転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
この”ノブゴロド防衛線”においてソ連側の前線、モスクワ周辺、ニジニ・ノヴゴロド、カザン、ウリヤノフスクなどの大規模集積所を兼ねた航空基地をドイツ軍やフィンランド軍が空爆しなかったのは、通説では同時にボログダ、スモレンスク、ヴォロネジのドイツ前線拠点が『ソ連のドイツ軍の救援を封じ込める(あるいは作戦中、モスクワを攻撃する)為の大規模陽動攻撃』によりその余力が無かった、この時期のソ連の軍事力の巨大さを物語る逸話として知られている。
だが後年の戦史研究者によれば、『ドイツ・フィンランド側は自分達の消耗を抑制し、ソ連側に一方的な航空消耗を強いる為に意図的に防衛主体の行動を取った』という。
その証拠に、ノブゴロドからのソ連航空機帰還率が、作戦中は”
その行動は軍集団同士の話し合いが事前に行われ、綿密に連携がとられていた事を意味していた。
しかも、各軍集団の司令部にはサンクトペテルブルグから根回し、”賄賂”が贈られていた形跡があるというのだ。
個人的な献金ではなく、以前に登場したサンクトペテルブルグ開発のAEW機”Ju86FFZ(Frühwarnflugzeuge)”が、かなり早いタイミングで各司令部付偵察機ならぬ司令部付早期警戒機として配属され、発展型カムフーバー防空システムに組み込まれていたらしい。
ちなみに偵察機のように敵領空に潜入する事はなく、基本的に味方の領空で警戒に当たるAEWは被撃墜による消耗が少なく、気を付けるのはレーダーの故障だけで重宝されているらしい。
そして、それらはOKW(Ober Kommando der Wehrmacht:国防軍統合最高司令部)やOKL(Ober Kommando der Luftwaffe:ドイツ国防空軍司令部)にも根回し済みだったらしく、ヒトラーの署名入りの許可証も残っているそうだ。
報連相や根回し&付け届けをしっかりするのは社会人として当然かもしれないが……クルスが卒が無さすぎて、総統閣下もサインしながら苦笑を禁じ得なかった事だろう。
それとこの史実に比べて明らかに多重化され高密度の広域通信網の整備は、十中八九クルスが関わっている筈だ。
何しろ、”Ju86FFZ”にはレーダーではなく無線機やアンテナを強化した『通信中継機型』が存在するらしいし。
さて、いよいよろくでもないことになってきた戦場の空に、
「フハハハハッ! ガーデルマン、いよいよ待ちに待った出陣ぞっ!!」
「あー、はいはい。”本命”が出てきましたしね」
いよいよ魔王様に率いられた最新鋭のJu187”カノンフォーゲル”16機が満を持してサンクトペテルブルグより離陸する!
☆☆☆
一体、彼らが狙う”本命”。
前話でコラー少将が語っていた大物とはなんだろうか?
それはソ連陸戦の要である”牽引式重砲”、特に軍団・軍司令部直轄砲兵が運用する重榴弾砲・カノン砲の類だ。
この手の大砲は、ソ連は実に多彩であった。その豊富さ、バリエーションの豊かさは米軍すらも凌駕していた。
サンクトペテルブルグでも、そのうち有効性が高い比較的設計の新しい物が選抜されて再生産を開始、ノブゴロドにも配備されていたが、今回の戦いにはいよいよソ連も新型を導入することを決意したようだ。
”D-1/152mm榴弾砲”
サンクトペテルブルグでも生産されているM-30/122mm榴弾砲の砲架にM-10/152㎜榴弾砲の砲身を組み合わせた物だ。M-10/152mm榴弾砲自体は優れた榴弾砲だったが、複雑な構造で製造コストや重量が嵩み、量産や運用に手間がかかり過ぎると1500門ほどで既に製造が中止になった牽引砲だ。
D-1は言わばそのM-10を改設計により簡易量産化した改良型代替品であり、ソ連だけではなくサンクトペテルブルグでも生産されている同じ152㎜榴弾砲のML-20の約半分の重量で射程距離12㎞超を叩き出す優秀な榴弾砲だった。
それが今回の”スチームローラー作戦(Операция «Паровой каток»)”には大量に投入されていた。
二度目のスモレンスク攻略戦で、ソ連側は虎の子とも言えるスターリン自慢の超巨大牽引砲、B-4/203mm榴弾砲(射程18,000m)、Br-2M/152mmカノン砲(射程24,740m)、Br-5/280mm臼砲(10,950m)などを大挙して投入した。
だが、結果は散々たる有様となった。
まずドイツ側はソ連に負けず劣らずの使い勝手の良い牽引砲をスモレンスクに揃えていた上に、超大型牽引砲はなかったものの防衛側の優位を生かした旋回式固定砲台として305㎜/Br18重榴弾要塞砲(射程16,580m)や210mm/Br17重カノン要塞砲(射程29,360m)などという重要塞砲を用意しており、更にはクルップK5”レオポルド”28㎝列車砲などという射程距離60㎞超えの正真正銘の”化物列車砲”まで投入されてアウトレンジ砲撃を食らい、スターリンとして由々しきことに火力自慢のソ連重砲隊がよりによって『正面から撃ち負けて壊滅した』のだ。
だが、賢い赤軍はスモレンスクの戦いから学んだ。
敗因はアウトレンジからの砲撃や正面火力で圧し負けただけでは無かった。
超重牽引砲は威力や射程はあるが、あまりに移動に手間がかかり牽引による機動的運用、つまり一度砲撃位置に配置して砲撃を開始すると容易に移動できず、敵砲撃だけでなく航空機にとって格好の標的になるという事が判明したのだ。
そもそもの話、巨大牽引砲はその重量ゆえに牽引移動速度が劣悪であり、また進撃路を選びすぎ進路を読まれやすいという欠点もあった。
無論、肝心の巨大牽引砲はスモレンスクの戦いで壊滅したというのもあるが……今回の戦いでは赤軍本隊には米国製のレンドリース車両が大量に配備されたこともあり、その機動力を活かすべく(米国車が牽引できる重量の)比較的軽便な牽引砲を大量投入する事にしたのだ。
無論、ノブゴロドにも前述の重要塞砲が配備されていることは予想していたし、下手をすれば”レオポルド”がまた現れることも想定していたが、幸いにしてその門数はそう多くない事が予想できた。
つまり今回のソ連は1発の火力ではなく手数で勝負する方針にしたのだ。
だが現状、230万の”
だからソ連は手を打った。
赤衛国際革命旅団をある程度、正規軍に戦車隊に追わせるように先行させ、そこにドイツ人の攻撃が集中している間に上空から発見されぬように隠蔽していた重砲隊を一気に移動させようとしたのだ。
歩兵を随伴させずに牽引砲と自走式
まさに分離合撃の手本だったのだが……
爆撃に紛れて行われた偵察で重砲隊がいないことを不審に思ったドイツ空軍により血眼で探された結果、遂に移動している最中を発見されたのだ。
そう、停止状態では隠蔽できても光学迷彩なんて便利な物が無いこの時代、移動する姿を隠し通せるはずもなかった。
そして、まさに”それ”を”獲物”として捉え、出現する時を今か今かと待っていたのがルーデル一家のJu187×16機だったのだ!
☆☆☆
たかが16機、されど16機。
距離的に考えて増槽は不要で、Ju187のフルペイロード1.8tの全てをアカにぶつける兵器の為に使えた。
そして、ルーデルたちが選んだ兵装がまたサンクトペテルブルグで製造が始まったばかりの曲者だった。
「先ずは駆けつけの祝弾を食らうが良いっ!!」
電波高度計が悲鳴のような警告音を鳴らす中、まさにNap-of-the Earth(NOE)、地表を舐めるような高速匍匐飛行で接近した16機の猛者たちは、射線が被らぬように一斉にロケット弾を放つ!!
両翼外側にレールレスに搭載され、白煙を引きながら亜音速で飛んで行く無数のパンツァーブリッツ・ロケット弾。その弾頭は戦後の汎用弾頭の定番にして鉄板となる”HEAT-MP”。
ノイマン/モンロー効果を発揮し数千度のメタルジェットを発生させる対装甲弾頭と起爆と同時に炸裂し周辺に破片をまき散らす余剰高性能炸薬を組み合わせた複合対装甲ロケット弾だ。
その威力は凄まじく、直撃すれば一撃で重砲を修理の意味のないスクラップへと変えた。
無論、メタルジェットの噴出と同時に起爆して爆風と破片と残存固形ロケット燃料をまき散らすので周辺被害も決して小さくはない。
厳密に言えば、Ju187隊が1機あたり16発を先進的なレールレス懸架していたのは、パンツァーブリッツ・空対地ロケット弾シリーズの中でも210㎜の大口径成形炸薬弾頭(通常の空対空R4Mの弾頭は55㎜で近接信管付きの破片弾頭)と簡易式ジャイロ安定器を組み込んだ弾頭威力と弾道特性、直進性を強化した最新鋭の”パンツァーブリッツ
成形炸薬が発生するメタルジェットの威力はその理論上、弾頭直径に比例するので、パンツァーブリッツⅡがどれほどの威力だったか想像がつく。
それが16機×16発で合計256発だ。
そして、Ju187の群れはロケット弾を露払い、あるいは煙幕にするように37㎜モーターカノンと30㎜機関砲の命中率の高い”水平弾道に近い地上掃射”を追加で叩き込んだ後にMW50を作動させたまま反転急上昇。
低~中高度重視のハイトルクセッティングなJumo213Eは加速に優れパワフルであり、まだ腹に爆弾を抱えたままとは思えぬ急上昇をJu187は見せた。
無論、この時点で喪失機はない。
むしろガーデルマンのような一部の強者は、反転上昇するタイミングで後部座席を回転させMG131Zで行き掛けの駄賃とエクストラ地上掃射をかます手管さえも見せた。
そして、高度をとったところで電光石火の急降下。250kg通常爆弾と見分けが付かない”投下型ディスペンサーケース”に収められていたのは……
うん。魔王様の絶好調度=ソ連の被害なんだよなぁ(挨拶
いや、史実通りと言えば史実通りかな?
ただ、乗ってる機体+使う武器が明らかに史実よりヤバくなってるけどw
それにしてもせっかくD-1/152㎜榴弾砲の初投入だというのに、ノブゴロドを射程におさめる前に大半は使用不能にされそうな気配ガガガ……
まあ、このちょっとオーパーツじみた”パンツァーブリッツⅡロケット弾(大体クルスのせい)”の被害も甚大と言えば甚大なんですが、所詮は編隊全体で全弾まともに動作しても”たかだか256発”の攻撃です。
少なくとも牽引されているソ連重砲の数よりは少ないでしょう。
なので、お次は本命の投下のようですが……
次回もどうかよろしくお願いいたします。