攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─ 作:てんたくろー
葵さんによるオートディフェンスの支援を受けての、圧倒的攻勢。アンジェさんとランレイさんは一切の迷いなく剣と拳にてライトニングファルコンを斬り刻み、瞬殺してみせた。
すさまじい疾さと力! ……通常、どうしたっていくらかでも意識を割くことになる防御面へのリソースを葵さんが補ってくれたことで攻撃に注ぎ込んだのだ。
その甲斐もあってか、俺が見てきたお二人の姿のなかでもとびっきりの踏み込みの良さ、思い切りの良さだったよ。
自分達でも認識しているみたいで、戦闘終了直後には二人揃って葵さんの元に駆け寄り、飛び込むように抱きついていた。
「葵っ!! アンタサイコーよ! 実力不足とか言ってごめんなさい、私の視野が狭すぎたわ!!」
「直接戦闘に依らない、支援者の心強さッ!! 知っていたはずのそれをいつしか忘れていたようだ、私達はッ!! ……だ、だ、だからありがとうごじゃいましゅ! め、めちゃくちゃ助かりましたぁ!!」
「はっはっはー!? なんかよく知りませんけどハグだ嬉しーハグ返しー! はっはっはー!!」
「そう言えば葵さん、ハグ魔でしたね……」
ランレイさんのみならずアンジェさんまで抱きついてはしゃぐ、なんてのは珍しいように思うけど、それだけの体験をしたんだろうな。
当初は葵さんのことを、下に見るわけではもちろんないにせよ実力的には劣ると評していた彼女だけれど……ご覧のとおり、すっかりそれを覆して高評価を叩き出しているみたいだった。
まあ実際、厳然たる事実として葵さんの実力がお二人と比べると格段に下がるのはある。フーロイータ込みでそれなんだから、素の実力ともなるとトリオを組むにしても不安がる気持ちは当然のことだろう。
けれど葵さんの真価は、そうした最前線での戦いにはない後方からの的確かつ有用な支援の数々にあるのだ。
追撃、あるいは自動防御の雷撃結界2種。これだけでも従来の探査者にはなかなか見られないレアなものな上、そこに加えて遠距離攻撃もお手の物なため超接近戦が基本なお二人ともスタイル的に噛み合うんだ。
まさしく今までのコンビには、足りていなかった決定的な要素を補ってくれる人材だろう。コミュニケーション能力とか日常におけるよしなしごとまで含め、生活力、人間力って面でも葵さんは頼れるだろうしね。
元々ハグ大好きなため、呼応してハグし返している葵さんを見る。
めちゃくちゃ嬉しそうなその姿に、俺も香苗さんも、そしてエリスさんも……このトリオならばきっと上手くやっていけるという、たしかな確信を持てたよ。
「葵……そうだよ、葵。君は君にできることをやっていけば良いんだ。それこそが君を輝かせる」
「エリスさん……」
「まったく、手のかかるようで手のかからない子だったよ。出会ってからもう何年になるやら、びっくりするくらい楽しくて、びっくりするくらい幸せな日々だったなあ。あんなに小さかった子が、もう、すっかりと大人だ」
一人つぶやくエリスさんの、瞳が潤んでいるのを見て俺は顔を逸らした。師匠としての、弟子への手向けの涙を覗き見ることは憚られる。
……きっと、子供の頃からずっと見守ってきたんだろう。そんな葵さんがとうとう、自分の手を離れて巣立っていくんだ。それは、幸せなことだけど寂しさもあるように思える。
そしてこの人は、不老体質ゆえにそんなことをずっと繰り返して経験してきたんだろうね。出会いと別れ、そしてまた出会い。
悪いことではない。けれど楽しいことばかりではない。痛みを伴うことも当然あったろうし、今だってそうかもしれない。
だけど。彼女はそれでも、祈るように囁くように言うのだ。
「どうか、あの子が行く道に幸せの多からんことを。どうか、あの子が選び取る未来に喜びの多からんことを。どうか、どうか」
「…………」
「そしてありがとうございました、葵。ともに過ごすなかで共有できた、数え切れないほどの喜び、幸せ、思い出は……これから先もずっと、永遠に私のなかで輝き続けます。かつて過ぎ去っていった人達のことを今でもずっと覚えているように、あなたとの日々もまた、私はずっと、覚えてこれからも生きていきます」
弟子への、あるいは訣別の言葉とも言えるかもしれない。独立して自分だけの道を行く葵さんを、エリスさんはもう、立ち止まって見送るだけなんだな。
けれど。それでも、そこまでの日々は二人のなかで輝き続ける。失われたからといって輝きまで色褪せることはないんだ、本当に大事なことはいつだって、形があろうとなかろうと心のなかで煌めき続ける。
不老体質を、この人はこの世のどんなことより優しいものだと言った。すべてを忘れず抱えていける、優しい体質だと。
だからこの日のことも、彼女のこともエリスさんはこれからずっと抱えて生きていくんだろう。
誰よりも優しい、素晴らしき愛なる人。
エリス・モリガナはそうしてしばらく、弟子の姿を目に焼き付けるように眺めていた。
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