目覚めたら某有名ゲームの悪役だったけど、正直言って困るんだが   作:プルスサウンド

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つまりUCの「アンブレラ終焉」ステージの表と裏に小説版を加えてミキサーでガーッした形となっております。はい。
小説版とゲーム版、大筋は変わりませんが、細部では思った以上に違いが見られる様子なので、ギガを少しばかり燃やしてきました。




シベリアで生物兵器を数える簡単なお仕事 ③

 

 

 

 たぶんコレがゲーム通りになるなら、自分たちが大佐と戦うルートで、レオン氏とジルさんが新型B.O.W.と戦うルートなんやろなぁ。

 どういう内容か、ほとんど思い出せないのが悔やまれる。なんか大佐がキモいモンスターになったっぽい事しか分からないのですがね。

 

「仕方ない。俺たちだけで進むぞ」

「そうですね」

 

 何はともあれ彼の言うとおり、やる事は決まっているのだ。

 ならばやるしかあるまいて。

 

 この六角形の部屋には扉が二つ。扉の横のパネルを破壊してしまえば開くようだが、セキュリティ的に脆すぎて怖くなる。

 しかも試しに扉を蹴れば割れてしまった。ゴリラではないクリス氏が蹴っても割れた。一応は強化ガラスっぽいんだが弱い事に変わりはない。

 これ扉の意味ある?ないだろ。

 

 片方の扉の向こうは同じ六角形デザインの部屋で、音に反応した警備員のゾンビや白衣のゾンビが起き上がる姿が見えた。

 もう片方の部屋の壁には銃が掛けられている。

 

 なるほどな。ハニカム構造の部屋を並べて侵入者が迷いやすくしているのかもしれない。それか、単純な生物兵器なら同じ部屋をぐるぐる回って、このエリアから出られないように閉じ込められるだろうし。

 とにもかくにもこの先が目的だ。さっさと抜けるに限る。

 

「……」

「……」

 

 鹵獲(ろかく)した弾薬や手榴弾を、それぞれのポーチへ黙々と詰め込む作業。

 まさかこんなに潤沢に補給できるとは嬉しい誤算である。

 

 右、左、と部屋を選び、出てくる敵を打ち倒す事に問題は無い。しかし手付かずで残る手榴弾や銃、弾丸などは、それを使う前に使用者たる人間が死に絶えた事を示していた。

 一部の生物兵器や感染者が人を襲う形でじわじわと広まるならば、それに抵抗するために武器弾薬は消費される傾向にあるが、無味無臭の形で広まるならば、人は無抵抗のまま感染する他ない。たぶんそうやって、ここのバイオハザードは始まったのだろう。

 

 六角形が不意に途切れ、隔壁にも似た扉が現れる。

 コンピュータールームは近い。

 

 

 

 

 

 扉の向こうへ踏み出した足元で火花が散る。

 銃声。床に刻まれた穴。

 見上げれば、階段の上から銃を片手に優雅な足取りで降りてくるのは大柄な男。企業の幹部という立場にありながら、未だに自分は軍人であると言わんばかりの格好をしている人物。

 セルゲイ・ウラジミール。その出自と言動から、大佐とあだ名される男だ。

 

「アルバート・ウェスカー同志…いや、今はアルフレッドと名乗っているのだったか、まあ良い。ようこそ我が城へ。そこの君も、な」

 

 彼が大げさに広げた両腕の後ろには、白いコートを着た双子のようにそっくりな護衛二人が控えている。大柄な彼よりもなお厳ついのだから、どう考えても普通の人間ではないだろう。

 

「アンタがセルゲイか。投降してアンブレラについてキリキリ吐くなら今のうちだぜ」

「あー、アンブレラ社が今の段階から持ち直すのはかなり難しいでしょう。()()ロシア政府に貴方の身柄の引き渡しを要求されていますが、こちらへの協力を条件に亡命するのはいかがでしょうか」

 

 まあお断りされるだろうけど、一応は言っておかねばならない事だ。

 

「アンブレラは終わらんよ。全てを痛みと共に受け入れ、新生するのだ。その至福を君たちは理解できないだろうがね」

 

 ですよねー

 

 その後も彼はうっとり顔で、何やら語りながら銃撃してきた。

 スコップを盾に弾いたが、無造作に撃ってるようで全て我々の急所を狙ってくるあたり、彼もなかなかのエイム(ぢから)の持ち主だ。

 なお御高説の内容を要約すると「死や恐怖、痛みは凄いんだよ!恐怖は全て支配するし、痛みは神様に繋がる聖なる要素なんだ!」とのこと。

 

 うーん、ソビエトは無神論でかなりしっかり宗教弾圧してたような気がするのだが、彼の様子を見るに、ここでは融和政策や政府による統制で対処していたのか?

 それともソ連やアンブレラとまた別に、彼が独特な宗教観をお持ちなだけ?

 

「宗教の話はちょっと困ります」

「……くだらない話は終わったか?」

「はぁ、くだらないのは君たちだ。まあ良いさ。私の古い友人に、君らを歓待してもらうとしよう。イワン、頼んだよ」

 

 やれやれと肩をすくめたセルゲイ氏がコンピュータールームに戻って行く。そして立ち塞がるのは、ご紹介されたイワンさんが二人。

 これどっちもイワンさんなのか。名前じゃなくて種族的な?

 

「俺が右をやる」

「あ、はい。じゃあ私は左を」

 

 先に飛び掛かってきたのは向こうだった。

 

 不自然に暗い肌の色だけではない。巨体でありながら異常に素早い動きとその気配は、彼らがタイラントの系譜である事を如実に表している。

 ならば狙うは急所のみ。

 

「はぁ!?クソコートが!!!」

 

 だから心臓にスコップ刺そうと、飛び掛かってきたところを下から突き上げてやったら、コートに阻まれて滑ってしまう。防刃か?やめろ。

 咄嗟にハンドガンで撃ち込んでみるが、相手の動きは止められない。そのままぶん殴られ、壁に強かに打ち付けられた。止めとばかりに拳を握り締め、走ってくるのをどうにか避けて、距離を取る。

 

「防刃と防弾機能がある!」

「防爆もついてやがる!」

 

 横目で見ればクリス氏の方も、銃撃が効かずに手こずっている様子。手榴弾やショットガンを至近距離で浴びせても怯みさえしないのだから恐ろしい。

 

 コートが無駄に高性能なのが悪い。これは剥き出しの頭を狙うより他ないだろう。しかしタイラントというものはコートなんぞ無くとも、元から何処もかしこも頑丈なのが売りである。

 頭すらもその例外ではなく、強打を受けようが銃撃を受けようがヤツらは怯まず動く。たまにダメージの蓄積でふらついたり、動きが止まる事はあるが、良く効いているという実感がわかない程度だ。

 

 しかもイワンと呼ばれた彼らは、いわゆる「知能改良型」というやつなのだろう。壁際のパネルを叩き割り、収納されていたランチャーを取り出すと、それを担いで反撃してきた。

 

 これはもう弱点を狙うしか、具体的には目ん玉から脳味噌に弾をぶち込むしかない。

 

「こっちも防弾かよ!」

 

 クリス氏も同じ結論を出した様子。特殊な形のサングラスに容赦なく発砲するが、なんとサングラスまで防弾な事が発覚した。

 こちらも数発撃ち込むが、割れそうな気配はない。

 

「かったいな…」

 

 かなり質が良い。さっきのガラス扉とは月とスッポンの強度である。それだけでなく、弱点を庇うという生き物にとって当たり前の動きも厄介だ。腕で庇われるだけで弾かれてしまう。

 これは組み付いてサングラスと腕を剥がし、攻撃するしかあるまい。

 

 が、タイラントと自分では、相対的にパワー型とスピード型になってしまう。どちらも常人よりパワーはあるが体重の問題で、軽い自分の方がスピードに優れ、重いタイラントの方が打撃力が高くなるわけだ。

 そうならざるを得ないとはいえ、スピードタイプがスピードを捨てて相手に組み付いてしまえば、どうなるかはお察し。

 

「ギブギブギブぎぇっ!!!」

 

 特殊サングラスが肉に食い込んでいたため、引き剥がすのに少し手こずっていたら、ぶん殴られて動きが鈍ったところへ関節技を掛けられた。

 しかもアルゼンチン式背骨折り(アルゼンチン・バックブリーカー)だ。

 

 そりゃ知能があるなら関節技くらいできますわな!!!クソ!!!

 

 背骨から嫌な音がするし、ガッチリ掴まれた喉が締まって大変苦しい。というか常人なら死んでいる。自分だってなんとか死なないだけで苦痛はある。

 幸いにも、こういう時は脳が勝手に痛覚をフィルタリングしてくれるのか、そのうち現実感と共に痛みも軽減してくれるのだが、窒息による酸素不足は変わらない。

 

 意識が落ちてしまえば本格的に命に関わるため、なんとか手を伸ばして指を目に突っ込んでやる。

 

「っ!?」

 

 あかん指が脳に届かん。

 しかし背骨が完全に折れる前に解放されたのでセーフ。ぶん投げられたけども意識はあるのでもーまんたい。

 

「ぉえっ!……はぁ"ー…はぁ"ー……この野郎」

 

 いや、背骨やっぱり折れてますねコレ。治るまで下半身が死んでて這いずりゾンビみたいな動きしかできん。

 しかしサングラスは剥がしてやった。当初の予定通りに鉛玉をぶち込んでやれば殺せるだろう。

 

 もはやこちらがろくな抵抗もできないと思ったのか、ゆっくりと近付くタイラントの傷付いた目へ、咄嗟に照準を合わせて連射。

 我ながら異常な知覚と集中力で引き伸ばされた光景は、連なる弾丸が吸い込まれるように眼窩へ飛び込んで行く様だった。

 

「……よし」

 

 倒れたところに這い寄り、念のために眼窩へ手榴弾を叩き込んで爆発させる。脳漿が大げさに飛び散ってようやく安心できた。

 我が身を持って証明できてしまうが、この手のウイルスに少しでも適合すると、まず異常な回復力や打たれ強さが得られてしまう。だからこそ徹底的にやる必要があるのだ。

 

 

 

 さて、クリス氏のご様子は?と彼の方を向けば、なんともう片方のタイラントが崩れ落ちるところだった。

 流石である。

 

「…なんで寝てるんだ」

「まだ背骨が治らないので。もう少しで治りますが」

「そうか」

 

 立てるようになってから確認すると、どうやら防弾サングラスの一ヶ所を狙い撃ちし続けて割ってから目を撃つという、狂気染みたエイム(ぢから)任せの攻略法で倒したらしい。

 こわい。

 

 

 

 

 




 
・おじさん
宗教の話はちょっと困ります
(ドアチェーンを意地でも外さない姿勢)

今まで描写が無いせいで忘れられていただろうが、エイム(ぢから)はかなりある。



・クリス氏
おじさんが泥仕合している横できちんとガンシューティングをやっていた人。



・セルゲイ大佐
情報量の関係で小説版の成分が多め。
生物兵器に超アクセスして痛みや死の無限回収をしているオタク。



・イワンくん
あの色付きサングラス、ヘッドマウントディスプレイが内蔵されてるらしいね。凄い。
ゲームでは非破壊オブジェクトだったので、強化も兼ねてコートとサングラスはより高性能にしました(独自設定)

タイラント系が心臓叩いたらダメージ入るの、あれ心臓震盪を起こして一時的に行動不能にしてる感じかしらね。



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