しのぶ視点
部活動ごとによる新入生歓迎タイム。それは春の風物詩であり、初々しい新入生とそれを活気よく迎える上級生の雰囲気は、まるで祭りのようだった。フェンシング部も例に漏れずこのイベントに参加し、活動内容のアピールをしていたのだが………
「全然来ないな………」
上手くいっていなかった。いつもだったらもっと人が来てるはずなのに、今年は全然。マズいな。もっと頑張って勧誘しないと‼︎今よりも元気よく、かつ明るく、新入生に得があるような事を言って………
「女子のみんな、サイコロステーキ部はどうだ〜⁉︎イケメンと遊べるぞ〜‼︎」
そう、あんな感じで………って‼︎
「ちょっとアンタ⁉︎何してんの⁉︎」
サイコロステーキが訳わかんないことしてんだけど⁉︎なんで⁉︎
「見てわかるだろ。部活の勧誘だよ。」
「嘘つけ‼︎何の部活よ⁉︎」
「サイコロステーキ部だ。」
「サイコロステーキ部⁉︎そんな部活なくない⁉︎」
「俺が作ったんだぜ‼︎」
「嘘でしょ⁉︎第一何する部活よ⁉︎」
「女子限定の部活で、学校一のイケメンである俺と遊ぶ。内容はパチンコでも競馬でもデートでもオッケー。」
「何一つよくない‼︎」
コイツ本当にバカなんじゃないの⁉︎そんなギャンブルがメインの部活なんて、認められる訳ないじゃん‼︎しかも認められたとて、コイツと遊びたい女なんていない‼︎
「ねえ、あそこ………」
「ヤバい人が勧誘してるっちゃ……」
「入らん方がよかとね………」
しかもコイツのせいで新入生がこの辺を避けてるし‼︎だから近くで勧誘してた私たちのところにも、全然人が来なかったんだ‼︎ふざけんなし‼︎
「ほら、アンタのせいで避けられてる‼︎」
「お前ら、遠慮しなくていいんだぜ‼︎」
「だって。アンタたち、コイツのことぶん殴っていいよ。」
「そういう意味じゃねえ‼︎」
「あれ、カップルっちゃ?」
「邪魔せん方がよかとね……」
「「違う‼︎///」」
しかも私にまでとばっちり‼︎本当最悪なんだけど‼︎ああ、もういいや‼︎さっさとコイツから逃げよう………
「サイコロステーキ先輩、入部届です………」
「カナヲ、ありがとな‼︎」
「嘘でしょ⁉︎」
そんな事を思っていると、カナヲがなんと入部届をサイコロステーキに出した。嘘でしょ⁉︎アンタ、コイツと遊びたかったの⁉︎炭治郎が好きじゃなかったの⁉︎いや、カナヲがいいならいいけど………。そんな事を思いながら、入部届を見ていると…………
氏名 胡蝶しのぶ
そこには私の名前が書いてあった。どうやらカナヲが出したのは、私の入部届だったらしい。
「何してんのよ⁉︎」
「しのぶ姉さんなら入ると思って………」
「入らないから、こんな宗教‼︎」
「宗教じゃねえ‼︎」
全く、いちいち揶揄うなっつーの‼︎
「カナヲ、間違ってるよ!」
「アオイ、間違ってないと思うけど……」
良かった、しっかり者のアオイが訂正してくれた。流石ね………
「出すなら婚姻届でしょ!」
「確かに………っ!」
「「違う‼︎///」」
流石じゃない‼︎なんでそうなるの⁉︎
「しのぶとサイコロステーキの実印、持ってきたわよ〜!」
「「カナエ先生(姉さん)‼︎」」
「「勝手に持ってくるな(こないで下さい)‼︎///」
この3人はどんだけ私とコイツをくっつけたいわけ⁉︎私はゴミ処理係じゃないっつーの‼︎
「しのぶの入部は認めてたまるか‼︎代わりにアオイとカナヲの名前を書いてやる‼︎もちろん顧問はカナエ先生で‼︎」
「「「お断りします。」」」
「なんでだぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
「当たり前でしょ‼︎」
ちなみにサイコロステーキ部は当然部活動として認められなかった。そりゃそうだ。こんな馬鹿げた部活、承認される訳ないからね。あと、フェンシング部の新入生は無事例年通りの人数になった。サイコロステーキから離れた途端、勧誘がうまくいったからだ。本当に、コイツは私の邪魔しかしないんだから。そう思った日だった。