お兄ちゃんはおしまい!in IS   作:とんこつラーメン

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第36話 まひろとクラス対抗戦

 遂にやって来た『クラス対抗戦』当日。

 一年生の部の試合会場となる第二アリーナは見事なまでに満員御礼。

 どこかしこも見事に人で埋まっていて、場所によっては立って見ている人までいる始末。

 なんとなーく話には聞いていたけど、まさかここまで大規模な大会になるとは…。

 オレは、こんな中で試合をしないといけないのか…?

 

「ま、今はまだ関係ないんだけどネ」

 

 だって、オレはシード枠。

 決勝戦までは出番が無い、完全傍観者なのだから。

 心の準備が出来るので、これはこれでいいのかもしれない。

 

「しっかし…凄い賑わいだな…。これ全部、今回の対抗戦を見に来てるのかよ…」

「確かにな。学園の生徒も大勢いるが、それとは別に外からの来客もかなりの数が来ているようだ」

「今年の一年生は特に専用気持ちが多いですものね。注目されるのも当然ですわ」

「そんな大舞台で試合をしなければいけないとなると、一般の生徒の皆さんには相当なプレッシャーになるのでしょうね」

「ってことはつまり、決勝戦で試合をすることが確定している、まひろんはす~っごく注目されるってことなんだろうね~」

 

 オレの周囲にはいつものメンバーが勢揃い。

 一夏に箒にオルコットさんにクロエちゃん、そして布仏さんも。

 …前に布仏さんって生徒会メンバーだって聞いたことがあるけど…会場整備とかしなくてもいいのかな…?

 

「実は少々小耳に挟んだのですけど、トーナメント表でシード枠になっている真尋さんが、IS委員会や各種企業、各国から来た来賓の方々から、かなり注目されているそうですわ」

「うぇぇっ!? なんでぇ!?」

 

 学園の生徒や先生達からならともかく、どうしてそんな連中からの注目を浴びなくちゃいけないんだぁッ!?

 

「代表候補生を抑えてのシード枠と言うのに加えて、『篠ノ之』の名前のネームバリューが後押ししたのだろうな…」

「そんなぁ~…」

 

 束のせいで『篠ノ之』の名前が一気に世界規模で有名になったのは知ってるけど…こんな所でも弊害を生むのかよぉ~…。

 

「前に千冬姉から聞いたんですけど、もう既に学園中に真尋さんが専用機を持ってることが知られてるらしいですよ?」

「そうなの!?」

「2年生や3年生にも少なからず代表候補生は在席している…。そこから他の国へと真尋様の噂が飛び火したのかもしれませんね」

「なんちゅーこっちゃ…」

 

 世界的に有名になるのは束だけで十分なんだよぉ~。

 そこにオレを巻き込まないでぇ~。

 

「あう…ジュースでも飲んで気を紛らわせる…」

「こちらにはポップコーンもありますわ。勿論、真尋さんがお好きなキャラメル味ですわ」

「…いただきます。あむ…」

 

 美味しい…これ好き…。

 

「こ…こちらはチョコ味です! 姉さん、こっちもどうぞ!」

「…貰う。あむ…」

 

 こっちもいい…今度買おう。

 

「まひろ~ん、このポテチも食べる~?」

「…食べりゅ」

 

 …噛んだ。

 でも、ポテチは美味い。

 つーか、さっきからなんで皆してオレにおやつを食べさせようとする?

 

「真尋さん。よかったら、俺のプロテイン飲みます?」

「それはいいです」

 

 プロテインがおやつ判定になってるのは、この学園内じゃお前だけだよ一夏。

 

「あ…皆さん。遂に第一試合が始まるようですよ」

 

 お、やっとか。

 こーゆー大会って、何故か開会式に無駄に時間を割くんだよなぁ~。

 別に観客は、そーゆーのを見に来てるんじゃないってのに。

 

「一年生の部の第一試合って確か…」

「えぇ。鈴さんの試合ですわ」

 

 トーナメントの一番最初に、ある意味ではオレ以上に注目すべきな代表候補生の試合を持ってくるとは…。

 これ、割と適当に決められてるんじゃあるまいな?

 

「出てきたぞ。鈴だ」

 

 ゆっくりと宙に浮きながらやって来た、ISを纏った凰さん。

 あれが彼女の専用機なのか…。

 

「あの刺々しいのが鈴の専用機か」

「はい。中国が開発した第三世代機。その名も『甲龍(シェンロン)』」

「「「「「シェンロン…」」」」」

 

 え? ちょ…マジで?

 なんつーか…まんま過ぎない?

 

「『神』の『龍』と書いて『シェンロン』じゃないんだな…」

「完全に当て字だろ…」

「それっぽくルビを振っておけば、どんな呼び方も許されるのが今の風潮だからな~」

「これ~…ルビ無しじゃ初見の人はまず読めないよね~」

 

 言っちゃった。

 布仏さんが皆が黙っていたことを素直に言っちゃった。

 

 ブー!!

 

「試合開始か」

 

 試合の始まりを告げるブザーが鳴り響く。

 さて…さっきの嘆きはともかくとして、今は後々に備えての観察に徹しますか。

 

「あ…武器を取り出した」

「見た目通りの近接戦特化型か…」

「二振りの巨大な剣…青龍刀…とでも呼べばいいのでしょうか」

 

 あんな重たそうなのを、ああも軽々と…。

 これもまた、ISのパワーアシストの恩恵なのかね。

 

「相手の子は完全にド素人。その時点で勝負はあったも同然だけど…」

「容赦ないな…」

 

 相手の子が乗ってるリヴァイヴが完全に押されてる。

 当然と言えば当然だが、これは流石に期待の性能差と互いの力量差が明確に出てますな。

 

「ん? なんか…凰さんのISの肩部が光ってるような…」

「来ますわね…アレが」

「「「「「アレ?」」」」」

 

 これまたオルコットさんの意味深な発言。

 こーゆーのが読者や視聴者を引き付けるのです。

 

「あ?」

「え?」

「これは…」

「おぉ~?」

 

 突如として、対戦相手の子が吹き飛んで壁にぶつかった。

 なんか一瞬だけ凰さんの前方の空間が歪んだような気がしたけど…それが原因か?

 

「…今のは?」

「あれこそが、あの甲龍に搭載された第三世代兵装…『衝撃砲』ですわ」

「「「「「衝撃砲…」」」」」

 

 なんか、さっきと同じパターンになってない?

 というか、衝撃砲か…なんか強そうな名前だな。

 

「その『衝撃砲』とやらは一体なんだ?」

「空間自体に圧力をかけて砲身を形成。その余剰で生じる衝撃自体を砲弾として発射する…俗に言う『空間圧作用兵器』ですわ」

 

 空間自体に圧力…ねぇ。

 ごめん…何を言ってるのかサッパリだわ。

 

「あれの最大の特徴は、砲身も砲弾も全く見えない…不可視と言うことにあるのですわ」

「透明な弾を撃ち出すと言うのか…!」

「そんなの避けられるのかよ…」

「初見ではまず不可能でしょうね。ですが、衝撃砲の射程はそこまで長くないとも聞いておりますわ。なので、彼女の射程範囲外から攻撃をすれば、あるいは…」

 

 成る程ね…なんとなく理解した。

 さっき見た空間の歪みは、その衝撃砲発射の前兆だったわけね。

 そして、その射程は中程度と。

 スパロボで言う所の射程1~5ぐらいってことか。

 

「けど、懐に飛び込まれたら意味ないよな…」

「ですわね。恐らくは、それこそが甲龍攻略の肝になるかと」

 

 オレのルブリスは全領域対応型。

 どんな射程でも一定以上の攻撃は可能。

 やっぱ、ビットを使った攻撃がセオリーかな。

 

『試合終了! 勝者…凰鈴音!』

 

 まず最初の試合が終わったか。

 まぁ…当然の勝利とも言えるな。

 

「安定の勝利…だが…」

「心なしか、鈴さんの顔が強張っているようにも見えますわね…」

 

 オルコットさんの言う通り、まるで今の彼女は荒ぶった獣のようだった。

 何かあったのかな…?

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 小休止の後に第二試合、第三試合と続いて行われていった。

 案の定、一番最初の試合程の盛り上がりはなく、観客もそれなりに歓声を上げているって感じだった。

 気持ちは分かるけど、もうちょっと応援してあげようよ。

 

 そうして、次は第四試合。

 トーナメント一回戦最後の試合。

 ここで私達だけが注目することになった。

 

「ん? なぁ…一夏。今出てきた子が持ってる武器って…」

「間違いないですね…」

 

 あれは間違いなく…ライジングガンダムのヒート・ナギナタ!

 中射程の近距離武器として、まさかアレをチョイスする人物がいようとは!

 

「通常、ナギナタ系の武器と言われて最初に想像するのは、ゲルググとかが持ってた『ビーム・ナギナタ』が定番だけど…」

「それを外して、敢えてあのヒート・ナギナタにするとは…」

「あの子…分かってるな」

「ですね。完全に『こっち側』の住人ですよ」

「「「「????」」」」

 

 あの子はー…一年四組の子か。

 名前は…更識…簪?

 ルビが降ってあるから辛うじて読めたけど、随分と珍しいお名前ですこと。

 

「あの更識とか言う奴…かなり出来るな」

「分かりますの?」

「無論だ。ナギナタは私の専門外だが、それでも基礎的なことは父から習ったことがある。故に分かるのだ。あの女の薙刀の腕前は、間違いなく熟達の領域に達している」

 

 まるで己の手足のようにヒート・ナギナタを振り回し、時には鋭い突きを、時には柄の部分を回転させて防御に使う。

 まさかとは思うけど、彼女が乗ってる打鉄に『ライジング・アロー』とか搭載されてないでしょうな?

 

「あの顔…どこかで…」

 

 オルコットさんが急に自分のスマホで何かを調べ始めた。

 いきなりどうしたのかしらん?

 

「やっぱり…そうでしたのね…」

「どうかしたの?」

 

 皆がオルコットさんの方を見ると、彼女は緊張した面持ちで自分のスマホの画面をこっちに見せてきた。

 

「彼女の事が気になって少し調べてみたのですけど…ようやく思い出しましたわ。彼女…更識簪さんは…私や鈴さんと同じ代表候補生…しかも、この日本の代表候補生でしたの」

「「「「えっ!?」」」」

「ふふふ~…」

 

 今、試合をしてるあの子が…代表候補生!?

 しかも、まさかの日本とな!?

 つーか、なんで布仏さんは自慢げにしてるの?

 

「日本はIS発祥の国…故に、国家代表は当然として、代表候補生の選定にも他の国以上に力を入れていると束様から聞いたことがありますが…」

「ってことは…あの子の実力は…」

「専用機こそ持ってないようだが…鈴よりも上の可能性が高い…ということだな…」

 

 凰さんの決勝進出への最大の障害ってことか…。

 下手したら、決勝戦であの子と試合をするかもしれないってことなんだよな。

 

「前にクラスの子が『一組以外だと、専用機持ちがいるクラスは四組だけ』と言っていたけど、あの子がそうだったのか…」

「だが、今の奴が使っているのは学園の訓練機だ。専用機は使わないのか?」

「何かマシントラブルがあったのかもしれませんわ。専用機は強力であるが故に繊細…整備の方法も量産機とは全く違いますから」

 

 そりゃそうだよなー…ある意味では当然ですな。

 オレのルブリスなんて、そういう意味じゃ最も特異なISと言えなくもないし。

 

「む…決まるな」

 

 更識さんがヒート・ナギナタを回転させながら接近、その勢いを利用してから何度も切りつけ、そこからトドメと言わんばかりの追撃のアサルトライフルでフィニッシュを決めた。

 

『試合終了! 勝者…更識簪!』

 

 これはまた凰さんの時とは別の意味で明確に差が出た試合だったな。

 凰さんの場合は機体性能、今回の場合は操縦者の実力。

 

「どうやら、このままいくと準決勝は凰と更識とやらの試合になりそうだな」

「全く結果が読めませんわ…」

 

 どっちに転んでも、決勝戦は波乱の予感しかしないのはオレだけなんだろうか…。

 はぁ…今から不安になってきたなぁ…。

 

 

 

 

 

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