ねばねばをどうにかするためにお風呂に入りたいし洗濯もしたい訳で。
VRは思ったことを体験できる。
だから「お風呂」と「洗濯」を思い浮かべることに……、そんなお話。
第29話は、第1幕~第10幕、の10回に分けて公開します。
第1幕:前日
第2幕:当日~アトラクションスタート
第3幕:ライブ~扉の先へ
第4幕:ねばねばトラップ
第5幕:コインランドリーとお風呂屋さん
本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGザ・ホラー』の二次創作です。
ソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した二次創作です。
登場人物の名前は『立場(的なもの)』から決めているので、
『女子高校生 → 学生』、『その友達 → お仲間』、となっています。
先に記しとく設定、
学生(主人公)とお仲間、は女性、
作中の「ダリル」は通貨単位、1ダリル=1円くらい、
と言うことで。
使った(引いた)カード
キャラクター:女子高校生
イントロダクション:VRの筐(はこ)
シーン1:ねばねば
カード1:闇:ネット配信中
シーン2:荒れ果てた公園
カード2:闇:江戸から来た
シーン3:決闘
カード3:闇:恐ろしきは人
シーン4:浄化された魂
カード4:光:カレー好き
シーン5:ショッピングモール
カード5:闇:霊能力者(NPC)
クライマックス:世界の希望
クレジット
ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.
第5幕:コインランドリーとお風呂屋さん
「これも一緒に投稿だね。
絶対にウケる!」
お仲間ちゃんに笑顔を向けます。
「私はほら、撮るのは好きだけど撮られるのは苦手だから……。
……ネネットはなかったこと、だね」
分かってもらえました。
?
動画の話が落ち着いて、ひとつ気づきました。
「あれ?」
「どうしたの?」
私の声にお仲間ちゃんが反応してくれます。
「インフォメーション端末、汚れてない」
ねばねばの中に落ちたのにインフォメーション端末は汚れてません。
お仲間ちゃんもインフォメーション端末を見ます。
「私のもだ」
お仲間ちゃんのインフォメーション端末も汚れてません。
それに、
「バッグもだね」
お仲間ちゃんのトートバッグもやっぱり汚れてません。
「学生ちゃんのリュックは?」
背中を向けてリュックを見てもらって、
「汚れてないね」
やっぱり汚れてません。
「どう言うことかな?」
お仲間ちゃんが疑問を口にします。
少し考えて、私なりの答えを言いました。
「VRだから汚れちゃダメなものは汚れない、
ってことかな?」
「十分あり得るね」
お仲間ちゃんは同意してくれました。
同意してから言葉を続けます。
「インフォメーション端末とバッグは良いとして、
これ、どうする?
ねばねばで気持ち悪いよ」
お仲間ちゃんの言う通りです。
上から下まで全部ねばねばで、髪も体もねばねば、もちろん服もくつもねばねばです。
「お風呂に入りたいし、それに洗濯もしたいよ」
正直な気持ちが言葉になりました。
「だね、お風呂と洗濯……」
返ってきたお仲間ちゃんの声が途中で途切れました。
でもすぐに続きが出てきて、
「『お風呂』と『洗濯』って考えれば良いよね」
「あ、そうだね」
お仲間ちゃんの言う通りです。
VRは思ったことが起こるから『お風呂』って考えて、『洗濯』って考えればお風呂に入れるしきっと洗濯もできます。
「よし、それじゃ『お風呂』と『洗濯』。
私が『お風呂』で学生ちゃんが『洗濯』で良いかな?」
『お風呂』と『洗濯』が決まって分担を尋ねられます。
もちろん反対する理由はありません。
「OK、『洗濯』だね」
お仲間ちゃんに答えます。
分担も決まって、視線を交わして、せーのっ、で考えます。
『洗濯』に意識を集めます。
お仲間ちゃんは『お風呂』を考えてるはずです。
もう十分かな?
そう思って『洗濯』に心を向けるのをやめました。
お仲間ちゃんも十分って思ったみたいです。
顔を見合わせます。
「どうかな?」
お仲間ちゃんの言葉に、
「上手く行くよね?」
大丈夫だと思うけど、不安もあります。
何も起こらない?
ダメかな、そう言おうとしたすぐ後、私たちの前に小さな光がふたつ現れました。
ふたつの小さな光は少しずつ大きくなって、どんどん大きくなります。
人よりも自動車よりも大きくなって、もっと大きくなります。
どんどん大きくなる光、片方が大きくなるのをやめました。ちょっとした建物くらいの大きさです。
もうひとつは止まらないでまだまだ大きくなります。
どこまで大きくなるのかな?
思って少しして大きくなるのが止まりました。
先に止まった方の倍どころじゃなくてずっと大きいです。
お仲間ちゃんと私の前で、大きくなった光の輝きが落ち着いてきて、弱くなってきて、光が消えました。
光が消えて、消えたあとに建物がふたつあります。
「出てきたね」
私の言葉に、
「成功だね」
お仲間ちゃんの言葉が続きます。
小さい方は、
「コインランドリー、『洗濯』で、
こっちのはなに?」
大きい方、初めて見る不思議な建物です。
お仲間ちゃんが答えてくれます。
「お風呂屋さんか……、確かに『お風呂』だね」
そう言ってくれたけど『お風呂屋さん』が分かりません。
だから尋ねます。
「『お風呂屋さん』ってなに?」
またお仲間ちゃんが答えてくれます。
「『お風呂屋さん』、『銭湯』だね」
『銭湯』は分かります。
「『スーパー銭湯』の『銭湯』?」
「だね、『スーパー銭湯』の元になったって言うのかな、そんな感じのお風呂で隣国の伝統文化みたいな感じのお風呂、かな」
説明してもらって何となく分かりました。
「コインランドリーとお風呂屋さん、
これで洗濯できるしお風呂にも入れるね」
お仲間ちゃんが言いました。
私も納得できそうになったけどひとつ悪い予感がします。確認した方がきっと良いです。
「コインランドリーで洗濯するんだよね?」
お仲間ちゃんに尋ねます。
「うん、そうだよ」
答えてくれます。
「お風呂屋さんでお風呂に入るんだよね?」
「うん、そうだよ」
また答えてくれました。
お仲間ちゃんの言葉を聞いて、悪い予感は的中でした。
「ってことは、コインランドリーで服脱いでお風呂屋さんに入るんだよね?」
「そうだけど……?」
お仲間ちゃんはまだ気づいてません。
だから続けます。
「コインランドリーで裸になるんだよね?」
「あ、そっか、
そうだね」
私が言いたいことが伝わりました。
「コインランドリーで裸になるってヘンタイさんだよ」
思ってることを言葉にします。
「でも……、
VRだから大丈夫だよ、きっと」
「……VRだから、
大丈夫って考えなきゃダメだよね……」
お仲間ちゃんを信じることにしました。
「それじゃ、まずコインランドリー」
そう言いながらお仲間ちゃんはコインランドリーに向かいます。私はお仲間ちゃんに続きます。
ふたりでコインランドリーに入ります。
中にはもちろんだけど誰もいません。
ひとつ安心できました。
「先にくつだよね」
お仲間ちゃんはくつを脱ぎます。
洗濯機のひとつを開けて中にくつを置きます。
不安になります。
「くつって洗濯機で大丈夫なの?」
尋ねて、
「VRだから大丈夫だよ、うん」
そう返ってきました。
やっぱり不安だけど、お仲間ちゃんを信じるのが良さそうです。
だから私もくつを脱いで洗濯機の中に置きました。
お仲間ちゃんは洗濯機を閉めて、インフォメーション端末で支払いをして、スイッチを押します。
洗濯機が動き始めて、中に入ってるのはくつだから、ガコンガコンと不安な音がします。
でも今はそんなことを気にしてる場合じゃありません。
動き出した洗濯機の隣の洗濯機をお仲間ちゃんが開けます。
お仲間ちゃんが私を見て、私がお仲間ちゃんを見て、何も言わずにお互いにうなずきました。
せーのっ!
言葉にはしなかったけどお仲間ちゃんと私、同じタイミングで服に手をかけました。
カーディガンを脱いで洗濯機に投げ込んで、ブラウスを脱いで洗濯機に投げ込みます。
できるだけ速く服を脱ぎます。
スカートを脱いで投げ込んで、くつしたを脱いで投げ込んで、最後に下着を脱いで投げ込みました。
これで全部です。
「お仲間ちゃん!
ダッシュ!」
お風呂屋さんに急ぎたいからお仲間ちゃんに言います。
でも、
「ちょっと待って!」
そう返ってきました。
お仲間ちゃんに目を向けます。
パーカーとアンダーシャツは脱ぎ終わってて、ジーンズを脱ごうとしてるんだけど……。
「ぬーげーなーいーっ!」
肌にぴったりはりついて脱げないみたいです。
「お仲間ちゃん! 急いで!
私もう裸だよ!?」
お仲間ちゃんを急かします。
「うん、もうちょっとだから」
言いながらジーンズに力を入れて、ジーンズが少しずつ動きます。
少しずつ動いて……、脱げました。
ジーンズを洗濯機に投げ入れて、くつしたを投げ入れて、最後に下着を投げ入れました。
お仲間ちゃんが洗濯機を閉めて、私がインフォメーション端末で支払いをして、スイッチを押します。
洗濯が始まりました。
洗濯機が動き始めたのを確認して、ふたりでコインランドリーから駆け出します。
すぐ隣にあるお風呂屋さんに全力で走ります。
お仲間ちゃんがお風呂屋さんに入って、私も入ります。
入ってすぐにのれんと引き戸がふたつならんでます。
ひとつには『女』とあって、もうひとつには『男』とあります。
お仲間ちゃんはもちろん躊躇わずに『女』に入って、私も続いて入ります。
中に入って引き戸を閉めて、ふう、大きく息をはきました。
もう大丈夫です。
でも、
「誰にも見られてないよね?」
やっぱり不安です。
「見られてないって信じたいね」
お仲間ちゃんの声には自分に言い聞かせてる感じもありました。
「それじゃお風呂だね」
広い脱衣場です。
奥に進もうとして、
「あ、待って」
お仲間ちゃんに止められました。
「お金、払わないとね」
引き戸の横、一段高いところにお仲間ちゃんが目をやります。
でも見てすぐに、
「あれ?」
何かが不思議なようです。
「どうしたの?」
尋ねます。
お仲間ちゃんは私を向いて、
「ここにお風呂屋さんの人がいて、その人にお金払うはずなんだけど……?」
不思議そうに言います。
「席、外してるのかな?」
思った通りに尋ねます。
「かもしれないね。
お金は……、後でいいか」
お仲間ちゃんはそう言いました。
改めて脱衣場を進みます。
私はお風呂屋さんのことはぜんぜん知らないから、お仲間ちゃんに従います。
「まずこれ」
お仲間ちゃんが指します。
脱衣場の壁にロッカー、だけど……、木のロッカーがあります。
お仲間ちゃんがそのひとつを開けます。
私もお仲間ちゃんと同じようにロッカーを開けます。
お仲間ちゃんがトートバッグとインフォメーション端末をロッカーに入れます。
私もリュックとインフォメーション端末を入れます。
お仲間ちゃんがロッカーを閉めて鍵をかけます。
私も鍵をかけます。
最後にお仲間ちゃんは鍵についてるゴムの輪っかに手首を通します。
お仲間ちゃんを見て、私も通しました。
「お風呂はこの奥ね」
「うん」
お仲間ちゃんについて脱衣場を歩きます。
すぐにガラスの引き戸があってこの向こうがたぶんお風呂です。
引き戸の横に棚があってタオルとバスタオルが積まれてます。
「あれ?」
積まれてるタオルを見てお仲間ちゃんがまた不思議そうな声を口にします。
?
「どうしたの?」
お仲間ちゃんの反応が気になります。
「お風呂屋さんってタオルは自分で持ってくるはずなんだけど……」
やっぱり不思議そうに言います。
「でもタオル持ってないから良いかもしれないね」
私が言って、
「その通りだね」
そう言ってからお仲間ちゃんはタオルに手を伸ばしました。その後に私もタオルを取ります。
お仲間ちゃんが引き戸を開けて中に入ります。
私も入って引き戸を閉めました。
……広いお風呂です。
スーパー銭湯よりは狭いですがそれでも十分に広いです。
「それじゃまずねばねばを洗おう」
お仲間ちゃんが言って、
「だね」
同意しました。
蛇口とシャワー、小さいいすと洗面器がならんでます。
そのひとつにお仲間ちゃんが腰を下ろします。
お仲間ちゃんの隣に私も座ります。
シャンプーとボディソープがあって、お仲間ちゃんはまた不思議そうに見てます。
「シャンプーとボディソープ?」
尋ねます。
「うん、せっけんとかも自前のはずだけど……、
良く分からないけどあってくれて良かった、かな」
「持ってないからありがたいね」
お仲間ちゃんに答えました。
さて、ねばねばを洗います。
まずは髪です。
シャワーのお湯を髪にかけます。
でもねばねばは簡単には流れてくれません。
シャンプーを手のひらに取って髪へ。
髪をわしゃわしゃします。
ぜんぜん泡立ちません。
それにねばねばはまだしっかりしてます。
シャワーで流してもう一度シャンプーです。さっきよりも多く取ります。
わしゃわしゃして少し泡立ちました。
またシャワーで流して、ねばねばはかなりすっきりしました。でもまだ残ってます。
シャンプーを手にひらにたっぷり取って髪に移します。
もう1回わしゃわしゃして今度はしっかり泡立ちました。
しっかりとわしゃわしゃしてシャワーで流します。
シャワーで流した後、ねばねばはきれいになくなってました。
次は顔です。もちろんねばねばしてます。
ボディソープをたっぷり手に取って顔に向けます。
両方の手でよーく擦ります。
シャワーで流して、ねばねばがなくなってすべすべに戻りました。
最後は体です。
理屈が分かったのでタオルをしっかり濡らしてたっぷりすぎるくらいのボディソープをタオルに取ります。
タオルを軽く揉んで泡が生まれます。
十分な泡になったタオルで体の上から下へ、しっかりと擦り始めます。
しっかり擦って、途中で泡がなくなったのでタオルにボディソープを追加して続きを擦りました。
シャワーのお湯で体を流して、しっかりと洗ったのでねばねばは全部なくなってすっきりしました。
体を洗い終わってタオルを洗いました。
隣に目をやるとお仲間ちゃんはもうすぐ体を洗い終えるところでした。
お仲間ちゃんは体中が泡だらけになって泡に包まれてます。
ボディソープを大量に使ったみたいです。
どれくらい使ったんだろ?
そんなことを考えてる私の視線に気づいてくれて、
「ちょっと待ってね」
言ってから足の先にタオルを向けました。
体が完全に泡に包まれて、シャワーで泡を流します。
泡が流れてお仲間ちゃんからもねばねばがなくなりました。
「これで良し」
そう言ってからお仲間ちゃんは泡でいっぱいになってるタオルを洗います。
タオルもすっきりしました。
「それじゃお風呂だね」
「うん」
お仲間ちゃんが立ち上がって、私も立ち上がります。
お風呂場のいちばん奥に向かいます。
いちばん奥に大きな湯船があります。
タオルはお湯に入れちゃダメだから湯船の縁に置きます。
足の片方をお湯に入れてお湯の熱を感じます。
もう片方も入って両方の足が入りました。
そのまま体をお湯に沈めます。
お湯はちょっと熱めです。
「あー、気持ち良いねー」
隣にいるお仲間ちゃんの声、本当に気持ち良さそうです。
お仲間ちゃんを見ると、湯船の縁にもたれて、両腕を縁に伸ばして、足もしっかり伸ばしてます。
なるほど、気持ち良い入り方です。
私もお仲間ちゃんと同じようにしました。お湯の中で体を伸ばします。
ぐーっと伸ばした体にお湯の熱がしみこんできます。
「うん、気持ち良い」
肌がじんわりとして、じんわりが体に広がります。
本当に気持ち良いって思って、そう思ったらひとつ気になることが出てきました。
「このアトラクションって当たりなのかな?」
思ったままを言葉にしました。
「このアトラクション? VRアトラクションがってこと?」
お仲間ちゃんから確認の質問が返ってきました。
「うん、
あのアニメのライブは最っ高に楽しかったけどVRじゃなくても良いし、落とし穴のねばねばもVRじゃなくても良いし、それにお風呂もVRじゃなくても……」
私の言葉をお仲間ちゃんは考えます。
少し考えてから、
「確かにそうだね。
でも……、まだ3つだからこの先に期待かな」
お仲間ちゃんはそう言葉にしました。
その言葉が私の心に引っかかります。
「まだ3つ?
もう3つ、じゃなくて?」
思った通りを声にしてお仲間ちゃんに投げます。
「うん、まだ3つ、だね。
せっかくのVRアトラクションだよ、徹底的に楽しまなきゃ」
お仲間ちゃんからの言葉、その通りです。
「そうだね、
だったら今は徹底的にお風呂を楽しむ、だね」
私が言って、
「うん、賛成」
お仲間ちゃんが言ってくれました。
「VRじゃないとダメなこと……」
私の中で話題が戻ってつぶやきました。
お仲間ちゃんがその言葉を拾ってくれて、
「日常じゃありえないこと、とか?」
声が返ってきました。
「だったら……、ありえないくらい楽しいか、ありえないくらい怖いか、
そんな感じかな?」
「良いね、次はそんなのが良い」
私が言って、お仲間ちゃんが答えてくれました。
少しの無言があって、
「そろそろ上がろっか?
温もりすぎてきたかな」
お仲間ちゃんが提案してくれました。
私も体が熱くなってます。
だから、
「私ものぼせそう」
そう答えました。
「それじゃ」
言ってお仲間ちゃんは立ち上がります。
「うん」
私も立ち上がります。
お湯から、湯船から出ます。
タオルをしっかり絞って水気が切れたタオルで体を荒く拭きます。
「これで良いね」
お仲間ちゃんが言って、ふたりで引き戸へ向かいます。
引き戸の前、お仲間ちゃんが引き戸を開けて脱衣場に出ます。
私はお仲間ちゃんに続いて脱衣場に出て、引き戸を閉めました。
脱衣場に出てすぐ、タオルが積まれてる棚の横に使ったタオルを入れるかごがあります。
お仲間ちゃんも私も持っていたタオルをかごに入れて、替わりに棚からバスタオルを取りました。
バスタオルを手にしてロッカーの前に立ちます。
体の水分をしっかりと拭き取ります。
「良いお風呂だったね」
体を拭きながらお仲間ちゃんが言います。
「お風呂屋さん、また来たいね」
お仲間ちゃんに返事をしながら体を拭きます。
拭き終わって手首の鍵を取ってロッカーを開けます。
ロッカーの中を見て、違和感があります。
……服がありません。
一瞬固まってから分かりました。
洗濯です。
「あれっ? 服は?」
お仲間ちゃんの声です。
「あ、そっか、
洗濯してるんだ」
状況を把握できたみたいです。
そんなお仲間ちゃんに言葉を向けます。
「コインランドリーに走るんだよね?」
「それしかないよね」
お仲間ちゃんが言って、
「「はぁ」」
ため息がきっかり重なりました。
タオルの棚に戻ってバスタオルを使ったタオルのかごに入れました。
ロッカーからリュックとインフォメーション端末を出して、インフォメーション端末をリュックに入れます。
リュックを持って、隣にはトートバッグを持ったお仲間ちゃんがいます。
お仲間ちゃんも私も裸なのが悲しいです。
でもそんなことは思ってられません。
お風呂屋さんの外への引き戸に向かいます。
引き戸の横のお仲間ちゃんが、お風呂屋さんの人がいるはず、と言ってたところにはやっぱり誰もいなくて、
「今度来たときに払おう」
お仲間ちゃんが言って、そう決まりました。
ふたりで引き戸の前に立ちます。
お互いの顔を見て、うん、とお互いにうなずきます。
私は引き戸に手をやります。
手に力を入れて、ガラッ、と引き戸を開けました。
お仲間ちゃんがお風呂屋さんから飛び出します。
私も引き戸を出て、引き戸を閉めて、お仲間ちゃんの後を走ります。
コインランドリーはお風呂屋さんのすぐ隣です。
でものんびり歩くなんてできません。
私の前、お仲間ちゃんがコインランドリーのドアを開けて中に走り込みます。
私もコインランドリーに飛び込んでドアを閉めます。
「学生ちゃん! おねがい!」
お仲間ちゃんが洗濯機を開けようとしながら言います。
「うん!」
言いたいことはもちろん分かります。
お仲間ちゃんが洗濯機を開けました。
私はすぐに洗濯機の前に立ちます。
洗濯機の中の服、ひとつずつ取り出してる余裕なんてありません。
洗濯機に腕を突っ込んで中の服をかき出します。
服をかき出して洗濯機の中を確認します。もう何も入ってません。
「これで全部!」
お仲間ちゃんに伝えます。
「OK!」
確認の声が返ってきました。
床に広がってる服に目を移します。
まずは下着です。
ざっと見てブラがありました。
取り上げて急げるだけ急いでブラを着けます。
また服に目をやってショーツを見つけました。
これも手に取って急げるだけ急いではきます。
下着を身に着けて少し安心できました。
ん? 下着で安心?
できません。
コインランドリーで下着姿、まだ十分にヘンタイさんです。
だから床の服に手を伸ばします。
ブラウス、取り上げて羽織ってボタンは後回しです。
スカート、手にしてはきます。
スカートが落ち着いてブラウスのボタンを留めました。
これで大丈夫です。だから残りは落ち着いて。
カーディガンを着ます。
くつした、足の裏をはらってはきました。
今度こそ大丈夫です。ほっとしました。
お仲間ちゃんを見るとくつしたをはいてるところでした。
くつしたで最後だから余裕があります。
くつしたをはいて、私の視線に気づいてくれました。
お仲間ちゃんも私を見ます。
「何とかなったね」
安心した声です。
「うん、何とかなった」
私も安心できたけど……。
今になって思いつきました。
思いついたことを言葉にします。
「今思ったんだけど……、
タオル、巻いてくれば良かったね」
お仲間ちゃんはほんの少しの後、
「あ……、だね。
次はそうしよう」
って言ってくれました。
でも、
「次はない方が良いかな」
思ったそのままを言葉にして、
「うん、ない方が良いね」
お仲間ちゃんが同意してくれました。
「後はくつだけど……、
大丈夫だよね?」
やっぱり不安です。
「大丈夫、だよ、うん」
言ってからお仲間ちゃんがくつを入れた洗濯機を開けます。
洗濯機からくつを取り出して……。
大丈夫でした。
くつをはいて、
「それじゃ行こっか」
リュックを背負いながら言います。
「よし、行こう」
お仲間ちゃんも言いました。
ふたりでコインランドリーから出ます。
外はやっぱりグレーの広い通路で何も変わってません。
後ろに光を感じました。
お仲間ちゃんと私、後ろを向きます。
コインランドリーとお風呂屋さんが光ってました。
光は少しずつ強くなって真っ白な光になりました。
真っ白になった光は今度は少しずつ小さくなります。
小さくなって小さな光の球になって消えました。
コインランドリーとお風呂屋さんが消えて、
「お風呂、入れたのは良かったね」
お仲間ちゃんが言って、
「うん、良かった」
私も言いました。
「それじゃ進もう」
「だね」
お仲間ちゃんの声に私が声を返します。
ふたりでグレーの通路を歩き始めました。
続
コインランドリー、『洗濯』には違いないものの大きな違いです。
髪も体もしっかり洗ってすっきりして、学生さんとお仲間さんの探検再開です。
またグレーの通路を歩き始めて向かう先には何があるのか。
次回は『幻想!テーマパーク! 第6幕』です。
では、今後ともご贔屓のほどよろしくお願い致します。