-秋津洲国における魔種族、魔獣報告 六通目-
https://syosetu.org/novel/367528/7.html
-秋津洲国における魔種族、魔獣報告 十二通目-
https://syosetu.org/novel/367528/14.html
秋津洲国における魔種族、魔獣報告 -番外編その3-
https://syosetu.org/novel/367528/15.html
にて触れていた、秋津洲での最後の魔種族と人間族との武力衝突を記した番外編のその2です。
完全な蛇足だそうですw
神多神社にようやくついたと思えば境内はおろか境外まで神職の犬人族を中心にごった返していた。
もちろん犬人族だけじゃなく、数は少ないが同族や猪人族、狐人族、狸人族、大神族、鬼族もいる。
幸いなことに一目で武器とわかる物を持っている奴は一頭もいない。
まだ冷静なのか、誰も状況をつかめていないかのどちらかだな。
普段なら参拝客が沢山いるっていうのに、これじゃ参道の食い物屋に土産屋、神社そのものも商売あがったりだな。
後で店には詫びを入れねーとな。
『すまねぇ!通してくれぇ!すまねぇ!』声をかけながら掻き分けて進んでいくと、本殿の前にここ神多神社の宮司である鬼族が特大の床几に、まるで100年ぐらい前の人間族の武将みたいにでんと腕を組んで、しかめっ面で座っていた。
府内で鬼族が宮司を務めているのはここと佃田島の住良神社ぐらいだが、住良の宮司はいざという時の副格だから、今回は流石に来たくてもこれねえか。
『早かったな。籠りきりのお前のことだ、下手すれば明日だと思っていたぞ』
座ったまま宮司の奴がそう言ってきたので親切な長屋の奴が教えてくれたと答え、傍目にもこの様子にぶるっている人間族の権禰宜が俺のための床几を宮司の隣に置いてくれたので礼を言ってそれに座る。
『牙良の野郎が赤河麻野にやられたのはマジか?』
『間違いない。明け六つ頃にこの俺も牙良殿の死に際の導術を受けとって驚いて目を覚ました。赤河麻野にやられたと』
『導術で?牙良の屋敷からここまで導術が届いたのか?屋敷からここじゃ犬人の導術じゃ届かねえだろ?出先でやられたのか?』と尋ねれば、相変わらずのしかめっ面で
『いや屋敷だ。すぐに物見に行かせたから間違いない。あと大筒州にある赤河麻野の上屋敷に向けて犬人の首を晒しながら向かう一団も見た者もいる。首を落とされる前に命をすべて使って導術を使ったのだと思う』
『火事場の糞力か…。赤河麻野どもが!牙良の野郎をよくもやりやがったな…』
牙良の野郎とは長い付き合いだ。
あいつがやられたとなりゃ黙ってられねえ!
すぐに長屋に戻って、100年近く使っていないが手入れは怠っていない戦斧を取ってこようと床几から立つが、『待て。まだ都の帝や角田様からの御下知がない』と言われたので、角田の姫さんが怖いので床几に座りなおす。
牙良、すまね…姫さんマジ怖いからよ…わかってくれるよな…。
『都に導術は…出してねー訳ねーよな?』。
角田の姫さんが軍勢率いて東下りする様子を思い浮かべつつ、果たしてそれを止められるか?さすがに関係ない人間族の連中は巻き込めね。と考えつつ宮司に尋ねると、しかめっ面を更にしかめて『出したが…都に届いているかわからん』と。
死に際の明け六つ頃に導術飛ばして、今は昼九つ過ぎ。
刻限からいって早ければ都からの最初の返事を…受取を伝える導術が届いていないとおかしい。
流石にそれはおかしくないか?と感じていると『あまりにも大勢の者が一斉に導術で知らせようとしたせいで、中継ぎ役がうまく聞き取れず、あちこちで混乱しているようだ。内容も内容なので聞き返しも多く、かなり時間がかかっているようだ』とこちらの考えていることに対する答えを言ってくれた。
『俺たちは導術は使えねーが、使えたら使えたで大変なんだな…』と思ったことを口に出すと、『犬人族や狐人族の中には倒れた者もいるそうだ。正直、俺も最初はきつかった。沢山の者が一斉に導術を放つとこうなってしまうのは知らなかった』と、こいつにしては珍しく弱音を吐きやがる。
そんだけきつかったてことか…。
そう思っていると、門の方から『失礼する!失礼する!』という声が聞こえてきて、仲間たちを掻き分けてやってきたのは、なんと御老中様に幕府魔種族総取り纏めの寺社奉行様のお二方!!
この様子だと籠じゃなくて馬できたのか…
先触れはなしに名代でもなく、お二方が直々に馬で急ぎお越しとは、幕府も気を使ってんな…
徒歩で付いてきたんだろう御付きのお侍衆なんか息も絶え絶えじゃねか…
俺は周りの連中に、息も絶え絶えなお侍衆に水を持ってくるように頼んでいると、御老中様と寺社奉行様が躊躇いもせずに地べたに正座しやがった!!
そしてそのまま挨拶を始めようとしたので吃驚仰天!!
赤河麻野の野郎どもなら兎も角、牙良が仕えていたことになっている幕府のお偉いさんに恥かかすことはできねぇ!
俺は慌てて『おい!!誰でもいい!!畳もってこい!!幕閣の御方に恥かかすな!!』と怒鳴ると近くで見ていたうちの何人かがすっ飛んでいった。
畳が来るまで立って待ってくれとお願いするが、二人ともこのまま待つと言いやがる。
あんたらがやった訳じゃないのに気ぃ使いすぎだろう…
まぁ角田の姫さんが怖いからなんだろうがな…。
俺も同じ立場なら同じことするな、うん。
畳はすぐに運ばれてきたので改めて座りなおしてもらって挨拶から始まり、御老中が懐から書状を取り出し『府内魔種族次席様への、此度の一件に関する上様からの書状でございます』と言ってそれを宮司が受け取り…開きもせずに俺にそのまま渡しやがる。
俺が府内魔種族次席なんだよな…牙良が秋津洲魔種族次席の近衛少将様で犬人族族長で府内筆頭。府内三席が隣ででんと座っている宮司で四席が住良の宮司。
なんで長屋住まいの、嫁もいねーやもめの槌工族が府内次席なんだ?
間違ってねえか?
とはいえ金棒を手にした角田の姫さんの『お願い』なんか断れねーし、そもそも断った上で無事な奴がいたら姫さんの婿さん決定だ。
さて、んなことはどうでもいいから書状の中は…一言でいうと、家臣である赤河麻野家がしでかしたことに対する将軍様からの謝罪と詫びの羅列だな。
あとは…今回の一件はまた調べの最中で赤河麻野家から理解できない仇討ち届が出されているが断じて認めるつもりはない。幕府としては赤河麻野家が逃亡を試みない限り、赤河麻野家府内上下両屋敷と国元への蟄居閉門以外の処分はせず、処罰の可否と内容は朝廷に一任する。異議申し立てはしない。帝からの依頼があれば代理で幕府が処罰する。
まあ最初の書状としてはこんなもんだろうな。
内容も『牙良殿』ではなく『牙良様』と書いた上で、さっきの地べたでの躊躇しない正座に挨拶。
さらに御老中様と寺社奉行様がいらしたってことは、日頃の『町人』扱いではなく『朝廷の家来衆』に対するご対応って訳か…。
読み終わった書状を隣の宮司に渡す。
宮司が読んでいる間に、牙良の首の即時返還をお願いすると、すでに他の御老中と大名取締役の大目付様がそれを赤河麻野家にそれを命じるために直接向かっているとのこと。
幕閣様直々なんて気を使ってもらってありがてえ限りだ。
これで少しはこっちの面子が立つから、血気盛んな連中を抑えられる。
まぁそこまでするのは…角田の姫さんが怖いからなんだろうけどな…。
なにせ次の魔種族筆頭が内定していたからな牙良の奴・・・
姫さん辞められる!と大はしゃぎだったし。
それなのにその牙良をよりによって将軍様の家臣がやっちまったらもう・・・。
やられたのが俺なら、姫さんもそこまではぶち切れないだろうからね名代で済ませてたろうにな…。
『府内次席殿に異論なければこの三席も承知。牙良殿の御首級は必ずやお返しを』
書状を読み終えた宮司が重々しく言うが…御二人とも怒ってる鬼族の前なのに全然ビビってねーな。
流石は御老中様に寺社奉行様だ。
度胸が違う。
普通のお侍なら真っ青になってガクガクブルブルだ。
…まぁ角田の姫さんに比べれは俺たちなんか怖くねーか。
『首がないだとー!!!!』
某の隣で大目付が叫び声をあげている。
目の前の赤河麻野家の江戸家老は平伏したまま無言で震えている。
そして平伏したままの江戸家老の隣にいる当主の麻野内匠頭は平然としている。
『首がないとはどういうことだ?赤河麻野家の家紋をつけた火事場装束の一団が牙良様の御首を槍の穂先に晒していたのを見た者は大勢いる。そもそも先ほど届けられたアダウチトドケなるものにも牙良様を討ち取ったと記してあったではないか』
此度の所業と麻野内匠頭の様子から狂を発したかもしれぬと悟り、刺激せぬよう静かに尋ねる。
ただ某達の後ろに控えている供の者たちは、音と気配からいつでも刀を抜けるようにしているのを感じる。
しかし麻野内匠頭は平然と『あの犬っころの首は刀で打ちすえているうちに潰れてしまいました。もう首としてはございませぬ。もはや血肉と骨の塊でございます。いやーお恥ずかしながらこの手で首は落とせませんでしたが、犬っころの首を打ちすえるのは気分爽快でございました』とぬけぬけという。
『く、首を辱めたというのかーーー!!』大目付が立ち上がりながら叫び声をあげ、震えたままの江戸家老を無理やり立たせ『すぐに案内せい!!』と怒鳴りつけ、江戸家老を引っ立てて部屋から出ていく。
某は無言でいるが、内匠頭はずっと喋りつづけているが、もはや耳に入らぬ。
ただ牙良殿の…牙良様の首が無事であることだけを願っていると、呆然とした大目付が戻ってきて、某と目が合うと無言で、力なく首を振る。
目の前が朝同様に再び真っ暗になったように感じた。
ふらふらと立ち上がり『赤河麻野家府内上下屋敷並びに領国赤河城に沙汰があるまで蟄居閉門を申し付ける』とだけ、胆力を振り絞って申し付ける。
『蟄居閉門?なぜにでございますか?』
心底理解できぬというような声で内匠頭が訪ねてくるが、もはや答える胆力は某になし。
『黙って従えーーー!!』背中に届く大目付の怒号を背にどうするかを考える。
いや考えるまでもないか。
急ぎ神多神社に行き、魔種族府内次席殿と三席殿に詫びねば…
腹を切れば…楽になれるかのう…
『首がねぇだとー!!!!』
隣で床几に座っていた槌工族の府内次席殿が、床几から飛ぶように立ち上がり叫ぶ。
先ほどやってきた、赤河麻野家上屋敷からやってきたであろう御老中殿と大目付殿が何も言わずに恥も外聞もなく地べたの上で土下座し、『牙良近衛少将様が御首級は得られませんでしたぁぁぁぁーーー!!』と叫ぶように謝罪したからには当然の反応といえよう。
しかし二人はただ『申し訳なく!申し訳なく!!』を土下座したまま繰り返す。
周りの魔種族の仲間たちも殺気立っている。
とにかく府内次席殿を落ち着かせないとまずいと思う。
暴れだしたら止められん。
何せ府内次席殿はこの鬼族の俺より強い。
力だけは鬼族の俺が上だが、戦い方が大変うまい。
とても敵わん。
槌工族の皮をかぶった鬼族だと俺と四席はいつも思っている。
角田の姫御寮のことを心底怖がっているが、この府内次席殿とて豪の者。
更に質に悪いことに軍勢を率いても強い。
止めないとまずい。
『府内筆頭殿の御首級が返せぬではなく、得られなかった…とはどういうことだ?』
周りに冷静だということを見せるため、床几に座ったまま静かに尋ねると
府内次席殿に胸ぐらを掴んで無理やり体を持ち上げられている大目付殿が『牙良近衛少将様が御首級、麻野内匠頭が打ちすえて血肉の塊に!!もはや御首級にあらず!!申し訳なく!』と叫ぶ。
『それを早くいえぇぇぇ!』
府内次席殿が叫びながら大目付殿を掴んでいた手を放す。
そして『野郎共!赤河麻野家屋敷にうちい』とすさまじい怒声で言いかけたところで、それより大きな声で『御免!!』と御老中殿が声を上げ、流れるように脇差を抜き、躊躇いを全く感じさせぬ素早い動きで腹を召そうとしたが、府内次席殿が片手で腕を掴みとめた。
まったく動きが見えなかった。
『角田の姫さんから一人逃げようたって、そうは問屋が卸さねーぞ!!』
そう言いながら御老中より脇差を取り上げてお二人の共の者に渡し、『すまね。興奮しちまった。勝手働きすると角田の姫さんに責め立てられたうえで殺されちまう。討ち入りは無しだ。安心してくんない。皆の衆もすまんかった』と御老中殿と大目付殿に土下座して詫び、回りの魔種族達にも頭を下げる。
そして落ち着いた大目付殿より、赤河麻野家家中の者に牙良殿の御首級だった血肉を集めて桶に入れ、赤河麻野家御屋敷に残っている大目付殿の御家来に渡すよう申し付けていることと、それを御家来が牙良殿の屋敷に届ける手配になっていることを伝えられる。
とりあえず状況をまとめ、整理し、早く都に導術でつなぎをとらないと…。
『では爺の・・・近衛少将殿が屋敷より盗まれたものはビタ銭1枚、米一粒ないと申すか?』
直答を差し許した盗賊改めと町奉行書の同心2人が蛙が這いつくばるように平伏して『牙良様お屋敷で無傷の者達が申すには何も盗られておらぬとのことでございます!』と早口で言う。
御目見得格でもない単なる御家人が、城にあげられた上で余の前に連れ出され、直答させられているのではこうもなろうな・・・と蛙のような2人を眺めながらそう考える。
おそらく、城の誰かに状況を伝えるように下知され、城にやってくればあれよあれよという間にこうなれば致し方もないか。
これも余が直接現場を見た者から話を聞きたいと申したゆえのこと。
普段なら命じたところで誰も彼もが渋るところだが、今日に限っては話が違う。
その後も余を前に怯える同心2人から色々と話を聞き出すが、聞けば聞くほど赤河麻野への憎しみがますばかり。
もしビタ銭一枚、米一粒でも盗まれておれば、もし帝から処分を幕府に一任されるのならば『盗賊働き』ということで、赤河麻野家家中の者を尽く武士身分を剥奪の上で縁座連座で一族郎党1人残らず磔獄門の上で晒し首にするというのに・・・。
赤河麻野家の者に手癖が悪い者が1人もおらぬ上に、爺の家来共も誰も嘘をつかぬとは・・・。
その爺の家来で討たれた者は15名以上、怪我を負った者も20名以上とのこと。
幸いにして爺の養子である現当主は怪我を負っているが無事。
ただ『義祖父であり義父であり師である御方を守れなかったのは武士の恥』と言い、怪我を負っているというのに自ら蟄居しているとのこと。
さらに養子である当主の父であり、爺の弟子であり養子であったが是非願いで植杉家へ婿入りした植杉家当主からは何の音沙汰もなく、最初は『義父であり師が討たれたのに何もせぬとは不義理この上なし!武士の恥さらし!!』と怒っておったが、流石に全く音沙汰がないのは様子がおかしいと探らせてみれば、爺が闇討ちされたのを知るやいなや家来を引き連れて出陣しようとしたところ、植杉の重臣共に出陣を反対された上に押し込まれてしまい、なにもできずにいるとのこと。
それを知り、助け出すためにも植杉家当主の至急の登城を命じたが、使いの者が会った重臣共は御当主様急の病にて面会謝絶と言いおったとのこと。
余が何も知らぬと思っておるのか・・・舐められたものよ・・・。
流石に陪臣の処分は余が命じることは出来ぬとはいえ、何か手が打てぬか・・・
それにしても植杉の重臣共、角田の姉上が怖くないとみえる。
たかが女の鬼が一頭と思っているのだろうが、領地を尽く荒らした上に、米倉金蔵を全て打ち壊し、領民を皆1人残らず連れ去るようなこともためらいもなくしでかす御方じゃぞ角田の姉上は。
まあ拝領地の守りは領主の勤め。
そしてその領主を押し込めているからには責は押し込めた重臣にある。
このことも委細、角田の姉上にお知らせせねばなるまい。
そうそう先ほど赤河麻野家の本家にあたる亜芸麻野家当主がやってきて『此度の一件当家一切関係なし!庇い立て一切せず!』を連呼しておったな・・・。
まあ本家といっても、赤河麻野家は分家より縁が薄い別家。
亜芸麻野家も迷惑千万だろうな・・・。
奥の部屋からは討ち入りより戻ってきた者達がまだ祝宴をあげている。
殿も先ほど顔を出され、一緒になって大はしゃぎをしている。
どうして、どうして・・・あんな杜撰な討ち入りが成功してしまったんだ・・・
奥から聞こえる笑い声が耳にはいってしまいながら頭を抱える。
具足を身に纏い、城攻め道具のような梯子や大木槌、さらには弓鉄砲を持って、夜討ちで屋敷攻めをし、牙良様の首を取ってこいと狂を発せられたように命じる殿。
流石に日の高い内に仇討ちを・・・討ち入りをしようとすれば見つかり次第、ご公儀に止められるというのだけはご理解していたようで、夜討ちに固執されていた。
そして討ち入り自体は一切止めようとせぬ御重臣達。
ただ失敗するのを願うかの如く、具足を纏って仇討ちするのは武士道に反する、梯子や大木槌をもって屋敷に討ち入るのは武士道に反する、槍刀ではなく弓鉄砲を使って仇討ちするのは武士道に反すると殿にご注進し続けた結果、火事場装束で槍刀のみのたった47人で100名は家来がいるであろう牙良様の屋敷に討ち入ることになってしまった。
いや、失敗するのを願っているのだから、返り討ちにあうことを願っているのだから当然といえる。
しかも討ち入りに指名されたのは拙者とその息子を除けば、隠居間際の年寄りか、殿に同調している血気盛んな若者。
要は失っても惜しくない年寄りと厄介者だ。
いや、拙者とその息子もいなくなってくれれば丁度よいと思われていたのだろうな・・・。
拙者も御重臣達から内々に、失敗して適当なところで逃げ帰るようにと指示されていたので、暁七ツに討ち入りをする際、1人でも多くの牙良家ご家来衆が目を覚ますように陣太鼓まで叩いたというのになぜか、なぜか・・・成功してしまった。
牙良様が隠れていたおかげで中々見つからず、そろそろ植杉家の者達がやって来るであろうからと用意していた言い訳で引き上げの合図を・・・と考えていたところで牙良様をみつけてしまい討ってしまった。
さらに討った上に『首をさらしてやろう!』と言い出した愚か者のせいで、首を取った上に、穂先に晒して町を練り歩き、屋敷にようやく帰って来れたと思えば殿が刀で牙良様の首を打ち据えて辱める。
先ほどいらした御老中様と大目付様の様子からいって、もう赤河麻野家はお終いだ・・・。
殿は蟄居閉門程度で済んだのが幕閣の皆様と話がついている証拠だと申しているがそんなはずはない。
もし本当に話がついているのならば、幕閣のお二人があんな様子にはならない。
今からでも遅くないから出奔するか・・・?
まだ間に合うか?