第一話
テラグリジアパニックというヴェルトロという名のテロリストが引き起こした大事件から一年が経過した。
その事件に深く関わっていた、本来ならば対立している組織のトップである二人の男が顔を合わせていた。両者が持ち寄ったUSBを交換し、これからのことに関しての話し合いも終盤に差し掛かっていた。
「それで私たちはどう動けば良い?」
義手の男がくたびれたコートを着ている男へそう投げかけた。
「アイツが一番恐れているのはお前だ、だからできるなら暫く遠くに居てくれるとありがたい」
その答えを聞くと義手の男は立ち上がり扉の方へ歩いていく。
「今ちょうど暇で優秀な奴が一人いる。事が起こったらそっちの対処はそいつに一任する。事件の間は旅行にでも出かけるとするよ」
そう言って片方は部屋から出た。残された男はタバコに火をつけ深く煙を吸い込み吐き出す。
「これが吉と出るか凶と出るか‥」
そう呟くと強引にタバコを灰皿に押し付けた。
それから数日後ネオアンブレラの支部で一人の人間が作戦室に呼ばれていた。全身黒ずくめの旧式になりつつある戦闘服、赤いゴーグルが怪しく光るヘルメット、武器は持っていなかったがその姿はアンブレラの保有する特殊部隊であるUSSの隊員であることを示しており、物静かではあるが滲み出る重圧が潜ってきた死線の数を物語っていた。
「よくきてくれた」
そういう男は頭にベレー帽を被り、顔にはいくつか目立つ傷や背中に鉄板でも入っているのかと勘違いしてしまうような姿勢からその男が軍人であったことがわかる。いくつかの書類を手に持っており、今までの経験則から黒ずくめの男は自分が呼ばれた理由を察する事ができた。
「次の任務か」
「ああ、お前にはこれからコイツと組んでもらう」
そう言って渡された紙の束には一人の女エージェントの情報とFBCとの共同作戦の概要が所狭しと書かれていた。
「了解」
書類の読み込みもそこそこに短い返事と共に紙をしまう。だが黒ずくめの男は部屋から出ようとはしない。これは勿論作戦のことについて分からないことがあったわけではない。自分の雇い主が自分を使うとき、大抵は記録に載せられないことしか命令してこない。他の隊員が呼ばれていないことを見るにこの作戦には何か裏があることを確信していた。
その様子を確認するとベレー帽の男は話を続けた。
「さて、今回の任務の目標は陽動だ。そこに写っているFBCの隊員は恐らく我々の監視、そしてお前が下手なことを知った場合の口封じを命じられているはずだ」
先程渡された紙の束のどこにもそんな事は書かれていない。だが黒ずくめの男は微動だにすることなく話を聞いている。
「そこでお前の任務は何も気づかないことだ」
そこまで説明されたところで初めて口を挟んだ。
「どういうことだ」
「先に言っておく、今回噂されているテロ組織ヴェルトロ復活はBSAAのでっち上げだ。そして我々アンブレラもBSAAに協力している」
その発言である程度事情を察する事ができた黒ずくめの男は簡潔に自分の考えに食い違いが無いか確認し、部屋を出た。
任務開始までおよそ5時間、自身に与えられた個室に行き装備の確認を行う。あの男と出会い7年が経った。雇い主が変わったことで長期の護衛任務が与えられたが訓練を欠かした事もなく、腕が落ちた感覚もなかった。
ひとつひとつ確認するように装備を付け部屋から出てヘリポートへと向かう。
目的のヘリに近づくと長く伸ばした金髪で目元を隠し、全身をスーツに包まれてはいるもののスーツの前のジッパーをヘソの近くまで降ろしているという嫌でも目につく格好をした女が立っていた。
「あっ、ハンクさんですね!私の名前はレイチェル・フォリー、死神と一緒に仕事ができるなんて光栄です!!」
「意味がわかって言っているのか」
「?」
妙に明るく自分のことを死神と言い放つ彼女を訝しむ。自分が死神と呼ばれていることは有名らしいが、そのあだ名が付けられた理由は自分以外の隊員の死亡率の高さが異常だったからだ。要するに彼女は一緒に働くと死ぬって言われている人と働けて嬉しいですと言っているようなものだ。一瞬皮肉かと考えたが顔馴染みのヘリのパイロットが笑いを堪えている様子を見るにアイツに吹き込まれたのだろう。
「まぁいい、いくぞ」
「はい!!」
ヘリに乗り込んだ二人が向かう先はクイーンゼノビア号という豪華客船、地獄と化した海上でさまざまな思惑が交差する。
オリ主なのに主人公が一時的に出なくなります。ごめんなさい。
なんかバイオなのに主人公が全ての事件に出突っ張りなのもなんだかなーと思ったからこんな感じになりました。
ごめんなさい。