ドクトル・バタフライのお手伝いをする人形として引き取って貰うことになりました。自動人形に取り憑いていた悪霊も一緒に移動するようですけれど。
私の事を執着的に狙うのはなぜなんでしょう。特に酷いことをした覚えはありませんし、身体の整備も不備なく仕上げたんですが。
「では、失礼するよ。レディ、挨拶を」
「また、お会いしましょう」
「はい。また会いに来てくださいね」
そう言って私はドクトル・バタフライと一緒にチャフの上に乗ったフランス人形を送りつつ、ゆっくりと不満そうに口をへの文字に曲げたしとりとひとえの二人の頭を優しく撫でてあげます。
「母様を虐めるヤツは許さないもん」
「かーさま、よわよわだから心配」
「うっ、あ、あはは…」
ひとえの悪意の無い言葉に悲しさを感じながら、お家の中に戻って、私は首を傾げてしまう。居間に置いていた予備の眼鏡が消えています。
姉妹は眼鏡を掛けませんし。
多分、あのフランス人形が持っていったんでしょうね。小さな身体なのに飛んで跳ねて私の首を狙うヴォーパルバニーめいた人形でした。
「母様、竹刀の鍔がない!」
「…宝物、ということでしょうか?」
「ひーのハンカチーフもなーい!」
「あらあら」
「景、オレのサラシ知らないか?」
「左之助さんもですか?」
まさか全員のものを持っていっているのは予想外ですが、それだけ気に入ってくれたということですね。しかし、ハンカチーフと鍔はまた作らないとです。
「左之助さん、私のお古ですけど。使いますか?」
「使う。なんなら着けてるヤツくれ」
「っ、助平なのはいやです」
「お古だろ?ならそれがいい」
破廉恥です、よろしくないです。
手洗いとうがいを済ませて、先ずはしとりの竹刀の鍔を作ることになりました。木を削って作るだけですので、形状も前回と同じく円形鍔です。
本来は漆や防腐剤を塗るのですが、しとりは派手なモノは好きではありませんので、少し艶を出した程度の普通の鍔に仕上げる───。
あとは乾かしておけば完了です。
「触ってはダメですからね」
「ん!」
「ひとえのハンカチーフはお母さんのモノを代わりにプレゼントしましょう。何色が良いですか?」
「赤!」
「フフ、左之助さんにそっくりですね」
そう言いながら箪笥に仕舞っていた白い生地に椿の刺繍を加えたハンカチーフを手渡すと嬉しそうに抱き締めて、ひとえはピョンピョンと跳ねて、そのまま居間を出ていってしまった。
「よし、最後はおれだな」
「……すけべ、ハレンチ大魔王」
「くれるんだろ?」
渡すわけ、ないでしょう。
もうっ…!