6人目の仙衆夜叉   作:貮式

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胡桃のキャラ崩壊しすぎてもはや誰やねん状態。

もはや胡桃の皮をかぶったオリキャラと化していますので、本当に注意。

恐らく胡桃ガチファンが怒り狂うレベルかもしれない……。


それでもいい方はどうぞ。





























if.もしも胡桃の恋が成就していたら

 往生堂七十七代目堂主、胡桃はかつてないほどに気分が良かった。

 

 胡桃の様子が以前と違うことに気が付いた鍾離がそれとなく訪ねてみたものの、答えをはぐらかされて思うような回答は得られなかったという。

 

 

 『もしかしたら、桃も会えるかもしれんな』

 

 

 せいぜい、「そんな人がいたんだ」程度の認識だった。

 その仙人に関する記述が1000年も前に途切れているのならば、璃月人の与り知れぬところですでに死んでいるに違いない。だから関わることもないだろう。

 

 そう思っていた胡桃だったが、やはり己の血に刻まれたかつての女傑たちの意思は『彼』を見た瞬間にありありと反応を示した。

 

 

 『人間と婚約をした仙人はいるにはいる。だが、人間と仙人の寿命の差はどうあがいても埋められない。

  大切な人が己より早く年を取って死ぬのは、彼ら仙人にとっては耐えられない苦痛なんじゃ。

 

  だから、彼は決して首を縦には降らなかった。そういう仙人たちを、数多く見て来たからじゃろう』

 

 

 既にあの世へと旅立った胡桃の祖父が言っていたことは、()()()()()()()()()。正解も正解。大正解だったのである。

 

 

 何故、それが正だと分かるのか? その話が冒頭の胡桃の機嫌が良い理由に繋がってくる。

 

 

 

()()()()()()!」

 

「――――おかえり、胡桃。 っおぉっと、いきなり飛びついてくるなよ。危ないだろ?」

 

「うへへ~。疲れたから癒してよ~」

 

「はぁ……仕方がないヤツだ」

 

 

 

 仕事終え、一早く帰った胡桃の執務室には既に先客――――久劫がおり、胡桃はその姿を見るなり久劫へ飛びついた。

 

 にへらと破顔する胡桃の頭を、久劫は優しく慈しむようにポンポンと撫でる。

 

 

 お分かりいただけるだろうが、久劫と胡桃は恋仲である。

 まだ誰にも言っていない、二人だけの秘密。

 

 多くの者が命を賭して戦っていたあの戦場で、二人は恋に落ちた。謂わば一目惚れと言うヤツである。

 

 戦争が終わってひと段落ついたのち、璃月郊外で一人暮らしを営んでいた久劫へ胡桃が猛アプローチを仕掛け、そして遂に久劫を仕留めたのだ。

 

 

 もともと胡桃に好意を抱き始めていた久劫は、始めこそ人と仙人が付き合うことに対して悩んでいたが、胡桃の積極性に根負けして交際に踏み切ったのである。

 

 

 

 基本的には久劫も胡桃も公私は分けるタイプであったので、人前ではこうした行動は絶対にしないが、二人きりの空間となるとまるで人が変わったように二人でイチャイチャしだすのだ。

 

 いつも胡桃にちょっかいを仕掛ける幽霊も、この二人の空間に入るのは憚られるらしく、二人きりの時は滅多に顔を出さない。

 

 

「んー! ありがと! お茶にしよっか!」

 

「そうだな。手伝おう」

 

「いーよいーよ、座ってて」

 

 

 胡桃にそう言われて、久劫は椅子から離れかけた腰を再び下ろす。

 トコトコと執務室に備え付けられた台所へと向かう胡桃の後ろ姿を見て、久劫はふっと頬を綻ばせる。

 

 不思議な女性、というのが胡桃に対する久劫の第一印象だった。のほほんとして適当な女性かと思えば、生死に対する倫理観などに対しては人一倍しっかりとしているし、今でこそでろっでろに甘えているが、仕事や戦闘となれば人が変わったように真面目になる。

 

 あれが胡桃の『素』なのかは久劫はまだ出会ってからひと月程しか経っていないので未だに測りかねているが、少なくとも、胡桃が『素』を曝け出して自分を頼ってくれるような存在にはなりたいと思っていた。

 

 

 

「お待たせっ、どうぞ」

 

「ありがとう」

 

 

 

 カップを二つ持った胡桃が台所から戻り、久劫の前に紅茶の入ったそれを置く。

 

 カップに口を付けて中身を呷れば、ほどよい清涼感とレモンの酸味が久劫の口の中を駆けていく。

 

 

「うん、いつ飲んでも美味いな」

 

「へへ……ありがと」

 

 

 純粋な誉め言葉に胡桃の頬が思わず紅潮する。

 その愛らしい姿に思わず久劫が胡桃の頭を撫でると、年相応の少女と言った表情を浮かべて羞恥に顔を染めた胡桃がぽつりと語りだす。

 

 

「私ね、不安だったの」

 

 

 それは、まだ精神的に育ち切っていない年齢で一つの企業を任されることになった一人の少女の独白。

 

 

「おじい様が亡くなって、両親も昔に死んじゃってて、私が往生堂を継ぐしかなくて、最初は戸惑ってばかりだった」

 

 

 葬儀の所作や手順は祖父に完璧に叩き込まれただけに、周囲から胡桃に向けられる期待の眼差しはそれは大きなものだった。

 胡桃は往生堂の尊厳を守るために、自身の弱い面は決しておくびにも出さなかったが、それでも心のどこかでは『寂しさ』や『悲しさ』という感情は燻り続けた。

 

 

「自分を隠すように明るく振舞って、時には残酷になって……でも、心のどこかでずっとそれを感じていたんだ」

 

 

 「でもね」と胡桃は続ける。久劫は静かに続きを待った。

 

 

「久劫と出会ってから、全部変わった。あの時、あの場で久劫を見つけた時から、『私の心の隙間を埋めてくれるのがこの人なんじゃないかな』って思ったの」

 

 

 胡桃の星型の瞳が久劫をとらえる。

 懇願するような感情を感じる瞳に、思わず久劫の心臓がはねた。――――胡桃は、本気で久劫を求めている。

 

 

「ねえ。私の『素』は、久劫がいつも見ているみたいな明るい私じゃないの。

 もっと重たくて、暗くて、高望みしちゃうような子なの。それでも、久劫は私の事を――――んむっ!?」

 

 

 ――――言われなくとも、元からそうするつもりだ。

 

 

 そう言うかのように、久劫は胡桃の口を自身の口で塞いだ。

 驚いていた胡桃の目がとろんと蕩け、ただ触れるだけのキスを10秒程度続けたところで、久劫が離れた。

 

 胡桃は名残惜しそうに久劫の唇を眺める。

 

 

「たとえ胡桃がどんな子でも、僕は()()()()()好きになった。

 今更嫌いになるはずなんてない。そもそもここで嫌いになるようだったら、元から交際の許可なんて出さない。

 

 だから、期待に応えられないかもしれないが、寂しくなったら、悲しくなったら、遠慮なく僕の胸へ飛び込んで来い。僕はいつでも、胡桃を迎える」

 

 

 

 

 久劫の言葉に暫く呆けていた胡桃だったが、数秒して再起動したのか、いつもの胡散臭い笑顔を浮かべて言った。

 

 

 

 

 

 

 

「な~んてねっ!

 これは久劫がちゃんと私の事を愛してくれるかのテストでした~! だ~まさ~れて~んの~!」

 

 

「んなっ!? また僕を揶揄ってたのか……」

 

 

 

 久劫が胡桃に揶揄われたのはこれが初めてではない。

 

 このひと月の間で久劫は何度も胡桃に悪戯をされたりしてきたのだ。「さっきの真面目な返答を返せ……」とでも言いたげな顔を浮かべる久劫に、胡桃がまたしてもガバっと抱き着く。

 

 

 

「でもね、重たい女の子っていうのは、ほんとだよ?

 だからね、寂しい時に抱き締めてくれなかったら、どうしよっかな~?」

 

 

 

 その時の胡桃の顔を表すのであれば、『ニヤニヤ』が正解だろう。

 

 ただ、その『ニヤニヤ』が悪戯を思いついたものからくるものなのか、それとも単なる照れ隠しなのかは、本人しか知りえない事である。

 

 

「その時は、僕が誠心誠意謝ろう」

 

「ふ~ん? どうやって?」

 

「そうだな……じゃあ、こうしよう」

 

「わぷっ……!? んにゅっぅ……!? れろっ……んふぅ……」

 

 

 久劫は、今この目の前にいる愛くるしい生命体をどうしてくれようか考えるので精いっぱいだった。

 

 揶揄われた意趣返しにと胡桃の口内に舌を侵入させてみたりしたが……どうやら逆効果だったらしい。

 

 

「くぅ、ごぉ……」

 

「――――っ」

 

「うへへぇ~、ねぇ、わたし、もうがまんできないよ?」

 

 

「ちょ、胡桃! ここ職場! ぐわあああああっ――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日から、ほんの少しやつれた久劫と、満面の笑みで久劫と腕を組む胡桃のラブラブ(?)カップルが目撃されるようになったとかなってないとか。








これ久劫じゃなくてもよくね? って書いてるときに思ったのは内緒。
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