ツァイトの抱えた問題を解決した私は新たな友情を育んだ。
友達が増えたよ。
やったねイリスちゃん(*´▽`*)
衝撃の事実が判明した。
なんとキーアさんは失われた【幻の至宝】を再現、強化した【零の至宝】になるべく生み出された存在だった。
いろいろあってキーアさんを取り巻く事件は無事解決し、現在はクロスベル在住の子供として平和に暮らしているみたい。
「キーアさんは何か特別な異能をお持ちですか?」
「私の中にあった至宝の力は殆どなくなっちゃったよ。普通の人より感覚が鋭敏だとはよく言われるかな。あれだ、第六感というヤツが特に優れているんだって」
元々優れた知覚能力を持っていた、キーアさん。
【零の至宝】として覚醒したことにより、その力は更に研ぎ澄まされのだとか。
予知能力という程ではないが、虫の知らせを感じることで危機を回避できた場面が何度かあるらしい。
今回、私とツァイトの下へタイミングよく駆けつけて来れたのも『胸騒ぎ』を感じて早起きし、ツァイトを探していたからだった。
だからといって、直感頼りにたった一人でこんな山奥まで探しに来るとは、無鉄砲というか大した度胸だ。
彼女がもし魔獣に遭遇していたらと思うとゾッとする。
それとも、キーアさんには魔獣と戦う術があるのだろうか?
至宝の力が『殆どなくなった』ということは、多少は残っているとも解釈できる。
一見戦闘ができるようには見えないけど、意外な実力を秘めている可能性もある。
そう、例えば私のように・・・
「ビームは?ビームは何処から出ますか?」
「どこからも出ないよ!?出たらヤバいよ。イリスみたいに何でもアリじゃあないんだからさぁ」
出ないのか・・・(´・ω・`)
ビー友(ビーム友達の略)になれると思ったのに残念だ。
「イリスはビーム出せるんだよね?」
出せますとも!
ビームは淑女の嗜みですからね。
「超見たい!イリスがお尻からビーム出すとこ見たい!」
一体いつから―――尻からビームが出ると錯覚していた。
そんなわけあるかーい!
「尻から発射したら替えの下着毎回用意するの大変でしょーが!」
「そういう問題ではない気がするが」
もし発射口が尻に限定されてしまったら、私はブラスターを永久封印する事になる。
そんな感じの会話を繰り広げながら、私たちは帰路に就いている最中だ。
キーアさんとのお喋りは楽しいし、時々入るツァイトの相槌とツッコミもイイ感じ。
二人と友達になれて良かったと思う。
「ツァイト、私は重くないですか?」
「平気だ。むしろ軽すぎて不安になる」
私は自分の足で歩かずツァイトの背に乗ってだらけている状態だ。
弛緩した私を落とさないよう、ゆっくり慎重に歩いてくれることに彼の優しさを感じる。
私がメス狼だったら間違いなく惚れていた。
ツァイトに虹霊子を供給し、彼の中に潜む厄災の火種〖虚ろなる神〗とやらを洗浄処理した。
そのせいで力を激しく消耗した私は急な眩暈を覚えて座り込んでしまったのだ。
体調を心配してくれた新たな友人たち、ツァイトとキーアさんの二人により、私は街まで送ってもらうことになった。
足元のおぼつかない私を見かねたツァイトが『背中に乗れ』と言ってくれて今に至る。
かたじけのうござる。
私の体重は軽いが、例の超収納鞄や武装類はかなりの重量物である。
しかし、ハードポイントに吸着しておけばアラ不思議、その重さは無くなってしまうのです。
物理法則を無視した現象に戦慄を禁じ得ないが、受け入れてしまえば楽になる
この世界は不思議な力で満ちているので気にしたら負けってことでヨロ。
取り留めのないトークをしていると睡魔に襲われた。
ツァイトのあたたかな体温と柔らかな体毛が心地よいのだ。
はぅあ~~このモフモフお布団しゅごいよぉ~。
「二人とも…すみ、ません……私は、ここまで…みたい…です」
「イリス、どうしたの!?まさか出るの?お尻からビームでちゃうの?」
でねぇって言ってんだろ!ワクワクしているんじゃないよ。
キーアさんは私を何だと思っているんだ?尻ビームの怪人か?
「眠たい…のです…寝かせて、くだ…さい……その辺に放置して…いいです……から…」
「その様な事は断じてせぬ。確実に寝床へ届ける故、安心して眠るがいい」
「イリス、おねむなんだ。いいよ、ゆっくり休んでね」
二人の優しい声を聞きながら私は目を閉じた。
●
「知らない天井だ…」
目を覚ますと見知らぬ天井が視界に入った。
起きた時に言ってみたいセリフを言えて満足だ。
ベッドに寝かされていた私は体を起こして部屋の中を見回してみる。
ここは本当にどこだろう?
拠点にしている旧市街の安宿でないのは確かだ。
整理整頓が行き届いた部屋の中は生活感がある。
クンクン・・・ふむ。
「……男性の部屋ですね」
メンズスメルソムリエである私は部屋の残り香でプロファイリングが可能だ。
この部屋の主は誠実で少々生真面目な性格の年若い青年。
仕事には熱意をもって取り組み、プライベートもそれなりに充実。
おそらくイケメンに違いない!←ここ重要
これは期待できそうだ。
新たな恋の予感に胸を躍らせていると、部屋のドアがそっと開いた。
「起きていたのか、体の方は大丈夫か?」
「……おっふ」
おっふ!おっふふ!おっふんっ!!
失礼、歓喜の『おっふ』が溢れてしまってな。
だがそれも仕方ないというもの、だって現れたのは・・・
私好みのイケメンだったからだ!!(≧▽≦)
突然ですがクイズです。
目の前に好みのイケメンが現れたら
「結婚してください!!」
正解はプロポーズでした!当然だよなぁ?
「まだ混乱しているのか?もう少し寝ていた方がいい」
スルーされた上にガチ目の心配をされてしまった。
状態異常は混乱ではなく、あなたに魅了されてるだけですよ?
「私は混乱しておりません。正常な思考であなたに求婚しました」
「わかった。今すぐ医者を呼んで来るから待っててくれ」
あはっ!手強い。
誠実で無駄のない状況判断、私を女として微塵も見ていないのがよく解った!
しかし、こういう相手を振り向かせるのも恋愛の醍醐味だ。
医者を呼ぼうとする彼を引き留め椅子に座ってもらう。
どうやらこの部屋は彼の自室だったらしい。
おやおや、いきなり部屋に連れ込むだなんて、思ったより肉食系なのね////
私は今日大人の階段を上ってしまうのだろうか?
是非もなし!
「自己紹介が遅れたな、俺はロイド・バニングス。クロスベル警察・特務支援課で捜査官をしている者だ」
ロイドさん…その名前をしかと心に刻み込んだぞ。
私の伴侶になってくれる人かもしれない。
彼の情報はしっかりと記憶しよう。
「特務支援課の方だったのですね。クロスベルの英雄…ご高名は伺っております」
「噂が独り歩きしているだけさ。俺たちは自分の職務を全うしたにすぎない」
自分は英雄などではないと本気で思っている感じだ。
うんうん、謙虚なところもポイント高いですよ。
「私はイリスです。数日前にクロスベルに来たばかりでして…」
「知ってるよ。キミは今、俺たちよりもよっぽど有名人だ」
うっ…逮捕の瞬間見られちゃってるなコレ。
おのれマスゴミどもめ!私で視聴率を稼ぐなら出演料を払ってからにしろっての。
「キミが落ちて来た時、実は俺も現場にいたんだ」
「その節はお騒がせしてすみませんでした!」
言われてみれば、あの時ロイドさんたちらしき人がいたような?
変なおじさんに怒鳴りつけられたり、金髪王子様がいたり、パトカーに乗ったりで、慌ただしかったせいか失念していたわ。
特務支援課の皆さんは、キーアさんと一緒に頭の埋まった私を引っ張ってくれたらしい。
重ね重ねお詫び申し上げます。
「一時はどうなる事かと思ったが、無事でよかったよ。留置もされなかったようで安心した」
「……ぁ…」
自然な動きで頭をポンポンされてしまった。
本当は『うっひょー!』と叫びたかったが、ここは慎ましく『……ぁ…』と言うに留めておいた。
不意に男性が頭を撫でて来た時『……ぁ…』と返すのがゼムリアに生きる女の常識である。
ただし相手がイケメンだった場合に限る!←絶対真理
好きでもない、カッコ良くない男に頭ポンポンされたら不快だし、普通に通報案件だと思う。
「式場はクロスベル大聖堂でよかったですか?」
「誰の何の式だ!?」
「私とロイドさんの結婚式に決まってます」
「そんな予定はないから、式場の予約はしないでくれ」
彼にはまだ私と結婚をする覚悟が足りないようだ。
こちとら頭ポンポンされた瞬間に、ロイドさんと老後をどう暮らすかまでシミュレートしたというのに。
その気にさせておいて、つれない人だ。
残念無念。もしかして他に好きな女性がいるのかも?
情報が足らない。久しぶりに使うか・・・
というわけで、脳内のイケメンスカウター、スイッチオン!
スカウターを作動させた瞬間からみるみる上昇する数値に私は驚愕する。
ば、バカな…戦闘力5000をアッサリ超え……まだ上がるだとぉ!?
ここでいう戦闘力とはどれだけモテるかを数字で表した『モテ度』のことだ。
これ以上はスカウターが故障しそうなので分析を中断する
まさかヨシュアさんやワジ君の戦闘力を超える逸材だとは思わなかった。
イリスわかっちゃった。ロイドさん滅茶苦茶モテる人だって。
その手腕は魔性の域に達し、男女問わず数多くの人間を胸キュンさせて来たに違いない。
クロスベルの一大ハーレムを築ける存在。
彼こそが〖攻略王〗ロイド・バニングス!!
「私の攻略も進めてほしいところです」
「何の話かサッパリわからない」
「なるほど、私は既に攻略済みだと…さすがですねえ攻略王!」
「妙な称号で呼ばないでくれ」
天然ジゴロなロイドさんには自覚というものが足りない。
自分がどれだけ罪作りな存在かわからせる必要がある。
ロイドハーレムの現状は不明だが、私が来たからには鈍感なままではいられないぞ。
むしろ敏感になってしまえー!
「敏腕ではなく
「さっきからずっと何を言っているんだ?」
「結婚してください!」
「振り出しに戻ったか…」
とりあえず婚約だけでもしておきましょうよ。
その後で、二人の未来についてじっくり考えたらいいと思うな。
ケッコン!ヘ(゚∀゚ヘ)ケッコン!(ノ゚∀゚)ノケッコン!
さあロイドさん、ご決断を!
「イリス~、起きてる?…あ、ロイドもいたんだ」
ロイドさんへマリッジプレッシャーをかけていると、部屋の扉がそーっと開きキーアさんが顔を覗かせた。
「キーア、いいところに。この子と会話が成立しなくて困っていたんだ」
「どういうこと?」
「結婚してほしいと、お願いしただけです」
「またロイドが女の子を落としたんだ…そろそろ刺されるよ?」
「お、俺が悪いのか?」
何があったか察したキーアさんはロイドさんをジト目で見つめた。
これにはロイドさんもタジタジである。
「悪いけどロイドはイリスと結婚しないよ」
何故?やはり本命の彼女がいるのか?
「だって、ロイドと結婚するのは私だからね!」
なんだってー!!
ロイドさんは既にキーアさんとそういうご関係だったの?
先を越されてショックなのと『
「夫がいつもお世話になってます。妻のキーア・バニングスです」
「これはどうもご丁寧に、私はロイドさんの愛人イリスです。サッサと彼と別れて下さる?」
「この泥棒猫!慰謝料ふんだくってやるー!」
「あはっ!負け犬の遠吠えが気持ちいぃぃー!略奪愛最高ッ!!」
「二人ともやめないか、どこで覚えたそんなドロドロ物語!?」
即興で愛憎劇を披露した私とキーアさんにロイドさんが頭を抱える。
キーアさんもロイドさん狙いか、ライバルですね!
『クロスベル事変』の後、ロイドさんはキーアさんを引き取り、正式な保護者となってくれたらしい。
つまり、法的には二人は親子ということになる。
ふぅ、驚かせやがって・・・
「キーアさん、私をママと呼んでもいいですよ?」
「はは…絶対嫌ッ!!」
「しかしですね……キーアさんたちは、法律的には親子と呼べる立場にいるのだから……」
「よくしゃべるっ! 」
キーアさんがかぼちゃマスクなら私は射殺されていたことだろう。
「法律よりも大事なのは二人の気持ちだよ。だよね、ロイド?」
「いやいや、警察官なら法律は守るべきです。ですよね、ロイドさん?」
「はいはい、二人とも落ち着くんだ。結婚の話は置いておいて、今はイリスの話が聞きたいな」
「逃げたね」
「逃げましたね」
結婚話から逃げ、この場を切り抜けようとするロイドさん。
まあ、今日はこの辺にしておいてあげますか。
ロイドさんもいることだし、クロスベル…まだまだ楽しめそうな街じゃないか。