まあ色々あるもんですが。
お節介の一つも焼いてみる、そんな気まぐれもおきます。
裏側から、まずは一つ。
人間万事塞翁が馬、とは言うものだ。合縁奇縁、とも言うが。まあ、色々と縁があったり無かったり。その繰り返しだ。運良くと言うかなんと言うか、来年からの行き先もスポーツ推薦で確定させて貰って。俺は今下見のような感じで、インターハイ前の大学練習に来ている。
同じくインターハイを決めた遊佐たちは来ないが。……遊佐はシングルだからまだしも、館山は付き合えよ。せっかくペアなんだから。
とりあえず先輩方以外での顔見知りは、栄明の針生くらいか。公式戦では俺が勝たせて貰ってはいるが、正直そこまでの差はない。素質で言えば。……素質は、な。惜しいことだ。俺が気にする事ではないんだが。
「……ふぅ」
一先ずウィダー片手に休憩していると、不意に視線を感じた。その先にいたのは、……誰だったかな。
……ああ、そうだ。こないだの試合で針生のペアだった一年だ。連れてきてたのか、針生。
喉乾いてるのかと思ってウィダーを進めてみたが、そうでもないようだ。まぁ口つけちゃったし、今から新しいの持ってくるのもなぁ。
しかし、あの試合では色々と惜しかったなこの子は。要所要所で光るものはあるが、荒削り過ぎる。
同じ競技をやってる身としては、ついつい口出したくなってしまう。
「君さ、余裕なくなると力む癖あるよね」
学校は違えど、先輩だから。後輩の指導も、部活のうちだ。
一通り教えて羽根を上げて貰い、実践させてみる。
すると――
「お、ナイスショット」
そう思わず言ってしまうほど、良いショットがラインへと吸い込まれていった。
言われて即できるというのは、素質がある証拠だ。これが出来てれば、遊佐からももっと点を取れただろうにな。
隣に針生がいてフォローして貰えるからか、ダブルスではなかなか良い動きだったんだ。一人で背負って力んだせいだろう、シングルスでのストレート敗けは。
染み付いた癖なのか、それとも単に指導不足か。恐らくは後者だな。
栄明は全国に名が売れたスポーツ強豪校だから、放っておいても優秀な生徒が集まる。優秀だから、細かく指導しなくてもある程度までは結果を出す。顧問の仕事は指導より監督なわけだ。初心者や才能に恵まれない奴等も、出来る連中についていけば全員ある程度までは出来るようになる。
だがそれは才能ある生徒にとって、良い環境じゃない。70点80点の選手に95点を取らせるくらいは出来ても、100点を150点には出来ない。うちとは逆に。うちは楽しむ雰囲気じゃないし、出来ないやつは淘汰される。それが当然と思ってるし、結果を出さなければ雇用に影響するから顧問も必死になる。
……針生がまさに、栄明向きじゃない選手の筆頭だ。うちに来てれば、俺よりずっとスゴい選手になっていただろうに。針生でもこの子でも良いから、編入しないかな。遊佐が増長しないように、押さえつけてほしいんだけど。
まあ、人には人の生き方があるからな。大昔の高校野球じゃあるまいし、部活の為だけに転校なんて出来やしないけど。
――この先、伸びていくかもしれないか。
「よう、休憩か」
「ん、ああ。そろそろ再開するさ」
後輩の指導……と言うか単に助言しただけな気もするが……も終えて、もう一本ウィダーを飲んでいた時。後ろから声をかけてきた針生に、とりあえず返事だけ。
「後輩、素直そうで羨ましい。遊佐にも見習ってほしいよ、最近やたらナマイキになってな」
「あー、大喜も大喜でそうだよ。ナマイキな上に身の程知らずだし。あいつ、鹿野千夏にアタックする気でいるんだぞ」
鹿野千夏。聞き覚えがあると言うか、良く聞く名前だ。スポーツ雑誌に何度もインタビューが載ったり、ローカル放送とは言えテレビにも出てたりする栄明の有名人。見た目や顔の印刷が良いのはもちろん、女子バスケ界では全国でもトップクラスにいるとか。
「え"、ちょっと待てマジか」
「それが大マジなんだよ、笑えるだろー?」
いや笑ってて良いのかそれ、絶対玉砕するぞ。まあ、側から見てる分には面白いかも知れないが。
大穴が勝ちを浚う展開も、もし有ったらステキだろうし。でもなぁ……そんな有名人に、言っちゃ悪いがあんな地味なのが?
「……そういやお前も芸能人の彼女持ちだっけ、羨ましい」
「好きなだけ羨むが良いさ」
まったく、皆色々とやってるんだな。俺みたいに才能が足りなくて努力で無理やり伸びてきた人間には、そんな暇無いってのに。
ま、良いさ。今はインターハイだけ見ていよう。
その先は、わからない。
バド以外を考えるのは、暇ができてからで良い。きっと、それで良いんだ。
夏はいよいよ佳境を迎える。そこで、全て出しきってしまえ。
アオく燃え上がれ、俺。
栄明の指導に関しては独自解釈です、まだわからないので。