【ライトニング・サムライ】~転生者はダンジョンで英雄になりたい~ 作:独身冒険者
今日はディムル達Lv.1組とダンジョンです。
早いものでディムルが恩恵を授かって一年が経った。
まだランクアップするには勿体ないと思うので、ディムルにはまだまだ頑張ってもらうことに。
もっとも、本人が一番まだまだ伸ばす気だからランクアップする気ないんだけどな。
今回はドットムにも付いてきてもらうことに。
「って言うかよ。この面子だったらアーディやアストレアの連中とも一緒に行かせてもいいんじゃねぇか?」
「ん~~……それも考えたけど……やっぱミュリネがなぁ」
今以上の大人数になって、ディムルがミュリネの暴走をコントロール出来るか? 周りとの連携面でかなり負担がかかると思う。
ミュリネが他の冒険者の言う事聞くとは思えん。もう少しミュリネが落ち着いたらかな?
「ミュリネ抜きでもいいのかもしれないけど、それはそれでなぁ」
「まぁ、この面子だと前衛がミュリネ嬢ちゃんだからな。確かにもう少し他の連中が育たんとちと厳しいか」
「ああ、もう少し自分の事を自分でカバー出来るようになってもらってからだな」
それに、梓が少しまだ不安だ。
梓は現在もサポーターメインでダンジョンに入っている。
薙刀で戦わせてはいるけど、やっぱり梓は典型的な
エーディルやディムルが言うには、エルフは別に恩恵やスキル関係なく魔法を使うことが出来るそうだが、それを使うには長い修行と特殊な儀式が必要で、詠唱も長いらしい。
だから、梓に使わせるくらいならさっさと恩恵由来の魔法を発現させた方が良いという結論になった。
でも、本当に魔法ってどんな理屈で発現するのか分かんないんだよね。
いや、基本的に自分の資質や経験を基に発現してるんだろうけどさ。そうなると梓が一番大事にしている事が重要になるってことだ。そうなるとやっぱり俺じゃ口出しできない。
まぁ、エーディルが特に気にかけてるみたいだから大丈夫だと思うけどさ。
そんなことを考えながら、俺、ツァオ、ディムル、リリッシュ、エーディル、ミュリネ、梓、秀郷、ドットムでダンジョンを移動していると、
パーティの後方で、なんかエーディルと梓が滅茶苦茶真剣な雰囲気で話してる。
「さて、良いかや。梓」
「はい」
「お前は何故、自身の魔法が未だに発現せぬのか。その理由に思い至っておるか?」
「……いいえ。申し訳ありません……」
エーディルの言葉に梓はシュン…と顔だけでなく耳まで項垂れて謝る。
でも、それが分かれば誰も苦労しなくね?
「これがヒューマンやアマゾネスなど他の種族であれば、深く思慮する必要はないであろう。されど我ら魔法種族であるエルフとなれば、ちと話が変わる」
ふむ?
「我らエルフは古代より先天的に魔法を扱う事が出来た種族。その身体には否が応でも魔法に適する『血』が流れており、あらゆる『可能性』を蓄積しておるのだ。故に、神時代の訪れ以降、『恩恵』を刻まれたエルフはその時点で必ずと言っていいほどに『自身に適合した魔法』が発現する」
「……でも、私は……」
そう、梓には魔法が発現しなかった。
と言う事は、今の話では梓には適合する魔法が存在しないことになる。
「焦るなや、梓。何事にも例外は存在するものよ。例えば――余、であったりな」
「え?」
「余もまた、魔法の発現には時間を要したのだよ。故にお前の焦りも不安も手に取るように解かる」
そうなのか……。
「余が一つ目の魔法を得たのは――生まれて初めて他国と戦をした時だった」
「そう、魔法には『血』だけでは発現せぬものがある。それを解き放つ唯一の鍵は――『自覚』だ」
「……自覚」
「うむ。己にとって、『魔法』とは如何なるものか。己にとって、『魔法』とは何するものか。それを定めた時に、ようやく己の中の『血』が息吹く。そのようなエルフが極稀にいるそうだ。神曰くな」
へぇ……エルフだからこそ、でもあるのか?
「ちなみに、余がその時抱いた『自覚』とは『王族としての覚悟』である」
「……王族としての覚悟」
「いかにも。では、お前にとっての『自覚』とは何かや? それを、
エーディルはそう言うと話は終わったとばかりに、梓から視線を外す。
梓は考え込むように俯いている。まぁ、あんな話されたらそうなるよな。
ふむ……こうなると早めに切り上げるべきか?
「構わんよ、団長殿。梓は今はサポーターだ。戦闘に参加させる必要がないのだから、このまま進めばいい。余らの戦いを見て、気づくこともあろう」
そんなもんかねぇ。
まぁ、ディムル達がいいなら、それでいいけど。
と言う事で、あの後も特別話すこともなく探索は終わった。
流石にこのメンバーだったら上層は余裕だな。まぁ、インファント・ドラゴンとは戦ってないけど。
まぁ、エーディルがいれば上層のモンスターは余裕で倒せるんだけどな。
でも、エーディルが要所要所でフォローしてくれているからシルバーバックも安定して倒すことが出来ている。
これなら中層でも行けるか? いや、でもやっぱり梓がまだ厳しいか。
原作ではリリルカ・アーデがいたけど、リリルカは知識とアイテムでベル達を支えていた。
対して梓はステイタスはリリルカよりは上だけどそれだけだ。現状ではちょっと大変だろうな。
さっきのエーディルとの会話が変化のきっかけになればいいけど……。
でも、その前に……。
闇派閥を倒さないとね!!!
くそっ! またダンジョン出たところで暴れられるのかよ!?
しかも、全員揃ってない時に!
周りは……【ガネーシャ・ファミリア】もいる!
「ドットム! 仲間と合流してバベルに避難誘導を! ツァオ、梓、ミュリネとここに避難してきた人達の護りを! 秀郷、リリッシュ、エーディルはここから遠距離援護! ディムルは俺と行くぞ! あまり前に出過ぎるなよ!! エーディル達のフォローを意識しろ!」
「承知!」
「はい!」
「すまねぇ!!」
「了解」
「……やれることは、やる」
「ウゥ!!」
「は、はい!」
皆の返事を聞きながら、俺は刀を抜いて飛び出そうとした時、
「フロル、ディムル、余らの援護はいらぬ。
「!! 分かった! 頼む! 【鳴神を此処に】!!」
魔法を発動して一気に乱戦に飛び込む。
戦っている冒険者の合間をすり抜けて、闇派閥構成員達を斬りつける。
「っ!! じ、【迅雷童子】! 助かった!」
「敵はここだけか!?」
「中央広場全域から西通りに展開された!! 西通りはシャクティ団長達が動いてる!」
「分かった! なら俺達はこのままここの連中を殲滅する!」
すぐさま次の敵に向かって駆け出す。
少しでも早く終わらせる!
飛び出したフロルを見送ったエーディル達も、すぐさま動き出す。
「やれやれ……兵は拙速を尊ぶとは言うが、大将が迅速の一番槍と言うのは少々困ったものよな」
「それがうち」
「くくくっ! 違いない。さて、梓や」
エーディルはリリッシュの素っ気ない返答に一笑いしたかと思うと、背を向けたまま梓に声をかける。
「は、はい……!」
「良き時機ではないが、丁度良い。我が魔法の真髄と抱きし想いを聞かせてやろう」
エーディルは一歩、前に出ると足元に魔法円が出現する。
「この魔法は――余が『王』である証であり、余が『忘れられぬ憧憬』であるが故に」
そう告げた女王は高らかに詠い始める。
「――【集え、天衣無縫の騎士団よ。今こそ戦の時】」
「【汝らの忠義は我が剣。汝らの献身は我が鎧。汝らの咆哮は我が盾となる】」
それは梓や秀郷、ミュリネは初めて目にする威厳、耳にする詠唱。
梓は目を大きく見開き、全神経を注いでその姿を瞳に刻む。
「【其は永久の契り。この身朽ち果てる其の時まで、この身は王を拝命せし】」
「【告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に】」
「【誓いを此処に。この意、この理に従うならば、我が命運、汝が剣に委ねよう】!」
「【我が名は――スヴァルディオ】!!」
女王は杖を力強く地面に叩きつける。
「【エイスゥツ・グラズヘイム】!」
魔法円が広がり、エーディルの前方に黒騎士の軍隊が出現する。
「我が騎士、我が臣下、我が力、我が手足――かつての我が命の欠片よ。魅せつけよ!! 我らが滅びし祖国の、かつて在りし勇姿を以って!!」
『ヴゥオオオオオオオ!!』
「蹂躙せよ!! 我が眼前の敵を!!」
女王の発令と同時に、黒騎士達が進軍を開始する。
瞬く間に攻勢は逆転し、エーディルの周囲の安全圏が確保されていく。
黒騎士団の波に飲み込まれたディムルは、その威気に身を震わせる。
「これが、真なる騎士……! 死して尚、忠義に立つ……武道の極みの一……!」
かつて己が祖先が立っていた道。己の憧憬。
「この身はもはや騎士に成れず。されど今は……共に肩を並べる栄誉を!」
双槍の騎士は黒騎士と共に戦場に舞う。
そして、黒騎士達もまた、同胞の参戦を歓迎するのであった。
そんな騎士達の舞踏を見つめながら、女王は更なる一手に出る。
「この魔法は――余が王位を継ぎ、民の、臣下の、黒き国を導く『輝き』と成らんと誓った『王への覚悟』!!」
新たな魔法円が足元に輝く。
「【三度の厳冬を越え、訪れるは終焉。大いなる輝天は闇に吞まれて、大いなる大地は崩れ散る】」
新たな詠唱を止めようと闇派閥構成員達がエーディルを狙おうとするも、少しでもエーディルに近づこうとすれば黒騎士達が立ちはだかる。
弓矢で狙おうにも、エーディルの近くに控えていた盾持ちの黒騎士が防ぎ、剣や槍を持つ騎士達も矢を斬り落とす。
「【解き放たれるは邪火。暴虐と破滅が世界を覆う】」
止められない詠唱に構成員達は歯噛みするが、逆に黒騎士達の合間を縫って矢が飛び潜り、肩や胸を穿つ。
秀郷の矢だ。
「ぎゃっ!?」
「ぐあ!?」
「【堕ちろ、命の星々。轟き響け、虹光の角笛。この身はアールヴ】!!」
襲撃者の絶望はさらに続く。
詠唱が終えると同時に、頭上に大量の魔法陣で形作られる角笛が出現する。
「【ステルナ・ギャラルホルン】!!」
光の流星群が放たれ、闇派閥へと正確無比に襲い掛かる。
たった一人で戦況を覆す。
その一人の魔導士に、闇派閥はもちろん、戦場で戦っていた冒険者達は身を震わせる。
「これが……もう一人の……!」
「まさしく、ハイエルフの力……!」
「おい! ここはもう奴らに任せて他の場所に行くぞ!」
「何を言っている!? まだ闇派閥はいるんだぞ! あの方一人に押し付けるわけには――」
エルフの男が仲間の言葉に逆らい、戦場に残ろうとしたが、
「そして最後にして、最初の魔法は――我が祖国を、我が民を脅かそうとする、侵略者を、障害を全て押し流すための『力』にして……例え周囲から、身内からも恐れられようとも国と民を護るためにこの身を血で汚す『王族としての覚悟』」
3つ目の魔法円が女王の足元に広がる。
「【渦巻くは母の怒り、うねりて我が子の外敵を押し流せ】」
「【その怒りは大地を抉り、あらゆる障害を砕きて揺り籠と成れ】」
「【九の光を以って突き刺せ。九の愛を以って包み込め。九の
溢れる魔力、巻き上がる風、靡く長髪。
その全てが威厳を成し、周囲を圧倒する。
「【我が母よ、我が波よ、汝らが産み出す光は世界の果てへと至らん】!」
故に魔法の完成を邪魔する事は誰にも出来なかった。
「【モォヅゥス・ヴィーヴァ】!!」
エーディルの頭上に九つの魔法陣を擁する巨大な魔法陣が出現し、その九つの魔法陣から水の竜巻が放たれた。
解き放たれた九つ頭の水龍は、容赦なく中央広場にのさばる闇派閥を呑み込んでいく。
連続で解き放たれる大魔法に、他派閥の冒険者達や避難してきた一般人達は茫然とするしかなかった。
その水流の合間を雷が駆け抜け、逃げ延びた闇派閥を貫く。
「ホント……とんでもないな」
フロルは水流に足を取られないように気を付けながら敵を斬りつけていく。
水が収まる頃には闇派閥は掃討されており、逃げ延びた者達はすでに中央広場から逃げ出していた。
「結局エーディルだけで終わらせたな……」
刀を納めながらボヤくフロル。
その呟きが聞こえた冒険者達は、
「いやいや……あれだけ動き回ってよく言うぜ」
「中央広場にいた闇派閥、ほとんどあの二人で倒しちまった……」
「あれが新興派閥とか誰が信じるの……?」
「もう中堅でも飛び抜けてるだろアリャ」
「流石はハイエルフを擁する派閥の団長というわけか……ちっ」
呆れや妬みが籠められた視線を向けられている事を感じながらも、フロルはもはや慣れたものとばかりにエーディル達の元に戻る。
「怪我人は?」
「おらぬな」
「
「以降戦闘がなければ問題ない」
「じゃあ、帰って休むか」
「先に換金」
「出来るかぁ? 今の襲撃でてんやわんやだと思うぞ?」
「ドットム殿はどうされるのですか?」
「声はかけるけど、多分シャクティさんの手伝いするだろ」
と言う事で、ドットムに声をかけて本拠へと戻ることにしたフロル一行。
移動中、梓は顔を俯かせてずっと考え込んでいたが、誰もその邪魔をすることはなかった。
本拠に戻り、思い思いに過ごして体を休めることにしたフロル達。
自室に戻り、身を清めて部屋着に着替えた梓は部屋の真ん中で正座していた。
「
エーディルに問われた言葉を頭の中で何度も反芻する。
「私にとって、魔法とは何をするものか……」
そして、先の戦いの光景と言葉を思い出す。
自分は何のために魔法を欲するのか、何のために使うのか、何を為したいのか。
「……思い出す」
それはつまり、自分は一度答えに至っているという事。しかし、それを忘れてしまっている。
いや、違う。
「『自覚』、覚悟……。そう、私には覚悟が足りないのですね。たとえ――誰かを傷つけ、命を奪うことになっても……あの方の為に魔法を使う、覚悟が」
怖いのだ。自分が奪う側になる事が。
大切な家族を奪われたからこそ、自分が奪う側に回り、誰かに恨まれるのが怖い。
それは当然の感情だ。怖がって当然だ。
だが、それでは何のためにフロルの傍に来たのか分からない。
「ただ傍でお世話をするだけでは……あの方を本当の意味で支える事は出来ない」
何より、それだけしか出来ないのは嫌だ。
最初はそれでもいいと思っていた。
ただ傍に居られればそれでいいと。
でも一緒に過ごせば過ごすほど、戦う姿を見れば見るほど、フロル達と戦場を共にすればするほど。
何も出来ない、弱いだけの自分が嫌になる。嫌いになる。
そして――羨ましく、妬ましい。
フロルと肩を並べて戦う事が出来る団員達が。
フロルに頼りにされている団員達が。
――フロルと笑い合い、切磋琢磨している
この醜いとも思う感情はどこから来ているのか。
梓はまだ理解していない。
しかし、まだ解らずとも、梓にとって今大事なのはそこではない。
今最も重要なのは、何も出来ない、誰の立ち位置にも成り替われない己への怒り。
「私は――弱いままで、いたくない……!!」
あの人を、支えたい。
故に、自分が魔法に求めるは――『献身』。
では、自分が捧げられるモノはなんだ?
「歌と……踊り。……私にあるのは、たったそれだけ……」
これだけで何が出来るのだろう?
梓は必死に考える。
それこそが答えなのだと気づかぬままに。
「……今から新しい事を、始めてる時間は……ありませんよ、ね……」
ならば、出来ることを。
「私に出来るのは歌う事と舞う事だけ。……今まで聖樹や精霊様に捧げていましたけど……これからは、あの方の為に捧げたい」
それが魔法に繋がるのか。
自信は全くない。
何もない自分なのだから。与えられてばかりの自分なのだから。
それでも……やらなければ、続けなければ、本当に何もなくなってしまう。
「歌いましょう、舞いましょう。それが……私の、私だけが出来る事」
やるべきことが定まった。
この時、梓は自身の身体で――正確には背中で、カチリと、何かが嵌る音がしたことに気付かなかった。
その夜、梓に――魔法が発現した。
さぁ、どんな魔法か。
もう少々お待ちを!