加茂家の超エリート術師に転生しました 作:君よ気高くあれ
10月31日の渋谷。
世間はハロウィンということで、渋谷のスクランブル交差点には仮装した若者たちがごった返していた。
仮装した者以外にもこの喧騒を見ようと興味本位で訪れた者や仕事帰りに一杯ひっかけに来たサラリーマンなど、年齢性別国籍を問わず大勢が行き交っていた。
そんな渋谷の、東急百貨店、東急東横店を中心に半径およそ400mの帳が降ろされた。
異変を察知し、窓らが調査した結果、降ろされたのは"一般人のみが閉じ込められる帳"。一般人は侵入することが出来ても出て行けない。窓には個人差があり、術師は補助監督を含めて出入りが可能。
電波は断たれており、帳内では今のところ異変に気づいた一般人のみがパニックとなっているが、それ以外の異変は起きていない。
連絡するためには帳への出入りが自由な術師か補助監督が一旦帳の外に出て行うしかない。
その連絡役を潰すのが重面春太の役目だった。
サイドテールにした金髪と華奢な体格をした青年で、目元に刺青のような紋様があるのが特徴の呪詛師である。
手には、ヒトの手がついた剣を持っており、この武器を仲間の呪詛師・組屋鞣造が作った呪具である。
春太曰く、自身は非力であるため、その剣から手を握ってもらっており、手を離していても生物のように操ることができ、投擲し武器の方から来てもらったりとトリッキーな使い方が可能となっている。
「スーツのやつ、スーツのやつ」
自身を今回の呪術テロに誘った夏油傑の命で、帳の内外にいる黒いスーツを着た男と女を殺せと言われた春太は帳が降ろされるとすぐに活動を始める……はずだった。
「んおっ、500円見っけ……」
偶然、道端に落ちていた500円玉を拾うため立ち止まると、その500円玉は突如とした空から飛来した呪力の塊によって破壊される。
「えっ……、は……?」
何事かと春太は呆然とし、空を見上げる。月明かりが空を照らし、ビルの明かりもその人影は春太の目からもよく見えた。
逆立った髪と愛想など微塵もなさそうな顔つき、筋肉隆々な身体を青いタイツのようなスーツと白いボディアーマーで包んだその男に春太は自身の目を疑った。
「仮装……? ってうぉっ!?」
なんの仮装かはわからないが、ハロウィンの空の下では似合いの格好だと思った矢先、先程と同じ呪力の塊が放たれる。
それをたまたま、道の段差で躓いて避けた春太に、空で浮遊する男はさらに呪力波を撃つ。
「ひぃっ!?」
またも避けることを見越して春太のいる位置より少しずらして呪力波を撃つも、今度は逃げる際に靴が脱げてその目の前で止まる。
「なるほど、そういう術式か」
流石に3回もそのような事が続けば男も勘づく。面倒な術式ではあるが無制限では無いはずと春太のことを観察する。
「な、なんなんだよお前はァ!?」
「……」
自身より弱いものへと不意に攻撃するはずが、逆に自分より強い術師に一方的に攻撃されていることに苛立った春太が怒りの声を出す。
しかし、その間にも呪術師は春太への観察を続ける。
(目の下の紋様……右に2、左に1……。不格好に見えるがそういうメイクか? いや……)
「おい! 降りてこいよ! そんなとこに居たら俺が攻撃できねぇだろうが!!」
逡巡する術師に春太は空に向けて叫ぶ。それを聞いて術師は春太から少し離れた位置に降り立った。
そんな術師にマヌケ! と春太は笑うもその額には汗が滴っていた。
(降りさせたはいいけど、あの呪力の玉といい飛ぶ術式といいなんか妙だなぁ。絶対俺より強いよなぁ)
死なない自信はあるけど、勝てる自信もない。どうするかなぁと春太が悩んでいると、先に術師が動いた。
「フン」
「うごぉっ!?」
アスファルトを蹴って、ひとっ飛びで春太の目の前まで近づいた術師は強烈な右ストレートを春太の顔へとお見舞する。
拳の威力は高く、春太の体は後ろへと飛び、2度道路へと打ち付けられて止まる。
「いってぇ〜……なぁ!!」
鼻血を出し、歯も欠けた春太だが意識はあり、息もしていた。ダメージを受けたにも関わらず、頭に昇った血が彼に反撃の2文字を選択させ、掴み掴まれていた手剣を投擲する。
(顔の紋様に変化なしか。オレの勘違いか?)
思考を続けながら、術師は春太の投げた手剣を蹴り、春太の方へと返上する。
「はぁ!?」
それに春太は驚き、走ってくる手剣を躱すため立ち上がろうとするも、体に力が入らずそのまま尻もちを着く。
そのため、剣は春太の後ろにあった車へと刺さり、春太は事なきを得る。
だが、春太の顔の紋様が一つ消えた。
「ほぅ……」
それを見て術師は確信する。
ニヤリと口角を上げた術師は連続で呪力波を放つと、それは春太へと真っ直ぐ、間を空けて飛んでいく。
「うぉぉぉ!!? ひぃぃぃぃっ!!?」
ビビり散らかしながら春太は地面を転がり、躓きギリギリで避けていくが、顔面の紋様がまた一つ消える。
そして、全ての紋様が消えると術師はシュンッとその場に僅かな残像が残るほどのスピードでその場から駆け出す。
「っぶっ!!?」
スピードを維持したまま春太の腹部へと再び拳を突き出し、春太は電柱へと叩きつけられ、ズルズルと地面へ落ちる。
「う"っ……ぶっ…………」
ようやく意識を手放し、春太は倒れ伏す。
僅かに呪力は落ちているが、まだ死んではいないことを確認すると術師は待機させていた監督役を呼び出す。
「篝さん!」
呼び出しからすぐその場に駆けつけた灰原に、篝は「ここは任せたぞ」とすぐさま飛び上がり、再び渋谷の空へと舞う。
「……それで、メカ丸、いや幸吉」
『はい。おそらく、監督役を無力化して回る呪詛師はアレで全てだと思います』
究極メカ丸の顔を模した通信機に篝が話しかけると、そこから数ヶ月前まで究極メカ丸として活動していた与幸吉の声が返ってくる。
「てめぇが生きてるのに夏油の中身はてめぇに語ったとおりに呪術テロを起こしやがった」
『余程自信があるんでしょう。現に今のところは奴らの思いどおりになっている』
呪術高専京都校に属する与幸吉は天与呪縛により、先天的な五体不満足と引き換えに高い呪力を得ていた。
しかし、望まぬ境遇を忌々しく感じていた彼の心の隙間を狙って、夏油傑の容姿をした何者かが彼にとある縛りを持ちかけた。
それは京都校の学生として日々を過ごしながら、高専に登録していない超小型の傀儡を操作して高専内部の情報を集め、それらを夏油に流していた。
だが、姉妹校交流会において夏油一派である花御が京都校の人間に危害を加えたため、幸吉は内通者を辞退。
夏油はそんな彼に縛りは守ろうと、彼の身体を真人の無為転変で五体満足なものにした。
その直後、真人と戦闘となり交戦することとなった。しかし、特級呪霊の真人と特級術師の力を持つ夏油を1人で相手にするのは幸吉では無理な話だった。しかも、あらかじめ外には帳が降ろされており、電波は遮断され、幸吉は帳の外へは出れなくなっていた。
五条悟や加茂篝のようにはいかないかと、乾いた笑みを浮かべ、真人を撃破するために17年5ヶ月と6日、自身を縛った年月で得た呪力で勝利するべく攻撃を開始した。
ダム湖の上で真人と夏油の予想を超える戦いで真人を追い詰める。
領域を展開されるも、それを見様見真似、シン・陰流「簡易領域」で防いだ。不意をつき、真人の魂へとダメージを与えられる攻撃で真人を撃破したかに見えたが、真人が真の呪いであることを幸吉は忘れていた。
「撃て!! メカ丸!!」
簡易領域1本。呪力9年分を残して夏油と戦えることは幸吉にとって嬉しい誤算だった。
勝てる!! 皆に会える!! と、メカ丸にエネルギーを充填し、放とうとした刹那───────メカ丸のコクピットが砕けた。
「ニヒッ」
「なっ」
仕留め損なったか!? だが、領域は1本残っている。それを直にぶち込めばと幸吉は果敢に真人へと向かおうと───────。
「避けろ、メカ丸!」
「「ッ!?」」
幸吉、真人、そして夏油とも異なる声に、3人は身を震わせる。
その声の主に絶対的な信頼と感謝の念を抱いている幸吉は咄嗟に後ろに身を引く。すると、空から呪いの弾が降り注いでくる。
「……ちっ、真人め。時間をかけすぎだよ」
忌々しげに夏油は呟きながら、帳の外郭を無理やり破壊して侵入してきた術師を見上げる。
「やぁ、篝。久しぶり」
「……あぁ、久しぶりだな。夏油」
先程までの苦虫を噛み潰したような表情から一転して笑顔になった夏油は、かつての友人に声をかける。
対する篝は頭にできた縫い目以外は寸分違わず自身の知る姿をしている夏油に冷めた目を向ける。
本来初めましての2人が皮肉な挨拶を交わしながら、その目には互いに警戒の色が浮かぶ。
「なんでてめぇが生きてやがる。五条に殺されたんじゃなかったのか?」
「さぁ、ね? 自分で考えなよ。よく言うじゃないか。てめぇの頭で勝手に想像しろって」
軽薄な笑みを浮かべて煽る夏油に、篝は「そうか」と呟いて目を閉じる。
「なら、ここで殺すまでだ!」
波ァッ! と篝は両手から大量の呪力波を放出し、夏油へと放つ。
「悪いがこっちにその気は無いよ」
それを手駒にした呪霊に受け止めさせると、夏油はその場からの離脱を図る。
「真人も戻っておいで! 今の君じゃそいつとやり合うのは無理だよ!」
篝を倒せずとも足止めできる程度に呪霊を放ち、それを全て幸吉へと向ける。自身を追いかけてくるのなら、渋谷事変の計画を知る幸吉を殺すことができるし、幸吉を守るのであれば幸吉に話した以上の計画は掴めなくなる。
「篝さん! 夏油を追ってください!」
「俺に命令するなァ!」
呪弾で呪霊を捌きつつ、時折夏油や真人へも飛ばすも、飛行する呪霊に乗った彼らは瞬く間にその背を小さくしていく。
真人へも飛ばすも、飛行する呪霊に乗った彼らは瞬く間にその背を小さくしていく。
「篝さん……」
夏油の放った呪霊を仕留め終わる頃には、空を覆っていた雲は消え、僅かに欠けた月が顔を見せていた。
自分のために夏油や真人を見逃させた篝に幸吉は頭を下げた。
「すみません……でした」
京都校の面々を支え、彼らが危ない任務に当たらないように……していたかは分からないが少なくとも、幸吉の知る限りでは彼らを守り続けているように見えた。
「あぁ」
そんな風に見ていた幸吉に篝はぶっきらぼうに答えた。
「京都校の奴らに会わせるのは少し先だ」
「えっ……」
「知っていることを話せ。話はそれからだ」
こうして、加茂篝にとっての渋谷事変は他の術師や呪霊よりも先に幕を開けた。
Q、なんで灰原生きてんの?
A、生きてるから(死因になった呪霊を篝が倒しに行ったから、死因になった任務が発生していないため)
渋谷事変までの話思ったより多かったんでスキップしようとしたら幸吉くん生きてる理由語るのに結局ちょっと巻き戻しちゃったゾ☆
幸吉くんが渋谷事変どこまで知ってるか(原作から考えて)
・五条悟を封印しようとしている
・帳の種類と数
嘱託式は知らないっぽいけど、補助監督を殺そうとしてる(連絡網の遮断)くらいら思いつきそうなので、空を自由に飛べる篝くんに阻止してもらいました。
偽夏油くんことメロンパンは呪詛師増やしたけど、1人も補助監督死んでない(怪我してるのはいる)
次から渋谷事変①になります。何番でいつ終わるんやろか……(これからの事を想像しながら)
ネタバレの範囲(DBはドラゴンボールの略)
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呪術DB本誌含め全てOK
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呪術DB単行本化してるとこまで
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呪術DBアニメ放映分まで