アインクラッドany%攻略RTA 【暗黒剣】チャート    作:塩なめこ

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基本思いつきでちまちまと書いてきた拙作ですが、なんとランキングに載っていました。古戦場中にびっくりだぞ。

皆様の応援のおかげで今話もはやく書き上がりました。ありがとうございます。

それでは最終回をどうぞ。



エピローグ

 どうしてこんなことになってしまったのだろう。

 

 

 ただ世界が創りたかっただけなんだ。

 もはやVRMMOというゲームにおいて路肩に生える草や木は背景を作り上げるオブジェクトではない。

 それは五感に働きかける風景の欠かせない一つの要素で、俺たちの作ったモノは確かに視覚を魅了するものであったはずだ。

 触覚や嗅覚で感じとれるそれと一部のズレもない、形と色をした世界の小さな小さな小さな小さな作品たち。このアインクラッドの根幹を成すそれを確かに作り上げたはずだ。

 

 

「が───」

 

 

 なのになんでこんなことになってしまった。

 ここにいる誰も彼もが戦いを止めない。殺し合いをやめない。やめられない。

 被害にあっているのは大人なのだろうか。子供なのだろうか。

 少なくとも今殺したこの子は少年であったはずだ。

 

 まだ未成年の子供たちが、犯罪を犯さなければ生きていけない世界ではなかったはずだ。それを強要する世界ではなかったはずだ。

 大の大人が未来ある子供を殺さなければいけない世界ではなかったはずだ……! 

 

 

「茅場……晶彦ッ!!」

 

 

 この世界を正さなくてはいけない。

 この世界から救わなくてはいけない。

 でなければ今死んだこの子が報われない。

 でなければこの世界を創った責任を果たせない。

 

 今この瞬間から秩序のある力であれ。

 人々を救うためだけの力であれ。

 万人に理解される粛清の力であれ。

 

 俺が法にならなくてはならない。合理的でぶれることのないシステムでなければならない。

 

 大丈夫。そのための行動は()()()()()()()()

 

 心を殺して実行するだけでいい。

 茅場晶彦をその手で殺す時まで。

 

 

 

 

 

 

 そう誓っていたはずなのに。

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 ここはアインクラッドを見下ろせるどこかの空。俺はそこで、呆然と崩れ去る鉄の城を見ていた。

 ヒースクリフがピクセルとなって消えた瞬間、光に包まれた俺はここへと降り立った。

 目の前には俺たちが作った空が彼方まで広がっていて、そこにたった一人俺だけが置き去りにされていた。

 

 結局、俺の剣は奴に届かなかった。

 

 彼らにこれ以上殺人という行為をさせない為にここまでやってきたのに、最後の最後でキリトを頼らざるを得なかった。

 

 そして、アルゴにも。

 

 

「……っ」

 

 

 彼女はもうこの世には居ないのだろう。俺を庇って彼女のアバターはデータの中に消えた。それはつまり、現実世界でもその命を終えたということに他ならない。

 

 誰かに救われるなんて。こんな俺が。こんな俺が……っ! 

 

 

「すまないアルゴ……、俺は……何もできなかった……! 騙してしまった……っ! 最後の最後に死んでもいいと思ってしまった……ッ!!」

 

 

 それは怒りと憎しみと悲しみを織り交ぜたような涙だった。ポロポロと零れ落ちていくのが止められない。自己嫌悪が身を包みこんでいく。

 

 償いとは生きることで初めて果たされると、彼女に教えてもらったというのに、結局俺は楽な道を選んでしまった。あそこで果てたいという思いが、彼女を。

 

 

「……お前はなァ周りを見なさすぎなんだヨ」

 

「……あぁ、そうだな」

 

 

 ついに幻聴まで聞こえるようになったらしい。アルゴが俺を罵る声が聞こえてくる。

 なんと身勝手なことだろう。お前は彼女の死を受け入れられないのか。そうやってまた逃げるのか。

 

 

「しかも頑なダ。頑固ダ。一度決めてかかったことは変えようとしナイ」

 

 

 そう怒りが湧いてくるもその声は止まらない。それほど責められたいか。それほど許されたいか。それは彼女の声をしたお前の妄執だとなぜ分からないのか。

 妄執。そうだ。お前はアルゴに執着している。

 

 

「俺にとって、かけがえのないものだったんだな、お前は……」

 

「───〜〜〜〜っ!!!?? ああっもう! いい加減気づきやがれこのスカタンッ!!」

 

 

 瞬間、俺の体は宙を舞った。あぁ、体に衝撃がくるのはいつぶりだろう。

 

 

 彼女は生きていてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまなかった……! ありがとう……!」

 

「あーヨシヨシ、大丈夫ダー。オネーサンは生きてるヨ〜」

 

 

 ガイは私の姿を見るなり抱きつき、私の存在を確かめながらずっとこうして謝罪と感謝を繰り返している。しかも号泣だ。男泣きだ。

 本来ならとても恥ずかしいシチュエーションなのだが、彼のこの見たことも無い荒れ具合と観衆の目がないからか逆に冷静でいられた。

 

 なんで、こうしてあやして落ち着かせようとしているのだが……、コイツ、がっちりと掴んだまま離しやしない。それほどの感情を私に対して向けていたんだろうか。

 そう考えると苛立ってくるな。ということはつまり、ずっとそれをひた隠しにして勝手気ままに振り回していたということだろう? 卑怯じゃないか。

 

 しかしまぁ、結構可愛いところも見れてるし、許してやってもいいのかも───。

 

 

「綺麗なものだな」

 

 

「どひゃああああああああ!!????」

「ごふ……っ」

 

 

 え? 誰? 誰? 誰に見られた!? 今声がした気がしたんだけど!? 思わずガイの奴を吹き飛ばしちまった! というかここに私たち以外の誰かが───。

 

 

「君たちは本当に、見ていて飽きないな」

「……茅場晶彦」

「……ッ!」

 

 

 そこには白衣姿の、リアルで見た事のある写真姿まんまの茅場晶彦が居た。

 一瞬、緊張が全身を走る。

 しかしそれはすぐに和らげられた。頭に乗せられたガイの大きな手によって。敵意はないと彼は感じているのだろうか。

 

 

「ゲームクリアおめでとう、ガイくん、アルゴくん。先程までキリトくんとアスナくんにもあいさつをしていてね。来るのが遅くなってしまった」

「二人も生きているんダナ」

「もちろん。だがそれぞれ分けた方がいいと思ってね。迷惑だったかな」

 

 

 冗談交じりに奴はそう言う。しかし笑ってはいない。なんというか、全てが終わって抜け殻となったかのような、そんな哀愁が漂う様をしていた。

 

 

「これから俺たちはどうなるんだ」

「君たちは私を倒した。生き残った7123人のプレイヤーと共に現実世界に帰還するだろう」

「死んだヤツらはどうなるんダ」

「一度失われたものは二度と帰ってこない。それはどこの世界においても存在する法則だ」

 

 茅場晶彦はそう言ってずっとアインクラッドを見ていた。既にあの鉄の城は半分以上崩壊し、ポリゴンとなって消えている。

 

 

「そのうち一体何人が俺によって殺されたか、分かるか」

「……残念ながら、私は君の行動の全てを見ていた訳では無い。だが少なくとも300人以上は君の手によってこの世を去っている」

「そうか」

 

 

 ガイはそれだけ聞くと茅場晶彦と同じように崩れゆく城の方を向いた。彼の手は既に頭上にはなく、ただ静かに握られているのみだ。

 彼もまたあの城の制作に関わっていたのだ。思うところがあるのは当然なのだろう。私は彼のその手を開き握りしめる。

 

 

「消えるんだな、あの城は」

 

 

 メニューを開いて映し出された最終フェイズ実行のインジケーター。それを見た彼は茅場晶彦に問うた。

 

 

「あぁ、そうだ。……一つ聞かせて欲しい。君はあの世界をどう思った。どう思っている?」

 

「……悲しいな、消えてなくなるのは。あそこにはお前の夢と、俺たちの夢が詰まっていたから」

 

「憎いとは思わないのか? 秩序のないあの世界を」

 

「俺は夢で溢れた美しい世界をあれに思い描き、創った。憎いのは身勝手にも狂った世界にしてしまったお前だけだ」

 

「……」

 

「あれはもう、お前だけの夢じゃなかったんだよ」

 

 

 絞り出すように、ガイはそう言って口を閉じた。

 

 私はその思いを推測することしかできない。

 茅場晶彦とガイ。同じ会社で働き、同じように自分の夢をこの世界に重ね、しかし思い描いたものは決定的に違ってしまった二人。違いがあったとすれば才能だったのだろうか。

 

 ガイは取り戻そうと必死だったのかもしれない。血なまぐさい殺戮で溢れる世界を終わらせて、自分の夢を。

 命のやり取りがなく、純粋に老若男女が楽しめるファンタジーの世界をただ守りたかったのかもしれない。

 

 

「……そろそろ私も行くよ。さらばだ、ガイくん、アルゴくん」

 

 

 数秒の沈黙を経て、茅場晶彦はそう言って消え去った。

 同時に鉄の城の頂きにある赤い城も消えてなくなった。

 ただ夕暮れに染まる空だけが世界には残った。

 

 

「あの雲も、俺が創ったものなんだ」

 

「……?」

 

「あれだけが今も残るたった一つの作品だ」

 

 

 君に見せられてよかったと、ガイは言う。そして次第に恐ろしくなった。彼がこの後現実に戻り何をするのかを想像してしまったからだ。

 

 

「ガイ───「大丈夫」───!」

 

「俺は大丈夫だよ、アルゴ。君との約束を果たす。絶対に」

 

「……そうか」

 

「だからあれは君に見せられる最後の作品だ。目に焼き付けてくれると……そうだな……あぁ、嬉しい」

 

「オイオイ、なんだヨその言い方は」

 

「嬉しい、なんて言葉を使うのは久しぶりだったんだ」

 

 

 そう言って静かに、だがしかし確実に彼は笑った。その顔は今までにないほど綺麗で、そして───かっこよかった。

 

 

「これから先、嫌でも使わしてやるヨ。オイラが絶対に」

「……あぁ、そうしてくれると助かる」

「それじゃあ一時のお別れダ。オイラの名前は───」

「待ってくれ」

「ってなんだヨ。インジケーターを見ろヨ。はやくしないと時間無くなっちまうゾ」

「探すのは得意じゃない。お前が俺を見つけてくれ」

「はぁ? おま、そういうのは男のお前が言っちゃダメだロ!」

「頼む」

「ハァ──……。全く最後まで世話が焼けるナ」

「これから先、もっと焼くことになる。気にするな」

「クッソ、こんな奴の尻拭いを帰ってからやんなきゃダメなんダナ、オイラは」

「約束だからな」

「分かっタ分かっタ。それよりはやく名前を言いナ。時間が無くなっちまうゾ」

 

 

 

「俺は、俺の名前は細貝 元明(ほそがい もとあき)略して───」

 

 

 そんな笑顔をめいいっぱい振り撒いて彼は光の中へ消えた。私も光に包まれる。握りしめていた手の感触は薄れるが、しかし確かにこの手の中に残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして約一年半の長きに渡り繰り広げられたSAO事件は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 ───という訳はなく、帰ってからも大変だった。

 

 SAOでのアバターからかけ離れた体。痩せ細りまともに歩けない程まで衰弱したそれを元に戻すのに2、3ヶ月。

 

 その間、警察か何かの機関の奴らが私たちに事件についての事情聴取をされ、その中でまだ帰ってきていない奴らが数百人いることが分かりてんやわんや。

 

 退院して自由になったと思ったら、次は一年半放置されていた各種手続きに追われ、ガイの奴を探し出し始めるまでにかなり時間を食わされた。まぁ探し始めてからは一瞬だったけど。

 

 

 でもそれで事は終わらない。久しぶりに会ったガイ───細貝元明は相変わらずで、出会った直後に「助け出そう」の一言。

 

 SAO事件での出来事の公表は一度取りやめて、行方の分からなくなった奴らを探そうと言い出した。

 

 帰還していない奴らがいると聞いた辺りでそんな予感はしていたが、まさか現実でも振り回されることになるとは思っていなかった。

 

 そうしてアーちゃんが帰ってきてないことで傷心していたキー坊に出会い、ALOにて囚われていることを突き止めて、3人でまたフルダイブして、裏で暗躍していた「すどう」だか「すごう」だか……まぁそんなやつをやっつけて! 意識不明者全員の帰還を確認して! ようやく! ほっんとにようやく!! 

 

 

「私はアーガスの元社員であり、あの世界の最期を見届けた者です。あのゲームがクリアされて約四ヶ月。ダイブしていた全ての人の安否が判明した今、あの世界で何があったのかを伝えたいと思います」

 

 

 私たちは私たちの約束を果たした。

 ガイは髪を切り、きっちりとスーツを身にまといながら、あの世界であったことで、まだ世間に公表されたことの無い話を公表した。

 

 

「約二年前のあの日、私はあのゲームにダイブしました。その日何があったかは皆さんの知るところでしょう。これから話すのは如何にして事件が終わりを迎えたのか。茅場晶彦が何を思っていたのか。そして私があの世界で何をしたのか、です」

 

 

 75層で起こったヒースクリフとの一騎打ち。その後ログアウトするまでの間に茅場晶彦と話したこと。そして、彼が行ったあらゆる殺戮を全て彼の口から話したのだ。

 

 

「───以上です。質問のある方は……どうぞ、そちらの方」

 

 

「はい。ニコニ〇ニュースの───」

「───という思いでした。次の方───」

「──貴方はそれが人を殺すことになると知って───」

「あの世界ではそうする以外に被害者を───」

「───聞いていると話し合いによる解決はできたように───」

「こちらの世界の当たり前があちらでは通用しませんでした。ですから───」

「建前を並べていますが責任は───」

「───責任、言われるまでもありません。私のこれからの人生───」

「そうは言いますが、遺族は───」

 

 

 無論、批判が止まることは無かった。彼らのガイを見る目は犯罪者を見るそれで、次第に語気は強まり、罵倒が混ざり、ネットでは誹謗中傷がエスカレートしていった。それでも彼は怯むことなく、真っ直ぐそれらを受け止めた。

 

 裁判も行われることになった。彼に罪はあるのかないのか。誰に責任が行くのか。有罪だったとして一体どのような刑が課せられることになるのか。そのような議論も繰り広げられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして現在。

 今彼は私の隣にいる。

 

 結局、彼は有罪にはならなかった。

 

 理由は多々ある。

 まず第一に、彼と彼が言うプレイヤー名とを繋げる証拠が、彼の自供以外に無かったこと。彼が行ったという所業を説明できる者が彼以外に存在しなかったのだ。

 

 正確には出てこなかった。

 SAOのプレイヤーは皆彼が行ってきたことを知っている。ガイドブックや新聞には彼の顔が載せられていたし、ダイブしていた人間なら間違いなく細貝がガイ本人であることを分かっている。

 

 しかし、だからこそ声をあげなかった。ガイがいなければ犠牲者が更に増えていたことをプレイヤーだった彼らは知っていたからだ。一部のプレイヤーからはガイ宛に感謝の手紙が送られてくることもあった。

 

 逆に、彼に捕まった者はどうだったかと言うと、彼らもまた何も言わなかった。

 ほとんど《黒鉄宫》で過ごしていた彼らは、どのようにしてSAOがクリアされて行ったのかを知らない。また、裁判で取り扱っている事例が、ゲームにおける犯罪行為とあっては、自分たちにも裁判がかけられかねない。しかも自分たちはSAOのプレイヤーからも叩かれる本物の悪党である。

 口八丁手八丁でガイを貶められるわけがなく、彼らは彼らの所業をひた隠しにして過ごすことを選んだ。

 

 

 

 

 次に、月日が経つに連れて擁護の声が広がったことが挙げられる。

 

 これは私が書いた『SAO事件の真実』という本が売れに売れたためだ。

 

 それはガイドブック制作で取り扱ったいくつものデータを、自分の記憶や当時の情報屋連中からかき集めたり、当時の一般プレイヤー代表として、エギルの旦那やキー坊、ガイ等からの情報も集められるだけ集めて作成されたそれは好評を博し、各巻ミリオンセラーを記録した。現在は8巻まで刊行している。

 そんなこともあってかあの事件の詳細は世間に広く知られることとなり、暗黙の了解の内にガイの行動を受け入れられるようになっていったのだ。

 

 

 とはいえ、彼は彼自身が許せないようで、せっかく私が稼いできた金は全てSAO事件の被害者のために使われている。

 

 え? なんで私の印税がガイのために使われているのかって? それはご想像におまかせするよ。

 

 

 

 

「───さてと、最終巻の内容はとりあえずこんなもんかな。ガイ! そろそろ出るぞー!」

「ガイはやめろと言っているだろう。しかしまぁ変なことになるもんだ……。お前が生徒で俺が教師とは」

「いいじゃないか。新しい職場が決まって。……というか、私の印税が基金に使われちまっている以上働くしかないだろうが」

「それはそうなんだが……。大学で手に入れた教員免許がこんなところで……」

「似合っているじゃないか、帰還者学校の先生なんて。作品、楽しみにしてるゾ!」

「……いいのかな、こんな生活を送っていて」

「いいんだよ。その権利はアンタにもあるはずさ」

「……そうか。制服、似合ってるよ」

「言うのが遅いよ、バカ───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 END

 

 

 

 




私はハッピーエンドが好きです。
曇らせも好きですがハッピーエンドが好きです。(鋼の意思)

ということで二人はゴールインして終了。アルゴネキが高校生なので結婚はできないんじゃのぉ。


ここからは蛇足となります。

まずはたくさんのお気に入り・感想・評価・ここすきありがとうございました。完結してもくださるととても嬉しいです。ください♡

さて、本題なのですが、ランキングに載ってしまったのに完結ということで少々もったいないなと思いまして。書きたいエピソードが一つ思い浮かんだので番外編として投稿しようかなと。
本編中で広げきれなかった物を書いていく感じなのでボツ集的な感じで見てくださると助かります。

ゴールデンウィーク中に投稿したいなぁ……!
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