転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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今回はGWらしく深夜アップということで。
ある意味、「そりゃそうなるよなw」となるオチ回?






第423話 クルス、ホームグラウンドに帰る前にベルリンへ方向に立ち寄った件について ~ちょっとだけMe262の進捗状況もあるよ~

 

 

 

 さて、翌朝……

 

 

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「昨日は有意義な話ができて楽しかったわ♪ またロンドンに遊びに来なさいよ。そうね、戦争が終わってサンクトペテルブルグが独立国になって少し余裕が出来たら……なんてスケジューリングでどうかしら?」

 

 それは遠回しに『戦後、サンクトペテルブルグが独立国になった暁には、英国と外交を持ちなさい』というお誘いなのは明白だったのだが、クルスはそれには明確には答えず。

 

「今日はまともな服、着てるんだな?」

 

「今日はこのまま公務があるのよ。何せどこかの誰かさんが色々と”愉快な案件”を持ち込んでくれたから」

 

「正直、耳が痛いな。まあ、だが英国にとっても悪い話じゃなかったろ?」

 

「まあね。Win-Winは交渉事の基本ってとこかしら?」

 

 クルスは頷き、

 

「そうじゃないと交渉なんて成立しないだろ? どちらかが一方的に損を被るような契約は、一般に長続きせんだろ?」

 

「大公の口から”一般的”って言葉が出ると何だか違和感があるわね……」

 

「ご挨拶だな? 今でこそ名目上は大公(きぞく)扱いだが、生まれも育ちも庶民・平民。言ってしまえば純度100%の一般人だぞ?」

 

「それ、掲示板があったら『お前のような一般人がいてたまるかっ!!』って総ツッコミ食らうわよ? どう言い繕っても、控え目に言っても”逸般人”でしょーが」

 

「いや逸般人ってリチャード王の方がしっくりくるような……いや、むしろフィジカルとかは人外?」

 

「ちょっとぉ~。人の旦那を勝手に人類枠から外さないでよ。いや、確かに時折、人類より肉食獣(ライオン)寄りかなって思うこともない訳じゃないけどさ……主に性的に」

 

 それはリチャードが”捕食者”だからだろうか?

 

「おい」

 

 ついツッコんでしまう旦那(リチャード)である。

 

「とりあえず、約束通り”ニーン”とレーダーFCSは民間貨物に紛れ込ませてデンマーク経由(※サンクトペテルブルグへの直通便が今のところない)輸出するわ。んー……とりあえず、20セットくらいで良いかしら? それだけあればドイツに回す分を入れても第一次出荷としては十分でしょ?」

 

 つまりこれは、間接的に『ドイツと友好関係……とまではいかなくても非敵対関係をそれなりに長期に構築したい』という意思表示でもあった。

 無論、それに気づかないクルスではない。

 

 

「一次って事は二次以降も期待できると考えて良いのか?」

 

「まあ、一次は”V-1”や”V-2”の設計図とその改良プラン、オハイン式遠心圧縮式ターボジェットの設計図の返礼ってことで、無料(タダ)で良いけど、二次以降は『非公開なだけで正規輸出』の体裁を取るから、普通に代金は請求するわよ?」

 

「何時、如何ほどだ?」

 

「支払時期はサンクトペテルブルグの独立国化後に請求するわ、代金は多少は勉強してあげるわよ? 何なら現物払いも受け付けるわ。まあ、英国からの建国ご祝儀だと思ってくれていいわ」

 

「心得た。オハインエンジンの進捗にもよるが、100基単位の追加オーダーはすると思う」

 

「毎度ありぃ♪」

 

 そして、ドロシーはにこやかに微笑み、

 

 

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「大公、英国はいつでも歓迎するわよ♪ 長い付き合いになるのを望むわ」

 

 そう笑顔で送り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 こうして長かったような短かったようなクルスのロンドン行は終わりを告げ、ホームグラウンドのサンクトペテルブルグに戻る前に一旦、ベルリンへと立ち寄り、事の顛末をアウグスト・ヒトラーとレーヴェンハルト・ハイドリヒに報告するのだったが……

 

 

「なるほどな。”Ta183A”の開発は早まり、完成度が上がるか……それは重畳だな」

 

 ドイツ総統ヒトラーはそう鷹揚に頷き、

 

「”ニーン”の方はサンプルに2~3基回してくれればよい。遠心圧縮式はドイツでは既にそこまで必要としていない技術だし、そもそもジェットは消耗品だ。サンクトペテルブルグで存分に使えば良いだろう。英国製レーダーFCSも比較用に数機回してくれればいい」

 

 同じジェットエンジン(ターボジェット)でも、ドイツの開発は今は高性能でも構造的に技術限界の先が見えているた遠心圧縮式よりも、将来性のある多段軸流圧縮式に全力傾注してしまっている。

 

 加えて、この時代のジェットエンジンというのは遠心圧縮式だろうが軸流圧縮式だろうが、開発黎明期の未成熟段階らしく耐久時間がレシプロエンジンに比べてもかなり短い。

 例えば、史実のJumo004ターボジェットは、資材不足や大戦末期の連合軍戦略爆撃による工業力の劣化などによりベンチテストで30時間程度、実戦では10時間程度の耐用性しかなかったというデータすらある。

 

 無論、”この世界線”ではノルウェーとの良好な関係や、バルト海を中心とした海上流通の安定、ドイツ本土の工業力がほぼ無傷であることなどと相まって、クロム、モリブデン、マンガン、ニッケルなどの高温耐久特殊鋼に必須な金属に大きな不足はないため、高度な工業水準を維持できていたが、それでも『実戦運用で40時間』程度だ。

 参考までに言っておくと同じ航空用エンジンでレシプロの”マーリン”が一般に耐用300時間、寿命が短いとされる排気タービンー付の”アリソン”系でさえも、コンバットステータスで150時間とされていた。

 

「Jumo系は順調なので?」

 

「悪くはない。”Jumo004D”準拠の先行生産型が既に仕上がっている」

 

 これは中々に驚くべきことだ。

 Jumo004Dは、史実のドイツが完成させた最後のジェットエンジン”Jumo004B”の後継エンジンとして計画されていた”幻のジェットエンジン”であり、2段式燃料噴射装置と改良型スロットル調整装置を備え、より技術的アップデートがされたエンジンであり自重は変わらないのに信頼性や操作性を上げつつ推力はB型に比べて150kg以上向上していた。

 その未完のエンジンを、”この世界線”のドイツは既に完成しているというのだ。

 

「Me262の開発も進んでいると考えて良いので?」

 

「ああ。機首にはパラボラアンテナ型のFuG240”ベルリン”系小型レーダーを標準搭載し、暫定的な機体単独での索敵が可能。デザイン的には低抵抗のレーシングキャノピーと後退角付の全浮式尾翼(オールフライング・テール)を標準仕様として、史実の”HG1”に近いコンセプトデザインにまとまったよ。おそらく今年(1944年)の中盤には本格配備が始められる予定だ。どうにか間に合ったという感じではあるが」

 

 ちょっと待て……メインデザインが”Me262の未完の能力向上型”である”HG1”で、エンジンがJumo004既存シリーズの完成型とも言える”D型”で、尚且つアンテナがシカの角みたいに機体外に飛び出て空気抵抗をマシマシにしてしまう八木式アンテナではなく、機首レドームにレーダーアンテナを丸々内蔵できるパラボラアンテナ式の”ベルリン”系列の小型レーダーシステム?

 

 ”メッサーシュミット・スキャンダル”によりトップが処刑され、事実上、国有企業となり、開発リソースの全てを”次世代ジェット戦闘機”に傾注されるように命じられたメッサーシュミット社が死に物狂いで開発した機体であることは間違いないが……

 

(いや、どんな化物を飛ばすつもりなんだよ?)

 

 と思わずクルスが思ってしまうのも無理はない。

 まさかクルスも、「機銃弾と機内燃料満載の戦闘重量状態(コンバット・ステータス)で時速900㎞以上を平然と叩き出す怪物」がドイツ上空を編隊で駆け抜ける姿が目前に迫っているとは想像もしていないだろう。

 

「これもフォン・クルス大公率いるサンクトペテルブルグが、順調にかつ安定的にA2024航空機用軽合金(超ジュラルミン)必要量を精錬してくれるおかげでもある」

 

 いや、やっぱりいつもの”大体クルスのせい”が大いに関係していた。

 史実のナチスドイツ(+大日本帝国)の末期は、とんでもなくアルミ合金の供給に悩み、かのMe262も「正当に航空機用アルミ合金が使えれば、更に高性能機になっていたばかりでなく、露呈していた欠点もかなり是正できた」とされているほどだ。

 サンクトペテルブルグでは、既に”超々ジュラルミン”ことA7075アルミ合金の製造準備に入っていたが、ソ連全体の電力需要の8割を支えたとされる膨大な発電量を後ろ盾にした電気精錬(ホール・エルー法)を用いて最大の生産数を誇る航空機用アルミ合金は、今のところ前述のA2024であった。

 

 というかサンクトペテルブルグ単体でのアルミ合金精錬量は、ドイツとその一派全体のアルミ生産量の半分を賄うほどまで成長している。

 おまけにドイツはこうなんというか色々と複雑な因縁のあるギリシャからも原材料であるボーキサイト輸入の話題もある。

 

 

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「それは光栄。ああ、総統閣下、言い忘れるところだったが、英国からも余剰ボーキサイト輸出の打診があった。対価はアイスランド編入とインフラ整備の後、『アイスランドのアルミ精錬事業の地場産業化』への協力ですよ」

 

 ※:このアイデア自体はクルス自身が出したもの……ある意味、マッチポンプかもしれない。

 

「それはむしろ、サンクトペテルブルグ単独への直接的なオーダーではないのか?」

 

 流石ヒトラー、鋭い。クルスは小さくうなずき、

 

「明言はありませんでしたがが、恐らくそういうニュアンスかと」

 

「となると時系列から逆算すれば本格稼働は”戦後”か……良かろう。今からでも英国よりの打診があれば、大いにやりたまえ。独英の緊張緩和、大いに結構だ。我が国も余計な予算を裂かずに済む」

 

 その時、同席していた軍需相のフェルディナント・トートと経済相のミヒャエル・シャハトが大きくうなずいた。

 言い忘れていたが、この場にはいつものNSR長官ハイドリヒ以外にも、予定がついたドイツ首脳部の数名が同席を許されていた。

 ちなみにトートとシャハトだけでなく、外相のコンラート・フォン・ノイラートもその場にいるようだ。

 

「ふむ……総統閣下、これを好機ととらえ、いっそ英国王室外交の窓口を戦時中限定という形でサンクトペテルブルグに集中ないし固定化させるのはいかがでしょう? 独英には未だに隔たりが完全に解消されたとは言えないのが現状です。そこにバッファーとして挟む政治的緩衝地帯としてサンクトペテルブルグ大公領は理想的です。法的には独立国化するまでは公的にはドイツの保護領、即ちドイツの一部であるにも関わらず、対外的にある程度の独立性がある半独立国という認識が広がってると同時に英国との歴史的因縁は無い。何しろ”バトル・オブ・ブリテン”前には存在すらしていなかったのですから。しかもフォン・クルス卿の大公(Erzherzog)という地位は、名誉とはいえ”バルト海条約機構(Baltische Vertrags Organisation:BVO)”参加君主国連名で正式に裁定された”称号”です。英国王室外交の対象とするなら、ある意味、ドイツで最も相応しい地位に居ると言えるでしょう。いや、そうに違いない」

 

 とノイラート外相は珍しく早口のドイツ語でまくし立てた。

 というか、セリフの額面以外に別の意図を感じる気もするが……

 

「ふむ……妙案ではある。英国政府との公式外交チャンネルはノイラート率いるドイツ外務省が掌握しているとはいえ、王室外交はまた別の意味を持つ。うん、悪くない判断だぞ、ノイラート」

 

「お褒めにあずかり恐悦至極」

 

 何か芝居がかった一礼に、クルスは何となく状況を悟り……

 

「総統閣下、ノイラート外相……まさかとは思いますが、色々な意味で面倒な外交相手である”英国国王夫妻”(リチャードとドロシー)を私に丸投げしようとしてませんか?」

 

 どうやら明確な返答はなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




クルス、自業自得w
そりゃあ同じ転生者とはいえ、ヒトラーもハイドリヒもリチャード&ドロシー夫妻とは直接対話はしたくないよな~とw
多忙なのもあるけど、

ヒトラー&ハイドリヒ:「「なんか会うだけで疲れそうだし」」

まあ、色んな側面から見てもドイツよりサンクトペテルブルグの方が、「英国と国家として親和性が高い」というのも事実ではあるんですが。
このまま順調に行けば、戦後に完成する”汎マルク経済圏(レーヴェンスラウム)”と”大英連邦(コモンウェルス)”という巨大ブロック経済圏の盟主同士ですから、これまでの歴史を含めて色々難しいしがらみもありそうだし。

そういう意味で、(多重)転生者で元日本人が国家元首の新興君主国(サンクトペテルブルグ)の方が色々と付き合いやすいだろうし、政治形態の異なる二つの大国のクッションとしても使い勝手が良いだろうとw

さて、次回はアイスランド……になるかな?

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