トレセン学園であった怖い話   作:塩化プラス

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【第三話】エアシャカール/C2~分岐

ほォ、そうかィ。まア、悪い判断じゃねェかもな。

つッてもここでオレの話は終わりッてのも味気ねェしさ。別口の話をしてやるよ。

こいつはオレに比較的馴染み深ェ話だから、あンまし違和感沸かねェんじゃねェかな。

 

なア、お前ら。レース見学部ッて部活を知ってるか?

その名の通り模擬レースから競技レースまで。ありとあらゆる様々なレースに己の足で出向いて、状況に結果にと調査する部活だ。

 

スポーツはオレらにとっては特別なモンだ。

特にレース……自分の限界に挑戦したうえで誰かと競い合い、だからこそ勝者はたった一人しか生まれ得ない。

トロフィーを勝ち取れる資格を持てるのは結局ンとこ一人だけ。

楽しいだけじゃア務まらない、狂気染みた証明のフィールド。

チーム競技の野球やサッカーなンかとはそもそものベースからして違ッてやがる。

 

そんなレースの勝ち筋を増やす。簡単に言やァそんだけの部活だ。

ただな、ここで大事なのは見るだけってとこだ。

レース見学部の参加資格は多くねェ。

まずひとつ、勝ち負けに関わらずメイクデビューを済ませていること。

そして、次点に。デビュー戦未勝利、ないし未勝利戦で勝っていないことだ。

勝ちって美酒の味を知らないヤツでないとこの部活には参加できねェ。

ンで最後に。

基本的には未勝利を脱した時点で部活への参加資格は剥奪される。

細則はいくつかあるが、大まかな参加資格はこれで以上だ。

 

あア?

そんなしちメンドくせェ理由がなんであンのかッて?

そんなの簡単さ、集団心理的に発生しうる、部活内でのマウント合戦を無くすためだ。

この部活は基本的に相互扶助で成り立ってるモンだからな。

こンな風に十把一絡げにまとめンのも良かねェが、五十歩百歩のメンツの中に抜きん出てるヤツが居ると大抵空気が荒れンだよ、常としてな。

 

オレたちウマ娘ッてよ、走ることになるとガラっと印象変わるヤツが多いだろ?

闘争本能。アメリカンナイズドで言うとファイティングスピリッツか?

オレは感情論っての嫌いなンだがよ、嫌いだからってバカに出来るほど影響力の低いモンじゃ決してないンだよ、コイツは。

だってよ、有り余る力の行き先が走ることに費やされてンだぜ、オレたちって存在は。

普段穏やかなヤツでも、レースとなると己をガラリと変えちまう。

だからこそ必要なンだ。こンな形だけの、有名無実なルールだとしても。

ルールがねえと歯止めが効かねえ。そういうことは普通にある。

だからよ、あるのとないのとじゃア……てんで話が違ェんだ。

生身で事故に遭うより、防護服着てた方がダメージ少なく済むじゃねェか。

何事にもヒューズってのは必要ってことだな。

 

んで、話に戻るぜ。

この部活に顧問然とした顧問はいねェ。先公の持ち回りで数年に一度形式的に変わっちゃいるが……生徒の自主性に任せる感じで深くは突っ込んで来ねェ。

オレたち、レース場も学生証出しゃ顔パスだしな。流石に夜間のレースだったり東京近郊より離れた場所には引率として付いて来るが、それでも口出しだけはしねェんだ。

 

口出ししない理由については知らねェよ。おおかた、所属チームや担当トレーナーだとか、お付きの教官だとかから色々指摘受けかねネェからとかじゃねェか?

生兵法は大怪我のもとって格言にもあるように、一応コントロールしてンだろ、トレーナー資格の有無とか関係ねェところでな。

 

で、レース見学部の日々の流れだが、まずはその名前の通り、様々なレースを見学することからスタートしてくワケだ。重賞はもちろん、オープン戦や地方戦も観察する。学校生活やトレーニング等に支障のない範囲でな。

 

レースから得た知識は見返せるようにデータとしてパソコンやノート等にまとめて、定期的に考察及び検証のためのミーティングをやるンだよ。

それを部員だけで行うッてんだから、学者の集いさながらだよな。むしろこれこそが正しい『研究会』としての集まりなのかも知れねェな。

 

毎日開かれる部活ってワケじゃねェが、部員の結束は固かったらしいぜ。

そりゃそうだ、目指す場所は同じだからな。

いずれ敵になろうとも構わねェというか、そもそもレースってのは最終的に自分以外の全ての条件が敵も味方にもなるエリアだろ?

なら敵も味方も所詮は要素でしかねェ。だったら観測して理論を導き出すべき。そう考えるヤツが多くてもなんも不思議じゃねェからな。

 

つっても、学習すりゃ勝てるってほど単純に出来てねェのがレースってもンだ。実力、運、ライバルやらの様々な要素が噛み合ってようやく手に入れられるモンだろ。勝利ってのは。

 

一勝をもぎとりゃ万々歳。当たり前の毎日の中で、白星を掴み取るために真っ向から取り組む。才能に勝ち切るために、脳と心で戦う。ソイツがレース見学部。統計と思考をループさせ、勝利の可能性を手繰り寄せる、ひどく実践的な部活……だッたンだがな。

 

まア……こうまでクサく話しゃあ、当然の帰結に至るよな。

レース見学部はな、もう存在しねェんだよ。

なァに、さして不思議でもねェさ。

実に当たり前のような事の顛末に襲われた結果、オレらが入学する頃には廃部になっちまッたンだッてよ。

 

なあ、スズカ。お前らも。

聞いてるだけッてのも退屈だろ。

レース見学部がどうして廃部になったか、当ててみねェか?

いやいや、ヒントはやらねェよ。醍醐味……考える時間も怖い話ッてことだ。

フィーリングで構わねェから適当に答えてみてくれ。

間違ってても合ってても別に話が変わるわけじゃねェが。

さァ、聞かせてくれよ。

 

1・魔法に手を出したから

2・全員勝って部員が居なくなったから

3・考えてみたけど分からない

 

 

 

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