天衣無縫の巫女 レイム 作:神降ろし
最近家のズレたブロックとかを補修するために一から掘ったりモルタル作ったりしてへとへとになってました。
それはどうでもいいとして更新です。
なんか、無印のドラゴンボールみたいな戦闘描写になりました(笑)
でもま、我流Xの技にも似たようなのあるから仕方ないですよね。
まるで、雷でも落ちてしまったかのような、リングを一瞬で白に染め上げる激突。次いで来る残響。飛び上がった霊夢の姿を見たのを最後に、もう観客の目と耳は使い物にならなくなった。今無事なのは予め備えていた“緊湊”を迎えた弟子級以上の者達のみ。当然、それ以下の者である新島を含む新白連合の人間は戦闘員、非戦闘員を問わず観客同様に目と耳を潰された。
故に、今リングの中央で行われる“闘い”を目にしているのは真の武術家のみ。
「シィ──ッ!!!」
「ヌォオ────ッ!!」
握りしめられた剛拳を放たれる直前で蹴り上げ、二撃目となる衝撃波ごと己から逸らす霊夢。そのまま地に着けていたもう片方の足さえも宙に躍らせ、迫っていた我流Xの足払いを回避する。だが、そこで回避して終わりなどということはなく、既に蹴り終わっている片足を自身の頭よりも更に後ろへと回す。バク宙で攻撃を回避した霊夢の体がぐるりと一回転する刹那、残るもう片方の足は我流Xの顎を穿っていた。
人体の急所への攻撃を受け、当然怯む我流X。彼は僅かに後方へ身体を傾けるも、軸足となる左足がめり込む程にしかと地を踏みしめる。受けた攻撃で傾いた体の体重移動さえも利用して、お返しとばかりに霊夢の後頭部へ向けて回し蹴りを放った。
されど霊夢は狼狽えない。自身が持つ、信頼を超えた確信とまで言えるほどの“直感”により、その攻撃は予測出来ていた。霊夢は自身の背を体の稼働域限界まで反らすことによって紙一重で蹴りを躱す。その様はまるで重力を感じさせず、どうすればそうなるのかと言いたくなるまでにデタラメな動きで放物線を描きながら後方へと降り立った。
「す、凄い………ッ」
「私達二人でも一撃当てるだけでやっとでしたのに………」
「嘘……だろ、あんなにあっさり」
目の前の光景に感嘆の声しかあげられない兼一。
自身と霊夢との差を改めて見せつけられる美羽。
辛うじて言葉を吐き出す事が出来たキサラ。
それ以外の選手達も各自のベンチで瞳孔を開き切るほどに二人の闘いを凝視していた。
兼一と美羽が本気で挑んで尚一撃しか決められなかった相手を、彼女は単独且つ無傷のまま一撃を入れてみせたのだから他の選手達は堪らない。
梁山泊の師匠達はと言えば、全く狼狽えていなかった。それも当然だろう。彼等は皆、梁山泊に霊夢が訪れるようになる前から霊夢を見て、触れ合い、時には組手をしたりしていたのだから。今の彼女ならばこれ位出来ても何もおかしくはない。
ならば彼等以外の達人級たるディエゴはどうなのかと言えば、笑っていた。ソレはもう、今までとは比べ物にならないほど飛び切りの笑顔で。まだまだ上澄みではあろうとも、あの無敵超人に無傷で攻撃を当てた時点で間違いなく己の弟子よりも強い。なんなら現段階の“一なる継承者”よりも強いだろう。この時点で、一影九拳の弟子達であるYOMIでは彼女を倒すことは不可能と確定した。然らば、後は今の彼女の“限界”を把握し、
「………ムンッ!!!!」
突如、我流Xは仮面越しに両目をギラリと輝かせた。どうやら視界を閉ざすハンディキャップは霊夢には不要と判断したらしい。
それに気づいた霊夢も再び片足でステップを踏み出す。こちらも先程よりも跳ねる滞空時間を長くしたようだ。
「我流ゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!」
次なる先制は我流X。気当たりを乗せた超速音波攻撃を広範囲で放ったのだ。それはあり得ないことに質量を持ち、最早暴風が襲ってきたかと思うほどのモノだった。
それに対し、霊夢は浮いた足が地面に着くや否や、前のめりに倒れるように体を落とす。その数瞬後に、霊夢の頭上を過ぎ去る暴風。そのまま暴風はスタジアム上部へと吹き荒びながら消えていった。────瞬間、霊夢は左足を前に出しリングを踏みしめると、たった一歩で我流Xの懐へ潜り込む。しかし我流Xは高速で摺足を行い、後方へと退避。続けざまに拳打による衝撃波を乱れ打つ。
霊夢は慣性など知ったことかとばかりに反動もなくピタッと立ち止まり、肉眼では見える筈のない空気の乱打を一つ一つ丁寧に躱してみせる。
この程度の小技では無駄撃ちでしかないと悟った我流Xは更に腰を落とし、左足を前に踏み込み、両手を腰辺りまで持っていく。ギギギと強く擦れるような音を立てる我流Xに、霊夢はここに来て初めて構えらしい構えを取る。その構えは空手の天地上下の構えのように、右手を上へ、左手を下へ置きながらも、両足を横に開くのではなく、前後に開いていた。
そして、我流Xによって放たれるは常識外れの中の常識外れ………まるでフィクションの漫画のような出鱈目な技。
その名は────────
それは某有名漫画のかめ○め波のような構えから、勢い良く両手を突き出すことで発生する拳圧に強烈な気当たりを乗せた“我流X百八の奥義の内の一つ”────それが霊夢へ向かって放たれた。
あり得ない技を垣間見た子供達は口を大きく開けて呆然としていた。それはどう見ても“波”だった。子供の頃に漫画やアニメで観て憧れ、一度は自分でも出来ないかと試し、そしてあれは空想の産物なのだと悟ってまたひとつ大人への階段を上る………そんな誰もが知る“波”だった。
されど、霊夢は動じない。迫り来る極大の衝撃波を前に、霊夢の構えは変わらず。なにせ、この技を受けるのは二度目のこと。そして初見の時でさえ辛うじてだが攻略は出来ていた。ならば、その程度の技など恐るるに足らず。
完璧に超えて見せよう─────
当たり前のように、霊夢はその衝撃の塊に触れながら反時計回りに両手を廻し、その上で両足を体ごと滑らせ、全身遍く全てを使って衝撃の塊を誰もいない場所へ投げ飛ばした。
────────驚天動地とはまさにこのことか。
我流Xの放った現実ではありえない技を、これまたあり得ないことに霊夢は完全に流してみせた。観客も、選手達も、達人達を除いた誰もがここが現実なのかと己の目と頭を疑った。もしかしたら空想の世界に迷い込んでしまったのではないか、自分達が見たかったモノが夢として出てきてるのではないかと、あり得ない現実から逃避していた。しかし、頬を引っ叩いても目の前で起こったことは変わらない。その証明として、我流Xの前方の地面は何かが放たれたかのように放射状に抉れた跡が残っており、それは霊夢の前で螺旋状に抉れた地面を最後に途切れていた。これではもう逃避しようがない。
──────結果、絶叫と聞き違える程の熱が込められた大勢の声がかつてないほどコロッセオに轟いた。
見たかったモノ、それを遥かに上回る最高のショーが見られた。
誰もが一度は想像し、しかし現実では実現不可能だと思っていたバトルが見られた。
それは一体どれ程の価値があるのだろうか。ある者はあり得ないと未だ現実から逃避し、ある者は人目も憚らず笑い転げる。また、ある者は充血してしまう程目を開いたまま立ち尽くす。ソレは観客だけではない。選手達もだった。
尚、ディエゴは変わらず最高のショーだと言いながら笑い転げている。
気が狂ったように歓喜の叫びを響かせる観客を余所に、漸く正気に戻った子供達は各々が驚嘆に心揺れ動かす。
「な、何だあれぇぇ───ッ!!!?」
「“
「無敵超人百八秘技の一つ───“梁山波”だね。両手を腰まで持っていく構えから、勢い良く両手を突きだすと同時に強烈な気当たりを発し、敵を吹き飛ばす必殺技ならぬ否殺技だ。拳圧と気当たりで敵を吹き飛ばす技なため、気当たりを受け流す技術を身に付けた者には効かないのだが、その技術を持っていなければ問答無用で倒せる技だ。尤も、霊夢にはもう効かないようだが」
「何しれっと解説してるんですか!!っていうか出来ちゃっていいんですかアレ!!?現実に漫画を持ってきちゃっていいんです!!?」
「コツさえ掴めば誰でも出来るよ、あの技は」
驚き叫ぶ新白連合の面々へと丁寧に説明をする秋雨。それに突っ込む兼一と、どうにも常識からまだ抜け出せない子供達はギャーギャーと騒ぎ、しばらく落ち着く様子はない。それを後目に、美羽は別のところに注目していた。それは先の霊夢が繰り出した“流し技”だ。目には見えないが、確かにそこに在る風を掴み、その流れを変える技───“虚空流し”───あれは如何様にも転用出来る起点技だと美羽は見抜いた。………そして、同時に思う。
“アレは、自分でも出来るのではないか”と。
あの技を自分の動きに取り入れ、独自に発展させることが出来れば、もっと彼女に近づくことが出来るかもしれない。見た目こそ大振りな動きではあったが、それはあくまでも我流Xの技を受け流す為が故。他の技ならばあんな大振りにはならず、最小限の動きで受け流すことも可能な筈だ。それに、ただ会得するだけでも格上の気当たりを受け流すことが出来るので自分の身体が怯むこともなくなる。まさかあんな方法があったとは思いもしなかった。理屈は分かった。やり方も今まさに刮目して観た。ならば後は出来るまで繰り返すのみ。美羽は周囲の叫びをシャットアウトしてしまう程、霊夢が繰り出した技に魅入っていた。
そんな、外野の興奮を余所に我流Xは深く呼吸をし、自身の脈拍を正常な状態に戻していく。
───つまり、また倍率が上がった。
いよいよ霊夢も不味いと思い始めたのか、自身の“無形”を崩し、またも先の構えを取りながら誰が見ても解るように深く呼吸をする。しかしそれも段々と小さくなり、無音へと近づく。やがて彼女の周囲からは音という音が消えていった。
「ウシッ、やるか───」
「そろそろね」
「兼一君、連合の諸君。くれぐれも我々の前に出ないようにね」
「やる、ぞ」
「アパアパーーゥッ!!!」
梁山泊の達人達が一斉に抑えていた気を解き放った。有無を言わさず子供達を抑え込む彼等に、兼一達は驚いた。何を今更と。あの闘いで被害が出ると予想したから自分達の前に出たのではないかと。その疑問を読み取った秋雨は答えた。
「少し違う。霊夢と長老……我流Xが衝突する前に席を立ったのは、我々が
「!!まさかッ!?」
「美羽さん?」
続けるように剣星は話す。
「美羽は知っている筈ね。霊ちゃんは“武道家”としての顔ともう一つ───“武術家”としての顔もあると」
それは美羽以外にとっては初耳だった。
武道家とは何かを打ち倒すために武を修めるのではない。高みへと昇るために研鑽を積む者だ。そして、兼一は秋雨達から聞かされていた。博麗霊夢は武道家であると。
そう、それは間違っていない。彼女が振るう合気の技は、基本的な合理のもと行われるものでしかなく、どこにも超人的な技法を必要とする技はなかった。言うなれば、頑張れば誰でも出来る技だ。
「おかしいと思わなかったかね?あれ程の武才を見せる霊夢が、果たして武道家で収まるものかと」
秋雨は問う。天才的な格闘センスを持つ霊夢の存在を嗅ぎつけた途端、闇の達人達が挙って追っ手を嗾けてきているというのに、それを退ける術を持っていないと本気で思っていたのかと。無論、武道家としても並の武術家では歯が立たないだろう。YOMIの構成員でも、今の霊夢ならば圧勝してみせる筈だ。だが、
妙手が殻を破った末に至る達人級の猛者ならば、あるいはそれさえ凌ぐ程の特A級の達人達ならば、霊夢は抵抗さえ許されない。────断言できる。いくら弱者を退ける術を持っていても、強者を傷つける術を持たない状態では、いかに霊夢と言えど勝てはしない。
「霊夢の育ての親が彼女の元から去ったその時点で、あの子は闇に対して無力だったのだ」
「だからこそ、おいちゃん達は暇さえ見つければ霊ちゃんの元へ行き、
「ボクも、得物の扱い教え、た」
「ええ!?そうだったんですか!!?」
驚く兼一に、美羽は無言で頷く。博麗霊夢という少女は、ともすれば過酷な幼少期を過ごした美羽よりも更に危険な日々を過ごしていたかもしれないのだ。いつ彼女の身元が割れるかしれない。最悪、彼女の天稟の武才を見抜かれるかもしれない。そうなれば、もう彼女にとって安全な場所などどこにも無くなってしまう。だからこそ、先代博麗は自身のありとあらゆる全てを以て霊夢を守ろうと奔走した。結果として先代博麗は梁山泊の面々に霊夢を託し、己は霊夢から遠ざかる道を選んだ。霊夢を想うが故に、そうしなければいけなかった。
「我々としても、彼女を闇に渡すわけにはいかなかった。だが、だからと言って彼女の自由を奪う権利は我々には無い」
「あの頃の霊ちゃんは本当に普通のカワイイ女の子だったね。けれど、歳を重ねていくにつれてその才覚が目覚めつつあったね」
「俺がガキだった頃よりもアイツの成長速度はとんでもなく速かった。毎度毎度、会いに行く度に別人のように洗練されてたっけな」
「よって、我々梁山泊は彼女に授けることにした。達人の
「簡単に言えば、誰かを倒すという、意志……」
「兼ちゃんに課した基礎の改造とは真逆。基礎がいらなくなるほどの組手をね」
「その結晶こそ、今から見せる霊夢本来の武。合気を基盤とした全く新しい武闘術─────────夢想合気柔拳術だッ!!」
秋雨が言い放つのとほぼ同時、霊夢はリングの上をまるでスケートリンクかのようにスーっとスライドし、我流Xの仮面目がけて、その
次回に続きます。
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