黙れば美人、喋ると変人、戦う姿は不沈艦!   作:とんこつラーメン

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 アストレイ…レッドフレーム…!

 確かに、日本刀を使うマシンと聞いて真っ先に思い付く機体!

 機体色も赤いし、性能も申し分ないチョイス!

 やるな船子…!

 今の自分に最も合った機体を一瞬で選び抜くとは…。

 

「ねぇ…一夏」

「言わなくても分かってるぜ…鈴」

「「今回の船子、いつにも増してマジモードじゃない?」」

 

 自分が最も得意な剣での戦闘を最大限に活かせる機体。

 探せば他にも色々とあるが、日本刀となると途端に選択肢は激減する。

 だからこそのレッドフレーム。

 その気になれば、いつでも複数ある強化形態になれるし、元々が『人体の動きを再現する』ってコンセプトになってるから、運動性は他のISなんかとは比較にすらならない。

 

「お…お二人には分かりますの? 今の船子さんの心境が…」

「まぁな。伊達に幼馴染をやってないってことさ」

「そう言う事」

 

 それに、船子のパートナーとして選ばれてる女の子…。

 あの子も恐らくだけど、かなりの実力者だ。

 立ち姿が明らかに素人のソレじゃない。

 完全に武芸者の構えだ。

 

「あ…思い出した」

「何をですの?」

「船子のパートナーになってる子よ。あの子…確か、四組のクラス代表をやってる子だった筈よ」

「「「四組の代表…!?」」」

 

 でも、それだけで、あの立ち姿の理由は付かないだろ…。

 他にも何かある筈だ。

 

「しかも、それだけじゃなくて…クラスの子から聞いた話だと、あの子…日本の代表候補生でもあるらしいわ」

「だ…代表候補生っ!? そう言えば…前に『四組にも候補生がいる』と聞いたことがあるような…それがあの方であると?」

「そうなるわね」

 

 成る程…それで全ての疑問が氷解したぜ。

 候補生なら武芸に通じてても全く不思議じゃない。

 でも…それだと今度は箒が一気に不利になるな。

 箒の剣の腕は一流ではあるけど、ISの方はまだまだ未熟だ。

 それがどんな風に勝負に影響をもたらすのか…気になる所だな。

 

『では、江田島学園長。試合開始のコールをお願いします』

『うむ!』

 

 あ…あの人がするんだ。

 また耳がキーンってならないように気を付けないとな。

 

『それでは! 学年別トーナメント一年の部! 第一試合…開始である!!!』

 

 み…耳がぁぁ…!

 本気で鼓膜が破れるかと思った…。

 

「ね…ねぇ…一夏…あの江田島学園長って本当に何者なの…?」

「船子の大恩人で、色んな意味で人間辞めてる人としか…」

「そ…そうなんだ…」

 

 非常に申し訳ないけど、俺もそれ以上に良い説明が思いつかない…。

 本当に謎だらけの人だからなぁ…。

 千冬姉以上の超チート人間って事を除けばだけど。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 試合が始まり、私は即座に専用気持ちじゃない方と対峙することに。

 碌に作戦も考えてない以上、専用機は専用機、訓練機は訓練機が相手をするのが一番妥当だろう。

 

「お? もしかして、簪が箒の相手をしてくれんのか?」

「うん。こっちは任せて。その代り、そっちはお願いしていい?」

「おう! お願いされたぜ! アタシの背中…任せたからな!」

 

 レッドフレームのサムズアップ…。

 実際のロウ・ギュールもしそうだから違和感が無いや。

 

「そんな訳だから、アナタの相手は私がするね」

「望むところだ」

 

 打鉄専用の近接ブレード『葵』を両手で持って上段の構えをする…ね。

 予想通り、剣を使った戦闘をする気なんだね。

 それじゃあ、私も向こうに合わせてあげようか。

 

「正直に言うとさ、私ってお世辞にも肉体労働が得意な方じゃないんだよね。寧ろ、私の本分は頭脳労働だと思ってる」

「それがどうかしたのか?」

「まぁ、最後まで聞いてよ。でもね、そんな私でも誰にも負けないと自信を持って言える事が二つだけあるんだよ。まず一つはプログラミング。これは間違いなく一年生の中で一番凄いって思ってる。そして、もう一つは…」

 

 予め、打鉄の拡張領域の中に入れておいた『ソレ』を取り出して両手で構える。

 

「この『薙刀』。これだけはマジで誰にも負けないって自負してる。勿論…アナタにもね。篠ノ之箒さん」

「私の事を知って…!?」

「勿論。あの篠ノ之束博士の妹さんでしょ? 優秀な姉がいるが故の妹の苦労…私は凄く良く分かるよ。だって、私もアナタと同じだから」

「同じだと…? お前は一体…」

「そうだね。折角だし、改めて自己紹介しようか」

 

 薙刀を高速で回転させてから、刃の部分を彼女に突き付ける。

 

「私は更識簪。一年四組のクラス代表にして、日本の代表候補生もやってる」

「なん…だと…!? それに『更識』だと…!?」

「そして…ここの生徒会長でありロシア代表もやってる更識楯無の…実の妹」

「あの人の…妹…!」

 

 うーん…我ながら今の名乗りは少しカッコよかったかも。

 

「ぶっちゃけた話、私はお姉ちゃんの事はあまり好きじゃないし、代表候補生になったのも、IS学園に来たのも、お姉ちゃんに少しでも対抗する為。だから、本当は今回の試合も勝敗なんてどうでもよかったんだけど…」

 

 足を広げ、薙刀を握る手に力を込める。

 

「ついさっき会ったばかりの私なんかに、金野さんは迷わず背中を預けてくれた。その期待と信頼には…全力で応えたいよね」

「大人しそうな顔をして…なんという威圧感だ…! そうでなくてはな!」

 

 ふーん…割とマジで威圧してみたんだけど…全く怯まないんだ。

 成る程ね。

 剣道全国王者ってのは伊達じゃないんだ。

 

「一回戦の第一試合だからって出し惜しみはしないから。最初から全力で行く」

「奇遇だな…私もだ!」

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」

 

 気合の入った咆哮と共に突撃し…お互いの持つ刃がぶつかり、火花が散った。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「「…………」」

 

 篠ノ之箒が戦闘を始めた頃、私もまた金野船子の乗る真紅のISと対峙していた。

 まるで日本の武人を思わせる姿に変化した機体…。

 鋭く光る日本刀を両手で握りしめ、構えている姿からは全く隙が見当たらない。

 

(なんというプレッシャー…! これでは動きたくても動けない…!)

 

 もし安易に動こうとすれば、次の瞬間には金野船子の刃の餌食になってしまう。

 それが私には手に取るように理解出来た。

 イメージが全く湧かないのだ。

 自分の攻撃が命中するビジョンが全く浮かばない。

 

(リボルバーカノンでの先制攻撃…いやダメだ。電磁加速された超高速の弾丸であろうと、アイツの手に掛かれば即座に一刀両断される。それどころか、発射した際に生じるほんの僅かな隙を狙われるのがオチだ…!)

 

 ならば、全部で4基あるワイヤーブレードならばどうか。

 

(こっちはもっと駄目だ。僅か4基のワイヤー程度で奴を拘束出来たら苦労なんてしない。寧ろ、一瞬で粉微塵にされる。今の奴には…あらゆる遠距離武装が通用しない…! 下手な射撃は逆に自分自身の首を絞める事に繋がる…!)

 

 私の予想は間違いじゃなかった。

 この女は只者じゃない…!

 これ程の実力者…果たして世界に何人いるか…。

 

「どうした? 仕掛けてこないのかよ?」

「フッ…冗談はよせ。我慢比べに負けて攻撃を仕掛けようとすれば、その瞬間に貴様の刃にて散る運命にある。お前の剣が一撃必殺の威力を持つ事は既に承知済みだ」

「なら…どうする? このまま試合終了まで仲良く睨めっこでも続けるか?」

「それも面白そうだが…今は得策ではないな。だから…こうする(・・・・)

 

 私は、レーゲンにセットしてある非固定浮遊武装(アンロック・ユニット)であるリボルバーカノンを解除して地面に落とした。

 

「お前との戦いでは、このような物は無粋…いや、無用の長物だ」

「ほぉ~…?」

「私も腹を決めたよ。もう私はリボルバーカノンも、ワイヤーブレードも、AICも使わない。馬鹿な小細工を弄した所で、貴様は即座に看破して反撃に転じてくるであろうことは容易に想像出来るからな」

「そうかい」

「目には目を…歯には歯を…そして!」

 

 両手首の部分に搭載されたプラズマ手刀を展開し、腰を低くして構える。

 

「刃には刃で応えよう!」

「上等じゃねぇか…! そして大正解だ! さぁ…頭ん中カラっぽにして思い切り暴れようぜっ!!」

「無論だ! 行くぞ…金野船子ッ!!」

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 試合開始から少し経過し、ようやく動きがあった。

 箒は更識妹と交戦を開始し、ラウラも唯一の射撃武器を捨てたかと思ったら、プラズマ手刀で船子に斬り掛かる。

 

 アリーナ内にある観測室にて、私は山田先生と一緒に試合の様子を見ていた。

 

「なんか、完全近接戦の試合になっちゃいましたね…」

「いや、今回はこれで良い。これが最適解だ」

「そうなんですか?」

「あぁ。もし私がボーデヴィッヒの立場だったとしても、同じように近接戦での勝負を挑んだだろう」

 

 あの数刻、船子とラウラの脳内では幾度にも渡る攻防戦が繰り広げられていた。

 その全てにおいて、ラウラは船子の前に敗れている。

 どんな戦術、どんなパターンを考えても、船子の刃の前では無力と化す。

 だから敢えて、アイツは射撃武器を放棄した。

 こうなった以上、あれはもう邪魔でしかないからな。

 

「それにしても、まさか金野さんのパートナーが更識さんになるとは思いませんでしたね~」

「そうだな」

 

 ルームメイトは更識姉で、試合のパートナーは更識妹…か。

 船子はどれだけ更識家と縁があるんだ…?

 

「図らずも、最有力優勝候補が誕生してしまったわけか」

「訓練機とは言え、更識さんの実力は相当なレベルですものね。そこに金野さんの実力が合わされば…」

「少なくとも、同学年の間では向かうところ敵なしだろうな」

 

 実際、更識妹と戦っている箒はかなりの苦戦を強いられていた。

 生身の実力ならば更識姉にだって決して負けていない筈だが、ISの操縦技術の未熟さが完全に足を引っ張ってしまっている。

 しかも、更識妹が装備しているのは、奴の得意武器である薙刀。

 同じ近接武装でも射程が違い過ぎる。

 素人の薙刀ならば、箒は簡単に懐に飛び込んでみせるだろうが、相手はあの更識妹。

 そう簡単に懐に入らせてくれないどころか、アイツの薙刀捌きに完全に翻弄されている。

 

(傍から見れば、船子と更識妹が圧倒的優位に見えるが…どう転がるか分からないのが試合というものだ。それは、ステージで戦っているあいつ等自身が一番よく分かっている筈。この試合…全く先の予想がつかんぞ…)

 

 学年別トーナメント…最初から波乱の展開になってきたな…!

 

 

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