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おっす、オラ八幡
俺は総武高校を卒業して、今は戸塚と同じ大学に進学した。
雪ノ下や由比ヶ浜とは疎遠となったが、今でも電話でやり取りしたりたまに集まって遊んだりしている。
卒業式の日には、材木座やら川…なんとかさんや一色にも話しかけられた。
意外だったのは相模に謝られたことだったが。
というのも、3年になってから文化祭で再び実行委員になったのだがなんと同じヘマをまたやらかしたのだ。
無論、既に奉公部もなく雪ノ下や俺のサポートがないまま進んでいった。
だが、どうやら一色が裏で根回ししてくれたお陰で大事にはならずに済んだ。
相模は案の定、会計を持ち去り逃げたのだが去年のように俺が来るわけもなく泣く泣く教師に連行されていった。
そこで、俺があの時相模を守ろうとしたことに気づいたらしい。
正直、過去のことだし俺は気にしないが一応謝罪は受け取っておいた。
と、回想はここまでにして。
「八幡?聞いてる。」
「ああ、聞いてるよ。結婚式はいつしようか?」
「もう!真面目に聞いてよ!」
と、頬を膨らませながら怒る。
そんなことしたって可愛いだけだぞ。
と、なんやかんや戸塚と話しながら大学の帰り道を歩いている。
「あれ?ここの道工事しているね。」
「朝なんもなかったのにな。」
どうやら工事中らしく道が閉鎖していた。
仕方ない、別の道を通るとするか。
「こっちの道、通った事なかったけどすごい静かだね。」
「そうだな、人も俺たちいがい全くいないしな。」
まるで、さっきいた所と世界が変わったような感じがするほど静かだった。
すると、なにやらボロボロの駅が見つかった。
「すごい、古そうな駅だね。」
「…あ、ここって。」
「どうしたの八幡?何か知ってるの?」
「…昔一度だけ、家族で遊びに行ったときに停まったことがある駅だ。もう5年前ぐらいに使われなくなったが。」
「そうなんだ…。」
一度だけっていうと自分でも悲しくなるが…
まあ、別になにか思いとどまる訳でもなく歩こうとすると。
「ねえ、八幡。何か聞こえない。」
「え、何がだ?」
すると戸塚が駅にあるコインロッカーの方は走っていった。
俺も戸塚を追いかけてロッカーのすぐそばに行くと、なにやら赤ちゃんの泣き声のようなものが聞こえる。
「おいおい…、まさか。」
「…」
鍵は掛かっておらず戸塚はコインロッカーを開けた。
すると、その中にいたのは生後半年程の女の子の赤ちゃんがいた。
「嘘だろっ…」
「…酷い…」
コインロッカーベイビー…育てきれなくなった赤ちゃんをコインロッカーに入れて放棄する昔あった事件だ。
今でも本気でそんな事する奴がいるなんて。
「八幡…家に連れてこう。」
「!ああ」
俺は赤ちゃんを抱き抱え急いで家に向かった。
見たところ、放棄されてから1日も経っていないぐらいだった。
見つけられたのが早くてよかった。
現在住んでいるマンションまで辿り着き、部屋の中に赤ちゃんを入れる。
俺と戸塚はマンションで共同で暮らしており、あまり人にも見られずに済んだ。
「連れてきたはいいけど、どうしよう八幡。」
「…取り敢えず、ご飯がないとダメだろ。買ってくるから戸塚は赤ちゃんを見ていてくれ。」
「わかった。」
ミルクの粉を買ってかえり家につくと赤ちゃんは再び泣いていた。
戸塚は赤ちゃんをあやそうと抱っこをしていた。
「あ、八幡。おかえり。」
「お、おう.ただいま。」
その姿は、まるで夫の帰りを迎える母親の様だった。
って
そんな事考えている場合ではない。
俺は台所まで行くと、説明を読みながらミルクを作った。
ミルクが出来上がり赤ちゃんに飲ませるとそのまま眠っていった。
「…赤ちゃん、どうすればいいのかな…。」
「…普通は交番に届かないといけないだろ。」
俺と戸塚に静寂が続く。
「八幡。」
「どうした、戸塚。」
「僕ね、八幡の事好きなんだ。その…友達としてだけじゃなくてずっと側に入れたらなぁって。」
「…はひ?」
間抜けな声を出してしまった。
戸塚が俺の事を…likeではなくLOVEと?
「これを言ったら八幡の迷惑になるし、きっと前みたいな関係じゃなくなると思う。でも、このまま何も言わずに終わらしたくない。」
そう言った戸塚は今まで見たことないほど強く見えた。
「僕は、僕と八幡でこの子を育てて欲しいと思ってる。難しいことはわかってる。それでも。」
「戸塚…」
「八幡、僕とこの子のパパになってくれませんか?」
プロポーズだった。
しかし、この意味はとてつもなく重く大きいものだろう。
しかし、それがどうというのだ。
俺の答えは既に決まってる。
「ああ!勿論だ!」
そういうと、俺は戸塚に抱きついた。
「八幡ッ!」
戸塚も俺に抱きつく。
「僕、不安だったんだ。これを言ったら前みたいな関係に戻れないしきっと八幡に負担をかけちゃうから…!」
当たり前だろう。
戸塚が言ったのは、同性愛を言うことだけではなく一緒に子供を育てて欲しいと言うものなのだから。
だが舐めないで欲しい
「そんな訳ないだろうっ!そんなことで俺が戸塚から離れる訳ないだろ!俺も戸塚が大好きだっ!」
そう言いながら、しばらく戸塚と抱きしめあった。
男同士のカップルに赤ちゃん一人と歪な関係。
側から見ても普通ではないだろう。
だが、それがどうした。
そんなもので俺が戸塚から離れる訳ない。
そして、今から俺と戸塚と赤ちゃんの新しい生活が始まるっ…
と、そんな簡単な訳ない。
だが、そうなると赤ちゃんはどうすればいいのか。
当然、この子を俺らの子供にしたいですだけで済む話ではない。
そうなれば親権やらなんやらの問題も出てくる。
…一か八かやってみるか。
俺は携帯を取り出し、ある人に電話をかけた。
そう…
「やっほー♪八幡君から電話なんて珍しいねえ」
魔王こと、雪ノ下陽乃さんだ。
「はい、あなたに頼み事がしたくて。」
俺が真面目そうに言うとあちらもただ事ではないとわかり声色も変わった。
「へー、君から頼み事なんて…」
俺は雪ノ下さんに事の経緯を話した。
「なるほどね、確かにそれはかなり難しいことだろうね。」
「…俺も重々承知です。」
「…わかった、いいよ。私がどうにかしてあげる。」
「ッ本当ですか!」
「うん、君には雪乃ちゃんのことで色々貸しがあるし。それに…」
「?」
「君には幸せになってもらいたいからね。」
そういうと電話が切れた。
…どこまでが本心かわからないが。
少し陽乃さんの事を見直したかもしれない。
よし、赤ちゃんの問題は済んだ。
だが、後はもう一つ重大なことが残っている。
「戸塚、親に挨拶しないとだよな。」
「うん…そうだね。みんなわかってくれるかな。」
「…わからん。」
親への報告
これが男女の仲だったらきっと祝福されているだろう。
だが、俺らの場合同性であり更に赤ちゃんもいると来た。
「八幡…僕、親に反対されても親と縁を切ってでも八幡と過ごしたい思ってるから。」
「…ハハッ、戸塚は強いな…。」
後日、俺は親に全てを報告した。
何言われるかと少しビクビクしていたが。
親父とお袋は驚愕したが、俺たちが本気であるとわかると了承した。
小町は流石に予想できなかったのかあんぐりとしていたが。
赤ちゃんの事も見せると、こっちが引くほど可愛がっていた。
戸塚の親は意外にもすんなりと受け入れてくれて、赤ちゃんがいるとわかると「あら〜、それじゃあ私ももうおばさんね〜」とほんわかした様子だった。
…うん、なんか完全に毒気が抜かれたわ。
とはいえ、やることは全て終わり俺たちは今では一軒家を建て戸塚と赤ちゃんと一緒に暮らしている。
そうそう、赤ちゃんの名前だが俺たちと俺の戸塚の家族でみんなで決め名前は「彩子」となった。
色々あったが、俺は戸塚一緒になれて幸せだ。
もしかしたら、これが俺の求めた本物なのかもな…。