真剣で私に恋しなさい~その背に背負う「悪一文字」~ 作:スペル
今まで避けてきた、他のキャラメインの話も増えてくるので、がんばります!!
楽しんでいただければ、幸いです
夜、川神市某所。
「ぐはっ!」
「弱、これで世界最高峰の格闘家かよ」
一人の格闘家が地面に倒れていた。それを呆れたように見下ろす棒を持った少女。その背後には、少女と同じ中華系統の服を纏った二人組。
「まあ、15Rの相手ならそんなもんでしょ」
「よし、史進が倒した相手で本日のノルマは終了だ」
「あ~あ、わっちはもっと骨のある奴と戦いたいな~。
なあ、林。今度はもう少し骨がある奴を探してくれよ」
史進と呼ばれた少女の言葉に林と呼ばれた黒髪の少女
「焦りは禁物だ。
ここから先は川神学園の関係者も対象になってくる。
今までの様に楽に行くような相手はいないかもしれない。
暫くしたら、武松も合流する。
それまでは我慢だ」
「はいはい。
全く、林冲は相変わらず真面目ちゃんだな」
「うっ…。
折角、史進のことを思っているのに」
「ほら直ぐ泣く。
そういうところだぞ。
つか、楊志はさっきから黙ってどうした?」
涙目になる林冲に呆れた
楊志は顔を青くさせ、息も荒くなっている。そんな姿に史進はいつもの発作かと呆れを見せるが、林冲は慌てて声を変える。
「楊志!!
だ、大丈夫か!!」
「もう無理…限界。
林冲、パンツ見せて」
「へ?って、こら!!
顔を突っ込もうとするな!!」
「フヘヘ。生き返る~~」
「はあ~~。
おい、そろそろずらかるぞ」
どんちゃん騒ぎを起こしながら、三人組はその場を後にする。
倒された格闘家は、薄れゆく意識の中で、彼女たちの背を見ていた。
「あれが、
川神の地に異変が起き始めた。
◆
川神学園。先日の葉桜清楚恋人事件も、松永燕の尽力により見事沈下し、慌ただしい日常が流れている。
そんな騒動が絶えない学園において今最も噂されているのはー。
「
あの水滸伝のやつ?」
「ああ。
最近、腕のある奴らに勝負を仕掛けては、全員病院送りにしているって話だ」
悠介は食堂で食事をとっている最中、一緒に昼食を食べていた忠勝からそんな話を振られた。
「まあ、別におかしな話ではないだろ。
なんて言ったて、川神には義経たちを狙って、世界から多くの格闘家やら武術家が集まっているんだ。
そいつらを倒して名を上げようとしている奴らがいてもおかしくないな」
「はっ。
そのまま挑んでくる奴ら全員倒してくれたら、俺たちの手間が減るんだがな」
忠勝の話を聞いた悠介はおかしなことはないと言い、悠介と忠勝と共に食事をしていた与一はむしろそんなメンバーを応援しているようだ。
「まあ…そうなんだが。
気を付けておくのにおくことはねえよ。
悠介、特にお前は狙われる筆頭だろうかなら」
「それはそれで望むところだ」
「俺からすれば、お前に挑む奴の気が知れねえな。
命が惜しくないのか」
不器用に悠介を心配する忠勝の言葉に、悠介はその心配に感謝したうえで獰猛に笑って見せる。そんな悠介の笑みを見た与一は、逆に今からその悠介に挑むかもしれない敵に一種の同情を向けている。
「つか、あまり度が過ぎれば九鬼が動くはずだろ?
確か、武士道プランにおける治安維持も担当していたはずだ」
「ああ。言われてみればそうだな。
地域住民の生活を脅かさないと契約して俺たちを
「確かに…。
なら、念のため竜の奴には教えておくか」
「確かに。
この手の話題で一番危険そうなのはあいつだな」
「まあ、竜の奴のことだから寧ろ俺と同じで来るなら来いとか言いそうだ」
ここにはいないもう一人の悪友の姿を思い出し、それぞれが笑みを浮かべる。
この時はまだ、軽口を言い合える程度の噂だった。
しかし事態は翌日のうちに大きく動くことになる。
◆
その日も変わらずに学園に登校した悠介だが、学園に近づく頃にはその異変を感じ取る。
――――空気が変だな
ガヤガヤとしている空気を感じながら、悠介はFクラスへとたどり着く。
「悠介!!」
「何があった?」
悠介の顔を見ていの一番に近づいてきた忠勝に悠介は即座に問う。忠勝は悠介からの問いを即座に理解して、学園の異変に対して知っている情報を告げる。
「ああ、昨日話していた梁山泊の奴らなんだが遂に、うちの生徒にも被害が出た」
「…それは穏やかじゃねえな」
「ああ。
それで血の気の多い奴らが逆に自分たちの方からって動きも出てきてな」
「なるほど。
あんまりよくない流れだな」
「やっぱりそう思うか」
「まあな。
つか、九鬼はまだ動いていないのか?」
「ああ。
与一にも確認を取ったが」
「…そっか」
「何か気になるのか?」
「そういうのじゃなねえよ。
お前も気をつけろよ。
竜の次に危険なのはお前だからな」
「言われなくとも分かっているさ。
自分の力量はキチンと把握しているつもりだ」
「ならいいんだが」
そういって二人は会話を切り上げる。ちょうど、そのタイミングで担任でもある小島が入室してきて、普段とは違う空気を感じながらも日常が過ぎていく。
◆
放課後。梁山泊の噂もあり、学長である鉄心の命で教師陣や川神院の修行僧たちが見回りを行っている。
そして見守りを行っているのは何も教師だけではない。Sクラスのマルギッテもまた、敬愛するクリスの安全を守るためにと、狼藉を働く者たちを懲罰せんと動いていた。
ドイツが誇る猟犬部隊隊長のマルギッテからすれば、大抵の相手ならば敵にならない。しかし今回においては、相手が並の者ではなかった。
「ハッ!!」
「ぐぅ!!」
鋭く放たれる槍の矛先を何とかトンファーを使いガードするが、衝撃を逸らすことが出来ず大きく後退する。
ダメージを何とかこらえたが、その大きく崩れた隙を逃さないように、林冲の背後から二つの影が迫る。
「隙あり!」
「ほい!」
「がはっ!」
史進の棒が、楊子の青龍刀が、マルギッテの胴に叩きつけられる。崩れた体勢だったこともあり、マルギッテは堪えることが出来ずに地面に倒れこむ。
その姿に悲鳴をあげる人影が一つ。
「マルギッテ!!
くそっ!」
棒を構えていた亜巳がマルギッテが負けたことに狼狽える。
「ほい。
そっちもそろそろ終わりだね」
「舐めるんじゃないよ!!」
「隙だらけだぜ、おばさん!」
楊志の言葉に亜巳が怒りと共に反論するが、怒りで生まれた隙に史進の一撃が叩きこまれる。
「うぐぅぅ!!」
「亜巳姉!!」
大きく吹き飛ばされた姉の姿に天が声を荒らげるが、その隙を俊敏な豹は逃さない。天が反応するよりも早く、繰り出される槍の一突きが天を一瞬で地面に伏させる。
「よし。
今日のノルマはこれで完了だな」
「今日の相手はそれなりに手ごたえがあったな」
「ああ。
三人とも例のタッグマッチトーナメント出場者だ。
賞金も、赤髪が25000R、棒使いが1000R、ゴルフクラブが500Rだ」
「ああ、道理で。
でもまあ、わっちたちの敵じゃないな」
「そんなこと言って、危ないところ何度かあったでしょ。
林冲がフォローしてくれたからよかったものの」
「な、何のことかな~~」
「はあ。
無駄に虚勢を張るのは胸だけにしなよ」
「ひゅ~。何を言っているのわからないな~。
わっちの胸は見ての通りだぞ~」
「まあいいや。
それよりも、今のうちに
「…いや、お前もたいがいだろ」
鼻息荒く、倒れた三人に近づこうとする楊志の姿に、史進はドン引きした顔をする。楊志が近づこうとした瞬間、ガサと何かが立ち上がる音が聞こえる。
「まだ…終わっていないと…知りなさい」
「驚いた。
まだ立つのか」
「でももう虫の息だね。
逆にかわいそう」
「楊志の言う通りだ。
既に限界だろう。
大人しく倒れておくといい」
立ち上がり武器であるトンファーを構えるマルギッテに史進は純粋な驚嘆を、楊志は何処か小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、林冲は逆にマルギッテを気遣うような言葉を口にする。
「お、嬢様に…危険が及ぶ…可能性がありながら…黙っているなどありえないと知りなさい」
それは矜持。敬愛する大切なお嬢様を守る。軍人として、育ての姉としての矜持が限界の体を支えている状況。
そしてそれに触発されて立つもう一人の姉。
「それを言われたら…立たないわけには…いかないね。
私も、天を…やられた落とし前…つけないとね」
マルギッテの言葉に触発されるように亜巳もまた姉として、家長としての思いから立ちあ上がる。
「見事だ。
せめて、一撃で沈めよう」
二人の決意を聞いた林冲が敬意をもって槍を構えるがー。
「あ~はいはい。
そう言うのいいから、さっさと眠ってろ」
「史進!!」
めんどくそうな言葉と表情と共に史進が先に動き出す。そんな史進を窘める様に林冲が叫ぶが、彼女は止まらない。
横薙ぎの一撃が二人に直撃しようとした刹那。バチイ!という音と共に史進の棒が止まる。
「なっ!!」
「お前はッ!!」
「これは想定外…」
目の前の乱入者に三人は驚きを隠せない。
逆にマルギッテと亜巳の二人は掠れる意識の中、視界に映った一文字を見て、無意識に呟く。
「「…相楽」」
「お疲れさん。
あとは任せとけ」
史進の棒を腕を盾として防いだ悠介が、二人を庇う壁の様に史進たちの前に立ちはだかる。
小さな呟きを拾った悠介は二人を安心させるようにそう呟いた。悠介の言葉を聞いた二人は後から駆けつけてきた忠勝と与一に支えられながら、意識を失う。
「さて、選手交代だ。
お前ら覚悟しろよ」
その背に背負う「惡」の一文字をなびかせながら、悠介は梁山泊に宣戦する。
最後に、いつも誤字報告を下さる皆さん、本当にありがとうございます。
いつも本当に助かっています。
気を付けているのですが、どうしても出てしまって申し訳ないです。
何とかなくせるように気を付けていきます