地球を防衛する傭兵になりました   作:No.28

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七話 人類決戦

 

 

 

 

 

 荒廃した街々を通り過ぎていく。痛める心さえ荒んでしまった彼らには、仲間も、友人も、家族も。何も残されていない。

 

 故にこそ、死兵としてプライマーの喉元に喰らいつく最強の部隊が生み出されたのだ。

 皮肉にも、多くの命を奪い、人類滅亡という勝利を目前にしたプライマー自身によって。

 

 

 

 

『我々は、何度も敗走してきた。人類の被害は計り知れず、対する我々は敵の拠点をいくつか破壊したに過ぎない。兵士はもう残っていない、そう思わせるほどの大損害を負い、人類はついに追い詰められた』

 

 本部司令は、人類の状況を淡々と語る。それは誰が聞こうと、敗北を通り越して絶望の渦中にあった。

 

『家は崩れ、街は崩壊し…軍隊は瓦解、部下は散り散り。もう、戦い抜く力は我々にはない。人類の滅亡まで秒読み、そう思わせるには充分なほどの、圧倒的な戦力差だ……』

 

 本部長の、それまでの悔しさを振り絞るような言葉は、だが猛々しく、そして熱く変貌し、現地で復讐に燃える隊員達の心を深く焼いていく。

 

『───だが、それでも人は生きてきた。人類は、営み、暮らし、生き、戦った。

 

 …皆、死んだ。人々を守るため、そして未来を残すために死んでいった。だからこそ、ここで勝たねばならない!

 

 誰もが生きたいと望んで散っていった、その無念を晴らす! そして人類の歴史の転換点をここに刻む! 今日、我々がマザーシップを撃墜する事で!』

 

 

 

 

 

 

 

 通信機から放たれた熱い言葉は、()()の耳にも届いた。

 

 半ばから破損したラジオは、だが確かに熱意を彼らの胸中にもたらした。絶望の淵に立たされ、中にはその絶望に心を蝕まれ命を絶った者までいる。

 

 反攻部隊に合流する事を拒み、近隣の民間人を守っていたスカウトチームの生き残りは、数少ない生存者と共に、戦況を確かめるために軍用端末を民間に貸し出していた。

 

 どの放送局もプライマーの襲撃で潰れ、ノイズ音を垂れ流すだけだった壊れかけのラジオだったが、ある時拾った音声こそ、本部長の演説だった。

 

「…お、おい。どうするんだよ、ライフルなんか持ち出して……」

 

 負傷者を匿っていたスカウトチームの一人が、何とか地下施設に持ち込んだ武器のひとつを手に取る。

 奇跡的に生きていた、民間人の友人が彼に言う。

 

 ボロボロのヘルメット、融解したアーマー、その隙間から見える包帯だらけの腕や胴。戦闘継続が困難であると、素人目に見ても明らかだった。

 

「悪い。俺もやっぱり、EDFの兵士なんだって思っちまった」

 

 遮光ゴーグルの隙間から、僅かに光る何かが零れる。それが何なのかを、友人はわかってしまった。

 

 この元スカウトチームの兵士は、ほとんどの仲間を目の前で殺され、幸か不幸か生き残ってしまった。

 

 絶望のまま、死んだ仲間の携行弾薬を回収し、トラックに詰め込めるだけの食料をかき集めて地下施設に立てこもっていた。諸々を整えたあとで民間人捜索と避難誘導に乗り出し、今に至る。

 

 地下に民間人を匿っていたのは、例えいつか死ぬとしても、兵士である以上は責務を果たしたかっただけだった。

 戦いから逃げ出したことで、自らが死んだ後に、先に逝った仲間から謗りを受けるだろうと思っていても。

 

「ここで人類が負けっ…負けたらっ…! お前とか、ここの皆が殺されるんだって思っちまったらさぁ…!」

 

 悔し涙。

 

 そう、ここにいる兵士は彼一人。

 彼が居なくなれば、ここを守る兵士もまた居なくなる。防備を失った避難場所が辿る末路は、誰の目にも明らかである。

 

「俺…行かなきゃって…。だから、ごめん……」

 

 鼻を啜り、覚束無い手元ながら、慣れた手つきでマガジンを装填する。

 スカウトチームの武装はライフル程度の貧弱なもので、爆発物や携行砲のような、強力な火器などは一切持ち合わせていない。

 

 故に、孤立したところに怪物やエイリアンが近付こうものなら、余程の実力者でない限りは確実に殺される。

 

 だが、仲間がいなくても戦うという内容の放送を聞いた、聞いてしまったからには。

 

 T3ストークバーストの弾帯をありったけ巻き付けると、持ち込んだロケットランチャー・グラントM42Sを予備弾薬無しで担ぎ上げた。それは、傍から見ても相応の重量であることはわかる。

 

 友人は、彼が軍隊に入った事は知っていたが、これほど体を作っているとは想像していなかった。

 

 さっきまでの彼は、ボロボロで満身創痍。戦意を喪失していて、学生の頃の弱虫だった頃の彼と変わっていなかった。

 だが今のその姿は、自分が知っている同期の誰よりも勇敢な男のそれだった。

 

 

 彼が地下施設から出、その唯一の扉を閉めようとした時だった。

 

「…行くんだな」

 

 振り返った彼が見たのは、各々使えそうな武器を携えた民間人の姿。その先頭に立つ、友人の姿。

 

「な…何をするつもりなんだ…!?」

 

「俺はここで戦う。お前は、あのデカイ船をぶっ潰してこい!」

 

「危険すぎる! 中に戻ってくれ!」

 

 視界の端にちらりと映り込む敵のドローンに冷や汗を流しながら、武装してきた若い青年たちを押し戻そうとする。

 

「ドローンが来たぞ!」

 

 青年の誰かが叫んだ。

 それに振り返ると、数機のドローンがこちらへ向かってきているのが見えた。

 アサルトライフルを構えようとする彼に、友人は体を使って押し出し、代わりに大型の対物ライフル(AMR)をドローンへ向けて撃ち込んだ。ドローンは一撃では撃墜できないものの、大きくよろけていた。

 

「お前は行け! 地球も俺達のことも救ってくれるんだろ!」

 

 アーマーさえ着込まずに銃撃戦をやる無謀さを、だがもはや止めることはできなかった。

 友達に背を押されてもたじろぐ程、彼はもう子供ではなかった。

 

「…〜ッ! 死ぬなよ!」

 

「ああ! お前もなっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マザーシップがドローンを展開しています!」

「西から揚陸艇! エイリアンを乗せてる!」

 

 激しい十字砲火に晒されていながらも、攻勢の手は止めない。いや、止める訳にはいかない。

 あまりにも圧倒的な火力を前に攻撃以外の手は無い。もしそれを止めたなら、今抑圧している以上の火力が隊へ向けて飛んで来ることは確実だからだ。

 

「いいか、もう俺達には後がないと思え! 最終作戦が後に待っていても、ここを切り抜けられなければ次はない!」

 

 ストーム2リーダーが叱咤した。

 

『了解!』

 

 砲撃は苛烈。分裂したマザーシップの砲台が、この大空に所狭しと飛び交い、それらが無秩序に弾をばら撒く。それらを掻い潜り、やり過ごし、時には仲間のビークルの影に隠れて、近くの敵を撃つ。

 やっている事は普段の戦闘でも同じだが、規模が違う。あまりにも圧倒的な火力を前に、俺達は隠れながら戦うことしかできない。

 

『シールドが展開されています!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 事前の情報通りだった。

 マザーシップは戦闘形態に移行した時、多数の砲台と共に、自らを守る多層のシールドを形成すると。

 

 それを知る先進技術研究部の主任も、時間を繰り返し続けてきたのだろう。俺たちのような雑兵には、まるで縁のない話だ。

 

『おい、左だ!』

『OK!』

 

 仲間の連携が光り、接近していた怪物数体を打ち倒す。

 

『俺が仕留めたぞ!』

『上手い!』

 

 どこかで聞いたやり取りだ。

 ああ、確かに、何回も怪物と戦ってきた俺には縁深い。仲間が何人倒れようと、何度敵に負けて撤退しようと、俺は運良く……いや、運悪く生き延びてきた。

 あれは、そうやって死んでいった彼らと、生き残ってしまった俺達との、幾度と繰り返される掛け合いなのだ。

 

 

「うわっ…!」

 

 隣で銃を構える誰かが、爆風に煽られ、手持ちの火器を取り落とす。伍長だった。

 

 彼はベース228からこっち、ずっとEDFとしての職務を全うし続けてきた男で、あまり前線には立たなかったものの、率先して市民の避難誘導をし、怪物との豊富な交戦経験から招集された経緯を持つ。

 

「しっかりしろ、伍長!」

 

「…う、くっ…す、すみません…中尉…」

 

 俺はよろけそうになっていた伍長の肩を掴み、無理やり立たせる。

 

「くそっ! マザーシップの砲火は予想以上だ。オマケにエイリアンの直掩部隊がひっきりなしに押し寄せてきている。決定打が我々には欠けている…!」

 

 状況の再確認のため、誰に言うでもなく独り言ちる。それを部下の一人が拾い上げた。

 

「…そうだ中尉! ストームチームを前面に出しましょう! 彼等なら、敵を殲滅してくれます!」

 

「…イヤ、それはダメだ…。俺達の仕事は、奴らを護衛する事だ。無傷でストームチームをマザーシップの直下まで送り届けなければならない!」

 

 自分でも己の言ったことが、どれだけ破綻しているかわかる。だがそれが司令部の打ち出した苦肉の策であり、同時に考えうる中で最も勝率の高い作戦なのだ。

 俺達は、命を捨てなければならない。

 人類のために。

 

「俺たちはそのための囮ですか!?」

 

 目の前の絶望的な戦況に、つい悪態が口を突いて出る。だが、それに対する答えはみんな分かり切っている。

 

「ああそうだ! 俺達の誰が…いや、全員死のうが、奴らが生き残れば人類は勝てる!」

 

 目の前が一瞬、真っ暗になった。

 いや、瞼を瞑っただけだ。それでも、その一瞬だけは敵も味方も見えなかった。暗闇と、何より平穏がそこにはあって、そしてそれ以外の何者も存在しなかった。

 

 そして俺は目を開けた。

 

 相も変わらず、銃弾やレーザーなんかが飛び交う、クソのような戦場。

 

「…いいか、俺達の任務はストームチームの護衛だ!彼ら無くして勝利は無いと思え!」

 

「覚悟はできてる…! 行くぞ!」

 

 ストーム5は、遊撃部隊ではあるが、一団として動く。そして、火力を集中しての迅速な目標の破壊が仕事となる。

 

 ならば、目指す先はただ一つ。

 

 

『各員! 苦しいだろうけど──もう一息!』

 

 アーマード・コアのパイロットから、ストーム5へ宛てた全体通信が入る。

 わかってる。あの船を落とせば、人類は勝てるんだ。

 

「おおぉぉぉーーーっ!!!」

 

「うおおぉぉぉっ!!」

 

「EDF!EDF!」

 

 雄叫び。

 それは部隊全員へと波及していく。

 誰が最初に叫んだのかは分からない。だが、誰かが鼓舞のために発したそれは、全員の精神を一つとした。すなわち、マザーシップを撃墜するという、最大最後の目標のために。

 

「左翼! エイリアンの揚陸艇だ!」

 

『エイレンが焼く! 右翼を頼むぞ!』

 

 ブレイズチームのコンバットフレーム・エイレンが、隊の左方向へ展開する。右方からは相応の怪物の群れが接近している。

 

 α型、β型はもとより、丸まって攻撃するγ型、多数のドローン。中には、インペリアルドローンと呼ばれる親衛隊機のような高性能ドローンや、銀の装甲を持つβ型が混じり、それらを指揮するように、アーマーを纏うコロニスト型エイリアンが射撃してきている。

 

『エイリアン降下!』

 

『……今だ!撃てーーっ!!』

 

『おおおっ!!』

 

 パルス弾の照射と、レーザー槍の直撃。

 それでも重アーマーを着込むエイリアン相手では充分な打撃たり得ない。

 

『効いていないぞ!?』

 

『いや、怯んでる! アーマーに攻撃が通ってるから、奴らはビビってやがるんだ!』

 

『よぉし、オーバーヒートした機は順次後退し冷却! そうでない機は弾を浴びせ続けろ!』

 

 エイレン部隊が激突を繰り広げる。

 

 同時に、右翼方向では、フェンサーによる壁の展開と、その上空からヒットアンドアウェイを繰り返すウィングダイバー、そして全体的に射撃を加え敵を減らしていくレンジャー部隊と戦車隊が、その後方で護衛されているストームチーム四隊を守るべく、眼前に迫り来る敵へありったけの弾丸を喰らわせていた。

 

「はぁぁああっ!」

 

 フェンサーの持ちうる地上用の破壊兵器。

 ヴィブロハンマーは、その発動時に非常に強い衝撃波を周囲に放ち、投射物の勢いを激減させる。それは弾道さえ逸らし、受ける手傷をも軽減するもので、プライマー技術が含まれない純粋な人類技術の粋であった。

 

「こちらガードチーム、長くは持ちこたえられないぞ!」

 

「分かってる。レイニア隊とスフィア隊はフェンサーチーム上空に展開する! スプリガンに我々の意地を見せろ!」

 

「おおーっ!」

 

 降下翼兵部隊が、飛び上がってくるβ型とγ型を手持ちの粒子ビームライフルで撃ち抜く。

 

 最新鋭のV4プラズマコアから供給されるエネルギーは、最後に与えられた最大級の威力を誇る中距離パワー兵器である、マグ・ブラスターG3へと供給され続け、如何に優れた防御力を持つ外皮・甲殻であれ容易に破壊せしめる。

 

 一般的な金属の融点を軽々と越える温度にまで加熱された超高温の金属粒子を、線上に照射することで装甲や生体を融解させる。

 

「銀のβ型が来てるぞ!」

 

「ブルージャケット、構えろ!」

 

「よォし…各員、最新兵器のパワーを見せつけてやれ!」

 

 

 フェンサー隊の後方、本隊にほど近い位置のレンジャーチームが、その武器を構える。

 それは、開戦初期から対ドローン・対怪物双方で大活躍の記録を残し続けてきた、怪物駆除のエキスパートである狙撃部隊だ。

 

 

 

 数年間を怪物との戦闘に費やし続けた、ブルージャケットチーム。

 

 彼らに支給されたのは、試作段階で世に出ることのなかったライサンダー2の制式改良版。

 威力や射程を削ぐものの、回転式だったボルトアクションをストレートプル式に変更し、薬室の機構を簡略化。それまでのライサンダーシリーズの使用弾薬を維持しながら、操作性含む汎用性の向上に成功した。

 

 それは『ライサンダー・エリート』と、開発スタッフからそう呼ばれる代物であり、これもまた一部の精鋭にしか与えられていない試験段階のスナイパーライフルだった。

 

「狙えェ!」

 

 ライサンダーを構えるブルージャケット各隊。

 

 狙うは高価値・高脅威目標。

 銀のβか、敵を指揮するコロニストだ。

 

「──撃てーーーッ!」

 

 轟音の連続。

 それらが鳴り終わったあとは、まるで静寂が場を支配したかと錯覚するほどの凄まじい破裂音。

 銃身……いや、砲身と呼ぶべきだろう。そこから放たれる弾丸は、一秒に6750mを飛ぶ。

 

 一般的に用いられる音速は340m/s(秒速)であり、これをマッハ1と呼ぶ。

 

 すなわちライサンダー・エリートの放つ弾丸は俗にマッハ20に到達しうるスピードを繰り出せ、それはあまりの速さにライフリングをほぼ無視するにも関わらず、僅かな回転で非常に安定した直線を描き、着弾点を文字通り粉々になるまで粉砕する。

 圧倒的な、運動エネルギーによって。

 

 

「命中! キル1!」

「いいぞ!」

 

 その威力は絶大だった。

 歩兵部隊が持つ小口径のライフルや、子弾を拡散発射するショットガン程度では有効打を与えられなかった銀甲殻β型を、ものの二発、当たり所によっては一発で撃沈せしめるパワー。

 

「次を狙え!」

 

「…うわっ、仕留め損なったやつが抜けてきてる!」

 

「護衛部隊に任せろ! 俺達は遠くの敵を撃つ!」

 

 ブルージャケットチームが遠方の銀甲殻β型に狙いを定める間、その近くで専用のショットガンを構える部隊があった。

 

「射撃しろ! 狙撃部隊を死守!」

 

 護衛専門の部隊というものが、緊急で編成された。優れた戦果を挙げる部隊の為に、各兵科から数個部隊ずつ選ばれ、専用の武装とアーマー、そして護衛の訓練を経て、それらは作り上げられた。

 

 フェンサーからは、ガード・オーガチーム。

 ウィングダイバーからはレイニア・スフィアチーム。

 

 そしてレンジャーからは、ファイアチーム。

 

 ファイアチームには、破壊力を多少妥協し、マガジン式を採用する事で継戦能力を大幅に高めたフルオートショットガン、SGN-11Aが配備された。

 散弾銃の中では破格の装弾数を誇り、34+1発、合計35発の高威力散弾をばら撒く事ができる。

 

 そして、その圧倒的な連射速度と弾幕があれば、銀の甲殻をすら破壊せしめる。

 

「オラオラァ!」

「オオッ!」

 

 気性の荒いレンジャーチームであるファイア部隊だが、護衛部隊に選抜されるほどの実力者であり、また仲間内の結束が強い部隊でもある。そして、守る目標は命にかえても守る度胸も持ち合わせていた。

 

「よし、排除したぞ!」

「スナイパー! 背中は俺達に任せろ!」

 

「恩に着る! 全員、恩人にブルージャケットの力を見せつけてやれ!」

「了解!」

 

 フェンサーが抑え、ウィングダイバーとブルージャケットが敵を削り、撃ち漏らしをファイアが殲滅する。

 

 20機のエイレンが抑える左翼、陸戦部隊各員が抑える右翼。

 

 そして、正面。

 

 

 

 

「中尉! これ以上近寄れません!」

 

「駄目だ! 前に出てストームチームの露払いをしなくてはならない!」

 

「クソッ…畜生!」

 

 俺達スピアチームの損耗は激しい。グラビス、タンク双方も既に数機、数両が破壊されており、歩兵にも損害が出始めている。

 だが、ビークルの火力を出し切るためには、小回りの利くレンジャー部隊が敵の攻撃を受け止め、流す囮になる他ない。

 

 その為に、先行配備されたライトフェザー・リキッドアーマーE3がある。

 受けた弾丸の衝撃を生身でなくアーマーのみで吸収し、着用者にダメージを蓄積させず戦闘能力を維持する、最新鋭のアーマーだ。

 

 そして、T4ストークMk.II。威力、射程、装弾数どれを取っても申し分のない最高のライフル。更に、最前線に立つ部隊として、俺達には専用の()()()()()()()()が支給されていた。

 

「これ以上の被害は許容できん。セントリータレットを展開!」

「了解!」

 

 指示が残ったレンジャー全員に届き、温存していたZE-GUN10の残数を全て投入させる。

 

 短い稼働時間ながら、継続した火力を安定して供給できるのがZE-GUNシリーズだ。

 平時では誤射の可能性を懸念され生産はされつつも配備はされなかったが、戦時中のため特例で一部部隊に在庫が全て引き払われた経緯を持つ。

 連射速度は高くないものの、総勢60基もの弾幕が、怪物やエイリアンの群れを押し返す。

 

 また、グラビスでのみ採用された専用のリボルバーカノン、ヘビーリボルバーは、大口径による破壊力と貫徹力が最たる魅力であり、肩部グレネードと併せて大群への殲滅力が最も高いコンバットフレームと言える。

 

 それが、こうまで数を減らされる理由。上空のマザーシップ砲台にあった。

 

 レーザーが飛び交う戦場というのは、気の休まる暇が無い。幸い敵の狙いは正確で、正確すぎるゆえに動き続ければ歩兵に命中することはない。

 

「クソ、砲台を潰さないとビークルがやられちまう…」

 

 問題は、部下のひとりが言及した通りだ。マザーシップの砲台から放たれるレーザーは正確無比。鈍重なビークルでは回避などできず、如何に装甲が取り柄のグラビスとて長くは持たないのが現状だ。

 

「ブルージャケットはこっちに回せないのか!?」

 

 地上からの攻撃はほとんど届かず、砲台に射撃を命中させられるのは長射程のロケットランチャーか、狙撃銃くらいしかない。ランチャーは弾速では劣るため、現実的な手段は狙撃のみだろう。

 

「銀のβ型への対処で手一杯だ! マザーシップの砲台に対処する程の手数は持ってねえ!」

「愚痴を吐くな、俺達はEDFだ。どうにかするぞ!」

 

 どうにか。だが、どうすればいい?

 吐いた言葉を俺は飲み込めない。部下が死ねばそれは俺の責任だ。だが死んでいく部下に逃げろと命じることはできない。

 

 漫然と、目標に向かって味方を動かし続ける。

 俺は中尉という階級に則って、味方を死地に送る。

 

 

「──尉! 中尉!」

 

「…クソッ! 聞こえてる、どうした!?」

 

 意識が僅かに逸れる。

 今はそれどころではない。部下の言葉に耳を傾けた。

 

「ストームチームが作戦を開始しました! 我々の第一目標は達成されました!」

 

「漸くか! 部隊損耗率はどうなっている!? 各隊、被害状況を報告しろ!」

 

「こちらは右翼方面! 損耗率は20パーセントといったところだが、敵の数が激増してきている!」

 

『こちら左翼方面、被害状況15パーセント。だが敵の数に関しては向こうが圧倒的! 俺達だけでは抑えきれない!』

 

 これ以上の戦闘は、無茶だ。

 損耗率は30パーセントを超過しており、これは通常ならば戦闘能力を損失した()()という扱いとなる。

 それでも、地球の未来、人類の未来のために、俺たちはこの銃を握らざるを得ない。

 

 左翼にも右翼にも、十分すぎるほどの戦力が補充されていたはずだ。それが、マザーシップ直掩部隊と一度交戦するだけで、こうもボロボロになるものなのか。

 

「クソ…最大の作戦目標は達成した! これ以上の戦力の磨耗は許容できん、撤退しろ!」

 

「しかし、ここまで来て諦められませんよ!」

「ああ…勝利は目の前なんだ。明日の朝日を拝む前に死ねるか!」

 

 振り向いた二人の副官が、撤退を拒否する。

 

『こちらエイレン、誰が退けって?』

『そうだ! スケルトンはまだまだ動くぜ!』

『私達も、まだコアが焼け付くまで飛んでいない!』

『銃の弾はまだある! 俺達はまだ戦える!』

 

 俺達は、彼等のような英雄じゃない。無理な作戦に組み込まれれば死ぬし、名声を轟かせるような活躍もできない。なのにそこまで戦いを望む理由は何だ。

 

 …いや、わかっている。

 英雄になれなくてもいい、生き残れなくてもいい。人類が勝利し、未来に希望を託せる。それこそが今ここに踏み留まって戦う理由なのだ。

 

「…くそっ、ここには命を捨てる馬鹿が多すぎるな」

 

「確かに俺達はそうです。でもそれは、昔のあなたも同じだったはずでしょう、中尉」

 

「勝ちが目の前にあるんです。俺達は死んでもいい、でもストームチームは違う。あいつらは本当の英雄になる。その為なら俺は、この命を捨ててもいい!」

 

「──ああ、くそっ!」

 

 銃を構え直し、部隊を再編させる。外から迫り来る無数のテレポーションシップや揚陸艇、怪物の群れに狙いを定めた。

 

「お前達をこんな作戦に投入するのは、今回限りだ。行くぞ!」

 

 ストームチーム四個部隊がマザーシップと激突する。その後ろを託すように、ストーム5全部隊は敵部隊の目前に立ち塞がった。

 

 彼らが死ぬか、星船が落ちるか。

 血戦の火蓋は切られた。

 

 






 ストーム5
 ストームチーム直掩部隊

 ガードチーム、オーガチーム
 ヴィブロ・ハンマーを装備した陸戦装甲兵。シールドを併用したハンマーの殴打は、高い防御性能を発揮し、威力にも優れている。
 グリムリーパーチームの装備するスピアよりも近距離に踏み込むことで、味方高価値目標の護衛を務める。また、彼らの強化外骨格(パワードスケルトン)には独自の付加機能が備わっている。

 レイニアチーム、スフィアチーム
 マグブラスターを装備した降下翼兵。中距離パワー兵器と呼ばれるカテゴリの武装の扱いに長け、比較的遠距離の敵を集中して各個撃破する。
 射線を妨げにくいことから、狙撃部隊の援護に向く。また、フライト時のエネルギー効率に優れる専用カスタムがプラズマコアに施されている。

 ファイアチーム
 SGNショットガンを装備した精鋭歩兵。レンジャー自体が、元々どのような武装でも扱えるよう訓練される陸戦歩兵の選りすぐりではあるが、ファイアチームは特に近接戦闘での生存率の高い兵士だけで構成されている。また、恐れるもののない荒くれ者集団でもある。


 ストームチーム遊撃部隊

 スピアチーム
 ブラッカーA5、レンジャー五個分隊によって構成される機甲歩兵中隊。平均的なEDF支援中隊と部隊編成は酷似しているが、高火力の携行火器や自動砲塔を持ち合わせ、最も柔軟に動くことを目的に編成されている。

 スピアチーム・コンバットフレーム
 ヘビー型フレーム・グラビスを配備された、装甲化外骨格中隊。通常型のニクス、光学兵器搭載型のエイレンにに対し、旧世代型ではあるものの、現行の被甲技術により、防衛用兵器としては破格の重装甲を持つ。

 ブレイズチーム・コンバットフレーム
 最新型フレーム・エイレンを全機換装した、機甲歩兵最大の戦力。パルスマシンガンX-R9を両腕に搭載しており、650m以内を射程に捉え、高周波レーザーの連続照射によって射程内の敵を瞬く間に破壊する。

 中尉
 直接指揮を取るのが難しいACパイロット・ウィンディに代わり、ストーム5の指揮代行権限を持つ、歴戦のレンジャー。負傷により一定期間前線を退いていたが、高い指揮能力と戦闘能力を買われて抜擢された。

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