お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 原作にちょっと沿ったver 作:狂骨
その後、現世にて銀城と激闘を繰り広げた一護は銀城に無事に勝利した。その中で彼が今後も代行を続けていくのか不安な声も上がっていたが、彼はその代行証を返却することなく、銀城の遺体を持って現世へと戻ったという。
そんな知らせを研究室に帰還した千弘も、マユリから聞き、銀城という男について改めて知った。
「なるほど。彼が初代死神代行…だからか」
「まぁ微塵も興味はないがネ」
「にしても、浮竹隊長も人が悪いなぁ〜代行証について説明しなかったなんて」
「渡した当時は言う必要は無かった…とでも思ったんだろうネ。本当にバカな男だヨ。それよりも」
そんな中で、研究にひと段落ついたマユリは千弘へと振り返ると、あることを尋ねた。
「本当なのかネ?滅却師のみがいる空間があったというのは」
それは以前、帰還した千弘から聞いた話だ。当時は色々と研究が詰めていたため、聞く機会がなかった。
それに対して、千弘は頷く。
「えぇ。まさか絶滅したとされた滅却師があんなにいたなんて思いもよりませんでしたよ。しかもなんだか、死神は皆殺しとか」
「それで?」
「いや、襲いかかってきたので3、40人くらい斬り殺しました」
「ふむ…」
その話を改めて耳にしたマユリは顎に手を当てると、何やら考え込む。
「…んあ?どうしました?」
「いやはや…腹立たしいネ。この私が焦るなど…」
「焦る?」
その様子に千弘は尋ね返すとマユリは歩き出した。
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研究室を歩きながらマユリは話を続けた。
「今回の君の話が本当ならば、近々、奴らが攻めてくる可能性が高い」
「奴ら…あの滅却師達がですか?」
「そうだ。私としては、ここを荒らされるのは溜まったものじゃあない。奴らは恐らく、1000年前の戦いで生き延びた連中…そんな奴らが、1000年もただボケっと過ごしていたとも考えずらい。となると、奴らは1000年間も力を蓄え続けてきた…と言うわけダ」
「そんで、私達を殺す機会を伺っていた…と」
「その通り。そして、もう一つだけ不服ながらも不安な点がある」
「不安?」
彼の口からは珍しく出された「不安」という単語に千弘は驚きながらも尋ねると、マユリは答えた。
「奴らの潜んでいる場所だヨ。君は確かに瀞霊廷の霊圧の波長が乱れた場所に派遣され、その時に突然と行方不明となった…
実に不可解と思わないかネ?仮に別の離れた場所にいたとしても、そんな長距離を一瞬で移動できる異空間移動の技術など、奴らにはない」
「確かに……はっ!!」
マユリの説明に千弘は考え込む中、ある事が頭をよぎった。そしてそれをマユリも知っているかのように答える。
「その通り。奴らは瀞霊廷の“どこか”に空間らしきものを作って潜んでいた…もしも奴らの世界から私達の生活を見れるのだとすれば…これまでの動向全てを観察していた…と推測できるネ」
「はわ…はわわわわ!!!」
マユリの推測に千弘は指を咥えながらアタフタと慌て始める。
「まずい…不味いですよ!?このままじゃ私がコッソリ局長の顔が描かれたサンドバッグで鍛錬してたのも!下剤混ぜたのも!!それどころか報告書を紙飛行機にして飛ばしたのもバレちゃいますよ!!!」
「そう。見ていたのならば、奴らは攻めてくる際に此方の卍解や始解に対して十分な対策を練ってくる。そうなれば今の腑抜けた護廷隊では、アッサリとやられるだろうネ……______
______ちょっと待てぇええ!!!貴様ぁあ!!!どうもあの時食べた朝食で下痢が止まらないと思ったらお前の仕業かぁああああ!!!!」
「ブワァハッハッハッ〜!!人の給料をピンハネするからですよ〜!!バーカバーカ!タコ局長〜!!!」
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「勝てないなら、どうするんですか?」
それから歩き出したマユリに千弘は尋ねると、マユリは動きを止める。
「簡単さ。戦力を増やせばいい」
「増やす?」
すると、いつの間にか目の前には巨大な扉があり、マユリが手を翳すとその扉が音を立てながら左右に開いた。
そして扉が開いたその先にあったのは_______
「…これって…」
_______巨大な機械だった。下の土台らしき機械には数多くの装置が備え付けられ、その上にはガラス張りの管のような機械が取り付けられていた。
まるで何かを生み出すかのような。
「これって、前々から考案してた…」
「その通り。粉々に離散した霊子を尸魂界の霊子と掛け合わせる事で瞬時に肉体として構成させる装置サ。奴らの殲滅に君を使うのも悪くはないが、生憎、世界を破壊する気はないのでネ」
「は?いや、何言ってんのかサッパリなんですが…というか、じゃあ私はどうしろと?」
「決まってるじゃないか。そうさせないために、君に行って取ってきてもらうんだヨ。君がいた“あの世界”へ」
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同時刻。病床から無事に回復した浮竹は、八番隊の隊首室を訪れていた。
「京楽、久しぶりに茶でも――……ん?」
障子を開けた浮竹の手が止まる。
文机の前に座る京楽の横顔には、いつもとお調子者の笑みはなく、彫りの深い影を落とすほどの深刻な表情が刻まれていた。その異質さに、浮竹は思わず声をかける。
「どうした? 珍しく考え事か?」
「……」
京楽はすぐには答えず、ゆっくりと顔を上げた。その瞳は、いつにも増して鋭く、重い。
「そこで会った隊士から聞いたぞ。『隊長の様子がいつもと違う。何かあったのではないか』と心配していた」
「ごめんね……つい、ね。まぁ、立ち話もなんだ。座りなよ」
京楽はそう言って、お茶ではなく、どこからか出してきた徳利と盃をふたつ並べた。溢れんばかりに注がれた酒の香りが、静まり返った室内に広がる。浮竹もまた、京楽の尋常でない雰囲気を察し、促されるまま対面に腰を下ろした。
京楽は手元の盃をぐっと飲み干すと、低く太い声で切り出した。
「ねぇ浮竹……知ってるかい? 最近の技術開発局の、妙な噂について」
「え……?」
浮竹は盃を持ったまま、首をひねる。マユリの管轄する技術開発局が奇妙な研究をしているなど、今に始まったことではない。
「確かに涅隊長は怪しげな発明ばかりしているが……いや、俺はしばらく寝込んでいたからな。何か特別なことでもあったのか?」
「うん」
短く頷いた京楽は、懐から一束の書類を取り出し、畳の上に滑らせた。それは現世への渡航申請書だった。だが、その目的欄にはどれも一様に『現世滞在中の浦原喜助への研究資料提供』とだけ記されている。
「やけに浦原くんとのやり取りが多い。あの彼を激しくライバル視する涅隊長が、いくらなんでも頻繁すぎやしないかい?」
「う〜む……あの涅隊長のプライドの高さを考えれば……和解など到底あり得んが……」
「それと、もうひとつさ。『ある隊士』についての噂がある」
「ある隊士?」
「『どんな敵であろうと一撃で叩き伏せる』『隊長格すら凌駕する凄絶な剣技』……隊士たちの間では、まるで都市伝説扱いだ」
「それは……一護くんのことではないのか? 一撃というのは尾ひれがついているにしても……」
「僕も最初そう思いたかったさ。だがね、一護くんの名を知らない者なんて護廷にはいない。今回の噂の主は、名前も素性も一切表に出てこないんだ。……おかしいとは思わないかい?」
「ま……まぁ……確かに、気味が悪いな……」
京楽は再び徳利を取り、自分と浮竹の盃になみなみと酒を注ぎ足した。トトト……と響く酒の音だけが、やけに重く部屋に響く。
「まぁ、その都市伝説の正体も……ようやく見えてきたんだけどね」
「!?……誰なんだい、それは……?」
霊術院の頃から誰よりも頭が切れ、直感の鋭い男だ。京楽がここまで調べていることに、浮竹は自然と背筋を伸ばし、目を細めた。
京楽は盃の縁を指でなぞりながら、ぽつりとその名を口にした。
「______」
「!?」
その聞き覚えのないようで、どこか引っかかる名に、浮竹の眉が跳ね上がる。
「……聞き覚え、あるかい?」
「あ……あぁ……。確か、朽木が霊術院にいた頃、名簿で見かけた記憶がある。確か今は十二番隊の……ただの隊士、だったか。その彼が……?」
「うん。最初はただの隊士だと思ってた。だけどね……更木隊長や朽木隊長……そして何より、藍染。彼の口からその名前を聞いちゃったら……ねぇ?」
「っ……!? 藍染の……!?」
絶句する浮竹。護廷十三隊を揺るがした大罪人の名が出たことで、空気の冷たさが一段と増す。
「あの日……無間(むけん)で彼に尋問した際、ふっと奴の口から出たんだよ。気になって調べたら、席官にすら就いていないただの雑用係。……あの藍染惣右介が、一般隊士の名前をわざわざ口にするかい?」
「……いや。……あり得ない」
浮竹は手にしていた盃を、ゆっくりと畳に置いた。酒を飲む余裕すら失われていく。
「奴は己の障害となり得る存在を、緻密なまでに洗い出す男だ。現に更木隊長や……卯ノ花隊長との直接戦闘を避けていたのも、彼女たちの本質を知っていたからこそ。……ならその隊士にも……」
「何か『秘密』がある。そう思ってね、僕も影から彼を見に行ってきたのさ」
「……それで、どうだったんだ……?」
浮竹の声が微かに震える。京楽の顔に落ちる影は、もはや光を寄せ付けないほどに濃くなっていた。
「直接話すことはできなかった……。けどね、あの子の纏う空気には……この世のものじゃない異質さが混ざっていたよ」
「え……? 異質、とは……?」
「遠目だけどね。彼が、副隊長のネムちゃんに不躾な視線を向けていた隊士と口論になってね……その時、あの子が静かにキレたんだ。普段の愛想の良さが綺麗さっぱり消え失せて……その瞬間の『圧』を見ちゃったんだよ」
浮竹は思わず息を呑み、身を乗り出した。
「……もしや、藍染をも凌ぐほどの霊圧、とでもいうのか……!?」
「いいや――……」
京楽は静かに首を振った。その目は、過去のどの戦いよりも冷たく、重い絶望を孕んでいた。
「“地獄の燐気(りんき)”さ」
「――――――――」
浮竹の喉から、声すら出なかった。
地獄。
死神すらも侵すことのできない、監視のみのあの絶対の領域。
浮竹の手にあった盃から、一滴の酒が畳へとこぼれ落ちる。もう、酒を口に運ぶ気力すら残っていなかった。京楽もまた、あの時目撃した少年の「光の消えた瞳」と、背後に渦巻いていた禍々しい燐気を思い出しているのか、酒を注ぐ手を完全に止めていた。
静寂が、重く、重く隊首室を支配する。
京楽は低く、掠れた声で、最後のピースを繋ぎ合わせた。
「浦原くんとの頻繁な連絡。そして……地獄の燐気を身に宿した、謎の隊士…考えたくはないけれど……涅隊長は今、________
_____『地獄』に、手を出そうとしてるのかもしれないね」