ハイスクールD×D ~特別番外編~   作:さすらいの旅人

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エピローグ

『何だ、兵藤一誠が使ったあの力は!? アレは明らかに「覇龍(ジャガーノートドライブ)」に匹敵する!』

 

 スーパー赤龍帝に龍帝拳の上乗せをしたイッセーが覇龍化イッセーに勝利した直後、アルビオンが信じられないように声を荒げていた。

 

 アルビオンの発言にヴァーリは驚きつつも、知りたそうな目で俺を見てくる。

 

「聖書の神、あの力は一体何だ? いくら力を倍増させる赤龍帝の能力でも、ほんの一瞬で桁違いに急上昇させるのは流石に無理な筈だが?」

 

「悪いが、そこまで答える義理はない。まぁギリギリの範囲内で答える内容としては……今の君が『覇龍(ジャガーノートドライブ)』を使っても、あの力を発動させたイッセーに絶対勝てないとだけ言っておく」

 

「……そこまで俺と彼の間に実力差があると言う事か……。悔しいな。向こうの俺があんなに強い彼の宿敵(ライバル)とは……思わず嫉妬の余りに狂ってしまいそうだ……!」

 

 勝利した(イッセー)を凝視し続けるヴァーリ。もし制止役の俺がこの場にいなかったら、問答無用で戦おうとしただろうな。

 

 (イッセー)の力を妬まないどころか、聖書の神(わたし)がいる世界のヴァーリに嫉妬するか。ま、その当人は今もイッセーと再戦する為に修行してるらしいが。

 

 さてさて、覇龍化イッセーが意識を失ったようだから、ここからは俺の出番だ。丁度良く『神器無効化(セイクリッド・ギア・キャンセラー)』の力も最大に溜まった事だから行くとしよう。

 

「リアス、俺は覇龍化したイッセーを元に戻してくる。アイツが元の姿に戻るまで此処にいろ」

 

「ちょ、リューセー!」

 

 リアスに言った俺はすぐに、倒れてる覇龍化イッセーの元へ向かう為に飛んでいく。此方の動きに気付いたのか、弟のイッセーは一気に降下する。

 

「兄貴、これで良かったのか?」 

 

 俺と同じく覇龍化イッセーの近くへ着地したイッセーが問う。

 

「充分だ。しかし、まさか龍帝拳まで使うとは……相変わらず無茶をする奴だ」

 

「早くケリを付けるには手っ取り早くていいだろ?」

 

「……まぁ、そうだな」

 

 イッセーの台詞に苦笑しながらも、俺は敢えて突っ込まず納得する事にした。

 

「さて、今のところ意識を失っているようだが……イッセー、もしコイツが暴れ始めたら即座に取り抑えてくれ」

 

「分かってる」

 

 俺の指示に弟のイッセーはいつでも動ける状態だ。それを見た俺は、両手に溜めていた『神器無効化(セイクリッド・ギア・キャンセラー)』を解放しようとする。

 

「さぁこの世界のイッセー、その苦しみから解放してやろう……はぁっ!!」

 

 

 カッッッッッッッ!!!

 

 

 覇龍化イッセーに向かって『神器無効化(セイクリッド・ギア・キャンセラー)』を使うと、俺の両手から凄まじい光が発して相手を包み込もうとする。

 

 すると、光に包まれた覇龍化イッセーが意識を取り戻したように動こうとする。が、それはほんの数秒で直ぐに動かなくなった。弟のイッセーが一瞬焦ったような顔をしていたが、大人しくなった覇龍化イッセーを見て安堵の息を漏らす。それでもまだ気は抜いていないが、な。

 

「なぁ兄貴。ドライグから聞いたんだが、コイツが覇龍化したのは――」

 

「察しは付いてる。シャルバの阿呆がアーシアを次元の狭間へ転移させ、その悲しみと怒りが引き金となって発動した、だろう?」

 

 覇龍化イッセーの強制解除中にイッセーが言おうとしたのを、俺が遮るように言う。

 

「……よくお分かりで」

 

「そして覇龍化の原因を作ったシャルバがここにいないのは覇龍化のイッセーに殺された、もしくは運良く逃げ切れたと言ったところだ」

 

「そっか。もしあの野郎がまだ此処にいたら、俺がぶち殺してたんだけどな」

 

「いやいや、お前が来る前に俺が始末してるさ。ここが平行世界であってもアーシアは俺にとって大事な可愛い妹分だから、聖書の神(わたし)の名にかけて髪の毛一本すら残さず滅してるぞ♪」

 

「………本当にやりそうで恐ぇよ。ってか、笑顔でさらっと恐ろしい事を言うな」

 

 にこやかに言い放つ俺にイッセーが顔を引き攣らせながらドン引きしていた。

 

 けど、イッセーは話題を変えるように咳払いをする。

 

「そ、それはそうと、もう一つ気になる事があってな。どうやら今のコイツには悲しみや怒り以外のモノが混じってるそうだ」

 

「何? どう言う事だ?」

 

 それは俺も知らなかったので、気になる俺は続けてくれと催促する。

 

「ドライグの見解によると、コイツの心は今も何かに蝕まれてるんだってよ。それが何なのかはドライグもよく分かんねぇみたいで、もしかしたらコイツ、何かトラウマになるような経験をしたんじゃないかと思ってな」

 

「ふむ。トラウマ、ねぇ」

 

 この平行世界に来てイッセーと問題無く接してはいたけど、俺からはトラウマらしきものを一切感じ取れなかった。

 

 イッセーに言われて気付いたが、『神器無効化(セイクリッド・ギア・キャンセラー)』を使って覇龍化イッセーは徐々に解除されつつあるが、精神(こころ)の方が未だに不安定なままだ。まるで何かに囚われて抜け出せないような気がする。

 

 一体何が原因なのだろうか。いくら聖書の神(わたし)でも、大元となった原因が分からなければ、心に覆ってる闇を取り払う事は出来ないのだが……。

 

 ………仕方ない。ちょっとばかり記憶を探ってみるとしよう。心に闇を覆う原因となった記憶を、な。本当なら人の記憶を覗き見る行為などしたくはないのだが、原因が分からなければどうしようもない。悪いがイッセー。少しばかり見せてもらうぞ。

 

 『神器無効化(セイクリッド・ギア・キャンセラー)』をやりながらも、聖書の神(わたし)は能力を使ってイッセーの記憶を見ようとする。イッセーにとって一番思い出したくない部分を探るように。

 

 

 

 ――ねぇ、お願いがあるんだけど……死んでくれないかな?――

 

 ――え? それって……ごめん、夕麻ちゃん。もう一度言ってくんない?――

 

 ――だから……死んでちょうだい――

 

 

 

 …………成程、そう言う事だったのか。

 

 闇を覆う原因となった記憶を見終えた俺は、彼に対して非常に申し訳ない気持ちとなってしまった。

 

 まさかこの世界のイッセーが、リアスの眷族になる前に殺されていたとは。それもあの堕天使――レイナーレのバカ娘に。どうやらヤツはどこの世界でもやっている事は変わらなかったようだ。寧ろこの世界では生きてても死んでても、碌な奴じゃない事がよく分かった。

 

「あのバカ娘が……!」

 

「ど、どうした兄貴? 急に怖い顔になっちまって……」

 

「……いや、何でもない」

 

 思わず顔を顰めながら台詞を吐き捨てた事にイッセーは少し怯えた様子を見せたので、俺はすぐに何でもない様に振舞うことにした。

 

 流石に弟のイッセーに教える訳にはいかない為、この記憶は聖書の神(わたし)の胸の内に留まらせておいた方が良いだろう。

 

 並行世界の兵藤一誠よ。世界が違えど、嘗て聖書の神(わたし)が生み出したバカ娘が原因で、君を辛い目に遭わせてしまった事を……本当にすまない……!

 

 心を覆ってる原因の闇が分かった聖書の神(わたし)は、『神器無効化(セイクリッド・ギア・キャンセラー)』と同時に『治癒の光』と『安寧の光』も使った。今の自分に出来る最大の償いとして。

 

 すると、心を覆ってる闇が浄化されるように全て消え去ると――

 

 

 パキィィィィィイイイイインッッッッッッッ!!!!

 

 

 覇龍化していた鎧が砕け散っていった。

 

「う、う~ん……あれ? ここは……?」

 

 意識を取り戻したみたいで、イッセーはうっすらと目を開ける。

 

「漸く悪夢から目が覚めたようだな」 

 

「おお、マジで俺そっくりだ。平行世界なのは分かってるけど、こう見ると実はドッペルゲンガーじゃねぇかって思っちまいそうだ」

 

「コラコラ。このイッセーは間違いなく本物だ」

 

 (イッセー)の発言に思わず俺が突っ込みを入れると、イッセーはゆったりとしながら起き上がりながら見る。

 

「リューセーさんに………え? 何で俺が目の前にいるの?」

 

 あ、そう言えばイッセーは(イッセー)が来た事を知らないんだった。どうやらこれは一から説明する必要がありそうだ。

 

 

 

 

 

 

 イッセーが復活した事にリアス達はすぐに駆けつけ、アーシアも無事である事を伝えた。

 

 アーシアの無事を知ったイッセーは心底喜ぶも、彼女が意識を取り戻した瞬間にゼノヴィアが泣き喚きながら抱きついていたが。それだけアーシアが大事な友人である証拠って事だ。

 

「――と言う訳で、此処にいるウチの(イッセー)が、覇龍化で暴走した君の相手をしたって訳だ」

 

 そしてイッセーには(イッセー)の紹介と同時に事の経緯を話し終えると、申し訳さそうな顔をしていた。

 

「そう、だったんすか……。自分に言うのもなんだけど……悪かったな。俺の所為で巻き込んじまって……」

 

「気にすんなって」

 

 イッセーがイッセーに謝っているなんて、滅多に見る事が出来ない光景だ。リアス達も複雑そうな顔をしているし。

 

「どっちも本物のイッセーなのは分かってるのだけど……」

 

「制服の違いがなかったら、完全に分かりませんね」

 

「はぅぅ……イッセーさんが二人もいるなんて……」

 

「……夏服を着てるのがこっち側のイッセー先輩で、冬服を着てるのがリューセーさんの弟のイッセー先輩……」

 

「でも、冬服のイッセーくんの方は、こっちと比べて微妙に顔付きが違う気がするね」

 

「絶対に違う点は、主の弟のイッセーが私たちより遥かに強いくらいだな」

 

「うう……本物だと分かってても、僕にはドッペルゲンガーを見てるみたいですぅ……」

 

 上から順にリアス、朱乃、アーシア、小猫、祐斗、ゼノヴィア、ギャスパーはそれぞれ思った事を口にする。ま、俺も同感だが。

 

「ところで、事情は分かったんだけど……何でヴァーリ達までいるんだ?」

 

「あ、それは俺も気になってた。兄貴、どう言う事なんだ?」

 

「……二人揃って同じ顔で質問しないでくれ」

 

 イッセーと(イッセー)が質問してくるので、俺は内心不気味に思ってしまった。ギャスパーの言うとおり、本物とは言えドッペルゲンガーを見てる感じだ。イッセーが分身拳を使ってると思えば良いが、それはそれで不味い気もする。

 

「次元の狭間で聖書の神を偶然見つけた後、兵藤一誠……覇龍化したキミの異変を察知したついでに冥界へ来たんだ」

 

 俺の代わりにヴァーリが答えると、イッセー二人は揃って納得した。

 

「って事はヴァーリ、俺達が戦ってるのを見てたのか?」

 

「ああ、存分に見せてもらった。覇龍化した兵藤一誠を圧倒するキミを見て、思わず戦いたい衝動に駆られてしまったよ。もし出来るなら、今すぐにでもこの場でキミと――」

 

「コラコラ、さり気なく戦おうとするんじゃない」

 

 笑みを浮かべながら(イッセー)に近づこうとするヴァーリに、俺が割って入るように阻止する。

 

「後で私が君の相手をするって言ったろ?」

 

「……そういえばそうだったな、俺としたことがすっかり忘れてたよ………ちっ」

 

 おいコラ、小さく舌打ちしてるのが聞こえたぞ。全く、向こうのヴァーリと同じく油断も隙も無い奴だ。

 

 同時に(イッセー)も此方のヴァーリを見て根っからのバトルマニアだと分かったのか、とても嫌そうな感じで離れようとしてる。

 

「お、おい俺。分かってると思うが、もうリアスを泣かせるような事はすんなよ?」

 

「あ、ああ……」

 

 ヴァーリから離れた(イッセー)は話題を変えるように、平行世界の自分に向かってちょっと注意をしていた。指摘されたイッセーは痛い所をつかれたような顔をする。

 

 すると、イッセーは何か気付いた。

 

「あれ? お前って、部長の事を名前で呼んでるのか?」

 

「まぁな」

 

「そ、そうなのか。何かすげぇな」

 

「だったらお前もリアスの事を部長じゃなく、俺と同じく名前で呼んでみたらどうだ?」

 

「いや、俺はそこまで部長と親密じゃ……って部長、何で俺を睨むんですか!?」

 

「自分の胸に聞いてみる事ね。……向こうの私は名前で呼ばれてるなんて、羨ましいわ……」

 

 不貞腐れるように言い放つリアスはそっぽを向く。

 

 ハハハ~。リアスの小さな台詞が聞こえたぞ~。やはりこっちのリアスも、イッセーに名前で呼ばれて欲しいようだ。

 

 あ、そう言えば(イッセー)に訊きたい事があったんだ。

 

「つーか、部長の名前で呼ぶって事は……もしかしてお前、ぶ、部長と……付き合ってるとか?」

 

「…………そこは敢えてノーコメントとさせてもらう」

 

 恐る恐る尋ねるイッセーだったが、(イッセー)はソレに触れようとはしなかった。多分、本当の事を言ったらイッセーが怒り狂う展開になるのを分かっているんだろう。平行世界でも自分と同じ存在だから、どうなるか大体予想してるようだ。さり気なく俺にフォローを求めるようチラッと見るのは止めてくれ。

 

「ところでイッセー。お前も転移装置でやってきたそうだが、アザゼルから元の世界へ戻る手段とか聞いてないのか?」

 

「ああ、それはあそこにある空間に………………あ~~~~~~!!!」

 

 取り敢えず助け舟は出してやろうと思った俺が質問をすると、イッセーは突然何か大事な事を思い出したかのように大きな声を上げた。

 

 突然の行動に俺を含めた一同が何事かと凝視してると、(イッセー)はすぐに俺へ詰め寄る。

 

「あ、兄貴! 説明する時間はないから今すぐ戻るぞ!」

 

「え? も、戻るって……もしかして元の世界へ帰れる方法があるのか?」

 

「あるから言ってんだよ! あそこを見ろ!」

 

 斜め上を指すイッセーに言われたとおり、俺達はその方角を見てみる。すると、そこには空間が割れていて青白い穴があった。しかも少しずつ狭まってきている。

 

 アレには俺が見覚えがあった。俺がこの平行世界へ来る原因となった不気味な穴だ。

 

「まさかアレは……平行世界に繋がってる空間か!?」

 

「そうだよ! アレが閉じちまうと帰れなくなっちまう!」

 

「この愚弟(バカ)! 何でそんな重要な事を先に言わなかったんだ!?」

 

「元はと言えば兄貴がいきなり有無を言わさず手伝えって言ったんだろうが!」

 

「つまり俺が一番悪いって事か!? ああ認めるよ! だってしょうがないだろう! 覇龍化したイッセーを止めるのが最優先だったんだからさ!」

 

 突然起きた俺たち兄弟の言い争いに、リアス達は呆然としていた。

 

 兄弟とはいえ、聖書の神(わたし)悪魔(イッセー)が対等な感じで口論をするなんて普通に考えてあり得ないと思っているのだろう。

 

「とにかく急いであの穴に飛び込むぞ!」

 

「ああもう! リアス達にはまだ色々話したいことがあったが……と言う訳で、すまないが俺達は急遽帰らせてもらう!」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

 リアスの制止を振り切るイッセーと俺は、即行で青白い穴に向かって猛スピードで飛び始めた。

 

 だが――

 

「待て、聖書の神。帰る前に俺と戦ってからにしてもらおうか」

 

「ってヴァーリ、お前……!」

 

 あともう少しで穴に入れると思いきや、いつの間にか白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)を展開して先回りしていたヴァーリが、俺とイッセーの前に立ち塞がっていた。

 

「どけ、ヴァーリ! 今はお前に構ってる暇はねぇんだよ!」

 

「悪いがそうはいかない。俺は聖書の神と戦う約束をしているんだ。それに……神が約束を破るのは如何なものかと思うが?」

 

 忌々しげに言う(イッセー)だが、ヴァーリはものともせずに言い返してきた。

 

「君の相手をしたいのは山々だが、こっちとしては急いで戻らないといけないんだ!」

 

「生憎だが、それは俺の知った事ではない。其方が約束を口にした以上は守ってもらうぞ。でなければ、この穴は通さないどころか破壊させてもらう」

 

 ヴァーリの奴、青白い穴に向かって魔力弾を撃とうとしてるし。あの空間に攻撃したら不味い事になるのを分かってるようだ。

 

 本当なら今すぐにでもヴァーリを簡単に伸して穴に飛び込みたい。けどアイツの言う通り一度約束してしまった以上、聖書の神(わたし)が相手をしなければならない。………………だがそれは、嘗て天界にいた聖書の神(わたし)であったらの話だが、な。

 

「……分かった。ならば今すぐ戦ってやろう」

 

「おい兄貴! そんな時間無いんだぞ!」

 

 ヴァーリの要求を受け入れた俺にイッセーが反論した。

 

「大丈夫だ。すぐにケリをつけるから……目を閉じる準備はしておけ(ボソッ)」

 

「え?」

 

 問題無いと諭した後にボソッと小声で呟くと、それが聞こえたイッセーは俺の意図に気付いたかのように押し黙った。イッセーの反応を見た俺は現在浮いている位置から少し降下すると、ヴァーリは笑みを浮かべながら俺と同じ行動をする。

 

「それじゃ、早速始めようか。来い!」

 

「……何だ、その構えは?」

 

 両手を開き顔の横にやる独特のポーズをする俺に、ヴァーリは訝るように問う。

 

「まさかとは思うが、ふざけているのか?」

 

「そんな訳あるか。私は真剣だよ」

 

「……まあいい」

 

 この状況を打破する為に必要な事だからな、と俺は内心付け加えた。

 

 俺の台詞を聞いてもヴァーリは未だに訝るも、禁手(バランス・ブレイカー)を展開しようとする。

 

(バランス)――」

 

「太陽光!」

 

 

 カッッッ!!!

 

 

 禁手(バランス・ブレイカー)を展開しようとしてるヴァーリに、俺がその一瞬の隙を突いて太陽光を使った。俺の全身から発する光を、ヴァーリの目はモロに直撃する。

 

「ぐうぅっ!! め、目がっ!?」

 

 突然の不意打ちで太陽光を喰らったヴァーリは両目を手で覆いながら悶えている。

 

「よしイッセー! 今の内だ!」

 

「おう!」

 

 予め目を瞑っていたイッセーがすぐに穴へ飛び込んだ。

 

「ま、待て、聖書の神……! 貴様、俺を騙したのか……!?」

 

「そう言う事だ。悪いが勝負はお預けにさせてもらう」

 

「貴様ぁ……! こんな事をして、神としての誇り(プライド)がないのか!?」

 

「悪いが今の聖書の神(わたし)は、人間に転生したことで『悪知恵』と言うモノが身に付いてしまってな」

 

 ヴァーリには本当に申し訳ない事をしたが、元の世界へ戻る為に今は一分一秒も惜しい。その為に敢えて勝負を受けるフリをし、太陽光を使ってすぐにオサラバって寸法だ。

 

「それではヴァーリ、いずれまた会おう!」

 

「に、逃がさ……ぐ、くそっ! まだ目が……!」

 

 逃亡を図る俺にヴァーリが阻止しようとするが、太陽光によって目が未だに回復せず開けることが出来なかった。ヴァーリは悪魔の血が半分流れてるので、俺の太陽光はかなり効いてる筈だ。もう暫くは目を開けることが出来ない。

 

 怯んでるヴァーリを他所に、俺はすぐにイッセー達がいる方へと振り向き、そのまま手を振った。また会おうとの意味を込めて。

 

 そしてすぐに青白い穴へと飛び込んだ瞬間、繋がれていた空間が切り離されたように、ソレは完全に塞がった。

 

 

 

 

 

 

「なぁイッセー。入ったのはいいが、このまま身を任せれば良いのか?」

 

「ああ。この空間は今コレでしっかり固定されてるから、元の世界へ運んでくれるらしい」

 

 青白い空間の中に入った俺とイッセーは、身に纏わり付いてる粒によって強制移動されていた。

 

 そして現在、イッセーが懐から取り出した小さなステッキ型のアイテムらしき物を取り出して俺に見せている。

 

「ソレがこの空間を固定してる物なのか?」

 

「アザゼル先生曰く、空間を固定する為のアイテム――『ゲートホルダー』だってよ。前の暴走で見たこの青白い空間を解析する事が出来て、どうにか固定出来たそうだ」

 

「ほう、流石はアザゼル。俺がいなくなって大して時間が経ってない筈のに、よくそんな便利な物を作れたものだ」

 

「アザゼル先生と一緒に他のグリゴリの科学者達も総動員して、不眠不休で作り上げたらしいぞ」

 

 何と、アイツ等も一緒に作ったのか。完全にアザゼルのとばっちりを喰らったようだ。最早お気の毒としか言いようがない。

 

「因みにミカエルは今回の事を知ってるのか?」

 

「知ってるよ。数日前までアザゼル先生が何とか誤魔化していたんだけど、今はもうバレて完全にマジギレ状態だ。キレてると言っても、殺気と威圧感全開の笑みを見せてるけどな。んで、ミカエルさんと同じくマジギレ状態な熾天使(セラフ)のガブリエルさん達を連れて、今も俺達が帰ってくるのをずっと待ってる。状況次第じゃ、天使と堕天使の戦争が勃発するような一触即発な雰囲気だよ」

 

「うわぁ……」

 

 イッセーの説明に俺はアザゼルに少しばかり同情してしまった。あの時は咄嗟に誤魔化しておけと言っておいたが、その結果がコレとは。

 

 恐らくミカエル達の事だから、今回の件は全面的にアザゼルが悪いと思っているだろう。確かに首謀者である堕天使総督が一番悪いとは言え、平行世界に興味があると面白半分で手を貸した聖書の神(わたし)も同罪である為、アザゼルの擁護をしておくとしよう。

 

 そう思ってると、移動してる俺達の眼前に何かが光っているのが見えた。

 

「イッセー、アレは?」

 

「出口だ。構えとけよ、兄貴。もしかしたらさっき向こうへ来た俺みたく、いきなり空間に叩き落されるかもしれないからな」

 

「分かった」

 

 さて、急な事で何とか元の世界へ戻れるのは良いが、この後も色々と大変になりそうだ。主にミカエル達の相手で。

 

 あ~あ、こんな事なら向こうにいるイッセー達ともっと話しておくべきだったな。いずれまたあの平行世界へ来る機会があったら、また彼等に会いたいと思っている。その時にはヴァーリとの再戦を優先的にやらないといけないが。




取り敢えずアニメ版のBorn編はここまでになります。

今まで毎日更新していましたが、此処でストップさせて頂きます。
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