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九校戦五日目(新人戦二日目)
昨日は男子スピード・シューティングは一位、二位、女子の方も一位から三位を独占するという快挙を成し遂げ、士気が高い状態で新人戦二日目を迎えている。
特に女子陣は見るからに調子が良さそうでクラウド・ボールに出場するスバルと菜々美から気合十分、といった雰囲気を感じ取れていた。
アイス・ピラーズ・ブレイクの深雪、雫、英美も調子が良く、英美に関してはテンションが高くて逆に心配されていたりする。深雪と雫は落ち着いていて普段通りである。
それとは真逆で男子陣営の一部は明らかにテンションが低く、その原因がアイス・ピラーズ・ブレイクで一条将輝に予選で当たるからであった。十師族の一条と対戦するということで萎縮してしまっている男子生徒を励まして元気づける蒼士がいた。蒼士も出場するのだが、一条と当たるとしたら決勝戦であったので余裕があった。
「さてさて、俺も一条と当たるのか…」
「珍しいな、蒼士でも気後れすることがあるんだな」
「大丈夫ですか、蒼士くん?」
蒼士は英美が会場へ向かうのを見送った後にボソッと呟いていたが、選手の控え室に一緒にいた英美の担当技術者の達也と一緒に応援に来てくれた深雪に聞かれてしまっていた。
「あー、別に一条と当たるのは問題ないんだけど、勝った場合の自分の立場と状況が、と思っていてね」
達也と深雪は蒼士の発言に唖然とする。表情の変化があまりない達也でもこの発言には目を見開いていた。
「…もう勝ったつもりでいるのか?」
「そうですよ、今日は予選なのですからまだ早いですよ」
達也と深雪の言葉にそうだな、と一言述べて英美の応援のために移動しようとする蒼士。
「ちなみに一条くんには実際に勝利できるのですか?」
スタッフ専用の観戦席に移動する蒼士に達也と深雪も続いて歩き、深雪が疑問に思っていたことをぶつけていた。達也も深雪と同じようで聞きたそうに視線を蒼士に向けている。
「相手の情報を知っていて、準備期間があれば対策は十二分に出来ているよ、一条が俺の予測を超えてこなければ九割の確率で勝てる」
「……そうか、だが、一条も実戦経験を積んだ実力者だ、並みの魔法師では歯が立たないぞ」
蒼士の勝てる見込みに驚く二人であった。すぐに達也は本音の部分を出して蒼士に聞いている。
十師族であり一条家の御曹司である一条将輝は新ソビエトが佐渡島へ侵攻してきた、佐渡侵攻事件に際して、弱冠十三歳にして義勇兵として戦列に加わり、父親と数多くの敵兵を屠った経験を持つ実力者である。そして今現在も成長して実力をつけている人物でもあり、そのような人物に勝つなら相当な実力が必要になることが考えられる。
「二人とも、俺が並みの魔法師だと思っているのかい?」
あっ、と深雪は声を漏らして、達也は納得したように頷いていた。
「そうだったな、お前は規格外だったな」
達也は昨日のスピード・シューティングで披露した魔法を思い出して納得した。常人では使用できない術式であり、魔法力、魔法処理、サイオン保有量、どれも一級品でなければ無理な魔法を涼しい顔で使用しているだから。
「そうだわ、蒼士くんはいつも常識の範囲内では収まらないものね」
何故かは分からないが彼なら一条に勝てる気がしてきた深雪は自分でも理解できていない自信に微笑んでいた。好意を持った男性だからというのもあるが、いつも驚かせて、予想を超えてくる蒼士の存在からくる信頼、信用というのが深雪にあった。
「ですが、まずは予選からですよ、足元をすくわれないようにしましょうね」
「勿論、油断せずにいくよ」
深雪の言葉に笑顔で応える蒼士。三人は英美の応援のために移動していく。
「ちなみに部下からは『当然勝てるのですから勝って、名を広めてください、後の事情なんて考えなくていいです!』って言われている」
蒼士の言葉を聞いて思わず苦笑してしまう達也と深雪であった。
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第一試合の英美は自陣残り三本で何とか勝利した。見ていて肝を冷やすような場面もあったが勝利してホッとしていたが、本人が一番ホッとしていたようだ。
次に行われるのが雫の試合であったので、技術者の達也と蒼士と深雪が控え室に応援に来ていた。先にほのかも居て雫の応援をしていた。
「振袖似合ってるよ、雫」
「ありがとう、蒼士さん」
蒼士に褒められて照れている雫は慣れたように腕を捲るように
「体調も万全そうだな」
「うん、達也さんが調整してくれたCADもあるから勝つよ」
達也の言葉に対して意気込みが十分に伺える雫。
達也自身も雫の練習、作戦提案、術式開発などの手伝いをしているので雫の実力は分かっていた。彼女の実力なら深雪が相手でなければ勝てるだろう、と予測もしている。
「応援してるからね、雫」
「雫、頑張ってね」
ほのかと深雪も雫を応援していた。
「ありがとう、ほのか、深雪」
二人の応援に微笑む雫は落ち着いていた。試合前ではあるがとても落ち着いており、どんな状況にでも対応できる雰囲気を出していた。
雫の試合が始まるので控え室から出ようとする一同は達也が部屋の扉を開けて、先に出て行き、その後を雫が続く形で蒼士、ほのか、深雪が出て行こうとしたが…
「蒼士さん、ちょっといい?」
雫に呼ばれた蒼士は雫に近づいていくと、いきなりキスをされた。身長差があるが雫は上手く蒼士に抱きついて首に腕を回して、触れるだけのキスをしてみせた。
「ありがと、これで勝てる」
すぐに蒼士から離れてVサインをして達也が出て行った後に続いた。蒼士は反応できていたが、敢えて動かずに雫の好きにさせて、受け入れていた。
蒼士と雫のキスシーンは近くにいた女性二人には丸見えであった。
「しずくぅぅぅー!! ずるいッ! ずるいよッ!」
頬を赤く染めて出て行った雫を追いかけるほのか。親友の大胆な行動に驚きながらも一瞬だけ蒼士の唇を見てしまって、耳まで真っ赤にさせてしまうほのか。キス以上の仲になっているほのかでも初々しさは消えていなかったようだ。
「……(い、いま何が起こったの、蒼士くんと雫が抱き合って、くっついて……キ、キ、キスしたの!? 唇と唇が接触したのよね!? し、しずくぅぅ、あ、アナタ、何やってるのよッ! 好きな人とならキスしてもいいとは思うわ、でも人前でやるなんてハレンチだわ! 私なんてドラマのキスシーンを見てるのでも恥ずかしいのに、なんで私やほのかの前でキスするのよぉぉ!)」
両手で頬を押さえて頬の熱を逃がそうとする深雪であったが、思考回路が全開に働いて、蒼士と雫のキスシーンに対して色々と考えてしまっている。キスシーンが頭を
「そのー、深雪、雫の応援に行こうか」
頬を掻きながら蒼士が深雪に話しかけていた。照れたつもりはなかった蒼士も気まずい雰囲気になってしまったので言葉が詰まっていた。
「…はい」
深雪自身は恥ずかしくしており、蒼士のことを直視できずに視線を逸らしながら一緒に雫の応援へと向かおうとしていた。
先に部屋から出ていた達也はどこか嬉しそうに口元を触っている雫を目撃し、頬を赤く染めて雫を追いかけているほのか、頬が薄く赤くなっている深雪と困った表情の蒼士が出てきて、自分が出た一瞬で何があったのだと疑問を浮かべる達也。
試合前にお茶目なことをする雫は意気揚々と試合に挑むのである。
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雫の試合は圧倒的な実力を示して一回戦に勝利した。相手側は手も足も出ずに全ての氷柱を破壊されて、唖然とするしかなかったようだ。
深雪の試合は一回戦の最終ゲームであり、午後からだったのでまだ余裕があったので蒼士の予選の応援に訪れていた。
スタッフ用のモニタールームで観戦する達也、深雪、ほのか、雫。雫の二回戦は待ち時間があるので応援に来ている。
そして深雪、ほのか、雫の三人は達也から離れて部屋の隅の方である話をしていた。
「雫、アナタいったいどういうつもりだったの?」
「なにが?」
「そ、その蒼士くんとの、キ、キスよ」
「み、深雪、少し落ち着いて」
深雪、雫、ほのかの会話は先ほどの雫の控室での一件のようだ。
「だって、したかったんだもん」
「だもんって…もっとこう、時と場所があるでしょう」
「安心するためにしたかったの、蒼士さんとキスしたおかげでいつもより魔法効率が良かった気がする」
「…で、でもね、私の前でキスしなくても良かったんじゃないの?」
「ん? だって深雪も蒼士さんのこと好きなんでしょ?」
雫の言葉を聞いた瞬間に思わず頭を壁にぶつけてしまう深雪。部屋の中とはいえ、達也にも見える距離であった為に心配されたが、達也を心配させまいとする深雪。
「…ズバリ言われると恥ずかしいわ」
「私達は分かっていたからいいよね、ねぇ、ほのか」
「うん、深雪も私達と同じで蒼士さんのこと好きなのは知っているそれに蒼士さんと話をしている時の表情なんて幸せそうなんだから、分かっちゃう」
「私ってそこまで分かりやすいのかしら」
雫とほのかの言葉に表情が変わっていることまで知らずに驚いてしまう深雪。
「深雪も早く気持ちを伝えるべきだよ、好きな人とキスをすると胸が暖かくなって、幸せな気持ちになるんだ」
雫が語る話を聞いていた深雪は雫に色っぽさを感じ取っていた。唇を触って、蒼士のことを思っているのだろうか、同性から見ても雫に魅力を感じてしまう。
「で、でもわた「三人とも蒼士の試合が始まるぞ」い、今は目の前のことに集中しましょう、とりあえず蒼士くんの応援を」
雫に触発されて自分の気持ちを口に出そうとした瞬間に達也から声が飛んできて、深雪の気持ちは飲み込んでしまい、言葉に出すことができなかった。
兄の達也の元へ先に行く深雪の後ろ姿を微笑んで見ている雫とほのかは友人の恋心を応援したくてしょうがなかったようだ。
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アイス・ピラーズ・ブレイクのルール上に服装に関しては触れていないので、何時の頃から女子のファッション・ショーの様相を呈していた。女子だけでなく、男子もそれに
英美は乗馬服スタイル、雫は振袖であった。
今から試合を行う蒼士は赤を基調とした和装袴を着ている。腰に二丁の拳銃を所持しているのが見受けられた。デザインが違う拳銃型のCADは蒼士自作のCADである。
スピード・シューティングでの劇的な試合を観戦した一般客が多く客席に来ており、予選であるのに満員となっている。蒼士の登場では歓声が上がっている。
知名度が爆上がりしていた蒼士は周りの歓声に気後れすることなく、スタート位置である櫓に立ち、拳銃型のCAD一丁だけ抜き、開始の合図を待つ。
試合の開始と同時に蒼士は拳銃の引き金を二度引いていた。一度目は自陣と相手のエリア内が発光して、すぐに消え、二度目では自陣の氷柱全てが光を発して、同じくすぐに消えた。
一般客の人にも光は見えており、二度目の光が治ると蒼士はエリアに向けていた拳銃を腰に収めて、まるで終わったような佇まいでいる。
相手側もそんな隙を黙っているわけがなく、魔法で蒼士の氷柱を破壊しようとした時に魔法の発動と同時に自分の魔法が砕け散り、自陣の氷柱が一つ爆ぜる光景を目撃してしまった。
目の前で起こった現状に相手側は怯むがすぐに蒼士の氷柱をもう一度破壊しようと動くが、同じく魔法が砕け散り、自陣の氷柱が破壊されてしまい、理解できず守りに入ろうとするが、それよりも前に蒼士が動く。
自陣の氷柱は無傷であり、相手側が自陣の氷柱の情報強化で防御に力を割きながら攻撃もしてくると予測した蒼士は演技かかった動作で指を鳴らしてみせた。
鳴らした音と同時に相手側の氷柱が一つ残らず爆ぜて粉々になってしまい、蒼士の勝利が決定した瞬間であった。
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第一高校本部内で観戦していた真由美、摩利、鈴音の三人は摩利が唖然としており、真由美と鈴音の二人は勝って当然、といった表情を浮かべていた。
「アレはなんだ、何をしたのか理解できないぞ」
見たこともない魔法に驚いている摩利。
「理解できなくて当然よ、だってアレも蒼士くんが開発した新たな魔法よ」
「魔法名は『
本人でもないのに嬉しそうに語る真由美。自分の情報端末を見ながらハキハキと答えている鈴音。摩利は二人の反応から知っていたな、と察する。
「じゃあ、対戦相手の魔法が砕け散ったのは何だ?」
摩利は二人に問う。
「蒼士くんのエリア内で発動したから
真由美が淡々と答えていき、鈴音は頷いていた。
「蒼士くんは何でもありなのか、本当に驚かせてくれるな」
後輩の能力の高さに感心する摩利。学校でのことも合わせて高く評価していたつもりだった摩利だが、蒼士の規格外っぷりを再認識させられた。
「私ね、あの魔法の練習に付き合ったわよー、蒼士くんからどうしてもってお願いされちゃってねぇー」
真由美が頬に手を当てて嬉しそうに話すことを摩利は呆れながら聞いていた。蒼士と真由美の関係を知ってしまい、真由美からの惚気話を散々聞かされていた摩利は話が長くなりそうだと悟ってしまう。
女同士ということもあり、親友でもあるので気兼ねなく話してくれるのを嬉しいと思っていた摩利も肉体関係についてを詳細に生々しく話されて、色惚けしている親友を嫌いになりそうになっていたり、しなかったり……
「会長、私は蒼士くんに意見を求められたり、データの収集に付き合いましたよ」
張り合うように鈴音が横から口を挟んできた。端末を見ながら話している鈴音は何でもないように喋っていたが、真由美が反応するのには十分であった。
「ん? リンちゃん、私の方が蒼士くんに頼られているのよ」
「そうかもしれませんね、でも彼への貢献度は私の方が高いと思います」
摩利を挟んで何やら険悪なムードを漂わせる二人。間にいる摩利は思わず苦笑いで介入できずにいる。
「じゃあー、蒼士くんに聞きに行きましょう! 今は控え室にいると思うから」
「良いですね、本人の口から聞いた方が一番分かりやすいですから」
本部から出て行こうとする二人を摩利は止めに入る。
「おい! 今はお前らがこの本部内を指揮をしているのだから、この場から離れるな」
生徒会長として一高を率いている真由美、作戦スタッフのリーダーとして指揮している鈴音の二人はどちらも一高には欠かせない人物であり、本部内の責任者という立場でもあった。
「摩利がいてくれればいいでしょ!」
「すぐに終わりますので安心してください」
まるで話を聞かない二人に摩利はキレかける。
「私は怪我人だから、普通はもっと大事に扱うものだろうがぁ!」
第一高校の本部はとても騒がしかったと天幕近くを通った人たちは語った。
そして蒼士の知らない場所で蒼士への追及の手が伸びようとしていた。摩利の言葉を真に受けて真由美と鈴音は動かずに一時的に我慢して、蒼士に会ったら問い
蒼士は相手に何もさせずに予選を突破して勝ち上がった。
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アイス・ピラーズ・ブレイクでは、男子は蒼士ともう一人が、女子は深雪、雫、英美が三回戦進出、明日の試合に備える形になっている。
クラウド・ボールは男子が一名だけ六位以内で入賞、女子よりか戦績が悪かったらしく、女子は三高の一色愛梨が優勝し、スバルが準優勝、菜々美が六位入賞と惜しくも優勝を逃したが、それでも十分すぎる戦績を残した。
「深雪の『
「怖気づいたかい?」
雫と蒼士は夕食をとるために食堂に移動していた。歩きながら予選で実力を披露した深雪に関しての話をしている。
蒼士の家での練習では同じ競技に出場する雫と深雪は一緒には練習せずに別々の時間に練習していたので、試合で初めて知ったのだ。
深雪は登場から対戦相手を圧倒しており、緋袴の巫女姿の衣装は見ただけで観客が歓声を上げて、味方につけるほど似合っていたのだ。ただでさえ整いすぎている美貌に衣装が相まって神々しさが垣間見えていた。
そしてさらに深雪が使用した魔法『
「寧ろ深雪と戦ってみたいって気持ちが強くなった」
胸元で拳を突き出してやる気に満ちている雫を見守る蒼士。圧倒的実力を示した深雪に怯むことなく、前向きに挑もうとする雫の精神的な強さは尊敬できると内心で抱く蒼士。
「蒼士さんの方こそ、一条の御曹司と戦うのは怖い?」
「雫と同じで楽しみだね」
見上げるように見てくる雫に思わず頭を撫でてしまう蒼士。その行為を受け入れて撫でられる雫は蒼士に寄り添いながら歩いていく。
今だけは二人っきりだから甘えることにした雫は胸が暖かくなって、少しの間だけ目一杯甘えていく。
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第一高校のメンバーが一同に会する食事の時間は男女共に話を交えていた。男子の戦績は女子よりか悪く、暗くなっている男子選手たちの中で予選を勝ち上がっていた蒼士が暗い雰囲気を覆しにかかり、女性陣の協力にもより男女共に楽しく過ごせる空間が形成されていた。
「良かったね、みんな楽しそう」
「うん、蒼士さん頑張りましたね」
「俺は何にもやってないよ、雫、ほのか」
蒼士、雫、ほのかの三人は一年グループとは少し離れたテーブルで食事を取っていた。少し前まで男子女子にも話しかけられて食事ができていなかった蒼士を雫とほのかが切り上げさせて、話の話題を蒼士から対象が達也と深雪へと変わっていた。
深雪が使用した魔法『氷熱地獄』や達也が深雪、雫、英美の担当技術者ということもあり、女子から話を振られたり、森崎が達也の技術のおかげでカーディナル・ジョージに勝てたなど男子女子が混ざり盛り上がっていた。
こういう対応に慣れていなかったのか、達也は苦笑して対応したりして困っているようにも見えた。
「私もほのかも蒼士さんが場を和ませようとしたことは分かっているから」
「そうですよ、今日は試合もあったのにお疲れ様でした」
雫とほのかの労いに自然と顔が緩んで笑顔を二人に向けてお礼を述べる蒼士。二人に好かれている自分は幸せ者だな、と認識して愛おしく感じている蒼士。
「じゃあ、甘えちゃおうかな、食べさせてくれる?」
二人は蒼士の言葉を聞く前から食べさせてあげる気満々だったらしく、全く同じタイミングであーん、と食べさせてあげていた。蒼士に頼られていることを喜ぶほのかや蒼士に次々に食べさせていく雫の光景が広がっていく。
二人の美少女からの奉仕に癒されている蒼士の背中に突如として衝撃が走り、同時に柔らかな感触も背中に感じていた。
「雫さんもほのかさんもズルいわよ、私も蒼士くんに食べさせてあげたいわぁー」
真由美が蒼士の背中に抱きついてきたようだ。
「七草「今は私達だけだから」…真由美、胸が当たっているんだけど?」
「うふふ、当ててるの」
背中越しに感じる柔らかな感触を堪能する蒼士。食堂ということでかなりの人数がいるのだが、蒼士の背中に隠れるようにいる真由美は見えづらくなっている。
「誘っているのですか?」
美少女からの嬉しい行為に思わず口にしてしまった蒼士。
「だったらどうするの?」
蒼士よりも背が低い真由美は挑発的な笑みを浮かべて蒼士のことを上目遣いで見つめている。頬を赤らめているのが見受けられ、この先の展開を待っているかのように期待している真由美。
「…家まで我慢してください、俺も我慢しますので」
「…そうね、九校戦中だも「ですが、家に帰宅したら次の日まで寝かせませんから」ッ、う、うん、がまんするわね」
自分が有利に事を運んでいたのに蒼士に耳元で言われた言葉にその光景を妄想してしまい、一瞬で顔を真っ赤にさせて伏せてしまった真由美。
「真由美さんだけじゃなくて、私もほのかもだよ」
「う、うん、蒼士さんが求めるなら、わ、私は何でもします」
真由美との会話は両隣にいる雫とほのかにもちゃんと聞こえており、蒼士の腕を掴んでお願いする二人。雫は両手で蒼士の腕を掴んでおり、ほのかは腕から手を掴み、そのまま自分の豊満な胸に当てようと誘導しようしていたのを雫と真由美で止めに入っていたりした。
四人でイチャイチャしているのを一部の生徒から容赦ない視線を向けられていたのを四人は気づかずに過ごしていく。
深雪も視界に入ってしまった四人で楽しそうに過ごしている姿に意識がそっちの方へ向いてしまい、会話していた相手に曖昧な反応してしまっていた。
雫が蒼士の腕に触れている、ほのかが蒼士の手を握っている、真由美が蒼士に身を預けて寄りかかっている、三人で蒼士に食べさせてあげている、どうしてもその光景を見てしまうと胸がチクっと痛くなってしまうのを我慢していた。
今すぐにでも蒼士と話したい、触れて欲しい、と思う深雪は隣で同級生から頼りにされている兄を見て、グッと思いを内に封じ込め、達也の側を離れずにいた深雪であった。
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食事も終わりに近づき食堂を去り始める一高生。食堂は一時間毎に交代で各校が食事を取っていたので次の高校と入れ違いになる。
「あら、貴方は」
「そっか、次は三高の食事の時間だったんだね、一色さん」
食堂の出入口で三高の一色愛梨と会ってしまった蒼士。彼女の後ろには十七夜栞、四十九院沓子が会釈して挨拶してくれていた。
「クラウド・ボール優勝おめでとう、映像で見たけど魔法だけじゃなく、身体の動き、判断力、君の実力の高さが伺えたよ、ミラージ・バットだとさらに凄そうだね」
「…素直にありがとうと言うわね……映像だけでそこまで見抜くなんて貴方も凄いわね、それに吉祥寺くんにも勝つなんて」
自校の選手に勝った相手にも偏見がなく、称賛の言葉を送る蒼士に驚く表情をする愛梨は同じように称賛の言葉を送った。三高の中では吉祥寺が優勝するという予想が立っていたのにそれが覆されて三位に終わったことに三高内では相当話題になっていたようだ。
「自分が吉祥寺に勝ったわけじゃないよ、森崎が勝って、その森崎に勝っただけ」
「それが凄いのよ、見たこともない新魔法を使用して圧倒的な実力で優勝しておいて…それに一条くんから聞きましたが貴方がHSA社の社長なんですよね?」
愛梨の問いに頷く蒼士。その反応に愛梨と栞が改めて事実だと知って驚愕し、沓子はニコリと笑顔を浮かべて笑ってみせた。
「おぬしはやっぱり面白いな!」
沓子の言葉に笑顔を浮かべて言葉を受け取った蒼士。
「三人とも自分の連絡先を知ってるよね、何かあれば頼ってくれていいよ、プライベートなことでも我が社の商品が欲しい場合も」
これも何かの縁とばかりに蒼士は三人とは友好な関係を築くつもりでいる。将来優秀な人材が自社に入社してくれるためなど、学生ながら蒼士は人材のスカウトもしている。
「…まったく、アナタときたら今は九校戦の最中で敵同士なのよ」
愛梨が冷静な判断で言葉を述べるが…
「愛梨の言うことには一理ある、けど、ありがとう」
「うむ、九校戦だから他校と交流できるのを生かさなくてはな」
栞と沓子はこういう機会ぐらいしか他校と接する機会がなかったことに感謝し、HSA社の社長という大物と繋がりが出来たことを嬉しく思っていた。
「じゃあ一色さんとは–––––よう」
「なぁッ、何を言ってるの!?(プライベートで二人っきりで食事をしながらゆっくりと友好を深めようって……デ、デ、デートのお誘い!? か、彼とはまだ出会って数日も経っていないのに何で心臓の鼓動が早くなってるのよッ!! た、たしかに…梓條くんとは話しやすくて、真面目に話してくれて、聞いてくれて、好感が持てる人物であるのは、確かだけど、何でココまで私が動揺しなくちゃいけないのよー!)」
愛梨に近づき本人だけに聞こえるように蒼士が投げ掛けた言葉を聞いて、顔を真っ赤にさせて、蒼士から離れると壁際で顔が周りに見えないように隠している愛梨。蒼士の言葉のせいで色々考えてしまい、動揺してしまっている。
「愛梨があそこまで反応するなんて、何をやったの?」
「おぬし、ワザとじゃろ?」
愛梨の親友二人からの問いに蒼士は答える。
「一色さんも十七夜さんも四十九院さんとも友好的な関係を築きたいだけだよ、九校戦が終わったらそれぞれの学校に帰って、気軽に会えなくなっちゃうからね、本人がいるうちにアピールしとかないとね」
「じゃが、あれは逆効果ではないか?」
「私もそう思うわ」
沓子と栞の言葉にそうかな、と疑問を浮かべる蒼士であった。
「夏休みとか自分が所有するプライベートビーチ、海にも招待するよ」
「おぉ、それはいいのー、大海原でバカンスか!」
「愛梨と沓子が居れば、私もいいわよ」
蒼士の言葉にノリノリで誘いに乗る沓子、親友たちと一緒なら行くと言う栞。
何だかんだで友好関係が築けている蒼士であった。
「そういえば、愛梨は司波深雪さんに用があったみたいなんですが会えますか?」
未だに復活してこない愛梨を尻目に栞が愛梨の代わりに蒼士に深雪に会いたいことを伝えていた。
「本人の許可が取れればね、呼んでみるよ」
栞からのお願いを叶えるために深雪を呼びに行く蒼士。その間に栞と沓子は愛梨を再起させるべく動くのであった。
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深雪は一人で椅子に座ってゆっくりとしていた。兄から疲れているのだと思われて座らされていたのだが、疲れているわけではなかった。
「私ったら、お兄様の前で溜め息をついてしまうなんて」
自分がやらかしてしまったことを恥じる深雪。兄と一緒に居て、無意識で溜め息を漏らしてしまい、見られてしまったことを深く反省している状況であった。
「…これも蒼士くんのせいです」
「呼んだか?」
ひゃ、と声を上げてしまう深雪。周りには誰もいないと思っていたので、口にした言葉を拾われて驚いてしまう。それも名前を出した本人にだ。
「達也からゆっくりさせてやってくれって言われてるけど、大丈夫かい?」
「え、えぇ、大丈夫ですよ、それよりも気配を消して近づかないでくださいね、蒼士くん」
動揺から回復するのが早かった深雪は現れた蒼士に強めの視線を向けて抗議していた。睨みつけるまではいかないが何時もの深雪にしては視線が鋭いことに気づいた蒼士。
「ごめんごめん、俺も気配を消していたわけじゃなかったんだ、深雪が何やら考え事をしていたようだったから邪魔しないようにゆっくり近づいたまでだよ」
自分が考え事をしていたのを見抜かれて少しだけ驚く深雪。蒼士は近くにあった椅子を持ってきて深雪の隣に座る。
「そうだったのね、ごめんなさい」
「気にしないでくれ、それよりも何か思い悩んでいるなら相談に乗るよ」
蒼士の言葉に「貴方のことで悩んでます」なんて言えるわけない、と内心で一人でツッコミを入れていた深雪。
「…蒼士くんは本当に優しいですね」
悩んでいたことは確かにあったが蒼士とこうして話していたら悩みが薄れていくのを感じていく深雪。
「少しだけ甘えさせてもらっていいですか?」
蒼士の許可など関係なく深雪は蒼士の肩に頭を預けて寄り添う。深雪からの行動に多少の驚きはあったものの、すぐに深雪を受け入れた蒼士。
「頭も撫でてあげようか?」
「はい、嬉しいです」
素直に甘えてくる深雪を可愛いと思いつつ、とことん甘えさせる蒼士は深雪の綺麗な黒髪を触りながら頭を撫でていた。
蒼士からの提案は深雪にとっては嬉しくて、自分のことを考えてくれている、と思えて胸が暖かく、ポカポカな気持ちになって心地が良かった。
「もう休むかい? 明日も試合があるのだから」
「もう少しだけこのままでお願いします」
顔が緩んで嬉しそうにしているのが一目で分かる深雪に蒼士は行為を継続していく。美少女に頼られているのは全然苦ではなかった。
「そういえば、蒼士くんは何か用事があったのですか?」
寄り掛かりながら深雪は蒼士に聞いていた。
「あ、深雪に魅了されたせいで忘れていた」
「まぁ、私が悪いようではないですか、酷いですよ」
先ほど頼まれたことを思い出した蒼士。深雪は口元に手を当てて上品に笑みを浮かべている。絶世の美少女の深雪の一つ一つの動作が魅力的であり見惚れてしまう。
蒼士はそこから三高の選手が会いたがっていることを伝えて深雪に聞き、深雪は会うことにした。蒼士から疲れているなら会わなくていい、と言われたのにも関わらず深雪は会うことを選んだ。
蒼士と短い時間だったが過ごしたおかげで、深雪の内心に渦巻いていたモヤモヤが払拭され、逆に元気になっている深雪であった。
三高の一色愛梨に会い、正々堂々の宣戦布告とライバル宣言をされて、表情を変えることなく深雪は彼女と握手し、愛梨の言葉を受け取った。
三高生と入れ違いになるように別れたが、蒼士を見つめて頬を赤くしていた愛梨の行動に疑問を抱き、蒼士を問い詰める深雪。
「蒼士くん、一色さんにも手を出しているのですか?」
「手なんて出してないよ、連絡先を交換したり、今後もよろしくって言っただけだよ」
「……それは手を出しているって言うんですよ!」
深雪を部屋まで送り届ける道中で蒼士は深雪から問い詰められ、説教をされていた。蒼士の中では美少女と友好な関係を結べて嬉しかったが、深雪にはそれが嫌であったようだ。
「女性に優しいのは蒼士くんの良いところですが、誰でも口説くのは止めてくださいね」
「美少女を口説くのは男とし「イ・イ・で・す・ね」…努力します」
綺麗な笑みを浮かべる深雪の有無も言わせない圧力に蒼士は頷き返事をするしかなかった。
「私を怒らせた罰として私が眠くなるまで話し相手になってください!」
「……それぐらいならお安い御用だが、達也から深雪の見送りを頼まれているから、今日はもう休んだ方がいいんじゃないのか?」
「お兄様には私から言っておきますから、気にしないでください」
「本人が言うからいいか、でも疲れているなら正直に言ってね、明日も試合があるのだから」
ここ最近は蒼士の部屋で二人っきりで話すのが深雪の中では習慣になりつつあった。まだ短い時間だが、この時だけは自分が蒼士を一人占め出来るので堪能する深雪であった。
仕事あるのはめちゃんこ嬉しいのだが、こちらが疎かになってしまって申し訳ないです。