昔から仲の良かった女の子と終わってる関係になる話   作:トマトは後ろから呼んでもトマト

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正真正銘の最終話です。

この結末の二つ目の終わり、満足していただけると嬉しいです。



二つ目の終わり

男はシラから来た食事の誘いを確認する。

基本的に、彼女は外で食事をとろうと言い出すことはない。

多くの場合テイクアウトで済ませていたのだ。

だからこそ、男はこの誘いに少し違和感を覚えた。

 

誘われた場所はこの都市でもそれなりに値の張るレストラン。

シラ曰く、『一部の人しか来ないし個室だからバレる心配はない』とのこと。

あと追加で、『もう予約はとってある』とも送られてきた。

 

もう予約とってるんですね。こっちが断らない前提なのかよ。

男はそう思った。

 

予約の日時は、今月の最後の週の土曜日。

あと一週間程度しか時間は残されていなかった。

 

一応予定は確認して、その日が空いていることを確認する。

取り合えず、行くのには問題はなさそうなので了承の返事を返しておいた。

断るのも忍びなかったし。

 

その直後、示し合わせたかのように恋人から連絡がきた。

要件は『一緒に食事でもしないか』というもの。

 

男がなんだか嫌な予感がしながらそのメッセージを開くと、今月の最後の週の土曜日に一緒に食事でもしないかというお誘い。

…なんでだよ。

とんでもないタイミングで送られてきたメッセージに男はため息が出る。

何たる偶然だろうか?少しおかしくないか?

そんな事を一瞬考えた。

 

しかし、酒の回った頭では物事を深く推敲することが出来ない。

取り合えずは、すでに先約ができていたので。

男はその日は先約があるからいけないと返した。

 

すると、『先約ってどんなもの?』と返信がきた。

いつもだったらすぐに納得してくれるのに、何で今回だけ食らいついてくるんだよ…。

男はそんなことを思う。

 

 

どんなもの…どんなもの?

馬鹿正直に言うわけにもいかないし…。

 

どんな説明をすればいいかな…。

男は思案する。

 

…古い知り合いとの食事とか…。

お、いいなこれ。これでいいや。

内容としては決定的に足りていない部分があるがすべてを話すわけにもいかないし、間違ってもいないのでこれでいいだろう。

 

男は、恋人にメッセージを送る。

古い知り合いとの食事があるからいけないんだ。と。

そうすると、恋人も納得してくれたようで。

 

『そっかー残念。なら、私も最近できた親友と食事をとることにするよ』

『君も、楽しめるといいね?』

 

そんな意味ありげなメッセージが送られてくる。

男は特に何も考えずに、そちらの方も楽しめるといいね。とだけ返信した。

 

…ところで、新しくできた親友ってなんだ?

なんかおかしくね?

 

一瞬そう思ったが、男の酒の入った頭では深く考えることが出来そうにないので思考をやめる。

 

寝よ。

男は、酒が入って痛む頭を抑えてベッドに転がった。

 

 

 

そうして、食事の日は訪れる。

 

いつもだったら多くの連絡をしてくるはずの恋人とシラからの連絡は今週はずっと控えめだった。

 

毎週とっていた恋人との食事会も、『今週は少し大事な予定があるから』と言われてキャンセルされてしまった。

いやまぁ、正直たまにはそういうことがあってもいいかもしれないが…。

男にはなんだか少し奇妙に感じられた。

 

まぁいいや。考えても分からないものは分からない。

どれほど考えようと、知らないものを理解するのは不可能である。

 

そんな事を考えるより、今日のシラとの食事会の事を考えるとしよう。

いつもだったら、彼女がこんなことをするはずがない。

何かをしかけてくると考えるのが妥当だろう。

 

その…『何か』が、悪いものでないことを願うしかない。

男はそう願っていた。

 

男は自分が持っている服の中で最も上等なものに着替えて、そのレストランへと向かうことにした。

ここからそう離れてはいないが、時間的にそろそろ出ないと間に合わない。

 

 

そうして、そのレストランが入っているビルへとたどり着く。

 

ビルの中に入り、シラに指定された階層へ行くためにエレベーターのボタンを押す。

煌びやかに装飾された内装が、やけに眩しく見えて。

自分にはこんな場所は不釣り合いだな。

と、そんな自嘲的な事を思った。

 

目の前のドアが開き、エレベーターに乗り込む。

レストランがある階層のボタンを押して、暫く待つ。

 

エレベーターのドアが開き、男はレストランにたどり着いた。

 

店員に予約者の中にシラの名前がないかを確認する。

 

すると、店員がすぐに個室に案内してくれた。

豪勢な扉の前に案内される。

 

男は思わず委縮してしまった。

これ、どれだけの値段がかかるんだろう?

そんな事を思った。

 

『それでは、どうぞごゆっくり』

 

そういうと、店員はスタスタと歩いて行ってしまう。

一人取り残された男は、意を決して扉を開く。

 

すると、そこには。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男にとっても縁の深い、二人の女性が、にこやかに椅子に座っていた。

 

 

 

 

 

 

 

二人の顔が、示し合わせたかのようにこちらを向く。

 

パタン。

 

男は、そっと、ゆっくりと、なるべく音を立てずに扉を閉めた。

 

なぜ?

いや…なぜ?

いったい何が起きたのだろう?

幻覚だろうか?自分の摩耗しきった精神があり得ない想像を見せているのだろうか?

 

…もう一度見てみようか。

もしかしたら、本当に幻覚の可能性だってある…。

 

男は本心では今すぐに回れ右して帰りたいと思っていた。

しかし、ここで逃げたら本当に何もかも最悪な終わりになってしまう気がしたのだ。

 

ドアのとっかかりを掴み、深呼吸をする。

そうして、もう一度扉を開けると…。

 

 

 

 

やっぱり先ほどと変わらず、恋人とシラが向かい合ってソファーに座っていた。

 

そうして先ほどと全く同じように男の方を向いた。

しかし、違う点がある。

 

二人の顔は全く笑ってはいなかった。

 

あぁくそ。これ絶対幻覚じゃないわ。

男は確信する。

 

そして、自分の知らないうちにチェックメイトにはまっていたことを自覚したのだった。

 

…もっとも、最初から『詰み』ではあったのだが。

 

 

 

男は呆然と立ち尽くす。

どうするべきだ?何といえばいい?

何も分からない。こんなときどうするのが正解なのだろうか。

誰か教えてくれよ。

 

男はそんなことを思う。

しかし、無慈悲にも時間は進む。

 

動かない男にしびれを切らしたように、恋人が声を掛けてくる。

 

『…まぁ、こっちに来なよ。取り合えず、ね?』

 

…行くしかないか。

男は決意を固めて、歩き出した。

二人が囲んでいるテーブルの前に立つ。

 

…そういえばこれ。どっちに座るのが正解なんだ?

右にはシラ。左には恋人。

どっちに座ってもどっちかから反感を買いそうな気がする。

いや、浮気をしていたという事実から考えたらシラの方に座るべきなのか?

 

男がそんなことを考えていると、シラが男に声をかけてくる。

 

『いいよ、好きな方に座って』

『私達はどっちでも構わないから』

 

同調するように恋人も言う。

 

『うん。君の好きな方に座るといいよ』

 

二人の視線が男に向く。その視線が男の体に突き刺さる。

…俺の好きな方…。

 

いや、これ。どっちに座ってもダメでは?

座った側からも援護はもらえないだろうし…。

 

…どうしよ。

 

そう男が考えていると。

男は、机を囲うように設置されているソファーの真ん中の部分が空いていることに気づいた。

 

…あそこなら両方からの怒りを最小限に済ませられる気がする。

そう考えた男は、左の恋人の方を通り、真ん中に座ることにした。

 

すると。

 

二人が男の両隣にくっつくようにして距離を詰めてきた。

肩がぶつかっている。

 

…最悪な一手を打ったかもしれない。

男はそう思ったが、時すでに遅し。

 

男は膝に手を置き、肩身が狭そうに縮こまることしかできなかった。

 

 

沈黙がその場を支配する。

誰も何も言わない。レストランにいるはずなのに、男は自分が処刑台にいるような気がしてきた。

 

あながち間違いでもない。

 

男が黙っていると、恋人が口を開く。

 

『ね~シラちゃん。料理っていつ届くんだっけ?』

 

『あと30分くらいしたら届くはずです』

 

『そっか~…なら、それまでなんか雑談でもしよっか?』

 

『いいですよ、そうしましょうか』

 

二人が男を挟んで会話をする。ひどい棒読みで、完全に説明口調だった。

 

凄いね二人とも、もうそんなに仲良くなったんだ。

ところで、二人とも俺の足に自分の足を絡めながら踏むのはやめてほしいな。

あと何も言わずに、手を俺の手の上に重ねてくるのも怖いんでやめてほしい。

 

男はそう思っていたが、口に出すことは出来なかった。

 

何も言わない男を尻目に二人の会話は続く。

 

『そうだな~どんな話をしよっか?』

 

『恋バナなんてどうでしょう?』

 

『あ、いいね~』

 

『でもな~私、恋には苦い経験があってさ~』

 

あぁ、もうだめだ。

男は絶望していた。会話の流れからこの食事会はずっとこんな感じなのが分かってしまった。

 

『あ、私もありますよ。とっても苦い経験』

 

『そうなの~?私達似た者同士だね~』

 

下手で棒読みな演技が男の両隣で繰り広げられている。

男はなんかもう恐怖とかがなくなりそうだった。

心がマヒしてきただけかもしれない。

 

『貴方みたいなメジャー歌手でも恋に苦い経験があるんだね~』

 

『えぇ、貴方も大変でしたね』

 

『そうだよ~二股をかけるなんて最低だよね~』

 

『えぇ、全くです』

 

あ、なんか次にくる言葉が読めた。

 

『『(君も)(お兄さんも)そう思うよね?』』

 

…ソウダネ。

男は、そんな言葉しか返せなかった。

 

そう返した瞬間、二人の足を踏む力が強くなった。

 

…痛ってぇ。

その痛みが、これが現実であることを男に教えてくれた。

 

男が時計をちらりと見る。

まだ五分も経ってない。

食事が来るまで、だいたい25分。

男は死にたくなった。

 

というかそもそも、何でこんな事になってるんだ?

男は二人がどういう機会で仲良くなったのか知らなかったし。

そもそも何で二人から集中砲火を受けているのかサッパリ分からなかった。

 

いや、自分が攻撃される理由は分かるんだけど。

なんで二対一の状況なんだよ。

 

いや、そんなことはとりあえず、今はどうでもいい。

 

…よし、決めた。

このままでは、ずっとこの二人に殴られ続けて心が死んでしまう。

 

別の話題を振って少しでも時間稼ぎをしよう。

男はそう思った。

 

取り合えず、食事をとってさえしまえば帰る理由が出来る。

この二人から逃げられるかどうかは別としても25分間ずっと殴られていては心が持たない。

 

男は意を決して話し始める。

 

二人がいつの間にか仲良くなっていてびっくりした。

いったいいつ仲良くなったんだ?と。

 

そうすると二人から同時に回答が返ってくる。

 

『『一週間前』』

 

想像以上に最近だった。

というか、恋人が言っていたつい最近できた親友ってシラの事かよ。

なんて質の悪い真実なんだ。

男はそう思った。

 

それで話は終わってしまう。

この二人、雑談をしようとか言ってたけど、俺の話を広げる気ないじゃん。

キャッチボールが帰ってこないんじゃ話を続けることもできない。

 

男が次の話題を考えていると、恋人が話し始めてしまう。

 

『あ、そうだ』

『ねぇねぇ、君に聞きたいことがあったんだけどさ』

 

『なんで一週間前シラちゃんに食事に誘われた時、なんでわざわざ(古い知り合いとの食事)なんて遠回りな言い方したの~?』

 

ヘラヘラとした、楽しむような軽さで恋人が言う。

 

そんなのバレたら面倒なことになることが分かり切ってたからだけど!?

男はそう思った。

けれど、それを口には出せない。口に出したら首が物理的に飛びそうだから。

 

というか、なんかシラが自分の足を踏む力が強くなってきた気がする。

いや、これ絶対強くなってるわ。足痛い。

 

『私も、知りたいな。教えて?お兄さん』

『私って、ただの古い知り合いなのかな?』

『ねぇ』

 

濁り切った目でシラが言う。

 

クソ、分かり切ってる癖に。

恋人と結託しても、嫉妬深い所は何も変わってないらしい。

 

男は考える。

しかし、都合のいい答えなどは見つかるはずはない。

というかそんなものはない。

 

『『教えて?』』

二人から同時に詰められる。

何も知らないで傍から見れば、男がキャバクラで女性を侍らせている光景に似ていたが、実態は全然違っていた。

 

真ん中に座る男は、窮地に立たされていた。

思考してもより良い結果は見つからない。すでに万事休すだ。

 

二股を、かけている事が知られたくなかったからです。

 

男は観念したように言葉を吐いた。

 

『ふーん』

『へぇ、そうなんだ』

 

興味なさそうに二人から返事が返ってくる。じゃあ何で答えさせたんだよ。

男の心はもうボロボロ。

 

しかし、(男にとって)苦痛の時間はまだまだ続く。

 

女性陣の話は止まらない。

 

『あ、それならさ』

『私、君に一つ聞いてみたいことがあったんだよね』

 

『あ、私もお兄さんに聞きたいことがあった』

 

『あのさ』『ねぇ』

 

 

 

 

 

『『私と彼女、どっちが好き?』』

 

 

 

 

…吐きそう。

男はそう思った。

トイレに行ってもいいだろうか。取り合えず、そのまま家に帰ってから検討するから。

 

男は何も言えない。どちらかを選択すれば、恐ろしい結末が待っている。

かといって、どちらも選ばないのは論外だ。

 

ネット上のメッセージでのやり取りならともかく、この場に2人がいる状況で選ばないなんて選択はできない。

そんなことしたらほんとに殺されるかもしれない。

 

しかし、答えないわけにもいかない。

二人が自分の手に爪を立てている。

手が痛い。踏まれている足も痛い。

足からは既に血が出ているような気がしていた。

二人がハイヒールじゃなくて良かった。

 

『はやーくー』

『簡単な問題でしょ?』

 

『そうだよね?お兄さん?』

『一言で解決する問題だよね?』

 

女性陣が答えをせかしてくる。

 

はい、そうですね。一言で解決する問題です。

俺がそれを先延ばしにし続けてきただけでした。

 

最悪な形で今までのツケが回ってきた。

男はそう思った。

 

しかし、どちらかを答えることは出来ない。答えたら待っているのはdeath。答えなくてもdeath。

 

男はもう吹っ切れることにした。

いや、実際はそこまで吹っ切れてもいないが、そういう事にしておかないと本当に頭を机に叩きつけて自害してしまいそうだから。

 

 

どっちも大好きだよ。

 

男はそんな言葉を吐く。

 

『『最低』』

 

両足にさらなる力がかかる。

ウッ…

 

余りの痛みに男は思わず机に突っ伏してしまう。

これもう完全に拷問だろ。国際法違反じゃないの?

 

しかし、女性陣はそんな男を気にも留めない。

 

『そっかーどっちも大好きか~』

『相変わらず、優柔不断で最低だね』

恋人が言う。

 

 

『私は貴方を愛しているけど』

『そう言う所は、本当に人としてどうかと思う』

シラが言う。

 

恋人に関しては何も言えないけど。

…シラだってだいぶ人間的に問題があるだろ…。何でそんなに歪んでるのかは分からないけど。お前には言われたくないよ…

男はそう思う。

 

だいぶ男の限界が近いなか、男にとっての救世主が来てくれた。

ドアがノックされる。

 

『お客様、料理のお届けに上がりました』

良かった、助かった。

男はそう考える。

 

『あ、分かりました。どうぞ』

シラが中に入ってくるように促す。

 

女性陣はその場から動く様子を見せない。

 

 

え?二人とも俺から離れないの?はっきり言って今の見た目とんでもないことになってるけど。

男は思っていたのと少し違う行動に驚く。

 

『分かりました』

 

ウェイターが入ってきて、男の目の前に料理を並べていく。

 

なんだか、俺を見る目が露骨に冷たい気がする。

…誤解…ではないが。

 

優れた手際でウェイターが料理を並べ終わると、こちらにお辞儀をして立ち去っていく。

 

あぁ待って。行かないで。

男はそう思ったが、さすがにそんな要望は通るはずもない。

口に出してもいなかったし。

 

ドアを閉める一瞬、ウェイターがこちらを可哀そうなものを見る眼で見てきた気がした。

なんかとんでもない勘違いされてないかあれ。

 

『わぁ、おいしそうだね』

 

『えぇ、本当においしそうですね』

 

二人の女性が、男から離れずにそんなことを言う。

 

『まぁそれはそれとして、お話を続けよっか?』

 

『えぇそうですね』

『私もお兄さんに聞きたいこと、あるから』

 

2人の目を見て。

男は食事中も決して休息の時間にはなりえないことを悟った。

 

 

 

 

 

 

 

終わった…ようやく解放された。

 

レストランのトイレにある洗面台の前で、男は1人ため息をつく。

 

あの後一時間近くにわたり、2人からネチネチと責められ続けた。

特に2人から同時にあーんをされた時はヤバかった。

とりあえず出されたものを両方とも食べることでなんとか事なきを得たが。食べていない方にある足が思いっきり悲鳴をあげていた。

 

あと料理の味が全然わからなかった。

あの美しい料理の数々、本当に味ついてたのかな。

 

 

少し精神が落ち着いて、男は思う。

 

…この関係は、一体どうなるのだろうか。

シラと二股をかけていたことが恋人にバレてしまった以上、もうどうしようもないわけで。

 

これから先、自分はどうなるのだろう。

男の脳内にそんな思考が回っていく。

 

しかし、それと同時に少しだけ解放感も感じていた。

 

少なくとも、これで両方とも自分に失望してくれただろう。

恋人は自分を振るだろうし。

シラだって、一対一でちゃんと説得をすれば諦めてくれるはずだ。

 

また独り身になってしまうのは少し寂しいが、あの苦痛から解放されるのなら、それはそれで悪くはない。

今日は前哨戦だとして、次はもっと真面目な別れ話になるのだろう。

そうすれば、彼女たちとの、この終わってる関係にも終止符が打てるのだ。

 

男はそう考える。

そして、その考えが少しだけ男を奮い立たせてくれた。

 

とりあえず、今日はもう終わりだろう。

すでに時刻は10時を回っている。

さっさとチェックアウトを済ませて、家に帰ろう。

そして寝よう。

 

そう思って、男は洗面所から出ることにした。

 

すでに2人はチェックアウトを済ませており、男がレストランから出るのを待っていた。

 

3人でエレベーターに乗り込み、下の階へ降りる。

 

会話はない。

そのままビルから出た先には、どちらかが呼んだであろうタクシーが止まっていた。

…一台だけ。

 

まぁいい。

男が2人に乗るように勧める。

自分は電車で家まで帰るから、と。

 

すると、2人がこんな事を言ってきた。

 

『え?何言ってるのさ』

 

『このままお兄さんの家まで行くんだけど』

 

…はい?

いや、何でだよ。

なんで浮気相手と恋人と3人で俺の家まで行かなきゃいけないわけ?

このまま一旦解散の流れじゃないのか。

 

男が戸惑っていると、恋人がこんな事を言ってくる。

 

『あれ?もしかしてなんか勘違いしてる?』

『私もシラちゃんも、君と別れるつもりなんてないけど?』

 

シラも口を挟んでくる。

 

『…私達、貴方を2人で共有しようって話になったから』

『幸せだね、お兄さん。こんな美人な2人から愛してもらえて』 

 

男は絶句する。

終わってる関係に終止符が打てると思ったら、別の終わってる関係が始まってしまった。

 

というか、俺の同意は?

え?そんなこと言う権利ないだろって?

それはそうかもしれんけど…。

 

 

 

一瞬、男の頭の中に死の一文字が浮かぶ。

いっそのことそうしたほうが楽になれるんじゃないか?

今からでも…。

 

しかし、それを見透かしたかのように、2人の女性が絡みついてくる。

まるで逃がさないとでも言うかのように。

 

恋人が言う。

『言っとくけど、死ぬなんて許さないから』

 

シラが言う。

『死んだら、私もついて行ってあげる。地獄でも一緒』

『嬉しいでしょ?』 

 

…男は本日何度目かの絶望をする。

死すら、もはや逃げ道としては正当化できない。

正真正銘、万事休すだ。

 

そんな男に2人の女性は言う。

 

『大丈夫、君が頑張ればこの関係はうまくいくから』

 

『沢山、今までよりももっと、お兄さんの事を愛してあげる』

 

『『だから、貴方も平等に愛してね?』』

 

自分に絡みつく2人の女性の歪みきった、美しい笑顔を見て男は思う。

 

あぁ、本当に。

あの時にシラをきちんと止めておけばよかった。

 

そう、思うのだった。

 

 

 




はい。お疲れ様でした。
三週間の間、駆け抜けるようにして話を書いてきましたがとっても大変でした。物書きの皆様はこんな苦悩と闘っていらっしゃるのですね。

初めてのこういった作品を書きましたが、皆様から多大なる評価をいただき恐悦至極に存じます。

もしかしたら、また何か変なものを書くことがあるかもしれません。
その時は、『またなんか変なの書いてる…』くらいの生暖かい気持ちで見ていただければとても嬉しく思います。

それでは、ここまで読んでいただき大変有難うございました!
サヨナラ!

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