全ての呪いを背負いし灰に   作:あるあ〜る

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……スッ(投稿)

あれ、ルビ振りが機能してない!
……ままええか

……シュバババ!!(逃走)


第9話

組合を出て、大通りを右に向かっていく。

 

昼にもなると人通りは多くなる。厚着をして会話しながら歩く者から、自身の肉体を見せつけるように一人上裸で歩く変態まで様々な人間が居る。

 

|私は近づかないぞ。絶対に、だ。《兜しか被っていない裸の変態に近づいてはいけないっ》

 

指輪を『幻視の指輪』と『静かに眠る竜印の指輪』に変え、大回りで通り過ぎる。

 

「ーーーでよ、そこでソイツがさぁ……うお?!どっから出てきた!?」

 

「すまない、貴公よ」

 

途中何度か驚かれながら進んでいけば、剣と盾の絵が書かれた非常にわかりやすい看板を掲げる店が見える。おそらく、ここだろう。

 

組合の扉に似て重厚そうな雰囲気の扉だ。また見た目詐欺なのかと思い手をかけると、それは見た目通りの重さを感じ音もなく押し開かれる。

 

「失礼する」

 

店内は多種多様な武器防具で溢れていた。

短剣から人の背丈ほどのハルバード、木製の円盾から総金属製のタワーシールド、革の胸当てから全身鎧(フルプレートアーマー)と、ほとんどの物はあるのではないかと思う。

 

一般的な武器屋、という感じだろうか。と言っても店らしい店を訪れたのは初めてだが。少し残念なのは目新しい武器がないことだろうか。

 

とはいえ、カウンターの奥にはチェストや樽から武器が覗いている。その中に血が騒ぐような武器があることを願うばかりだ。

 

ひとまず、そのカウンターに突っ伏して寝てる店員を起こす。

 

「貴公、少し「あ、はっ、やいやはい大丈夫寝てにゃいでしっ、ぃったあぁぁ!」……」

 

飛び起きた蒼髪の店員は甲高い声で叫んだ後、こちらからは見えない脚を抑えながら押し黙ってゆっくりとカウンターの下に隠れていった。

 

なんだ、コイツは。

 

「お、親方はいませんので、オーダーは後日にぃ……」

 

カウンターの下から苦しそうに答える声。

 

「いや、店を見て回りたいだけだ」

 

「あぁ……じゃあごゆっくりぃ、ぃたたた!痛い!つった!足つったぁ!!」

 

許可をもらえたので、痛がる店員を無視して近場の商品棚を覗く。

 

この辺りは投げナイフや両端に(おもり)のような金属をつけた紐、手甲など小物が多いようだ。一本のナイフを手に取り、ランプの灯りに照らして見る。

 

「……良いな」

 

ぽつりと呟く。悪くはない、どころか良い方に入るだろう。

掴み部分はシンプルな造りでグローブ越しでも思った通りに滑っていくだろう。投げナイフとしてはその方がいい。

 

しかし、刃の部分は短く先端にいくほど鋭くなっている。材質の詳しいことはわからないが、『錬成』した武器だったり特殊な素材は使われていないように見える。つまり、ただの鉄だろう。

それはひとまず置いておくが、特に良いのがこの軽さと全体の形状。

 

先端が尖っていると言うことは、用途は回転しながら投げるのではなく真っすぐ投げるのだろう。ということは『ククリ』のように先端を膨らませる必要はない。

 

また、掴みの形も曲げたりせずできるだけ細く、投擲した時に真っ直ぐ飛ぶような細長い形が良い。この形はロンドールの『毒投げナイフ』に近い。それよりも肉厚で重量はあるが、毒を使わずに急所に当てることで相手を傷つけるためだろう。

投げナイフとしては理想に近いかもしれない。

 

「値段は……む、高いな」

 

いくらか見れば、銀貨2枚と銅貨90枚とある。

 

グランとの食事で見たが、大体銅貨100枚で銀貨1枚分らしい。

つまり、この投げナイフを1本買えば依頼で得た金はほとんど使い切ってしまう。

 

正直に言えば、高い。

 

カウンター前に置いてある商品の値段を一通り見てみるが、消耗品系はいくつか買えば財布が寒くなり、剣など使い続けられるものは銀貨を超え金貨を提示してくる。

 

「……この値段が適正なのか?」

 

だとすれば思った以上に武具は高いようだ。今のままの依頼報酬では消耗品は使う分だけ赤字となってしまう。

 

「あ、あのぉ!さっきのお客さーん!」

 

カウンターから先ほどの店員の声が響く。どうやら立ち直ったらしい。

商品棚を見ながら唸るのをやめてそちらに向かう。

 

「貴公、大丈夫だったか?」

 

「あぁどうも、どうも……今はだいじょうぶですよー。いやー、足組んだままだとよくないですねぇ」

 

店員は蒼い短髪を揺らしながら、随分とだらけた笑顔を向けてくる。

どうにも調子が掴めない男だ。

 

足元は見えないが身長は男性にしては低めで、体型も筋肉質ではなく小柄。目の色は髪の色と同じくあまり見ない蒼色。肌は白い。美青年、といっても良いだろう。

 

親方、と言っていたからここの弟子や見習いのような立場なのだろうが、『祭祀場』で槌を振り続けたあの男のようになるとは全く思えない。組合で受付をしている方が様になる。

 

「ほんともう二度と足組みながら寝たりなんて……いえ、ボーっとしたりしませんよええ。まさか足組んで寝るなんてそんなまさかねぇ!」

 

「……それで、用はなんだ?」

 

私に言い訳されても困るので、答えずに話を切り出す。

 

「あ、そーでしたそーでした。それでですね、店内の説明をしてなかったのでとりあえずそれだけ聞いてみてから高いか安いか決めて貰えると嬉しいなー、と思いまして」

 

「む……すまない、聞こえていたか」

 

呟いた程度にしたつもりだが、どうやら美青年の耳にも届いていたようだ。

 

「いいーんですいいーんです。カウンター前は高めの商品でまとめてるんで」

 

「というと?」

 

「うちは良い武具を強者から新米までをモットーにやってますから、奥には高くて性能の良い武具を、手前には安くて少し性能が劣るけど丈夫な武具を置いてるんですよぉ」

 

なるほど。私が見たのはこの店の中でも高めの商品だったわけか。

 

「正直言っちゃうとですねぇ、そんないい鎧着てるんだから、ボクてっきり稼いでる兵士とか傭兵の方かと思ってたんですけどねぇ……はぁ」

 

美青年はあからさまに残念そうな表情をし、ため息をつく。

しかし……正直なのはいいことだろうが、あまりに正直過ぎると相手を不愉快な気持ちにさせるのだな。ひとつ学びを得た。

 

「貴公な……金がない訳では無い。ただ最近の稼ぎが全て飛んでく値段を見て高いと思っただけだ」

 

「ほんとうですかぁ?何してるんです?」

 

この絶妙にイラつく感覚。酷く覚えがあるぞ。別の世界に行ってもこういう奴はいるのか?

 

兜の中で眉をひそめながらも首にかかったプレートを出す。

 

「アイアンランクの傭兵だ。……あからさまに嫌そうな顔を出すな、貴公」

 

「いや、アイアンて……前職は何ですかぁ?」

 

「確か、ここでは探索者(トレジャーハンター)と呼ばれている仕事だ」

 

そう言うと美青年は納得がいったような、憐れむような表情を見せる。

 

「……なんだ?」

 

「いやぁ、見た目と懐のズレに納得がいったと言いますかぁ……うち買い取りもやってますよぉ?どうします?」

 

急な態度と話題の変化に戸惑いながら思考する。

 

悪い選択ではない。収集している装備のいくつかを売れば金貨くらいはいくだろう。

しかし、金がないとは言ったが実際ない訳では無い。『錆び付いた金貨』が実際に金として使えるのならば懐は暖かいと言える。寒いのは収入の方だ。

 

装備を売って手に入るのはその分の金のみ。継続的な収入を暖めるものではなく、金が無くなるまでの時間稼ぎでしかない。

装備を売る必要はないだろう。

 

決して、苦労して集めた装備(コレクション)を手放したくない訳ではない。

 

「いや、やめておこう」

 

「そーですかぁ…… 迷宮(ダンジョン)産の装備とか見て見たかったんですけどねぇ」

 

残念そうにうなだれ、そう呟く美青年を見ながら少し気まずい気分になる。

 

きっと私の装備は本来の迷宮(ダンジョン)から手に入る物とは異なるものだろう。危うく意図せず嘘をついてしまうところであった。

 

「……入口近くの商品を見ても良いか?」

 

「あぁ、すいませんね話し込んじゃって。ごゆっくりどうぞー」

 

話を打ち切り、再び商品を眺める。

 

美青年の言った通り入口には比較的安い商品が並んでいる。投げナイフはなかったが、短剣は銀貨未満の値段で売られている。

しかし、性能は相応に低いもののようだ。

 

全体的に構造は単純で癖がないと言えるが、器用貧乏といった印象も感じる。投げるにしては重く、急所に刺し込むにしては刃渡りが短い。

ひとつ良い点を挙げるとするならば、幅広のため耐久性が高いと言ったくらいだ。

 

拳よりはマシ、と言ったところだ。

 

「これでも刺さりはする、か」

 

毛皮があり木の上を移動するクソ猿には当たりにくく刺さりにくいだろうが、小人どもならば頭に当てて殺すなり胴に当てて怯ませるなりできるだろう。

 

棚にあった短剣を5本ほど手に取っておく。

 

他に必要なものが見つかるかと適当に見て回るが、目新しいものは特に無かったのでカウンターに向かう。

 

「これを頼む」

 

「はぁい……5本も短剣買ってどうするんです?転売ですかぁ?」

 

「ずいぶん失礼だな貴公……」

 

なんてことを言うのだ、コイツは。

 

「投げナイフに丁度良いのがこれしか無かったのでな。投げるのが主用途ではないのは分かっている」

 

「あー投げるんですかぁ……まぁお客様がよろしいならいーですけどね。お支払いお願いしますぅ」

 

「ああ」

 

銀貨と銅貨数枚を丁度で支払い、短剣を受け取って小袋(『ソウル』)にしまう。

 

「ごぉ、じゅう……はぁい、お買い上げありがとうございます!ついでに、装備品の修理とかもどうですかぁ?」

 

「修理?」

 

「兜、欠けてますよぉ?」

 

美青年は頭の横を指して言う。

言われてそこに触れれば、確かに穴が空いていた。先日の小人の矢だろう。

すっかり忘れていた。

 

「あぁ……いや、問題ない。気遣い感謝する、貴公」

 

兜は外す訳にはいかないからな。

 

「そうですかぁ……じゃあ代わりに簡易な修繕キットとかいかがですか?」

 

硬貨を小箱にしまった美青年は下からひとつの包みを取り出して、こちらに差し出す。

 

「研ぎ石からぁ裁縫道具など、役立つアイテムが一式揃ってますよぉ?」

 

「ふむ……」

 

必須ではない。『篝火』で休めれば武具の損耗は消え、万が一『篝火』を設置できずとも『修理の光粉(ひかりこな)』がある。

 

しかし、それが無くなればどうだろうか。

 

『ソウル』を通して武器の状態を見る。血糊で汚れてはいるが刀身の歪み、刃こぼれは無い。

 

焼けた小人を数十ほど斬ったにしてはマシな方だろうが、あれが続くようなら刃こぼれもする。強化されているとはいえ、なんの変哲もないロングソードなのだから。

 

「分かった、1つ貰おう」

 

「はぁい、代金は銀貨1枚と銅貨がこれくらいですぅ」

 

「……払おう」

 

おかしい。稼ぎが一瞬のうちに半分となった。

 

金を渡し、修繕キットを貰って再び小袋(『ソウル』)にしまう。

 

「他に購入したいものはありますかぁ?」

 

「いや、無い。これで失礼する」

 

更なる出費を誘う声を無視して足早に立ち去ろうとする。

 

「毎度ありぃー、今後ともネイキッドスミスを是非ご贔屓にお願いしますぅ」

 

「ああ」

 

良い武具が揃っていた。難点は興味深い武器が無かったことと、店員の癖が強かったことだが。

 

「また、来るとしよう」

 

そう思える店だったのは間違いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裸の鍛冶屋(ネイキッドスミス)か……うーむ、何やら悪寒が」

 

前言を撤回したくなってきたな。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【修理の光粉】

弱い魔力を帯びた金属粉。

 

装備している武器、防具を修理する。

耐久度ゼロの武器は対象とならない。

 

武器や防具は使い続けると耐久度が下がり、これがゼロになると壊れてしまう。

壊れていなければ、耐久度は篝火で回復するが念のため、旅先での修理手段を用意しておくとよい。

 

「彼の灰の持っていた魔力を帯びた金属の粉。

一部の傭兵からは喉から手が出るほど渇望され、一部の職人からは蛇蝎のごとく嫌われた。

 

傷ついた武器防具を完全に修理する。完全に壊れてしまったものは直すことができない。

ごく稀に、死者すら癒すことがあるという。

 

道具に頼り命綱の手入れを怠るのは愚かだが、嫌って使わないのも同様だろう。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 




入試終わったら投稿頻度もマシになるかなぁ、と。
未来の自分に期待しています(無責任)

あ、あと何故か多機能フォームが使えなかったのでルビ振り多分できてません。読みずらい文章ですが、何卒ご容赦ください。使えるようになったら直します。
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