38話までは頑張ると言って結局21話しか投稿していない作者です。
今日はお知らせがあって投稿しました。
話の続きを見られると期待した方には申し訳ないです。
結論から言うとこの作品を近いうちに削除か限定公開という形にしようと考えています。
理由はこの作品を新しく作り直したいからです。
現在考えている展開上、どうしても投稿している話に大幅な修正が必要になるため、一から作り直す方が早いと考えました。
とはいえ、この作品のことを好きでいてくれる方も少数いるようなのでその方達だけに限定公開するかどうか迷っています。
さて長話になりますがお知らせは以上です。
最後に五条悟と司波深雪のとある日常を投稿してこの作品は幕引きとさせていただきます。
小鳥の囀りが日の出を告げる。
こうした穏やかな朝を迎えられることは五条にとってはとても貴重なことだった。
「悟く〜ん、ご飯ができましたよ〜」
軽い拍子を刻むような足取りで階段を上る。
廊下を少し歩いて、五条の部屋にたどり着いた。五条家に来たばかりの頃は迷うことも何度かあったが、今では慣れたものだ。
深雪は扉を三回ノックする。しかし、部屋の主からの応答はなかった。
遠慮がちにドアをゆっくりと開けると五条の姿があった。
「……ん」
起きることはなく、そのまま寝返りを打ってしまった。
「まったく…しょうがないですね」
言葉とは裏腹に深雪の顔には穏やかな笑顔があった。
ゆっくりと近づくと、優しい手つきで五条の体を揺さぶった。
「悟くーん、起きてくださーい」
しかし、返事はなかった。
普段は声さえかければ起きてくれるのだが、今回は違った。
(連日呪霊と戦って…きっと疲れてますよね)
最近の五条はずっと任務に追われている。
世界で唯一の特級術師に休む暇は与えてもらえない。
魔法という技術が体系化されてから世界は便利になったが平和からは遠ざかってしまった。
呪霊の発生数は年ごとに増していた。
(もう、せっかく作ったご飯が冷めちゃいます…悟くんのリクエストなのに…)
しかし、それはそれ、これはこれだ。
疲れているとはいえ、せっかく手間暇かけて作った料理が冷めてしまうのは嫌だった。
好きな人には一番いい状態で手料理を食べて欲しいのだ。
「起きないと…いたずらしちゃいますよ?」
耳元で囁くが帰ってくるのは穏やかな寝息だけだ。
無視されたことに少しムッとするが、聞かれなくてよかったとも思った。
(ダメです!今の言葉を聞かれたら、はしたないって思われちゃいます…)
寝ているということで油断していたのか、うっかり口にしてしまった言葉に赤面していた。
五条は知らないが、深雪は"そういうこと"に興味津々だ。
実は五条よりも知識が豊富だったりする。
(でも…寝てる今なら……)
無防備を晒す五条に魔が刺してしまった。
いけない、考えてはダメ、そんなことをしたら嫌われる。
ダメな理由を探せば探すほど、したいという欲求が抑えられなくなる。
(少しだけ……バレなければ、きっと……)
トクトクとうるさく高鳴る心臓の音を誤魔化すように、深雪はそっと息を吐き出した。
ベッドの縁に手をつき、ゆっくりと五条の顔へと近づいていく。
普段は目隠しやサングラスで隠されている、端正で白磁のように美しい顔立ち。長いまつ毛が作り出す影を間近で見つめていると、吸い込まれそうな錯覚に陥る。
(悟くん……)
重なる寝息。少し動けば触れ合ってしまいそうなほど近い距離。
深雪は震えるまぶたをギュッと閉じ、自分の唇を、無防備なその唇へ重ねようと——。
「んー……おはよう、深雪」
チュッ、という音の代わりに響いたのは、少し掠れた、それでいて甘さを含んだ低い声だった。
ピタリと深雪の動きが止まる。
恐る恐る目を開けると、そこには宝石のように澄んだ蒼い瞳が、至近距離で深雪を真っ直ぐに見つめていた。
「えっ……あ、あの……!」
「ん? どしたの、そんなに顔赤くして。タコさんウィンナーみたいになってるよ」
寝起き特有の気怠げな笑みを浮かべながら、五条はゆっくりと上体を起こした。
深雪はバネ仕掛けのように跳ね起き、ベッドから距離を取る。顔から火が出そうなほど熱い。見られていた、いや、それ以上に、あわやという所だったのだ。
「ななな、何でもありません! 悟くんが全然起きないから、息をしているか確認しようと……!」
「へぇー? 息の確認ねえ」
五条は意地悪そうに目を細め、頬杖をついた。
「てっきり、『いたずら』されちゃうのかと思ったんだけどなー」
「っ……!!」
その言葉に、深雪は雷に打たれたように硬直した。聞かれていないと思っていた囁きすら、この最強の術師にはばっちり耳に入っていたらしい。あるいは、ずっと前から起きていてわざと寝たふりをしていたのかもしれない。
「あ、朝ご飯! 冷めてしまいますから、早く下りてきてくださいっ!」
羞恥心が限界に達した深雪は、それだけを早口でまくし立てると、逃げるように部屋を飛び出していった。バタン、と勢いよく閉まるドアの音が部屋に響き渡る。
「……ははっ」
一人残された五条は、小さく笑い声をこぼした。
連日の任務で疲労が抜けきらない体だったが、あんなに可愛らしい目覚ましがあるのなら、悪くない朝だ。
五条は大きく伸びをすると、リクエストしていた好物を楽しみに、ゆっくりとベッドから降りた。