んぎょわーっ!?
なぁんでそこで私の話なんですかぁ!
この催しで、この雰囲気の中で、なんで突然私が実はかくかくしかじかで~なんて身の上話をしなくちゃいけないんですか!
もおーっ!
おふざけがすぎますよぉ!
他の人の話を聞いているときに思いましたけど、返答のときにちょっとお茶目すぎるきらいがありますよスズカさん!
フンギャロなんていいませんから、もう一度だけ聞いてあげますよ!
二度はありません!
二度やったら流石の私もご立腹!
このあとのご利益なしは確実でしょう、私は神さまじゃありませんが!
さあ、如何します?!
ん~……
ん~………………
な、なるほどぉ……うむぅ~……なかなか難しい無茶振りですねぇ……
私のイチオシとなるとやっぱり事前に用意してきたこっくりさんの話なんですが……
ここまで私の話に拘るとなると……
スズカさんの思惑的にはたぶんこっくりさん等の実地での体験に基づく恐怖ではなく。
耳から得た情報をもとに想像を膨らませていって、最終的にゾッと出来るような体験をしたいってことですよね。
とはいえ……その私、生憎と自分での体験に疎いもので……
うちの神社の話とかだと学園の範疇には入らないですしね。
同好の士から聞かせて貰った、非常に短い話になってしまうんですけど、構いませんか?
あ、それでも大丈夫ですか。
ありがとうございます。
それでは話させて頂きますね。
かつてこの学園に誰よりも速いと称されるウマ娘がいました。
合同練習ではいつも輝き、模擬レースでは何よりも美しく、二位よりも常に先んじてゴールテープを切っている。そんな存在でした。
品行方正、冷静沈着、才色兼備。人格面にも非の打ちどころがない。華も優しさも持った、これこそまさに至高の名バ。誰もが褒めそやすに値するだけの能力を兼ね備えていました。
しかし。
彼女は公式戦には一度も出ないまま。
数多ある歴史の中にいつの間にか消えていったのです。
……どうして、と。
そう問うことすら野暮なのかもしれませんね。
内実はともかくとして、理由は単純ですよ。
彼女はデビュー直前に事故に遭ってなくなってしまったのです。
ああ、事故と言いましたが、交通事故とかではないですよ。
勿論、練習のし過ぎによるものとかでもないです。
事故の意味するところ、お分かりかとは思いますが。今一度お伝えしておきましょう。
事故とは予期していなかった、もしくは意図していなかったのに、実際に起こってしまった、というもの。前置きはそこそこにして、事故の要因について語っていきましょう。
事故の要因は、神隠しです。それが事実なのかどうかはともかくとして、ですがね。
私が友人から聞いた話を総括すると、神隠しという例えが一番近いように感じたというだけなんですよ。
先ほど私、なくなった、という部分に若干不可解なアクセントを付けさせて頂きましたよね?
これにはちゃんと意味がありまして……彼女に起きた結果を見るに……亡くなったのではなく、無くなった。説明に正当性を求めると、一番正しさを示せる単語がこれなんです。
理由として、彼女が居たことを覚えている人は多いのに、誰一人として彼女の名前を憶えている人がいないことが挙げられます。
神隠しに遭ったという噂が独り歩きして、変なことになってるわけじゃないですよ。
大体、将来を嘱望されていたのなら、何か記録に残ってそうなものだと思いますよね?
それを見れば誰だったかなんて一目瞭然だろうって。
出来ない理由があるんです。見たってもうてんでムダなんですよ。
確かにアルバムやレースのレポートなど。彼女についての記載がある箇所は確かにいくつもあります。なのにどうしてか、彼女の部分だけ何故か認識することができないんです。
目を凝らそうが、透かして見ようがダメ。
なのにですね、そのウマ娘のお方。
ある場所に行けばいつでも会えるらしいんですよ。
どこかは……言わなくても分かりますよね。
練習レース場……芝かダートは問わず、悩みのあるウマ娘が一人で練習しているときに、ふっと現れるそうなんです。
そして、見事なまでの走りで悩みを吹き飛ばしてくれる……らしいです。
代償とかはないらしいですが……
二つほど、彼女が現れた時の注意点があるようでして。
それは……名前を聞かないこと、会ったことを話さないこと、だそうです。
その約束を破ってしまうと、どうやらその子も同じように神隠しに遭うのだとか……
……正直、ミステリアスなお話が好きな私ですら、眉唾ものだと思っていますよ。
でも結構有名な噂ですから、みなさんも聞いたことがあるのではないですか?
練習場に咲く花の幽霊……そう呼ばれているウマ娘の幻影の噂を。
……とりあえずここまでの一連を聞いて、スズカさんはどう思いました?
この催しを始める前から思っていたことだけど。
私はオカルトになんて詳しくない。
だから別にその花の幽霊と呼ばれる誰かを突き止めたい訳じゃない。
しかし、誰よりも速いと称されたウマ娘には興味があった。
神隠しにあって消えてしまったとされるそのウマ娘。
戦闘狂みたいな言い分になってしまうけれど……自然と思っていたのだから仕方ない。
走って、競って、勝ってみせたいと。
より速いのは、きっと私だから。
「そうね、私は……とりあえず走ってみたいわ」
そんな想いは胸の裡から勝手にこぼれ出た。
私は間髪入れずにフクキタルへそう答える。
言ってから、実に私らしい回答だとちょっとだけ誇らしくなった。
私を私たらしめているもの、それは走ることに他ならない。
スローモーションで目に映る、フクキタルの口の動き。
おそらく、ほんの少し困惑したように何かを伝えてくれるのだろう。
それに対して、私は……