ふたりの実況は始まったばかり。みんなで楽しくゲームをしていこう。いろんなゲームをやって、とにかく頑張る琴葉姉妹の実況列伝です
実況っぽくなるといいな。
とある地方の郊外に建つ廃墟───。
その廃墟を見上げるようにピンク色の長髪を一房に束ねた美少女こそ琴葉茜である。その隣で「やりたくない。もう帰りたい」と譫言のように言っている水色の長髪の美少女は茜の妹、琴葉葵だ。
「お姉ちゃん。やっぱり止めようよ」
「葵、せやかてな。ウチはママにゲーム実況者になる言うて機材やらなんやらを買ってもらったし。流石に怖いから止めます言うんはアレやん?」
「いや、知らないし。私は無関係だよね?」
「正直に言うわ。葵、ウチかて怖いねん!なんなんこれ?VRだかVHSだか知らんけどな、ウチはホラーをリアル体験とかしたあないんやけど!?」
そうギャーギャーと喚き散らす茜の醜態に比例し、どんどん葵の冷静さは増すばかりだ。「どうして、私のお姉ちゃんはこんなにバカなんだろう?」と茜には聴こえない小さな声で葵は嘆く。
「ところで。このゲームってなに?」
「おう、青鬼やで!」
茜はドヤー!と自信満々に言い張る。
確かにゲーム実況者の登竜門といえば「青鬼」かもしれないと葵は納得する。しかし、自分を巻き込むのはやめてくれと切実に思った。
「ブルーベリー、食べれなくなりそう…」
「ウチはベリーは好かん」
「あれ、そうだっけ?」
「せやで」
そんなことを話しながら琴葉姉妹は洋館の玄関の扉を開ける。そして、なぜか電気の点いている玄関先を見て直ぐに扉を閉めた。
「なんだか明るかったね」
「いや、ちゃうやん。普通は電気は点いとらんほうが緊張感があってええもんやろ?なんで、あんなピカピカに室内照らしとるん?」
あんまり暗くなくて良かったと安心する葵とは別に茜はブツブツと文句を言いながら玄関の扉を開け、完全に閉じないように石を扉の隙間に添える。
だが、普通に石は弾かれた。
「なんやねんそれ」
また、ツッコミを入れる。
「えと。おい、もうかえろうぜ?」
「えっ、葵がたけしやるん?ウチはひろしか」
「私はどれでもいいよ?」
くるくると髪の毛を弄る葵。
すると右側の通路の奥で「ぱりん」と何かが落ちる音が聴こえる。ちらりと隣を見ながら葵は「お姉ちゃんもよく落とすよね」と楽しそうに呟き、茜は「……うん、ママに怒られたばっかりやで、ほんま」と気まずそうに視線を逸らした。
「よっしゃ、行くで!」
「私は待ってたほうがいいのかな?」
「そこは一緒に来てえや」
「えー、面倒臭いなぁ」
ふたりは青鬼の出現を警戒する。もっとも青鬼の登場は音の正体を突き止めて、玄関先に戻ってみないと分からない。
「そういえば今日の夕飯はからあげらしいよ」
「今日はここまでや!またな!」
そう言うと琴葉姉妹はほとんど進んでいない「青鬼」のデータをセーブし、ゆっくりと現実世界でナーヴギアっぽいヘルメットを脱いだ。
「ママ、からあげの味見するで!」
「ママ、私も味見したいかな」
そう琴葉姉妹はキッチンで料理をしている母親のところに突撃する。塩からあげ。ニンニクからあげ。ニラ醤油からあげ。とにかく沢山の味付けをされた鶏肉をふたりは一つずつ味見する。
〈琴葉チャンネル〉
琴葉姉妹のゲーム実況チャンネル
新米ゲーム実況者の琴葉茜とアシスタントの琴葉葵による二人組の実況チャンネル。VR体験できるナーヴギアっぽいヤツを使っている。たまに母親が紛れ込んだりすることもある。