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柳葉竜胆と同じく「中」出身である氷室涼は1度だけ柳葉大樹と柳葉竜胆が作った料理を食べたことがあり、外に出てからもその味を忘れたことはなく、無法地帯である「中」での唯一の良い思い出が柳葉大樹と柳葉竜胆の料理を食べたことだった氷室涼。
「中」で生まれ育って身内も頼れる人間もなく、自分の名前すらなかった氷室涼は、生きる為なら何でもして生き残る為に多くのものを奪ってきたが、そんな生活に嫌気がさし、15歳の時に「中」から外に出る時に戸籍も非合法に用意して、氷室涼という名前を得ることができた名前のない少年。
それからは力だけが全てではない外での生活に慣れるまで少し時間がかかったようだが、問題なく生きることができており、何も奪うことなく生きることができる日々を過ごしていた氷室涼は「中」から外に出てきて良かったと思っていたらしい。
氷室涼が外で何年か過ごして生活に慣れてきていた頃、買い出しに行く途中の柳葉竜胆と遭遇することになり、互いの顔に確かに見覚えがあった柳葉竜胆と氷室涼の2人は「中」で昔見た顔が成長したとすればこんな感じかと思っていたようだ。
柳葉竜胆から「きみは「中」出身だろ、見覚えがある顔だ、俺と大樹が作った料理を食ったことあるよな」と話しかけると「やっぱり「中」で流れの料理人やってた2人の1人か、あんたら2人の顔は今でも覚えてるよ、今まで生きてきた中で1番美味い飯が食えたからな」と言った氷室涼は過去を思い出す。
「中」で初めて柳葉竜胆と柳葉大樹を見た氷室涼が目撃したのは、柳葉大樹が羽交い締めにした男を柳葉竜胆に向けながら「こいつの心臓に金剛を入れろ!連射しろ!もしくはネズミにしか試していない薬をこいつに打て!」と叫んでいる姿であった。
ネズミにしか試していない薬と聞いたところで必死に抵抗しだした男を見ていた柳葉竜胆は「押さえつけられている奴の心臓打って金剛の練習になるのか?」と疑問に思っていたことを聞くと「ならない」と素直に答えた柳葉大樹。
「じゃあ何で連射しろとか言ってんだよ」と呆れたような顔をしていた柳葉竜胆の視線に耐えきれなくなったのか羽交い締めで押さえつけていた男の首を絞めて失神させた柳葉大樹は「大丈夫、次の場所は数がいっぱいいるからお前なら金剛覚えられるよ」と誤魔化すように言う。
「ネズミにしか試していない薬って何だったんだよ」と気になっていたことを聞いた柳葉竜胆に「日本の医学を進歩させたくて」と答えた柳葉大樹は、その場の勢いで言った言葉を追求されることになるとは思っていなかったらしい。
柳葉大樹と柳葉竜胆のやり取りを見聞きしていた氷室涼は、やり取りがちょっと面白いと思ってこっそり着いていくことに決めて、柳葉大樹と柳葉竜胆を尾行していきながら、2人の行動や言動を観察していく。
技の修行をしている真っ最中であるということは理解できていて、どんな技であるのか興味が湧いていた氷室涼は大量の敵を相手に戦っていく柳葉大樹と柳葉竜胆を見ていたが、一撃で相手を倒す柳葉大樹と柳葉竜胆が使っている技は現在の自分には真似ができそうにないと判断する。
戦いが終わった後に「腹も減ったし飯にするか」と言い出した柳葉大樹が背負っていた食材を取り出したところで柳葉竜胆が料理の準備を始めていき、美味そうな匂いが漂ってきたところで食いたいと思った氷室涼は手持ちの金を確認してから「金は払うから俺にも食わせてくれ」と言って近付いた。
「今日は、こいつが技を覚えた記念日だから祝いの飯だ、金はいらねぇよ」と柳葉竜胆の頭を撫でながら言った柳葉大樹は氷室涼も招いて食事を始めると、全員が腹いっぱいになるまで柳葉大樹と柳葉竜胆は料理人として料理を続けていきながら自分達も食べていった2人。
氷室涼という名前を得る前の少年が、初めて誰かと一緒に食べた食事は料理人である2人の腕が良かったことで、とても素晴らしいものとなったようであり、美味しい料理に満足していた少年は、自分のことを優しい目で見ていた柳葉大樹と柳葉竜胆の目が恥ずかしくなって走って逃げ出してしまう。
そんな記憶を思い出していた氷室涼の前で「あの頃は名前が無かったんで自己紹介することもできなかったが、今は名前があるんで教えとくぜ、柳葉竜胆だ、よろしく頼む」と言って笑った柳葉竜胆に「あの時は逃げて悪かった、俺の名前は氷室涼だ、よろしく」と言うと氷室涼も笑みを浮かべた。
連絡先を交換することになった柳葉竜胆と氷室涼だが、柳葉竜胆が結婚していることを知った氷室涼は物凄く驚いていたらしい。相手が呉一族だと知って更に驚いていた氷室涼は、どういう出会いをすれば呉一族と結婚することになるんだと疑問に思って柳葉竜胆に詳しい話を聞く。
人斬り軍司に襲われていたところを助けたと聞いて、裏で有名な相手を倒せる柳葉竜胆が間違いなく強いことを改めて知ることになった氷室涼。それから数日後、バーで働く内に義伊國屋書店会長の大屋健と知り合うことになった氷室涼は拳願仕合の存在を知ることになる。
大屋健に連れられて拳願仕合を観に行くことになった氷室涼は、柳葉竜胆が大日本銀行の闘技者として戦う姿を見て、拳願仕合140勝無敗の大記録を持つ柳葉竜胆の141勝目となった戦いを見届けることになり、思わず拳を握っていたようだ。
柳葉竜胆の戦いを観戦した氷室涼が静かに戦意を溢れさせている姿を見た大屋健は、バーで働く氷室涼が戦える存在であることにも気付いており、現在雇っている闘技者と戦わせてみるのも面白いかと考えていた大屋健。
義伊國屋書店所属闘技者のキックボクサーを相手に戦うことになった氷室涼は、ジークンドーの使い手であり、型に捕らわれない戦術を重視した中国拳法をベースとする近代武道であるジークンドーを用いる氷室涼の動きは速い。
キックボクサーに最速・最短の連打を叩き込んでいく氷室涼。最短距離を突く縦拳が可能にする驚異のハンドスピードは凄まじいものであり、最速といわれるミドル級ボクサーの平均拳速が10m/秒なのに対し、氷室涼の縦拳の初速は規格外の15m/秒。
さらに相手の攻撃を捌きつつ、即座に攻撃に転じていくジークンドーの受即攻の無駄なき動作は、対戦相手であるキックボクサーに実際の数値以上の速度を体感させていき、氷室涼に有効打を一撃も当てることができていないキックボクサーは逆転の為にハイキックを繰り出す。
ハイキックを潜り抜けた氷室涼は至近距離でだめ押しのアッパーを叩き込んでキックボクサーをノックアウトすると、戦いを見ていた大屋健に「これで俺も闘技者になれますかね」と聞いてきた氷室涼へ「もちろん」と頷いた大屋健は義伊國屋書店で最強であった闘技者を倒した氷室涼こそが新たな闘技者に相応しいと思っていた。
拳願仕合では強さこそが絶対にして唯一の正義という考えを持っている大屋健は、今まで洋の東西、老若問わず純粋な強さを持った闘技者を雇ってきたが、この氷室涼こそが自社歴代最強だと確信していた大屋健は笑う。
拳願仕合に参戦することになった氷室涼は、デビュー戦で圧倒的な実力を見せつけて勝利し、鮮烈なデビューをすることになる。初戦を危うげなく勝利した氷室涼の実力を高く評価していた大屋健は、氷室涼に支払う拳願仕合の報酬を少し上乗せしていた。
拳願仕合で初勝利した氷室涼は柳葉竜胆に連絡して、自分も拳願仕合の闘技者になったことと初戦を勝つことができたことを語っていく。それなら祝おうかと提案した柳葉竜胆は「祝いの飯でも作りに行くよ」と言って氷室涼が住んでいる場所を教えてもらう。
食材と調理器具を用意して氷室涼が住んでいる場所で料理をしていった柳葉竜胆が作った料理は豪勢なものとなり、これをタダで食わせてもらってもいいのかと氷室涼が思ってしまうほど豪勢だった料理の数々。
柳葉竜胆が作った美味い飯で拳願仕合初勝利を祝われることになった氷室涼は、初めて誰かに祝われてみて、祝われるってのは意外と嬉しいもんだが「中」では絶対にありえねえことだなとしみじみと思っていたらしい。
「そういえばあんたの師匠は、どうしてるんだ?」と気になったことを聞いた氷室涼に「大樹も外に出てきてるが住んでる場所は別々だ、ちなみに大樹は煉獄のA級闘士をやってるよ、支払われるファイトマネーは拳願仕合より煉獄の方が高いって言ってたかな」と答えた柳葉竜胆。
「煉獄か、拳願仕合以外にも裏格闘技の団体は、いくつかあるそうだが、煉獄は拳願仕合に次いで規模が大きいらしいな」と言う氷室涼へ「興味があるなら煉獄でも観戦してみるか?煉獄の主催者が知り合いだから面白い試合を教えてもらえると思うぞ」と言って柳葉竜胆は笑った。
「そうだな、1度煉獄を観戦してみるのも悪くはないか」と言った氷室涼は、拳願仕合との違いは間違いなくあるだろうが、煉獄の闘士達がどんな戦いをするのか見てみたい気持ちがあると考えていたようだ。
豊田出光に連絡を取った柳葉竜胆は煉獄の試合日程と場所を教えてもらい、氷室涼のスケジュールで行けそうな日を決めていく。煉獄を観戦する日程が決まった氷室涼と柳葉竜胆は休日に煉獄へと向かうことになる。
煉獄ではA級闘士同士の戦いが連続して行われることになっていて大盛況となっていた。柳葉竜胆と氷室涼が観戦していると煉獄A級闘士である柳葉大樹の戦いが始まっていき、名も無き武術の技である「無極」を使ったカウンターの一撃で勝負を決める柳葉大樹。
次の試合はA級闘士の劉東成が戦う試合となり、相手の急所に発勁を叩き込んだ劉東成の勝利に終わった戦い。最後はA級闘士で恐らく1番強い男であるロロン・ドネアの戦いとなり、相手の攻撃をかわしながら腹部に拳を叩き込んだロロン・ドネア。
たった一撃で立てなくなった相手はダウンしたまま動けなくなり、試合はロロン・ドネアの圧倒的な勝利で終わる。勝利したA級闘士の全員が一撃で相手を倒すという結果となった試合を観戦していた氷室涼と柳葉竜胆。
思っていたよりもレベルが高いA級闘士の実力を見た氷室涼は、煉獄のA級闘士は強い奴しかいねえって話は本当だったってことかと考えていた。柳葉竜胆はロロン・ドネアを今日初めて見ることになったが、並みのA級闘士とは格が違うことを一目で理解していたらしい。
煉獄の試合を観戦し終えた氷室涼と柳葉竜胆が帰ろうとしたところで、試合が終わったばかりの柳葉大樹と劉東成が2人に近付いてきて話しかけていく。劉東成が「竜胆、試合観てたカ?圧勝ヨ、そっちの色黒は初めて見るネ」と言うと「まあ、竜胆の知り合いなら問題ないはずヨ、劉東成ネ、よろしく」と自己紹介した。
「俺は柳葉大樹だが、色黒の兄ちゃんには見覚えがあるな」と言った柳葉大樹は過去の記憶を忘れてはいない。柳葉竜胆が「俺が技を覚えた時の祝いの飯を一緒に食った相手だよ、名前は氷室涼っていうんだ」と氷室涼のことを紹介していったところで「氷室っス」と言った氷室涼。
「ああ、やっぱりあの時の」と言いながら納得していた柳葉大樹は「中」から出てきたことは言わないようにしていて氷室涼のことを気遣っていたが、基本的に暴力的である「中」の人間にしては氷室君は、随分と落ち着いているなと考えていたようだ。
「大樹と竜胆のお祝いとか盛大になりそうネ、美味い料理が食えたことは間違いないヨ、運が良かたネ」と頷いていた劉東成。そんな劉東成に「まあ、美味い料理が食えたのは確かっスね」と言った氷室涼は柳葉大樹と柳葉竜胆の料理が美味いことは良く知っていた。
「ちょうどファイトマネーが支払われたとこだし、全員で飯でも行かないか?俺が奢るぜ」と言い出した柳葉大樹。劉東成も「大樹の奢りなら悪くないネ」と乗り気であり、氷室涼も「良いっスね」と行く気になっていて、柳葉竜胆も「まあ、たまには良いか」と断ることはない。
その後は柳葉大樹がおすすめする店にまで行って料理を食べた4人は全員が美味いなと思っていたようで、柳葉大樹の舌が確かであることを理解した劉東成と氷室涼は他におすすめする店がないか柳葉大樹に聞いていく。
満足のいく食事ができた4人は帰り道を歩きながら会話をしていくと、色々な話題を話していった4人。氷室涼が話題として出して、ネズミにしか打っていない薬を打てと言っていた柳葉大樹のことを語ると、劉東成は「完全に危ない人ネ大樹」とちょっと引いていたみたいだった。