応じると納得したのか彼女はオフィスを出て行く。カリンとの縁もヤン提督と母親が亡命者だった事がつないだと言えるだろう。

 

彼女の父親のシェーンコップ大佐は亡命者だ。付き合い始める前に『訓練』と言う名目の手荒い儀式を受けさせられたけど、交際を許可してもらえたのは半分は亡命系であったことも大きいと思っている。

 

「グレース・リースかぁ......」

 

730年マフィアの事を調べていくと最後に行きつくのがこの名前だ。ターナー元帥暗殺の実行犯で、暗殺された可能性があるとされたウォーリック元帥とファン元帥の事件にも関与したとされる人物。

 

経歴上はフェザーンで生まれ、名門看護学校を卒業した時期に父親のビジネスが失敗し、母親と亡命した事になっている。だが、これはフェザーンが用意した架空の経歴だろうと言うのが通説になっている。

 

詳細な調査は残念ながら行われなかった。と言うのも、地球教とフェザーンが共謀して行った謀略活動を同盟が意図的に帝国内に流布した結果、門閥貴族連合の若手が暴走し、地球に熱核兵器攻撃を実施したからだ。

 

地表は放射能が渦を巻き、重装備の防護服なしでは活動もままならない環境にあり、政府は人命尊重を理由に捜査を打ち切った。

 

『毎日昼食前の15分、彼女は涙を流していた』

 

彼女の資料で目を引くのは、苛烈な取り調べを受けて精神破綻し、精神病院に隔離されてからのこの記載だ。時刻に直すとおそらく11:45~12:00の間。この時間はターナー元帥の暗殺時刻とも重なる。

 

精神破綻したはずの彼女はなせ涙を流していたんだろうか。そして730年マフィアの最後の一人、ローザス元帥の死を待つかのように、彼が急死した年の年末に息を引き取った。

 

「ユリアン、まだ終わらないの?」

 

「いや。丁度区切りが良い所だよ」

 

戻って来たカリンの声で思考から意識を戻した。シェーンコップ大佐の言じゃないがカリンは可憐な見た目に反してかなりせっかちだ。待たせるのはまずい。

 

「それで今日はどこに行くんだい?」

 

「帝国亭よ。男爵夫人監修の新メニューがスタートするの。ちゃんと感想を言えるように吟味しないとね。ユリアンも協力してよね」

 

カリンがコートを羽織るのをエスコートしながらそんなやり取りをする。もともと帝国風が好みだったが、帝国大使館に出入りする様になってからそれが更に強くなった気がする。

 

それに新メニューと同等以上に定番が好物な彼女とのディナーでは、私が定番を頼んで二人でシェアするのが慣例になりつつあった。庁舎を出ると11月と言う事もありコートを着ていても寒い。自然と手を繋いで帝国亭へ向かう。つないだ手から伝わるぬくもりが、不思議と心地よかった。

 

 

宇宙暦788年 帝国暦479年 12月末

惑星ハイネセン 軍病院精神棟

グレース・リース

 

一体どれだけの期間、ここにいるのだろう。それすらも知覚できない程、私はあの取り調べで壊されてしまった。幼少の頃から教団の孤児院で暗殺も含めた工作員となるべく育てられた私にとって、あの程度の事で情報を漏らす事などあり得なかった。

 

時の流れも良く分からないが、一日がまた経過した事だけはわかる。もうすくあの時間がやってくるから。そしてあの時、工作員として磨き上げられた私の心を傷モノにされていたのだと思う。

 

『君には家庭を持って次世代を育んでもらいたかった。君の子なら優秀だろうし、なにより良き母に成れただろうに』

 

護衛官が病室から離れた。その隙をついて病室に入り込み暗殺するだけのタイミングでターゲットだったオレンジ色の髪をした老人はそう応じた。20歳で同盟に潜入して以来、ただ暗殺の事だけを考えて生きて来た。

 

でもそれに疑問を感じなかったわけじゃない。生活の中で接点のある市民たちは同盟の経済成長のお陰もあり、戦中でありながら人生を謳歌していた。

 

「耳を傾けてはダメ。彼はターゲットなんだから」

 

そんな事を呟いたかもしれない。無言でベッドに近づくが彼は微笑したまま表情を変えなかった。

 

『もうやるべきことは終えた。俺を暗殺しても戦況は変らない。そんな事の為に君の人生を費やすとはな.....』

 

あの表情は哀れみも含んでいたんだろうか?撃たれたわけでもないのに胸がズキリと痛んだ覚えがある。右ポケットに手を伸ばして忍ばせていた心臓発作誘発剤を打ち込めばそれで終わり。あの時は分からなかったが、私は動揺していたのだと思う。

 

右ひざに一瞬冷たさを感じた後、熱さと共に痛みが走る。反射的に右手に持っていた注射器をターゲットに突き刺した。右膝に視線を向けるとターゲットが左手にしていた大き目の指輪が押し付けられている。アクセサリーに偽装したブラスター.....。単身とは言え相手も備えていた。また油断した。

 

『すまないが自決はさせないぞ』

 

これで終わった!と思った瞬間、こんなつぶやきと共に右顎に衝撃が走る。ターゲットが左手で掴んだナビガードルで顔面を殴打してきたことに今更ながら気づく。どうする?これじゃ奥歯に仕込んだ自決用のカプセルを使えない。

 

『ただの凶器の君には悪いが逃がすわけにもいかん』

 

発作が始まったこともあり苦し気ながらもターゲットはそうつぶやき私の右腕を跳ね上げながら襟を左手で掴んで巻き込んだ。こうなったら逃げられない。本来なら噛みつくべきだが顎を砕かれてはどうしようもない。

 

左手を使ってなんとか振りほどこうともがく。そうこうしている内にターゲットから力が抜けていくのが伝わってくるが、強く握りしめられた襟を振りほどくことができない。こうして私は駆け付けた護衛官たちに確保される。

 

右膝に熱さを感じた辺りから目元からも熱さを感じ始める。おそらく泣いているんだろうと自覚できたのはこのループを何度繰り返した頃だろうか?

 

「貴方は重要人物で、生涯をかけて暗殺する価値があった。私の人生を否定しないで!」

 

何度そう懇願しても彼は微笑みを浮かべた表情で温かく同じことを繰り返し述べてくる。泣きわめいても、怒鳴り散らしてもそれは変らない。孤児だった私には両親が存在しなかった。でも彼が私に向けてくる温かな視線は父親そのものだ。

 

「うそよ!人生をかけて父親のような愛情を向けてくれる人を殺したなんて私は認めない!」

 

懇願は一昨日したし、昨日は泣きわめいた。今日は怒鳴り散らしてみたが、それでも彼は変らず温かい視線と温かい言葉をかけてくる。そうこうしている内に時間が過ぎたようだ。人の気配が近づいてくる。もうすぐ昼食の時間。なんとか今日も乗り越えた。

 

でも明日が来るのが怖い。こんな日々から早く抜け出したい。ある日、彼は何も言わずに私の頭を撫でてくれた。その日を境に地獄のループが終わった。




今作はこれでフィナーレとさせていただきます。投稿開始から111日間、最初からお付き合い頂けた方も、最近知った方もご愛読いただき感謝です。

PYさんを始め、至らぬ点を誤字報告でフォローして下さった方。そして読了報告代わりに毎日評価を付けてくれた方もおられました。本当に励みになりました。この場を借りて御礼申し上げます。

前作の稀代の投資家が原作には登場しなかったラインハルトの庇護者役が登場する作品があれば読みたいという動機で執筆したのに対して、今作は原作では薄いヤンに、730年マフィア世代の祖父のような存在を当ててみたいという想いから執筆しました。

人選は色々ありましたが、同盟なら日系も出せるの事と、田沼意次のような感じで評価は分かれるかもしれませんが、国力を増強した事は間違いない事もあり、田中角栄さんを選びました。

当初はもう少し早い段階で有名なエピソードを出したかったんですが、人間の機微に敏感だった角栄さんが若いうちにそれをやるか?というジレンマもあり、伸ばし伸ばしになってしまいました。

その辺は執筆してみてみないと分からなかった想定外でしたので、笑って頂ければ幸いです。

完結まで毎日投稿した点も含めて、評価ポイントを頂ければ更に励みになります、何卒!

読了に感謝を。 2020/10/4 ノーマン
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

帝国貴族はイージーな転生先と思ったか?(作者:鉄鋼怪人)(原作:銀河英雄伝説)

銀英伝の世界に転生するならどの立場が良いだろうか?二次創作ならば特にメジャーな立場は帝国貴族だろう。▼だが待て、確かに帝国貴族だがこれは……。


総合評価:17329/評価:8.65/連載:199話/更新日時:2020年08月10日(月) 09:00 小説情報

【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第1巻「建国期~ルドルフ大帝」(作者:旧王朝史編纂所教授)(原作:銀河英雄伝説)

「学芸省においては、尚書ゼーフェルト博士の直接指揮のもとに、「ゴールデンバウム王朝全史」の編纂が開始されている」(「銀河英雄伝説」第6巻「飛翔編」より引用)▼「銀河英雄伝説」には、後の時代から本編世界を分析、批評する「後世の歴史家」という存在がいる事はよく知られています。彼らの中には、ローエングラム王朝(新王朝)の時代を生きて、学芸省が進める「ゴールデンバウ…


総合評価:993/評価:9/完結:112話/更新日時:2022年04月10日(日) 16:17 小説情報

稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生(作者:ノーマン(移住))(原作:銀河英雄伝説)

代々軍人を輩出してきたルントシュテット伯爵家。▼ルントシュテット伯の3男、ザイトリッツは交通事故で重体になったことをきっかけに、貴族の3男としてだけでなく投資家としての人生の記憶があることに気づく。▼銀河英雄伝説の世界への転生物の二次創作です。▼帝国側の伯爵3男という立場で物語は始まります。▼主人公は原作知識なし。▼スタートは宇宙歴752年▼原作で言うと第二…


総合評価:13633/評価:8.63/完結:146話/更新日時:2019年01月27日(日) 12:02 小説情報

銀河英雄伝説 〜無能なる俗物が勘違いで英雄に祭り上げられ、気づけば貴族連合盟主としてラインハルトと雌雄を決する件について〜(作者:斉宮 柴野)(原作:銀河英雄伝説)

ゴールデンバウム王朝末期。▼ファルケンハイン伯爵家の嫡男アルブレヒトは、怠惰と美食と美女を愛する典型的な俗物だった。▼ところがその場しのぎの発言や自己保身の態度が、なぜか「深遠な洞察」と誤解され、門閥貴族たちの期待を一身に背負ってしまう。▼気づけば彼はリップシュタット盟約の盟主として、ローエングラム侯ラインハルトと銀河の覇権を争う立場に――!▼これは、歴史に…


総合評価:2314/評価:7.53/連載:219話/更新日時:2026年05月15日(金) 21:15 小説情報

銀河英雄伝説 仮定未来クロニクル(作者:白詰草)(原作:銀河英雄伝説)

銀河英雄伝説の原作終了後に、銀河帝国と旧同盟の人々が描く、仮定未来についての連作短編集です。伝説の終焉と歴史の誕生に、生き残った者たちはどのように道を見つけて歩んでいくのか。これは、性善説と理想に基づいたおとぎばなし(の皮をかぶった何か)。▼『ヤン艦隊日誌』および『ヤン艦隊日誌追補編 未来へのリンク』からつながる、平和で温かな未来を希求する人々の群像劇です。…


総合評価:2038/評価:8.62/完結:76話/更新日時:2013年06月23日(日) 20:33 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>