【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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PHASE-34 ニコル・アマルフィの記録
part1 答え合わせ~『奇跡』との出会い~


 

 

 

 

 CE0072.6.** (PHASE-0 part3~)

 

 チグサ計画の一環である、キラ・ヤマト確保ミッション。

 その第3フェイズとして、サイ・アーガイルへの接触を行なうことになった。

 キラ本人や、彼のSEED覚醒の鍵となったフレイ・アルスターの人となりを知るには、回収したレコーダーやデータだけでは足りない。実際に隣に生きていた者の証言が必要……

 という姫の発言から、この作戦は始まった。

 アマクサ組も勿論出動することになるけど、まだマユはウーチバラから出せない。

 重力下じゃ、未だにあの身体は安定しないから。

 

 

 

 

 サイ・アーガイル自身は、ただの凡人だ。

 SEEDもなければ、空間認識能力もない。努力家で優秀ではあるけれど、全くの純然たるナチュラルだ。

 僕らに判っているのは、キラの友人だったということ。そしてフレイとは親同士で婚約の話まであった、かつての恋人的存在だったこと。

 そして、ヘリオポリス崩壊時からキラやフレイと一緒にいたこと。

 彼やゼミの友人たちを守るために、キラは戦わざるをえなかったこと。

 フレイの父親の死をきっかけに、フレイは変貌し、何故かサイを捨ててキラに近づいたこと。

 ──確定事項というと、このぐらいかな。

 

 姫によれば、おそらくフレイ・アルスターはコーディネイターへの憎しみのあまり、キラを利用し戦わせることで復讐しようとしたらしい。

 僕は男なのでそういう感情はわからないけれど、ともかくその結果、サイは捨てられた。

 サイはそれでも、キラたちと共に最後まで戦った。個人的に、その根性は敬服すべきものだと思う。

 結果として、フレイは永久に彼のもとには戻らなかったわけだけど。

 

 

 

 

 で、僕たちはそのサイと姫を接触させるため、北チュウザンへ潜入した。

 サイはどうやら奇遇にも、アマミキョの下調べの為に北チュウザンに来ているらしい。

 彼にとっては2年ぶりの、彼女との再会だ。

 まず第一段階として、姫は記憶喪失を偽装して、サイに近づく。

 具体的には、キラに関する記憶は全部消えてるふりをして。

 

 

 

 

 感動の再会の演出の為、暴漢3名ぐらい準備すべきかと考えたけど、僕が用意出来たのは真っ赤なハイビスカスの花束──に見せかけた、護身用装備だけだった。

 姫が接触する前にサイは勝手に騒動を起こしていたから、余計な手間は省けた。オーブでの彼の観察結果から、こうなることは予測の範囲内だったし。

 

 

 

 

 

PHASE-34  ニコル・アマルフィの記録

 

 

 

 

 

 CE0072.6.**(PHASE-0 part7~)

 

 そして今日は、死に別れた恋人同士の運命の再会後、初のデートだ。

 同時に、僕たちの仕込みも本番。

 監視ログを確認する限り、姫の演技は全くもって、非の打ち所がなかった。さすが、御方様から仕込まれただけのことはある。

 しかもサイの反応を確認しながら、少しずつ演技の軌道修正を行ないつつ情報を集めているあたりは、素直に凄い。

 

 僕もアスランと会う時の為に、見習わなければ。

 姫によれば、演技ではなく「魂を降ろす」そうだけど……

 僕にはその境地は、まだ分からない。ニコル・アマルフィの記録は、残念ながらフレイほど多くは残っていないし。

 

 サイとのデートの間も、僕たちとの定時連絡は絶対欠かさない。化粧直しってのは便利な口実だね。

 僕たちにはもう一つ、ミッションがある──この地を守る為に。

 

 

 

 

 夕方になって、ちょっと事情が変わった。

 驚いたことに、サイは姫に──

 つまりフレイに、自分とキラと彼女の間にあったことを、全て話したのだ。

 てっきりこのまま、自分を振った記憶がないのをいいことに、フレイを自分のものにするかと思ったのに。

 

 それにしても、サイから聞いたキラ・ヤマトの暴言は凄かったな……

 穏やかそうに見える人となりからは、およそ想像が出来なかった。

 そもそもそれ以前の段階で、キラがどれほど追いつめられていたかっていう証左でもあるんだけど。

 生きのびるためにどうしようもなかったとはいえ、当時のアークエンジェルの大人たちは彼に酷いことしたよね。

 それはサイたち同級生にも同じようなことが言えて、サイ自身もキラへの対応を酷く後悔していたみたいだけど

 ……彼らはまだ何も知らない、民間人の子供だったし。

 

 やっぱりレコーダーとデータだけじゃ、人は分からないものだ。どうして周囲の人間との直接接触が必要なのか、分かった気がする。

 あれを聞いたおかげで、姫は一瞬、演技を忘れてしまったらしい。

 すぐに元に戻ったけど、フレイとしての言葉の中には明らかに、姫の本音が入ってた。

 

 サイは、全てを話した。

 そして自分から、キラの情報を渡してくれた。

 キラ・ヤマトの居場所自体は把握ずみだから、これは特段重要なものじゃない。

 だけどサイは、自分が彼女を独占できるはずなのに、それをせず――

 フレイの為に、記憶を取り戻させようとした。

 

 このことは姫には、非常に意外なことだった。僕たちにとっても。

 そういう非合理な行動をする人間は、少なくとも僕たちが知りうる範囲では存在しなかったから。

 ミッションが第二段階に入ったのは、その後すぐだ。

 

 

 

 

 ここでテロが起こるという情報は、事前に入手出来ていた。

 サイがフレイをこのまま自分のものにしようとしているなら、テロに巻き込んで消してしまうことも出来たけど

 ――彼は、そういう人間じゃなかった。

 だから姫は彼に避難ルートを示した上で、行動を開始した。

 

 だけどこともあろうに、サイは逃げずに、フレイを追ってきた。

 すると姫はこの時何故か、『フレイ・アルスター』の演技をするのをやめた──

 

 サイが真実を見せたのなら、自分も真実を見せるのだと。

 サイに隠している真実なんて山ほどあるのだけど、少しでも姫は見せておきたかったんだろう。

 知ってほしかったんだろう。

 自分が何者であるかを。

 

 もし演技が通用しなかった場合は、フレイはエクステンデッド、強化人間ということにする。

 そのことは打ち合わせ済みだったけど、あそこまで堂々とバラすとはね。

 それ以外は、おおむねうまくいった。フレイは華麗にダガーLを奪取してカイキのソードカラミティと合流し、テロを鎮圧。

 

 

 

 

 CE0072.6.**

 

 早速、問題が発生した。

 突然姫は、強奪したダガーLを改造して自分の機体にすると言い出した。

 オギヤカにもシネリキョにも山ほど機体があるのに、何を言い出すのかとみんなで止めたけど、姫は聞く耳を持たなかった。

 姫の要求――というか命令は、以下の通り。

 

 丁度入手できたIWSPのデータがあるから、同じものを作らせて装備させればいい。

 さらにフェイズシフト装甲もつける。ついでにベースとなるフェイズシフトの色は赤。

 それもオーブのストライクルージュみたいなピンクは嫌なので、血の赤を希望。

 勿論、頭部意匠はストライクと同じに……って。

 

 ドレス選びやってるんじゃないんだ。わけがわからないよと言いたくなったが――

 御方様は、特に何も言わなかった。

 姫は便宜上とはいえ一応、御方様の妹だ。

 そして本当なら、もっと大切な存在のはず。

 その姫を、そんなツギハギ機体に乗せて大丈夫なのか。

 ミゲルなんかは直接御方様に提言したみたいだけど、御方様はどうやら様子を見ることにしたらしい。

 

 確かに、初めてのことなんだ──姫が自分の機体に、これほどのこだわりを見せたのは。

 今までは、御方様から受領した最高の機体ばかり乗っていたのに。

 姫の今までの実力からすれば、この機体で十分問題はないのだけど、僕たちはもっと良い機体に乗ってほしい。

 だって姫は、「キラ・ヤマトを超えうる者」なのだから。

 

 

 

 

 CE0073.4.** (PHASE-1~3)

 

 コロニー・ウーチバラにて、いよいよアマミキョ出航の時が来た。

 同時に、ティーダの本格的な実地起動試験、その第一弾も開始だ。

 アマミキョの件は、既にマスコミが大々的に流している。そしてザフトと連合へのリークも完了した。あとは、向こうが動くのを待つだけだ。

 既に文具団社長にも、テロの可能性及び詳細情報は連絡済み。可能な限り民間への被害は最小限にしてくれるという。

 もっとも社長は、マスコミを呼んでおけばテロの可能性は低いと踏んでいたようだけど、僕たちに言わせると……甘いとしか言いようがない。

 

 ウーチバラやアマミキョの一般人には申し訳ないけど、これも、アマミキョ・ハーモニクスシステム完成の為に必要なことだから。

 ティーダとアマミキョの性能を試し、セレブレイト・ウェイブ発動のデータを収集するには、通常の演習ではどうしても出来ないことが幾つもある。

 そのひとつが、大勢の人々の感情の波だ。

 戦闘に巻き込まれ、パニックに陥って右往左往する人々の感情というものは、演習ではとても再現できるものじゃない。

 死に瀕した時の絶望、負傷による苦悶、誰かを傷つけられたことによる激昂、誰かを殺されたことによる悲哀。

 混乱の中、親しいものと再会出来た刹那の喜び。生き残ることが出来た時の安堵。

 

 ──非常事態における激しい心の動きは、ぶっつけ本番の戦闘でなければ再現は不可能。

 だけどアマミキョとティーダには、それが必要だ。

 

 だからこそ、ウーチバラ周辺に潜伏していたザフトと連合の末端組織に、可能な限り情報を流した。その中には勿論ゲリラもいる。いい感じに衝突してくれればいいんだけど。

 アマミキョ出航で、大勢の人間がアマミキョ内外に集まるこの時以外に、巨大な感情のうねりを収集するチャンスは、滅多にないから。

 

 

 

 

 CE0073.4.**

 

 まずは姫・マユ・カイキの3人で、ウーチバラ宙港5番格納庫に侵入していた、元ザフトのゲリラを処分。

 その24分後、コロニー内32番格納庫で爆発発生。

 ザフト脱走兵のものと推測されるジンが、3機出現。

 アマミキョへの避難民誘導が開始。

 ティーダ及びソードカラミティ、試験場からリュウタン広場地下格納庫への移送完了。

 

 ……ここまでは、特に問題なかった。

 ところが、ティーダ起動時にマユが負傷。

 何の運命の悪戯か、そこへ丁度避難してきたオーブのレポーター、ナオト・シライシが、緊急でティーダを動かしてしまった。

 

 ──結果的に、彼が乗ったことでティーダは予想外の数値を叩きだしてくれたけど、もし乗ってきたのがどっかの徘徊老人とかだったら、僕たちは今頃目も当てられないことになっていたに違いない。

 もっともその場合当然マユは撃っただろうけど、相手が有名人のナオト君だったから、マユも乗せてしまったんだろう。

 ちょっとカイキが目を離した隙の、マユの負傷だった。油断は禁物だ。

 

 ともかく、ティーダはマユのサポートもあり、無事に起動。

 そのことでナオト君の運命を変えてしまったのは申し訳ないけど、これも人生だからね。

 何とかソードカラミティも合流し、戦闘を切り抜けた。

 

 

 

 ちなみに、彼らが戦った相手は、ザフト脱走兵に偽装した正規ザフト兵だったようだ。

 ひどくややこしいけど、どうやらデュランダル議長は正規部隊をテロリストに偽装させて、ティーダを叩きにきたらしい。

 今ザフトは戦争をしているわけじゃなし、正規軍じゃ勿論ティーダを攻撃なんて出来ないから。

 一方ではご丁寧にアマミキョを守るべく部隊をよこしてくるし、議長もすごくティーダに興味津々みたいだな。

 おかげで、ザフト正規軍同士の戦闘なんてのが発生したみたいだけど、そこまで僕たちの関知するところじゃない。

 

 

 

 そうしている間に、アマミキョにも連合のファントムペインが迫っていた。

 多分こちらも、テロリストに偽装したか、もしくはザフト脱走兵の始末という名目でティーダとアマミキョを狙ったか──

 どちらにせよ、文具団の存在が連合上層部にとって鬱陶しいのは確かだったし、こうして攻撃されるのも、やっぱり予想の範囲内だった。

 チグサ計画が連合側に漏れている可能性も、姫は指摘していたな。ファントムペインや不可視戦艦まで持ち出してきたのは、そのせいか。

 

 そいつらからアマミキョを守ったのが、姫のダガーL……

 じゃなくて、ストライク・アフロディーテ。僕らの新たなる、ツギハギ女神様だ。

 アマミキョの中にいたサイは驚いただろう。実際、これ以上を望めないほどの感情の揺れが観測できた。

 学生時代と同じようにみんなのまとめ役になりかけてもいるようだし、サイをアマミキョ・ハーモニクスシステムの要とするってのは、かなり良い案じゃないかな。

 

 ナオト君がいきなりティーダで戦闘実況を始めるというハプニングはあったものの、コトは何とか、想定の範囲内で収まっていた。

 姫と一緒に戦うのがあのイザークとディアッカってのも、何かの縁なんだろう。

 多少なりとも過去のフレイを知っている二人は、姫を見て実に驚いたようだ──

 勿論今、姫はフレイを「降ろし」てはいない。サイともろくな会話はしていない。

 姫は敢えて真実の自分を見せることで、サイの出方を探っているようだ。

 

 

 

 そしてコロニー内とアマミキョの感情が一気に高まった頃、マユは最初の「レヴェレイション・システム」を起動させた。

 ナオト君と協力して起動させたらしいけど、これによって彼の運命は、ホントに決定的なものになってしまった。

 

 

 

 

 CE0073.4.** (PHASE-4

 

 黙示録ことレヴェレイション・システムの効果は予想通りのものだった。ティーダパイロットへのダメージ以外は。

 戦闘は終了し、被害も大したことはなかった……

 って言ったら姫には怒られたけど、無事にデータは収集出来たし、アマミキョは何とか出航し、ティーダも起動した。

 コロニーも破壊されることなく、僕たちのものになった。これ以上のことはないじゃないか。

 

 ただ、ティーダパイロットがナオト・シライシで固定されてしまったのは、唯一の誤算だったかな。

 おかげさまで僕は、1500万ページ以上もあるティーダのメインデータバンクと取っ組み合う羽目に……

 ナオト君のパイロット登録を解除するにはどうやっても40時間以上かかる。今すぐ動かしたければ交換パーツでハードから替えるしかないけど、パーツは襲撃時になくなってしまった。

 僕が頑張ればナオト君のパイロット解除も出来たのだろうけど、そんなものを敵は待ってはくれない。

 何の因果かジュール隊がアマミキョに乗ってきたけど、どれだけ頼りになるか。

 

 

 間もなく、連合のファントムペインとの戦端が開かれた。

 その中にはネオ・ロアノークもいた。マユ・アスカとほぼ同じ形で蘇った、彼だ。

 同じ形というのは、つまり──

 

 ヤキンの宙域にほぼ脳みそだけという状況で辛うじて浮いていた彼――

 ムウ・ラ・フラガを南チュウザン軍が拾い、蘇生の為用意された肉体に封じ込め。

 アークエンジェルその他色々からコピーしたバックアップデータを植え付け、心と身体が定着するまで大気圏外で過ごさせて蘇らせた。

 それが、ネオ・ロアノーク。

 

 だから彼には僕らと違い、記憶があるはずだ。思い出しているかどうかは別として。

 彼もまた、チグサ計画の一環になるはずだった──

 もしかしたら、チグサ計画はムウ計画になっていた可能性さえあった。

 

 けど、彼はナチュラルの成人男性だったし、身体の損傷もちょっと大きかったので、計画の要にはなれなかった。

 空間認識能力は魅力的だけど、それだけであればもっと有望なレイラ・クルーがいる。アマミキョで開発も出来る。

 何といっても、この計画の要は女性でなければいけない。

 

 だから不要とされた彼は、姫の手で連合に売られた。

 姫や御方様には、敢えて彼を連合に売ることで彼がどう出るか、観察したい気持ちもあったらしい。

 

 そして皮肉にも今、ネオ・ロアノークは敵となってやってきた。

 だけど彼らのブロックワードを把握していたおかげで、まんまとエクステンデッドたちを手玉にとることが出来た。

 あの連中3人全員のブロックワードと意味を理解していれば、ごく簡単な文章を作るだけで、破滅させることが可能だ。全く……

 2年前キラ・ヤマトたちを苦しめたブーステッドマンの件を調べた時も思ったけど、どうして連合はこんな不出来な奴らを作ってしまうのか。

 

 それはともかく──

 僕たちはステラ・ルーシェを人質にとり、ネオの動きまで封じることが出来た。首尾は上々、思い通りに要求が出来るように──

 

 と思ったら、ナオト君がティーダを動かして邪魔に入った。

 社長の介入で何とか双方引くことが出来たけど、後で姫からナオト君に、かなりの「修正」が入ったようだ。

 

 

 

 

 ハラジョウにジュール隊が潜入していたようなので、とりあえず拘束しておいた。

 二人は仰天していたようだけど、あくまで僕は二人を写真とデータでしか知らない。特に驚きがあるわけでもなかった。ミゲルもラスティも同じだろう。

 だって僕らの存在意義は、あくまでアスラン・ザラだ。

 だけど、アスランのSEED覚醒の発端となったニコル・アマルフィの人となりを知るには、いずれ、彼らとの接触も必要になるかも知れない──

 

 そう判断し、僕は自ら動いた。

 銃を向けたのはやり過ぎかも知れないけど、勝手に潜入したのは向こうだし。

 

 もっとも、彼らとの接触がそれほど重要事項とは、僕は思っていない。

 僕は姫とは違って、嘘のつきようがない。

 僕は僕自身で、ニコル・アマルフィとなるしかないから。

 姫がフレイを降ろすのとはまた違う形だけど、僕はニコル・アマルフィでしかないのだから。

 

 

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