私、リサーナの朝は早い。
日の昇る前に起床、身支度を素早く整えメイド服を纏い自室を出る。
まずは主人の今日の予定を復習。その後は庭の手入れに廊下の掃除。
もちろん1人で掃除するわけじゃないわよ?私の他にもメイドはいるからその人達と一緒に。
「・・・ふぅ。よし、次!」
調理場に行き、料理番の方が沸かしてくれておいたお湯と清潔なタオルを持ってまた移動。
コンコンッ
「失礼致します。」
返事がないのは毎朝の事なのでサッと部屋へ。
ベッドへ近寄れば、未だ夢の中の主人。
「おはようございますお嬢様」
「・・・」
仕方がない。
「失礼いたします。」
肩を軽く揺さぶりまた声をかける。
「おはようございますお嬢様。朝でございます。」
「・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふむ。
「返事がない。ただの屍のようだ。」
「生きてるし起きてるわよ!」
「ではさっさと起きてください寝坊助様。」
「ふぁ〜・・・私が朝弱いの知ってるでしょうに。えまって?今変なこと言わなかった?主人に対してあるまじき言葉を言わなかった?」
「とんでもございません。一メイドである私が主人であるお嬢様に対してあるまじき言葉など、恐れ多くて申せません。」
「そう、まぁいいわ。」
「朝食のご用意はすでに。」
「そう。では行きましょう。」
「はい。ですが、まずは身支度を整えてからですよ。」
この可愛くも揶揄いがいがある方が私、リサーナの主人であるお嬢様とのいつもの朝。
「以上が本日のご予定になります。」
「分かりました。そのまま進めて。」
「かしこまりました。それと速達で王都での仕事が長引くと知らせが。」
「そう。とういう事はお父様とお母様がしばらく王城に。」
「はい。」
「むふ・・・・・・ふふふふふ!」
「お嬢様?」
「それならば今のうちに、ショッピングと洒落込まなきゃね!最近、あの頑固親父に買い物禁止令を受けてたんだから今のうちにしておかなきゃ!」
「だ、ダメですよ!そうやってこの間も隠れて数千万使ったのがバレてしこたま怒られてましたよね!」
「いいのよ!金なんて湯水のように沸くのだから。私は私の欲しい物を手に入れられればそれでいいの。」
始まった。お嬢様の収集癖と言うべきか物欲と言うべきか。
気に入った物だとか珍しいものを見ると値段など一切気にせず即購入。
この前はなんだったかしら、そうそう辺境伯のご令嬢にお茶会に呼ばれて行ったは良いものの、その領地の湖畔が気に入ってしまい辺境伯に直談判して湖畔がある領地を買い取ったんだっけ。
「・・・根はいい子なんだけど」
あっ!そうだ忘れてた!
「お嬢様」
「なに?」
「本日、私は午後から半休をいただきます。」
「あら?そっか、今日は定期検診の日だったわね。」
「申し訳ございません。」
「分かったわ」
さーて、今日も頑張っていこうかな。
「ババアのしごき以外で、お前が全力なの初めて見た気がする。」
「・・・」
「記憶読んだんだけどよ。あの漢、漢とうるさいのと受け付けねーちゃんの妹なんだな。」
「・・・」
「S級なぁ・・・その失敗した依頼は」
「・・・後日、俺が代わりに完遂した。」
「さすが。」
「・・・当時、あらゆる手を尽くして探したというのに」
「仕方ねえよ。他の情報やにも脅して聞いたろ?奴隷商は行政との繋がりがあるのがほとんどだって。」
「・・・」
「さてどうする?この3日、監視してみたお前の考えはよぉ」
「・・・メイドだな。」
「メイドだったね。メチャクチャ有能な」
「・・・完璧な所作」
「掃除に洗濯」
「・・・茶の淹れ方」
「スケジュール管理」
「「・・・」」
「帰ろっか」
「・・・焼き鳥にするぞクソ鳥」
「俺たち想像してたのはボロボロになりながらこき使われて、最悪女の尊厳すら奪われてる状況だったじゃん?だけど、見てあれ。半休もらってるよ。主人と親しくしちゃってるよ。むしろ連れ戻したら俺らが悪くなっちゃうよ!」
ミストガンとて分かっている。
一眼見て酷い扱いは受けてはいない。
むしろ使用人として扱われている。
かつて見てきた奴隷たちは、生きた屍同然。
単なる道具とされていたのだから。
「では、また2週間後いらして下さい。」
「先生、ありがとうございました」
「お大事に」
ふぅ、診察も終わったしちょっとお茶してから戻ろう。
この前出来た喫茶店気になってたんだよねー!
「ん?」
あれ?なにか・・・違う。
「なんだろう。なにかへんだ」
なに?何に疑問を抱いているんだろう私は。
「あ、」
お店に着いちゃった。
まぁ、このモヤモヤはお茶とデザートを堪能しながら考えるとしますか。
ていうか、今日誰も並んでない!ラッキー!いつもなら行列・・・が
「そうだよ!まだ昼間なのに!人が!」
いない!
「な、なんなのこれ「・・・俺の幻術をここら一帯にかけた。」は!」
振り向けばそこには肩に、奇怪な鳥を乗せた男が立っていた。
「・・・久しぶりだなリサーナ。」