冒険と探検と日常と ~のびのびTRPG~   作:混沌野郎

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 温泉旅行4日目。
 ついに温泉旅行の最終日。
 先輩さんの緩んだ寝顔から朝が始まって。
 土産物屋で温泉饅頭、マスコットキャラの可愛いアイテム、あと、修学旅行で絶対に禁止されるアレ。
 温泉郷での最後のメシはもちろん海の幸。
 帰りの列車に乗って切なくなって。
 でも、旅行は家に帰るまでが旅行で……、そんなお話。

 第20話は「はじまりはじまり」「1日目・初日」「2日目」「3日目」「4日目・最終日」の5回に分けて公開します。

 本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGスチームパンク』の二次創作です。
 ソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した世界観を使って記した二次創作です。

 『のびのびTRPGスチームパンク』のプレイヤーキャラクターの「名前」を「キャラクターの名前」にしているので、
PC「機械屋」→「機械屋さん」
PC「少女」→「少女ちゃん」
等々となっています。

先に記しとく設定、
 機械屋(主人公)と先輩は女性、
 作中の「ダリル」は通貨単位、1ダリル=1円くらい、
 と言うことで。

クレジット
ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.


第20話 雪の温泉郷 (4日目・最終日) [5/5] (日常回)

 4日目・最終日。

 

 朝、だいたいどれくらいの時間に起きたいか、大事な日はその時間に目が覚める。

 考えてた時間、夜明けのいくらか前、に目が覚めた。

 部屋は真っ暗。もちろん窓の外は真っ暗。

 良い感じだ。

 足を動かす。つま先で隣に寝てる少女ちゃんの足をつつく。

 なるべく静かに少女ちゃんを起こしたい。

 何回か試したが少女ちゃんは目を覚まさない。

 先輩を刺激しないように。

 今度は手を伸ばして少女ちゃんの頬をぺちぺちと軽くたたく。

「……う……ん」

 ちょっと反応した。もう1回。

「……んー」

 少女ちゃんのまぶたがゆっくりと開いた。

「少女ちゃん」

 小さい声で呼ぶ。

「?

 あ、機械屋さん」

 あわてて人差し指を口の前に。「しーっ」とジェスチャー。

 少女ちゃんははっとして手で口を押さえる。

 布団の中で明るくなるのを待つ。

 外がわずかに明るくなってきた。そろそろ始めるか。

 なるべく音をさせずに布団から出る。少女ちゃんも布団から出る。

 できる限り静かに先輩に近づく。

 窓側から先輩の顔を見る。少女ちゃんは反対側から見る。

 先輩は表情が緩みきってる。

 どんな夢を見てるんだろ。……楽しい夢なのは間違いない。

 ちょっとの間見てると、

「少女ちゃぁん……」

 寝言。同時に緩んでた顔がもう一段緩む。

 少女ちゃんの夢を見てるのか。

 表情が元に戻った。

 ちょっとして、

「機械屋ちゃぁん……」

 表情が緩む。

 アタイも夢に出てるらしい。

 先輩に目が覚める気配はない。まだ大丈夫だ。

「だめだよぅ……」

 にへらっと笑顔が緩む。

 何がだめなんだろ。どんな夢なんだ?

 少女ちゃんを見た。少女ちゃんはちょっと頬を赤くしてる。少女ちゃんらしい。

「ほんとにだめだったらぁ……」

 いやいや、本当にどんな夢なんだ?

 先輩を観察してる間に外が明るくなってきた。

 その後は寝言はなかった。

 けど、基本的に緩んでる寝顔が時々もう一段緩んだ。

 外がしっかり明るくなって、部屋の中も明るくなった。

 ぐっすり眠ってた先輩がごそごそと動き始めた。

 少しして目を覚ました。

 ぽーっとした感じから始まって、少しずつ状況を把握し始める。

 アタイと少女ちゃんに気づく。自分が見られてることにも気づく。

 ぼんっ、と赤面した。

 あわてて布団をかぶる。

 先輩が見てた夢には少女ちゃんとアタイが出てたらしい。

 加えて本人を見るとすごく恥ずかしくなる夢だったみたいだ。

 布団から顔を出した。顔色が元に戻ってた。

 先輩はよっと体を起こした。

「先輩、どんな夢見てたんだ?」

 少女ちゃんは何も言わないけど、先輩の顔をじっと見てる。

「夢?

 んーと、どんな夢だったっけ?」

 どんな夢だったか、分かるのは先輩だけだ。

「だよな」

 夢ってのはしっかり見てても起きたら速攻で思い出せなくなる。

「ちょっと残念です……」

 少女ちゃんはちょっと悔しそう。

「まあ、何だ、

 先輩の寝顔が見れた。いちおう成功だ」

「あ、そうですね」

 少女ちゃんの心が浮かび上がった。

「え!?

 寝顔見られたの!?」

 先輩が驚きの声をあげた。

「少女ちゃんの寝顔見たし、アタイも見られた。先輩の寝顔も見ないと。

 これでアタイも少女ちゃんも納得だ」

 少女ちゃんがこくこくとうなずいた。

「確かにそだね。うん」

 簡単に納得した。この対応はさすが先輩だ。

 先輩は布団から出て、うーんと体を伸ばした。

 窓に近づいて外を見る。

「おお! 見て! 見て! すごいよ!」

 先輩のテンションが上がった。

 少女ちゃんと一緒に先輩にならぶ。

 快晴だった。

 どこまでも青い空と、日の光に輝く雪。遠くに見える海もきれいに光ってる。

「これ、外で見ないともったいないよ!」

「ああ!」

「ですね!」

 3人で1階に下りて宿の外に出た。

 空を見上げる。雲ひとつない青。

 山を見る。銀色に光る雪。

 すごい景色だ。

 来て良かった、心の底から思った。

 少しの間、景色に感動した。

 部屋に戻ると朝メシの用意をしてくれてた。

 朝メシを食う。

 今朝のメインは焼き魚。でも一昨日のとは違う魚。

 もちろん味もぜんぜん違う。けど、もちろん甲乙つけがたい美味さだ。

 宿で食うメシはこれが最後。正直名残惜しい。

 だけど先輩が言ってたのが当たり。今日もまだ旅行だ。

 メシの後片付けをしてもらった。

 

 チェックアウトの時間までもうちょっとある。

 今日の予定を確認する。

 と言っても空港への列車は昼すぎ。

 それまでは近所に渡す土産を買って、早めに昼メシを食って、そんな感じだ。

 そろそろか、浴衣を脱いで服に着替えた。

 荷物をまとめる。

 少女ちゃんはコートを着て、先輩とアタイはジャンパーを着た。

 それぞれの荷物と、少女ちゃんはぬいぐるみが入った袋。アタイは干物とかが入ってる袋を持った。

 忘れ物がないか。部屋の中をぐるりと見る。

 忘れ物はない。3人で確かめたから大丈夫だ。

 部屋を出る。エレベーターで1階へ。

 ロビーのカウンターでチェックアウトする。

 アタイのインフォメーション端末をカウンターの端末に同期、ピッと鳴って手続き完了。

 

「じゃ、行くか」

 振り返って後ろにいる先輩と少女ちゃんに声をかけた。

「だね」

「はい」

 宿を出る。

「またおこしくださいませ」

 宿のスタッフが送り出してくれた。

 3人で横ならびになって歩く。

「宿、良かったね」

「ああ、あんな広い部屋で、美味いメシ、ふかふかの布団、んで温泉。

 良いとこばっかだったな」

「私も温泉が良かったです。

 えと……、露天風呂!

 また入りたいです」

 少女ちゃんの言う通りだ。

 先輩とアタイはうんうんとうなずいた。

 宿から駅への道。昨日まではスルーしてたけど、土産物屋もならんでる。

 その1軒、それなりに大きな店、に入った。

 この街の銘菓、この地方の特産品、等々がならべられてる。

 3人それぞれで店の中を見てまわる。

 アタイは銘菓を見比べる。『温泉饅頭』ってのがあった。

 聞いたことはあったけど、実物は見たことないし食ったこともない。

 先輩がアタイのところに来た。

「何見てんの?」

「ん?

 近所に土産渡した方が良いかな、って考えてた」

 その言葉に先輩が反応した。

「うん、良いね」

「じゃあ買うか。

 ……どれくらいの近所まで要るかな?」

 考えてみると近所に土産を渡すってのは初めてだ。

 土産を渡せば良いのは分かるけど、どれくらいの近所で良いのか分からない。

「んー、

 『向こう三軒両隣』くらいで良いと思うよ」

「てことは5つか。

 それと……、温泉饅頭で良いよな?」

 先輩が温泉饅頭を指す。

「これ?」

「ああ」

 ちょっと考える先輩。

「決まりだね。

 けど、6つ買おう」

「6つ?」

 近所に渡す分ともうひとつ?

「私と機械屋ちゃんが食う分ね」

「なるほど」

 温泉饅頭、大きい箱のと中くらいのと小さいのがある。

「近所に渡すのは大きいのだな」

「うん。だね」

 大きい箱5つを取る。

 アタイの手から先輩が持ってくれた。

「アタイらのは小さいので良いな」

「あ、せっかくだから中くらいのにしよ」

 そうだな、ちょっと欲張りたい。

 中くらいのも先輩に持ってもらった。

「これで良いよな」

「良いね」

 レジで支払いをする。

 饅頭の箱6つを紙袋に入れてもらう。先輩が店員から紙袋を受け取った。

 少女ちゃんは……。

 温泉街のマスコットキャラのコーナー、かわいいアイテムが集まってるコーナー、で考え込んでる。

「少女ちゃん、迷ってる?」

 先輩が声をかける。

「あ、はい、どれが良いか決められなくて……」

 アタイも声をかける。

「少女ちゃんに似合うやつか」

 どれどれ、とコーナーを見渡す。かわいいグッズがいろいろある。この中から選ぶのは難しい。

「あの、私にじゃなくて『謎の男』さんにどれが似合うかなって」

 !

 ふきだしそうになった。でも、少女ちゃんは真剣に考えてる。笑っちゃいけない。

「『謎の男』に似合うやつか……。

 難しいな」

「あれとか良いと思うよ」

 先輩が指した先、マスコットキャラの隣のコーナー、……木刀があった。

「……確かに似合うな。

 けど、土産にはちょっと痛いな」

「ですね」

 3人で悩んで最後に、饅頭で良いだろ、となった。

 少女ちゃんはいちばん小さい箱の温泉饅頭を買った。先輩が持ってる紙袋に一緒に入れる。

 土産物屋を出てまた街を歩く。街は賑わってる。

 早いけど良いか、そう思ったから言った。

「早いけど昼メシ食うか?」

「早めに食っといた方が良いね」

「じゃあ、何を食べましょう?」

 少女ちゃんの言葉を聞いてちょっと考え込む。

「先輩、何が良い?」

「んー、魚だね。

 刺身をもう一回食いたいね」

「機械屋さんはどうですか?」

 もちろん賛成。

「アタイも刺身食いたい」

「じゃあ決まりですね!」

 少女ちゃんも刺身だったみたいだ。

「どこで食う?」

「このあいだ海鮮丼を食べた店はどうでしょうか?」

「あの店か。良いね。

 もう1回、海鮮丼食おう」

 一昨日の昼メシを食った店へ。

 

 店に入るとやっぱり店員の気合の入った声。

「いらっしゃいませー!」

「何名様ですかー!」

 店員のひとりがこっちに来てくれた。

 先輩が3人だと伝えた。

「こちらへどうぞー!」

 4人席のテーブルに案内してくれた。

 店員は一旦厨房の方へ下がった。水とおしぼりを取りに行ってくれたのか。

 この前は海鮮丼と決めて店に入った。

 けど今回は、とメニューを見た。

 ……海鮮丼がいちばんインパクトがある。もう一回海鮮丼で決まりだ。

「あのさ、この『刺身盛り合わせ』ってどうかな?

 3人で分けたら食えるっしょ」

「良いと思います」

「賛成」

 これも決まった。

「でも、分けたらちょっと少なくないですか?」

「あ、確かにそだね。

 ……どうしよ」

「『大盛り』にしたらどうだ?」

 メニューのひとつを指す。『刺身盛り合わせ(大盛り)』てのがあった。

「決まりだね」

 少しして、店員が水とおしぼりを持ってきてくれた。

 代表してアタイが。

「海鮮丼3つと刺身盛り合わせの大盛り、お願いします」

「はい、海鮮丼3つと刺身盛り合わせの大盛りですね。

 海鮮丼3つと刺身盛りの大盛りー!」

 店員の気合の入った声が清々しい。

 料理が出てくるまで、このあとのことを話した。

 とは言っても、あとは列車で空港に行って、飛行機械で王都の首都空港。それで旅行は終わり。

 少女ちゃんは明らかに寂しそう。先輩もちょっと沈み気味。

「あのさ、旅行ってのは家に帰るまでが旅行、

 だから帰りも楽しまねぇと!」

 はっきりと言い切った。

「そうですね!」

「だね!」

 先輩と少女ちゃんが笑顔に戻った。

 そんな話をしてると店員が料理を持ってきてくれた。

「はいよっ、海鮮丼3つ! と、刺身盛り合わせ大盛り!」

 2回目だけど驚く。どんぶりが3つと今日は大きめの皿もテーブルにならぶ。

「やっぱりインパクトあるな」

「食いごたえあるよねー」

「しっかり食べたいです!」

 食べる前に『いただきます』をして食事開始。

 海鮮丼はやっぱりボリュームがある。どんぶりの上の刺身から攻略する。

 今日はどんぶりを食いながら『刺身盛り合わせ』の刺身も食う。

 どんぶりの刺身と盛り合わせの刺身、とにかく刺身を食える。

 食い始めたら声がなくなる。「食う」だけになる。それくらい美味い。

 黙々と食って、食い続けた。

 初めにアタイが、次に少女ちゃんが、最後に先輩が食い終えた。

 美味いメシで腹いっぱい。幸せで魂が抜けそう、そんな感じ。

 腹を落ち着かせる。

「あー、美味かったー」

「美味しかったです」

「満足できた」

 ちょっとして、落ち着いた。

 席から立つ。

 支払いをして店を出た。

 

 駅へ向かう。

 今くらいから行くと列車の時間には十分余裕がある。

 いくらか余裕があった方が良いだろう。

 駅へと歩きながら話をする。

 話題は「刺身」。

 美味しかった、また食いたい、王都で食えないのが残念、等々。

 駅に着いたのは列車の時間の20分くらい前だった。

 早すぎたかと思ったけど、ギリギリよりは良いだろう。

 今日はきれいに晴れてる。朝は寒かったけど今はそんなに寒くない。

 待合室で待たなくても良いくらいだ。

 売店でそれぞれの飲み物を買って、改札ゲートを通った。

 ホームに出る。

 旅行の楽しかった話をしてるとすぐに時間が経った。

 ずっと遠くから列車が近づいてきた。

 速度を落としながら駅に入ってきて、ホームちょうどで止まった。

 アタイらが乗るのは6号車。ホームの6号車のしるしで待ってたら、ぴったりで止まってくれた。

 列車に乗る。帰りも4人用の個室だ。

 部屋の番号を見ていく。

「えっと……、ここか」

 番号を確かめる。合ってる。

 中に入る。まず上着、少女ちゃんはコート、先輩とアタイはジャンパー、を脱いだ。

 帰りは窓側に少女ちゃん、隣に先輩、先輩の前にアタイ。アタイの横には荷物を置いた。

 置いたのは、市場で買った干物とかと、先輩がスマートボールで取ったぬいぐるみ、それと土産の饅頭。

 少しして列車ががくん、と動いた。

 走り始めた。温泉街の駅を離れて加速していく。

 いくらか加速して、十分なスピードになった。

 カタンコトン、カタンコトン、と一定のリズム。

 そのリズムが心地良いのか、少女ちゃんがうとうとし始めた。

 先輩の肩に寄りかかる。

 先輩が肩を抱き寄せると少女ちゃんはすぐに眠りに引き込まれた。

 それから20分くらい雪の中を走って列車はトンネルに入った。

 長いトンネルの中を走る。

 トンネルから出ると景色ががらっと変わる。雪が少ない。いくらか積もってるだけ。

 さらに走ると雪が減って、なくなった。

 列車は走り続ける。

 先輩とアタイ、ぽつりぽつりと話をする。

「少女ちゃん、良い顔してるな」

 先輩も少女ちゃんを見る。

 肩に寄りかかってるからしっかりとは見えないだろう。でも分かると思う。

「楽しかったんだね」

 少女ちゃんを抱き寄せ直す。

「アタイも楽しかった」

「私も」

 何となく言葉が途切れた。

 少ししてまた話が始まる。

「でもさ、今回のいちばんは『謎の男』だね」

「ああ、間違いない。

 『謎の男』が少女ちゃんのこと言わなかったら旅行しなかったもんな」

 また話が途切れて、少しする。

「次はどこに行く?」

 先輩に尋ねる。

「そだね……、海はどうかな? 真夏の海」

「海か、良いな」

 同意して言葉を続ける。

「今度は『謎の男』に言われる前に少女ちゃん、連れ出そう」

「良いね、少女ちゃんなんだから『謎の男』もだめって言わないよね」

 今度は先輩が同意してくれた。

「て言うか、『行け』って言うだろな」

 時間はすぐにすぎる。

 車窓の風景が変わってくる。

 冬色の草原から郊外の景色に。街の景色になる。

 もうすぐ空港駅。アナウンスが流れた。

 先輩が少女ちゃんを起こす。

「ん、うん……」

 少女ちゃんが目を覚ました。

 わずかな時間ぽーっとして、すぐにしゃきっとした。

「はわっ! 寝てしまいました」

 少女ちゃんの様子が微笑ましい。

「もうすぐ空港だ。降りる用意しよう」

 すぐに飛行機械に乗る。だから上着は着なくて良いだろう。

 それぞれの荷物を持って、忘れ物がないか確認して。

 そうしてるうちに列車のスピードが落ち始めた。

 もうすぐ到着だ。

 列車はどんどんゆっくりになる。すごくゆっくりになって、窓から駅のホームが見えて、止まった。

 列車から降りて改札ゲートに向かう。

 ゲートを通って、空港への連絡通路を歩く。

 空港の出発ロビー、飛行機械の案内が表示されてる大きなパネルを見た。

 王都行きの便の出発は30分後、と言うことは搭乗ゲートはそろそろ開いてるはずだ。

 3人でゲートの方へ。

 ゲートに着いたところで、ゲートが開くとのアナウンスが流れた。

 ゲートのまわりで待っていた乗客が順番にゲートを通る。

 乗客の列のいちばん後ろにならんで少しずつ進む。

 ゲートを通って飛行機械に乗った。

 チケットに書かれてる座席を見ていく。

 あった。

 荷物を荷物棚に入れてシートに座る。

 少女ちゃんが窓側。隣、通路側に先輩。通路をはさんでアタイ。来る時と同じ順番。

 シートに座ると少女ちゃんはすぐにぼーっとし始めた。

 先輩が肩を抱き寄せる。少女ちゃんはびくっとした。

「えっ、あの……」

 先輩を見る。

「良いから、

 疲れてるんだから寝たら良いよ」

「えと、……はい」

 先輩に寄りかかって目を閉じて、少女ちゃんはすぐに眠りに落ちた。

 10分くらいして、離陸のアナウンスが流れた。

 ちょっとの後、機体がかるく揺れた。飛行機械が離陸した。

 そこから30分くらい飛行機械は飛んだ。

 時間は長いと思うと長いし、短いと思うと短い。

 飛行機械に乗ってる時間、アタイは短いと思った。

 着陸のアナウンスが流れた。

 少しして、体が前に引っ張られる感じ、飛行機械が減速。

 次に体が浮き上がる感覚、着陸だ。

 飛行機械がゴトンと揺れた。着陸した。

 先輩が少女ちゃんを起こした。少女ちゃんは今度はすぐにしゃきっとした。

 この先は上着を着た方が良いだろう。先輩とアタイはジャンパーを、少女ちゃんはコートを着た。

 荷物を持って飛行機械から降りた。

 到着ゲートを通る。

 王国の首都空港に帰ってきた。

 次は王都中央のバスターミナルへ。

 空港のバスのりば。先輩がバスターミナルへののりばを見てきてくれた。

「3番のりばー」

「OK」

 3番のりば、バスターミナル行き。

 のりばに着くと、バスがちょうど発車するところだった。

 バスに乗る。車内は混んでた。

 座席はもちろん全部埋まってる。立って行くことになった。

 バスが動きだした。

 街のはずれにある首都空港から街の中心へ。バスが走る。

 窓の外に見える風景が街から都会になる。

 バスターミナルに着いた。

 このバスはここが終点。乗客が順々に降りる。もちろんアタイらも降りる。

 先輩がまたのりば案内を見に行く。

「6番のりば、軍の役所って『官庁街東』だよね」

「ん、たぶんそうだ」

 確か「官庁街東」で合ってるはず。

「じゃあ6番」

 先輩とアタイのやり取りを見て、少女ちゃんがはわはわし始める。

「あの、あの、私ひとりで帰れますから」

「だめだめ、少女ちゃんの旅行なんだから、

 少女ちゃんが帰るとこまで見なきゃ」

「それに、確かめたいこともあるし」

 先輩は純粋に少女ちゃんを少女ちゃんを送り届けたい。

 アタイには気になってたことがひとつある。

 

 6番のりば。少し待つとバスが来た。

 夕方までもうすぐの時間。官庁街へのバスは空いてた。

 いくつかのバス停で止まって、いくつかのバス停を通りすぎて、「官庁街東」に着いた。

 バスから降りて少しだけ歩く。

 軍の役所に着いた。そのまま正面玄関へ。役所に入る。

 窓口があるロビー。ならんでるベンチのひとつに「謎の男」が座ってた。

 立ち上がってこっちに来る。

「温泉は楽しかったようだね」

「はい、とーっても楽しかったです!」

 「謎の男」の口ぶりは旅行の中身を把握してる感じ。

 それに、ここに着く時間も分かってたみたいだ。

「やっぱりか……」

「え? 何が『やっぱり』?」

 先輩は気にしてなかったみたいだけど、アタイは気になってた。

「少女ちゃんの護衛、どうなってたんだ?」

 「謎の男」はフッと笑みを浮かべた。

「もちろん警護させていた。報告も逐一受けていた。

 まあ、いつもは訓練中のをつけているが、

 さすがに今回は隊の上の方のを行かせた」

「ああ、そゆこと」

 「謎の男」の言葉に先輩も納得した。

「あの、どんなふうに見張ってたんですか?」

 少女ちゃんの疑問。

 もう一度フッと笑う。

「今は言えないが、……いずれ少女くんにも訓練を受けてもらおう」

 「謎の男」は状況を楽しんでいるようにも見える。

「けど、国内だったら分かるけど、隣国まで来てたのか……」

 あきれるしかない。

「軍人、それも裏の人間が密入国。

 良い訓練になっただろう」

 さらっと言うけど軍の人間が密入国。無茶苦茶なことをさせてる。

「あ、そだ、少女ちゃん、お土産お土産」

 先輩が紙袋から温泉饅頭の小さな箱を取り出した。

 少女ちゃんに渡す。

 箱を受け取った少女ちゃんは「謎の男」を向く。

「あの、お土産です」

 「謎の男」に饅頭の箱を差し出す。

「ありがとう、いただこう。

 少女くんは本当に気がきく」

 その言葉に少女ちゃんは照れたのか、頬を赤らめて下を向いた。

 さて、これで少女ちゃんの旅行は終わった。

「じゃあ、そろそろ行こっか」

 先輩がきっかけを作った。

「ああ、そうだな」

 先輩とアタイは、少女ちゃんと「謎の男」に別れの挨拶をして役所を出た。

 夕方の直前、工房に帰る。

「歩くか?」

 工房までは余裕で歩ける。

「機械屋ちゃん、旅行はまだ終わってないよ」

「なるほど、そうだな」

 官庁街東のバス停でバスを待つ。

 バスに乗ってバスターミナルへ向かう。

 夕方、バスが混み始める時間、乗ったバスはいくらか混んでた。

 バスターミナルから倉庫街中央のバス停へ。

 今度はしっかりと混んでた。

 けど、バス停で止まるたびに人が減ってく。

 倉庫街のバス停に着いたときにはがらがらに空いてた。

 バスを降りて工房へ。

 と、先輩が立ち止まった。

「どうしたんだ?」

「あのさ、旅行、まだ終わってないよね?」

 先輩から尋ねられた。

「ああ、まだ終わってない」

「じゃあさ、晩メシ、ラーメン食って帰ろ」

 なるほど、良いアイデアだ。

 バス停から少し歩いたところに倉庫街でいちばんのラーメン屋がある。その店へ歩く。

 晩メシ時にはまだ早い。店は混み始めたところだった。

「まだ旅行なんだから贅沢しても良いよね」

「それは……、良いな」

 先輩もアタイもチャーシュー特盛り。

 贅沢なラーメンを食った。

 ラーメン屋で贅沢をして工房に帰ってきた。

 しっかりと日が暮れてた。

 工房の小さいドア。

 ドアに貼ってある『従業員研修のため、休業致します』と書かれたプラ板。

 先輩が、ばりっとはがした。

 ドアの鍵を開けて中に入る。

 とりあえず食堂に入るか。

 うす明かりの中を歩いて食堂に入る。明かりをつけた。

 先輩とアタイはまず荷物を置いた。

「土産、明日の朝に持ってくか?」

「だね、そうしよう」

 先輩が同意してくれた。

 旅行の間の服の洗濯。コインランドリーに行くのも明日。

 すべきことは全部、明日の予定にした。

 帰り着いたら疲れが、どっと出た。

 夜はまだまだこれから、そんな時間だけど、

「早いけど、アタイは寝る」

「んー、私も寝る」

 ふたり、それぞれの部屋に入った。

 目覚まし時計をセットして毛布をかぶった。

 土産を渡しに行ったり、コインランドリーに行ったり。

 明日は旅行の延長戦だ。

 そんなことを考えてるうちに深い眠りに沈んでいった。

 




 温泉旅行の4日目・最終日。
 土産物を買って「海の幸」を食って、帰路についた3人。
 充実した旅行が終わりました。

 これにて 第20話『雪の温泉郷』は終劇です。

 次回は第21話『冒険すること、果たすこと(1日目)』です。
 王女さまが主人公の「冒険回」でして、どんな冒険になるのか?
 ご一読いただけると幸いです。
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