恋柱の継子、人の恋路に世話を焼く   作:大同爽

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というわけで予告通り同日投稿です!
本日先に投稿した話の続きなのでそちらを読んでいない方はまずはそちらを読んでからこちらを読んでください!

そして、皆さんは前回と今回のお話に隠された秘密にそろそろ気付いているでしょうか?
ヒントは両タイトルをよ~く見てみてください。違和感はありませんか?
答え合わせはあとがきで!
そんなわけで最新話です!!





変79 恋柱の継子と別の木

 

「――私は、こうして鬼になりました」

 

「そんな……」

 

「鬼舞辻無惨、派手に胸糞悪いことを思いつきやがる」

 

 カエデの言葉に面々は苦悶の表情でカエデを見つめる。

 

「ということは、お前は輝利哉様を……」

 

「いえ、そこで無惨にとって想定外のことが起きたんです」

 

「想定外のこと?」

 

 実弥の問いにカエデは首を振る。

 

「私は、体質的に無惨よりも鬼の才能が、鬼としての格が上だったんです」

 

「それって、どういうことなの?格が上?」

 

「私は鬼になった瞬間無惨の支配を跳ね除け、理性を失うことなく飢餓感すらも抑え込むことに成功したんです」

 

『なッ!?』

 

 カエデの言葉に面々は揃って驚愕の表情で固まる。

 

「私の鬼としての才能はすさまじく、すぐに上弦の壱・黒死牟を討伐し、無惨をも追い詰めその手で屠ったんです」

 

「ッ!?倒したの!?鬼舞辻無惨を!?」

 

「ええ、正直最後はかなりあっけなかったです」

 

 しのぶの問いにカエデはあっさりと頷く。

 

「でも、鬼の長である鬼舞辻無惨を倒したのに、何故か私は鬼のままでした。でも、その時はそんなこと気にしていられませんでした。すぐに輝利哉君の治療に入りました。無惨の言う通りその傷はすぐに絶命に至るほどのものではありませんでした。でも、決して軽いものではない…しかも、無惨達との戦いに時間をかけすぎていました。その時点ですでに致死量の出血でした。すぐに拠点に連れていき珠世さんやカナエさんと必死に治療したんですが、打てる手を尽くしましたが、輝利哉君はその翌日には…息を引き取りました」

 

「そんな……」

 

 カエデの言葉に面々、特に天音は悲痛な表情を浮かべる。

 

「鬼になった私に皆さんは優しく言葉をかけてくれました。蜜璃さんの最後の言葉を伝えたときにも、伊黒様は私のことを気遣ってくださって……だからこそ、それが逆に私はつらかったんです。宿敵、鬼舞辻無惨を倒すことはできたとはいえ、達成感はありませんでした。私はお館様からの最後の任務を果たすことはできず、輝利哉君を守り切ることができませんでしたから。だから、私は失敗の責任を取って、自死しようとしました」

 

「ッ!?フーちゃんそれは――」

 

「わかってます、逃げだって……でも、その当時の私には生き恥をさらしているようで辛かったんです」

 

 蜜璃の言葉を遮ってカエデは力なく微笑む。

 

「日輪刀で自分の頸を斬り落とそうとした私でしたが私の肉体は強靭すぎて刃が立ちませんでした。なので、そのまま日の光で自身を焼こうと思いました。――ですが、そこで私にとっての想定外が起きたんです」

 

「想定外、とは?」

 

 カエデの言葉に小芭内が問う。

 カエデはそんな小芭内の言葉に

 

「こういうことです――フッ!」

『ッ!?』

 

 行動で答えた。

 自身の身を覆っていた傘、その支柱を正座していた足を延ばし蹴りつけた。傘は倒れカエデの身は日光のもとにさらされる。鬼の弱点も、末路も何度も目にしている面々は息をのみ、しかし――

 

「フー…ちゃん……?」

 

「お前…なんで……?」

 

 すぐにその異様さを見て言葉を失う。

 

「日の光を浴びた私は、しかし、いつまで経っても消滅することはありませんでした。私はその事実に愕然としました――私は、()()()()()()()()()んです」

 

『ッ!!』

 

「皮肉なものです。あの鬼舞辻無惨を倒した私が無惨の目指した完全な肉体を得てしまったんです」

 

 カエデは言いながら自嘲するように笑みを浮かべる。

 

「ならばと、私は珠世達と協力して鬼を人間に戻す薬の製造を始めました。そして数年後完成させることに成功しました。完成した薬を三人で一緒に服用しました。でも、人間に戻れたのは珠世さんと愈史郎君だけ――私の身体はその人間に戻す薬すら跳ね除けてしまったんです」

 

「そんな…なんで?」

 

「鬼の身体は自分の肉体を健康な状態を維持するようなんです。私の身体は鬼の状態が一番健康な状態であると認識しており、人間に戻る薬を毒として分解してしまったのでしょう」

 

 しのぶの問いにカエデは答える。

 

「そんな…それじゃあ、私達が作ってる鬼を人間に戻す薬も無惨には効かない可能性があるんじゃ……」

 

「いえ、手がないわけではありません」

 

 慄くしのぶにカエデは首を振る。

 

「私達が作った人間に戻す薬は、実は不完全なものなんです。必要な材料が一つ、どうしても見つけられなかったんです」

 

「それ、もしかして……『青い彼岸花?』」

 

「お、やはりこっちでもその情報を手に入れていたんだね。流石は〝私〟」

 

 楓子の言葉にカエデは頷き半ば自画自賛の様な事を言う。

 

「『青い彼岸花』がないまま作った薬は未完成だったので、恐らく私の身体には効かなかった。だから私は『青い彼岸花』を探す旅に出たんです。ですが、『青い彼岸花』はその特徴として一年の間の限られた短い期間の昼間にしか咲かない特殊な花です。とても長い長い旅になりました。そして、そんな旅の中、私は何度目かわからない絶望を覚えました」

 

「まだあんのかよッ!?」

 

 カエデの言葉に天元が唖然としながら言う。

 

「この時代から約110年ほど未来、とある研究機関が『青い彼岸花』を発見し研究し始めたんです。ですが、そこに勤める一人の植物学者がうっかり全部枯らしてしまって絶滅させてしまったんです」

 

「……はぁッ!?ぜ、絶滅させた!?」

 

「そ、それって……」

 

「ええ、日本国内で現存していたであろう『青い彼岸花』を研究のためにすべて採取していたようで、それを全部枯らしちゃったそうです。おかげで私は人間に戻る算段がすべてパアになりました。こんなことなら見つかったって話を聞いた時に穏便に分けてもらう方法を検討せずに問答無用で盗みに入ればよかった」

 

「盗みをするな、と言いたいがそんな結果に終わったと聞かされては否定できん……」

 

 どんよりと力なく笑うカエデに不憫そうに微妙な顔で小芭内が言う。

 

「そこで、私は最後の望みとして海外に出ました。日本の『青い彼岸花』は絶滅しましたが、もしかしたら海外にはまだ残っていたり、近縁種があるかもしれませんから――まあいまだ見つけられてないのですが……」

 

 疲れた様子で大きくため息をつくカエデに皆一様に何とも言えにあ表情を浮かべる。が、そんな中でふと小芭内が気付いた様子でハッとし

 

「おい待て。さらっと言われて流してしまったが、さっき今から110年後って言ったか?お前今いくつだ!?」

 

「女性に年齢を聞くなんて伊黒様デリカシーないっすね」

 

「でりかし…?――いや、意味わからん言葉で煙に巻くな!」

 

「はいはい、冗談ですよ。――そうですね、『青い彼岸花』が絶滅したってところから半ば世捨て人になって海外を放浪していて正確な数字はわかりませんが……たぶん鬼になってから150年くらいでしょうから、年齢は170歳くらいにはなったんですかね?」

 

「ひゃッ!?」

 

「170…!?」

 

「……お婆ちゃんじゃん」

 

「おい待て今『お婆ちゃん』つったの誰だゴラ!」

 

 ボソッと聞こえた言葉にカエデが怒声を上げる中、ひっそりと人知れず無一郎が視線を逸らすが、カエデには気付かれなかった。

 

「まあとにかく、以上が私の世界での出来事です」

 

『…………』

 

 咳払いをして言ったカエデの言葉に皆押し黙る。楓子は特に自分が辿ったかも知れない世界の自分の姿に何とも言えない息苦しさを感じていた。

 そんな中

 

「私からも一つお聞きしたいことがあるのですがよろしいですか?」

 

 天音が口を開く。

 その場の全員の視線が天音に向く。

 

「楓子…いえ、カエデさん、あなたはどうして――()()()()()()()()()()()()のですか?」

 

『ッ!?』

 

 天音の指摘に面々はハッとする。当の本人、楓子自身も言っていたが、カエデと楓子では声が違う。

 当の本人、楓子自身は、〝某蜘蛛のヒーローのアニメでも同じ人物を宮野真守と中村悠一が演じてたしそういうこともあるよね〟くらいにしか思っておらずそれ以上深く考えていなかったようで、唖然としている。

 

「……すごい、さすがお母さんですね」

 

 カエデ自身も気付かれているとは思っていなかったようで目を丸くしている。そのままフッと俯き少し考え

 

「……忘れない為、ですね」

 

「忘れない為?」

 

 カエデの言葉に天音は聞き返す。

 

「人は、他人のことを忘れる時、声から忘れるんだそうです。私は私の力不足で救えなかった輝利哉君を忘れてしまうのが怖くて、自分自身の声を聴くたびに思い出せるように、と……」

 

 押し黙る面々にカエデは自嘲気味に微笑む。

 

「輝利哉君は生前私のことをとても慕ってくれていました。力不足に悩む私の話をよく聞いてくれて、年上の私の方が励まされて……今にして思えば、私はそんな彼に惹かれていたのかもしれません。だからこそ、あの日私は全力で彼を守るために戦い、そして、守ることができなかった自分を許せないんです。きっと、彼も私のことを恨んでいることでしょう。私がこうして150年以上人間に戻れないのも、もしかしたら罰なんじゃないかって……」

 

 カエデの言葉に誰もが描ける言葉を失う。

 安易な言葉を投げかけるには彼女が過ごしてきた時間は長く重すぎた。きっと彼女は150年という長い時間の中でたくさんのものを失ってきたのだろう。誰もがそう思い口を噤む。と――

 

「そんなことありません!!!」

 

 一人の人物が声を上げる。

 全員がはっとして顔を上げれば、背後の襖が開いていた。そこには藤の花の模様のあしらわれた着物姿の黒髪の少年が立っており――

 

「輝利哉…君……?」

 

 その姿にカエデが唖然とする。そんなカエデの視線を受けながら輝利哉は真剣な顔で見つめ返す。

 

「ずっと、隣で聞いていました。盗み聞きするような真似をしてすみません。それでも、これはどうしてもあなたに伝えなければと思いました」

 

 そう断ってから輝利哉は口を開く。

 

「僕と、あなたの世界の僕は厳密には別人かも知れません。それでも、これだけは断言できます。僕があなたを恨むことなんて絶対にありえません!!」

 

「ッ!?」

 

 断言する輝利哉カエデは息を飲む。

 

「あなたが『鬼殺隊』の為に尽くしてくれていることを僕は知っています!あなたがあなたの世界の〝僕〟を守るために死力を尽くしてくれたこともわかります!だからきっと、あなたに感謝することはあっても、恨むことなんて決してありえません!!」

 

 輝利哉は力いっぱいに叫ぶ。そんな輝利哉の言葉にカエデは俯き肩を震わせ

 

――バギンッ!!

 

『ッ!?』

 

 響いた金属音に慌てて全員が視線を向ければ、カエデを拘束していた鎖が砕けてカエデの周りに散乱していた。そして――

 

「ッ!」

 

 カエデの短い呼吸とともにその姿が搔き消える。

 

『なぁッ!?』

 

 一瞬で消えたカエデに全員が驚く中

 

「わぷッ!?」

 

 輝利哉のくぐもった短い声が聞こえ視線を向ければ、消えたカエデが輝利哉に抱き着いていた。

 

「お前何をして――」

 

「ま、待ってください!」

 

 怒鳴ろうとする実弥の言葉を輝利哉が遮る。

 よく見ればカエデは抱き着いているだけでそれ以上何かをするわけではなく、しかし、肩を震わせ嗚咽を漏らし泣いていた。

 

「うッ…うぅ……うあぁぁぁ……!」

 

 そんなカエデに輝利哉もそっと手を回し背中を撫でる。

 その光景に集った面々は言葉を飲み込む。彼女の気持ちを察し叱責するのは間違いだと思い、見守ることにする。ただ一人楓子だけは、自分と同じ顔をしているカエデが輝利哉に抱き着いている状況は何とも言えない感情の浮かんだ顔で眺めている。

 

――いったいどのくらいそうしていただろうか?

 

「うぅぅぅッ…うぅぅぅッ……はぁ……はぁはぁ……」

 

 いまだ嗚咽を漏らしていたカエデだったが

 

「スゥ……ハァァァッ……ハァハァ……ハァハァ……」

 

 少しずつ様子が変わっていく。嗚咽はいつの間に荒い鼻息、呼吸音に変わる。

 

「ふ、楓子さ…えっと、カエデさん……?」

 

「ハァハァ…き、輝利哉君…輝利哉君…輝利哉君…」

 

 カエデの様子が変わったことに輝利哉は恐る恐る声をかけるが、カエデはそれに答えずさらに輝利哉を抱き寄せ

 

「ちょッ、カエデさん?そ、そこはちょっと…アッ!」

 

「輝利哉君輝利哉君輝利哉君輝利哉君輝利哉君輝利哉君輝利哉君輝利哉君輝利哉君輝利哉君輝利哉君輝利哉君輝利哉君輝利哉君輝利哉君――!!!」

 

「そ、そんなところまさぐらな…ンッ!?アァッ!?」

 

 艶のこもる声を輝利哉が漏らした瞬間

 

「お前何しとんじゃボケェェェェッ!!!」

 

「ぎゃんッ!?」

 

 カエデの脳天に楓子の踵落としが叩き込まれる。

 

「お前ホント何してんの!?八歳の少年に淫行してんじゃねぇよ!!このショタコン野郎がぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

「ま、待って違うの!!」

 

 鬼の形相で睨む楓子にカエデが慌てて叫ぶ。

 

「そ、そりゃ勢い余って抱き着いちゃったけどそれ以上何かする気なかったの!!でも輝利哉君の匂い嗅いでたらなんか懐かしくてそしたらなんかだんだん歯止めが利かなくなってっちゃったの!!でもしょうがないじゃん!!好きな人に150年ぶりに会ったら理性の一つや二つ飛ぶって!!〝私〟だってわかるでしょ同じ〝私〟なんだから!!」

 

「黙れ変態!!私はそんなことしたこと……ないから!!」

 

「え?今ちょっと間があったけど何か身に覚えが――」

 

「あるわけないでしょ変態が!!」

 

「なんだよもう、ちょっと手を出すくらいはいいじゃん!!唇と童貞は〝私〟に譲るからさ!!同じ〝私〟でしょ!!?

 

「もうその口閉じろよ変態露出狂!!」

 

「ちょっと待って変態はこの際しょうがないけど露出狂は酷くない!?この格好は蜜璃さんリスペクトでしてるんだけど!?」

 

「変化させて蜜璃さん並みにした虚乳放り出してるくせに!!意図的にやってりゃそれは痴女でしょ!!そんな生乳に八歳の男の顔を押し付けるな!!性癖が歪んだらどうする!?将来輝利哉君がお前や蜜璃さん並みの巨乳じゃないと勃たなくなったらどうする!?」

 

「い、いや…胸の大きさは割と人間の頃から変わってない、というか変えてないけど?」

 

「え……それ、天然もの……?同じ私なのに私より大きい……」

 

「うん……えっと、同じ私同士で胸囲の格差社会でごめん……」

 

「謝んなよ!!」

 

「いたッ!?――殴ったねェ!!親父にもぶたれたことないのにィッ!!」

 

「殴って何が悪い!!」

 

「一発は一発だからぁ!!」

 

「――うおッ!!?お前が全力でやるなよ!!鬼の身体能力で本気で殴られたら死ぬわッ!!」

 

 と、ギャイギャイと自分同士で喧嘩をする二人に呆れた様子でその光景を見る面々。

 

「あのバカ、少しは大人になったのかと思ったら全然変わらんな……」

 

「でも、私はあのフーちゃんも根っこのところは変わらないんだなぁってちょっとうれしかったわ!」

 

 頭を抱える小芭内と微笑ましそうな蜜璃。

 

「というか、鬼のあいつは置いておいても、まさかだがこっちの大好も輝利哉様のことを、なのか?」

 

「い、いやいや…さすがにそれは……ないですよね?」

 

「…………」

 

 実弥の言葉に否定はするものの否定しきれないしのぶと、その問いに答えられない義勇。

 

「ま、あいつの話は分かったな。あいつの世界の様にならないって言ってた理由も納得だ。俺たちのいるこの世界とは派手に乖離してるようだしな」

 

「だが、油断は禁物だ。いくらでも起こりうる事象ではある」

 

「まあ頭の片隅に置いておく程度でもいいんじゃないかなぁ」

 

 天元と行冥、無一郎は先ほどの光景は置いておいて話の内容に思考を移している。

 そして、天音と輝利哉達は

 

「大丈夫ですか、輝利哉?」

 

「は、はい、母上…だ、大丈夫です……」

 

「その割には声に覇気がありませんが、いったい何を触られたんですか?」

 

「駄目よかなた。そんなこと訊いてはしたない、ナニをだなんて」

 

「ね、姉様!?私そんなこと一言も!」

 

「そうよ、二人とも。それに、本当にそんなところを触られたのなら楓子さん達には責任を取ってもらわないといけなくなります……いや、それもいいですね。輝利哉、ここは事実はどうあれそういうことにして二人のどちらか、もしくは両方に責任を取ってもらうという方向で――」

 

「は、母上!?」

 

 と、こそこそと計画を進めていたのだった。

 そんな中、取っ組み合いのけんかまで始めていた楓子達だったが

 

「「ッ!!?」」

 

 突如何かを感じた様子で同時に顔を上げ上空を睨むように見る。

 

「急にどうした?」

 

 そんな二人の様子に全員が怪訝そうに見て、小芭内が代表するように訊く。

 小芭内の問いに答えず楓子とカエデは顔を見合わせ

 

「これ…〝私〟も感じてる?」

 

「うん、間違いない。この感じ、初めて〝(カエデ)〟を見た時と同じ……」

 

「しかも、この感じ一人じゃない……そうか、()()()()()()()()()()()()()()()()んだ」

 

「おいいったい何だって言うんだァ!?」

 

「お前らだけで納得してんじゃねぇよ!」

 

 二人で言い合う楓子達に痺れを切らして実弥と天元が訊く。

 

「さっき、私のした説明は覚えていますか?」

 

 そんな二人やほかの面々に顔を向けカエデが訊く。

 

「あの説明、どうやら不完全だったようです」

 

「どういうことなの?」

 

 カエデの言葉に蜜璃が訊く。

 

「どうやらこの世界に来てしまった〝私〟は私一人だけじゃなかった、それも『並行世界(パラレルワールド)』じゃなく、どうやら『多元世界(マルチバース)』から来てるようですね」

 

「まるち…?」

 

「ばあす…?」

 

「なんなんだよそりゃ?」

 

 カエデの言葉の意味が分からず首を傾げる面々にカエデは答える。

 

「『多元世界』とは『並行世界』と似てるけど、また少し違う解釈です。正直似た考え方で明確な違いを説明しずらいのですが、『並行世界』を〝枝分かれする樹木〟とするならば、『多元世界』は〝樹木が並んで立っている状態〟とでも言いましょうか?『並行世界』は元を辿れば同じ根に行きつきますが、『多元世界』は似ていても別の木ですから伸び方も育ち方も全く違うものです。つまりこの世界に似ていても、まったくの別の常識、物理法則であるかもしれない、宇宙規模でまるっきり違う世界のことです」

 

「その証拠に、向こうは〝私達〟にはない能力で先にこっちを見つけ、向かって来ているようです。しかもこの速度、人間の出せる速度じゃない。どう考えても我々の常識とは違う何かですね」

 

「おい、そんなヤバいのが来て本当に大丈夫なのか!?」

 

「下手をすれば敵である可能性も……」

 

「さあ、どうでしょうね?」

 

 天元と義勇の言葉にカエデは肩を竦め

 

「でも、どうにかしようにももう、遅いですね」

 

「な、何を言って――」

 

「もう来てしまいましたから」

 

『ッ!?』

 

 楓子が言った瞬間――

 

――ドンッ!!

 

 衝撃とともに四つの人影が降り立つ。

 

――一つは、山吹色を基調に縁や腰の帯などに紺色をあしらわれたチャイナ服の様な装い

 

――一つは、真っ黒な着物姿に腰に刀を携えた姿

 

――一つは、灰色のブレザーに深緑のスカートのどこかの学生服思われる装い

 

――一つは、緑の洋服にショートパンツ姿

 

 現れた四人はそれぞれ服装や雰囲気は違えど、共通する部分があった。それは、四人ともが黒髪を三つ編みにまとめ、何よりその顔は雰囲気の違いはあれど皆楓子とそっくりだった。

 

「なッ!?」

 

「一気に四人もッ!?」

 

 驚愕する面々に目もくれず、四人は楓子とカエデに視線を向け、笑いかける。そして――

 

「「「「それで?どっちがこの世界の〝私〟なの?」」」」

 

 口をそろえて問い掛けるのだった。

 

 

 




というわけで一気に四人も増えた楓子達。
彼女たちはいったいどの世界から来た大好楓子なのか!?

というわけで新章『フーコ・バース編』が始まりま――せん!!

はい、始まりません。
だって今日、4月1日(エイプリル・フール)ですから。
そんなわけでいかがだったでしょうか?
一応エイプリル・フール限定の嘘シナリオでしたがカエデ――鬼の楓子の設定に関してはかなり真面目に考えました。
この物語はここまで上手く楓子が立ち回ったおかげで大きな被害もなく進んでいます。が、同時に失敗する可能性も大いにありえたでしょう。カエデはそんな可能性の一つとして考えました。
カエデは楓子のありえたかもしれない未来の姿の一つなわけですね。

この物語の楓子はそうなることはない――とは言い切れませんが、これからも楓子の奮闘を応援いただければと思います。
というわけで、次回からはちゃんとした続きを描いていきますのでお楽しみに!



~大正コソコソ噂話~
カエデを含む5人の別世界線の楓子について以下にまとめておきます。

〇鬼になった大好楓子(CV.悠木碧――種崎敦美)

【挿絵表示】

 『鬼滅の刃』の世界に転生し、本編とは違う道を辿った楓子。本編と違い竈門兄妹が生存できなかった世界線のためかなり苦労をし、地獄を見ている。
 鬼になった際にいつか人間に戻るための決意表明として自身で髪を切った。鬼になったことで代謝がほぼ止まっているため髪が伸びないので、いつか人間に戻った時、再び髪を伸ばし元の三つ編みにするのが目標。
 本編の楓子より発育が良く蜜璃と同程度の成長を遂げている。
 本編と違い竈門兄妹がいないため錆兎と会えていない。
 本編よりも苦戦し被害を出し地獄を見ている分、それを慰めてくれた輝利哉への依存度は高めだった。その分輝利哉を救えなかった際の荒れ様は筆舌にしがたいほどだった。
 血鬼術は「合縁鬼縁」
 その能力は楓子自身がこれまでに遭遇し、戦ったことのあるすべての鬼の血鬼術を使えること。
 彼女の持つ刀は彼女自身のものに加え亡くなった柱の日輪刀(ものによっては戦闘の苛烈さで失われ回収できたその一部分)を材料に1本に仕上げられたもの。普段は彼女の使える血鬼術の1つである「自身の影に人や物を取り込み閉じ込める」能力により収納している。
 彼女がこの世界に来た時に空中で取り出せたのは、そもそもこの世界に来る前に異常を感じ刀を抜いていたから。



〇ドラゴンボール世界線の大好楓子(CV.釘宮理恵)

【挿絵表示】

 孫悟飯の幼馴染兼姉貴分として育った大好楓子。
 亀仙人へ弟子入りをし最終的にはクリリンと肩を並べられる程度には力を付けた。仲間内からは『()()()地球人で二番目に強い人物』と称される。
 未来トランクスに恋慕を抱いたが生きる時代の違いから失恋に終わった。
 現代のトランクスのことは未来トランクスと分けて考えているが、トランクスからは憧れの対象として見られている。将来的にどうなるかは二人次第。



〇BLEACH世界戦の大好楓子(CV.ファイルーズあい)

【挿絵表示】

 尸魂界護廷十三隊四番隊副隊長補佐をしている大好楓子。
 卍解は未修得だが始解は修得済み。
 斬魄刀の解号は「導き照らせ」始解の銘は「百光錦」――「白光錦」に名前が似ていることが本人的に不満。
 能力は対象の怪我を完全治癒すること。しかし、制約がいくつかあり、主には二つ。一つは怪我をしてから24時間経過していないこと、二つ目に一定以上の怪我を負っていること。
 一つ目はさておき二つ目を満たしていないが早急に治癒の必要な相手の場合は楓子自身が攻撃しダメージを負わせることで条件を満たしている。相手が隊長格でも容赦しないため『狂乱の治癒師』の二つ名で恐れられている。



〇ヒロアカ世界戦の大好楓子(CV.高橋李依)

【挿絵表示】

 ヒーローを目指す、緑谷出久のクラスメイトな大好楓子。
 楓子が入学したことで口田甲司が不在となっている。
 個性は『計算』。計算で算出できる結果であれば答えに至ることができる。
 サポートアイテムとして円形の盾を装備しているが守る目的以上に投げて攻撃する投擲武器としての側面の方が強い――某米国のヒーローの様な戦い方をする。能力によりどれほどの力でどの角度で投げればどのように跳ね返るかなどを瞬時に計算によって算出し戦う戦闘スタイル。



〇ワンピース世界線の大好楓子(CV.佐倉綾音)

【挿絵表示】

 麦わら海賊団所属、役職:看護師な大好楓子(フーコ)
 戦場でガープによって拾われた孤児でありルフィの姉貴分。ルフィ・エース・サボの三兄弟とともにガープによってしごかれた。三人以上に幼少期に覇気の片鱗を見せガープに目をかけられ三人以上に扱かれた――実際は原作知識による行動を見聞色の覇気と勘違いされただけ。(鬼のしごきと後の空島編でマントラを見たことでエニエスロビー編で覇気が開花する)
 サボ生存に関わるなど原作に多大な影響を与えて回った結果、頂上決戦に参加しエース生存に至っている。その結果サボとエースとの間で絶賛三角関係中。
 ルフィとは完全に姉弟のようで恋愛感情はないが、彼女のちょっかいのせいで絶賛ウタとハンコックがバチバチにやりあっている。



以上、あくまで本編とは関わらない上にこれ以上展開する予定のない作者の妄想でした。


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