「ハァ、ハァ、ちくしょう、なんで俺がこんな目に」
夜更けの山中を男は走っていた。否、逃げていた、それも常人が出せるはずのない速度で、怯え、必死に、生き延びぬくためだけに己のすべてを使いそれでもなお振り切れぬ背後の死から逃げていた。
男は鬼だった。かつて人であったころは恐喝や盗みで日銭を稼ぐチンピラだったが鬼になってからはすべてが変わった、今までは勝てなかったやつも偉そうにしてやがった警察もすべて鬼となった己の膂力でねじ伏せ、喰らった。無論日中外に出られないことは不便ではあったが根っから悪党気質な男は鬼の力で自分より弱い人間を食らう生活に満足していた。故に鬼は自分より強いやつがいるなどと考えていなかった、今までは。
その夜、いつものように食事をしようとした鬼の前に男が現れた。黒い軍服に180mに届こうかという身長、一目で並々ならぬ修練を積んだとわかる身体、そして何よりその眼光がまるで獲物を前にした肉食獣のようなあるいは復讐に燃える修羅のような目が鬼の身をすくませる、決して勝てないと悟った鬼の行動は逃げの一手下手に抵抗しようものなら一瞬で頭と体が離れ離れになることは想像に難くない。相手の油断か鬼の運のよさゆえかひとまず距離を取ることに成功した。
そのまま鬼は森の中に逃げ込み、ひたすらがむしゃらに逃げていた。
どうする、どうすれば奴から逃げ切れる。それだけが鬼の脳内を占めグルグルと回る答えはないと自覚していながらも鬼は考えることをやめない、やめれば己の体は死の恐怖にとらわれると直感で理解していたから。しかしその思考は半ばで強烈な痛みとともに打ち切られる。
「ガァッ」
左足に感じる燃えるような痛み、目をやればそこには淡い橙色をした短刀ほどの長さの両刃直刀が刺さっている。足をやられた鬼は全身から湧き出す冷や汗と死の恐怖をかき消すように叫ぶ。
「ちくしょう!!かかってきやがれ!!ぶっ殺してや
「舞の呼吸、弐の型、天照」
ガアァァァッ」
その剣舞によって鬼の両腕は宙を舞い、もはや鬼には首に迫る刃を受け入れるしかなかった。
「舞の呼吸、壱の型、雷蛇」
そしてひとつの異形の命を終わらせた男は、刺さった刀を回収しながら
「まったく、いくら外道に堕ちようが人の道まで踏み外すことはねぇよ」
暗い森の中、独り言ちると気持ち悪い笑みを浮かべて
「デュフフ、とっとと帰って蜜璃たそとしのぶたんの百合百合な絡みを見て癒されるとするでござるかなぁ」
そうつぶやいた。
ヲタ芸の技名ってかっこいいよねってとこからその時の流行に乗っかった作品、読みずらいしわかりずらいだろうけどそのへんは許してください。
ぼろくそ言われると作者の心がひっそり死にます