転生しても戦争だった ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~ 作:ガンスリンガー中年
そして、北方のお久しぶりの面々が……
サブタイとは”スレイヤー”繋がり?
「クックック……あーはっはっはっ! こいつはいい! 傑作だっ!」
クリスマスも差し迫った1943年12月初旬、ここサンクトペテルブルグの
「どうした? ”オージェ”(ドイツ総統アウグスト・ヒトラーの愛称)の手紙にそんなに愉快な事が書いてあったのか?」
そう返したのは、ベルリンからベネトン・シューマッハカラーのMc205Bをわざわざヒトラーの親書を航空郵便配達してきたのはヒトラーの片腕、なんか久しぶりのNSR(Nationaler Sicherheitsnachrichtendienst des Reiches;国家保安情報部)長官の”レーヴェンハルト・ハイドリヒ”だった。
「ああ、久しぶりって言いたくなるくらい愉快な気分だぞ?
「ほう? どんなだ?」
珍しく「まさかプリンツ・カズヒトはクルス大公に喧嘩を?」とガラでもない心配をしたが、
「簡潔に言えば、メインの内容は『戦争が終わったら、
「なんとまあ、イタリアの現状を考えると気宇壮大な野望だな」
そう呆れたのか感心したのか微妙に判断付かない表情のハイドリヒに、
「だが、目の付け所は悪くないぜ? 皇国は現在、三菱が音頭をとって”弓翼計画”って戦後のジェット旅客機業界で天下を取る計画立ててるんだが……ああ、その為に戦後は仮称”H.A.I.C”って組織を立ち上げるとかって聞いた記憶がある」
「”
「そっちじゃない。確か”Hinomaru Air Industrial Complex(日の丸航空産業複合体)”の略だったはずだ」
「”
不思議そうな顔をするハイドリヒに、
「ああ。”
どうやらクルス、”弓翼計画”その物は詳しくない(ジェット旅客機の開発計画であることは知っていても、それがボーイング社を狙い撃ちするという”真の目標”は知らない)ようだが、それを実行する為に編成される”
もしかしたら情報源は、最近、幹部役が板についてきた(=日本帰国が遠のいた)小野寺君かもしれない。
というのも、”H.A.I.C”は建前的には旅客機や貨客機、貨物機などの『民間機の開発』だが、無論、それだけにとどまる筈もなく、軍用機の開発も視野に入っているだろう。
そもそも、最初に開発されるだろう機体の指標とされるボーイング707は、その堅牢な機体構造と拡張性の高さから数々の軍事転用がなされ、貨物機型がほぼそのままC-137”ストラトライナー”として軍用輸送機として用いられ、加えてE-3”セントリー”やE-6”マーキュリー”、E-8”J-STARS”の開発母胎となったのだ。
更には米大統領専用機”エアフォース・ワン”として用いられた時代もある。
皇国軍も同じ様なバリエーション展開を考えているのなら、まあ一応は皇国軍人の情報畑である小野寺が”日の丸航空産業複合体”構想をそれなりに知っていても不思議ではない。
「なので、”Imperial”よりはいくらか印象が柔らかくなる国旗の愛称を頭につけることにしたらしい」
(いや、国旗を前面に押し出すのもどうかと思うけどな……別の効果が出ても知らんぞ)
「国家プロジェクトなのにか?」
「
つまり、来栖任三郎という外交官を、明らかに外交官という職務から逸脱したあれほどのことをやらかすまでクビにできなかった状態だと言い換えても良い。
「引退状態だった幣原翁を現役復帰させるなんて裏技まで使って何とかしてるのが今の日本外交さ。ただでさえ、『アフターケアサービスまで完備した良心的な独立支援を行う』なんてろくでもない評判が立って、独立希望の各地植民地の”自称特使”が何とか接触を持とうと押しかけてきてるって有様らしい。これ以上、厄介事を抱え込めば最悪、皇国の外交システムその物が破綻・崩壊しかねない」
「なるほどな。武断的や覇権国家というイメージは、日本にとっては猛毒か……」
「そもそも、皇国が地中海やインドシナ半島に手を伸ばしたのは、産油地帯の安定化やシーレーンの保全って意味合いが大きい。
”この世界線”の日本皇国は、シリアの石油埋蔵量に匹敵する25億バレルの原油を溜め込んでいる樺太を領土に持ちながら、「産油国ではあっても”石油輸出国
基本、国内油田は全て国有であり、民間企業と「共同採掘・油田開発」しているという体裁であり、石油は単なる資源ではなく、国民生活に直結する”重要な戦略物資”として日本皇国の内需で使われることが原則だった。
「日本皇国ってのは本来、『内政大好き・内需お大事の内向的な引きこもり体質国家』なんだよ。ただ、それじゃあこのクソみたいな覇権主義まかり通る世界じゃ生き残れないから、英国とつるんで地中海くんだりで戦争してるってだけだ」
「お前を見ていると俄かには信じられんが……」
「俺はあの国じゃあ異端なのさ。だから追い出されてサンクトペテルブルグで大公なんぞやる羽目になった」
「ドイツにとっては僥倖だったがな」
「言ってろ。まあ、俺のことはさておくとして……話を戻すが、ドイツは民間の貨客機と軍の輸送機ならどっちを優先する?」
「輸送機だな。今は戦時だ」
迷いなく答えるハイドリヒだが、
「じゃあ、いつまで戦時は続くんだ? モスクワを陥落させたところで、ソ連は消えんぞ? 赤色勢力ってくくりで見るなら、もっと無くならん。いつまで戦時は続くんだ?」
「それは……」
言葉に詰まるハイドリヒに、
「ドイツ、いや”レーヴェンスラウム”に必要なのは、”停戦”さ。ソ連にそれ以上を求めるのは無意味だ。”停戦”を終戦と認識するのは勝手だが、『相手が自分より弱い』とみなせば、生きてる限り途端にまた攻め寄せてくるぞ? そこに悪気や悪意はない。『弱い奴が悪い』ってのが『タタールのくびきの果てにあるルーシ』ってもんだ」
「つまり戦後は来ないと?」
「
要するに「米の代わりを独が務める」”冷戦”の始まりだ。
「だからこそ、重要なのはアカに、あるいはロシアンスキーに『今なら勝てる』と思わせる瞬間を与えないことだ。その為には国防には手を抜けん。『お前らが勝てるチャンスなど金輪際ない』と示し続けるために、な」
結局、史実の冷戦構造で米ソが直接対決して”MAD(Mutually Assured Destruction:相互確証破壊)”が起きなかった理由は、「米ソともに戦っても、互いに滅びて勝利を
「まあ、そうなれば必然的に民間に回せる国家リソースは制限が出る。そのあたりを見越したうえでの提言だと思うぞ? 近い将来のイタリア公爵様のそれは」
「つまりは『お前たちの航空産業は軍事で忙しいだろうから、民間分野はイタリアでなんとかしてやる』と? 大きく出た物だ」
「ありていに言えばそうだろうな。まあ、イタリアだけでどうにかなるようなものじゃないだろうから、フランスをはじめ航空産業があり、僅かでも余力のある欧州の国は巻き込もうとするだろうが……少なくとも俺ならそうする」
「……乗るのか?」
「そりゃあ乗るさ。機会を見て”エアバス”開発を含めて伝え、伊への帰国希望者を募る。ああ、お前が届けた総統閣下からの親書の方の内容も、搔い摘めば『有益そうだし協力してやったらどうだ?』だったぞ」
クルスは事もなげに、
「軍事ってのは膨大な金がかかる。民間ベースの多国間流通活性化は国富には必須だろうが?」
「それはそうだが……何とも世知辛い話だな」
「だが、”レーヴェンスラウム”がこの先も”存続し続ける”には必要だろ? 軍用機だけ作ったところで国は富まないし、腹も膨れないさ。なんせ軍事ビジネスで儲けても、結局は生産性がないんだからな」
「やれやれ。できればもう少し夢と希望と余裕のある国家運営をしたいものだ」
「安心しろ。それ、あらゆる時代のあらゆる国家の首脳部が、常に思ってることだから」
☆☆☆
「ところでクルス」
「ん?」
「クリスマスは近いが、今年はどうするんだ?」
「クリスマスミサの後は冬宮殿のホールを使ってパーティーをするつもりだぞ? ”ノブゴロド防衛戦”の英雄たちを集めて、それなりに盛大に。まあ、プロパガンダも兼ねているが」
「……そうか」
サンクトペテルブルグの”
という訳で、久々登場のクルスとハイドリヒでしたw
前に和仁が「サンクトペテルブルグにお伺いをたてる」的な事を言ってましたが、早速、伏線は回収されたようです。
今回はあくまで呼び水とするためのご機嫌伺い的なドイツとサンクトペテルブルグ、あるいはヒトラー総統とフォン・クルス大公への親書ですが、和仁、根回しや付け届けは怠らないタイプのようですよ?
さて、そろそろ復興計画も固まってきたし、北部の残党狩りも沈静化してきてるしで長かったイタリア篇も終わりが見え始めてきました。
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