ファム・ファタール   作:某某

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第1話の前書きで書いた通り、見切り発車のまま進んでいたので短編レベルで切り上げるつもりではあったのですが皆様のお陰で調子に乗り書き続けられています。なのでティアマトという大きすぎる戦力の扱いには多少困ってはいるのですが、ダイジェストのように簡潔に纏めて畳む事も別に悪くは無いかと思うので、それだけにならないようにさえ気をつければ良いのではないかと愚行しながら試行錯誤しております。

今回のチャレンジは戦闘描写です。まだまだ拙い実力ではありますが、書こうと思ってしまったのだから仕方ありませんね。原作から逸れて行く事になるこれからの道筋、全力で書かせていただきます。これからも楽しんでいただけると幸いです。

・追記 引き続きの日間1位、ありがとうございます。皆様のご愛顧と期待に怯えながら感謝しています。ティアマト人気、恐るべし。


未だ鞘から抜けず

藤丸立香は地面に身を投げ出していた。すると先程まで彼が立っていた数瞬前までの地面が爆ぜる。遅れて腹の底に響く衝撃をゴロゴロとそのまま転がりつつ距離をとること誤魔化しつつ必死に立ち上がり、下手人を睨みつけた。

 

「ほう、存外に戦慣れしているじゃないか。今ので脚を斬り飛ばすつもりだったが」

 

ソレは女のカタチをしていた。飾り羽の兜に毛皮の鎧、そして血のように紅い剣を携えたソレは藤丸立香の視線を受けてニヤリと笑い嘯く。

 

「さぁ早く新しいサーヴァントを呼ばないと死ぬぞ、カルデアのマスター?まぁ呼べればいいがなァ!」

 

慣れていたはずの命の危機であった。事こうなっては鬼札であるティアマトを切るしかないかと思案しつつ、どうしてこうなったのか藤丸立香は考えていた。

 

───────

 

アガルタへ降り立ってからアストルフォの勘に任せて人里を探していたカルデア一行は女海賊たちの水の都、イースへと辿り着いた。最初に辿り着く場がアマゾネス達の元で無いことに藤丸立香は嫌な予感がしていたが、様々なイレギュラーがある以上ある程度()()からのブレが生じることは仕方が無いと割り切り情報収集を行うことを決意する。

 

街を観察するとどうやら内情に関してはあまり()()と差異はないようで、男達が海賊の()()()となっていることにも変わりは無かった。

 

(……まぁ、今一番用事があるのは不夜城のアサシン……武則天だ。彼女が潜んでいるであろうこの街に最初に来れたのは幸運、か?)

 

(………………男の人たちは……潜伏という点だけでいうなら見捨てるべきだけれど。()()()()なら見捨てないはず)

 

酒場で行われる、男達を物のように扱い享楽に耽る海賊達の姿を見た藤丸立香は強く拳を握り締め介入を決めた。武則天の注目を引く為にはここで少し目立つのも悪くは無いはずと自らに言い訳しながら藤丸立香は自らのサーヴァントに命じる。

 

「二人とも……あの人達を助けたい。手伝ってくれますか」

 

2騎のサーヴァントは互いに顔を見合わせると笑って頷いた。何を今更といった具合である。

 

「あったりまえじゃんかマスター!マスターならそう言うって知ってたよ!」

 

「マスターも水臭い……今まで何回も助けてきたじゃないか。今の私はフランス王家の剣でもあるけれど君の剣でもある。さ、気兼ねなく命じるといい、マスター。必ず応えてみせよう」

 

「というか、マスターここで見捨てたらまーた泣いちゃうんじゃないの〜?ふふ、サーヴァントとしてはマスターを泣かせる訳にはいかないよね!」

 

その言葉に改めてサーヴァントへの感謝を感じつつ、藤丸立香はキッと前を睨み号令をかける。名前も知らない誰かの為に今まで歯を食いしばって歩んできたのだ、今ここでその誰かを見捨てる訳には行かなかった。

 

「ありがとう……アストルフォ、デオン。海賊たちを打ち倒し、彼らを助けて!」

 

「「了解!」」

 

号令と共にまずアストルフォが酒場へと突っ込んだ。ナイフを()へと投げようとしていた海賊を蹴り飛ばし、ギョッとした海賊たちはそこでようやく敵襲を察する。

 

「しんにゅ───」

 

「おっと、それ以上は困るね」

 

怒号を上げようとした海賊たちはしかし、途中でボンヤリと生気を抜かれた様にいつの間に酒場の中を舞う白百合の花びらを眺めていた。その中を遅れて入ってきたデオンはゆっくりと歩きつつ制圧していく。

 

「わぉ!便利だねデオンのそれ!」

 

同じように海賊を殴り倒しつつはしゃぐアストルフォに苦笑しつつデオンは周囲を見回した。倒れ伏す海賊達と怯える男達の姿が見えるが、どうやら残存は居ないようだ……と、安心した所で声が響く。

 

「む?随分と静かになったから宴に乗り遅れたかと思えば……まだまだ宴は続くようだな?はは、(オレ)の雇われた理由とやらかな、お前達は」

 

中性的な、潮風に枯れた声だった。たった今酒場に入ってきたようで、紅の髪を持つ勇ましく美しい女は中の様子を眺めると侵入者であるカルデア一行の姿を見て笑った。

 

『先輩、気をつけて下さい!サーヴァント反応です!!』

 

マシュの警告が響くも異様な威圧感に藤丸立香もアストルフォもデオンも動くことが叶わなかった。隙を見せれば確実に痛手を負うと本能が理解する悍ましい気配が女の腰の剣から漏れ出ているのだった。

 

「さて、お宝以外は別に要らないんでね。2人でデートとしゃれこもうじゃないか、カルデアのマスター?」

 

その言葉に警戒を強めた次の瞬間の事だった。目前の景色が突然巨大な石造りの部屋へと変わり、そ雑とはいえ活気に満ちた酒場とは全く別物の迷宮のような場所へと変貌したのである。藤丸立香はそれに心当たりがあった。

 

「固有結界か……!」

 

「ご明察。詳しく説明する気は無いけどさァ!」

 

そうしていつの間にか剣を構えた女が無造作に剣を振り、冒頭へと繋がるのだった。

 

───────

 

(これは、まずい)

 

辛うじて()のお陰かなんとか見て避けることが出来ているが、明らかにこのサーヴァントは藤丸立香をいたぶっていた。その驕りこそが藤丸立香を生かしている以上、付け入る隙はそこにあるのだが……問題は、とうとう現れてしまったイレギュラーである、ということであった。

 

そう、藤丸立香には()()()()()()()()()()()()()()。ましてや、あそこで現れるような相手は居なかったはずであった。何が原因かは分からないが、やはり少しずつ()()とのズレは起きているのだと実感し、舌打ちする。

 

その場から動かず斬撃を飛ばし、楽しそうに笑う女を睨みつけつつ必死に駆ける藤丸立香。どんな固有結界かは知らないが、閉じ込められた時点でデオンやアストルフォと分断されたのは余りにも悪い状況だった。最悪この場でもティアマトは呼べる確信があったが、同時にそれをした時点でシェヘラザードが雲隠れするであろうことは想像にかたくない。

 

「さて、どうしたものかな……っ!」

 

「何を考えているのか知らないが、冷静だな。諦めている訳でも無い……切り札でもあるんだろう?早く見せろよカルデアのマスター。でないと死ぬぞ〜?それは悲しいなァ、なんてったって(オレ)好みの可愛らしい()だ……そそるね」

 

「それはどうも……っ!誰か知らない人は願い下げだけれどね……っ!」

 

会話を続けつつ、何か糸口がないか探すも変装が見破られている事に冷や汗をかく。ここでこのサーヴァントを逃がせば自らの情報が出回ってしまうということであった。どんどん悪化する状況に眉間のシワがよる。カルデアからの通信も届いていない事に再び舌打ちしてしまいそうになった。

 

「おっと、そいつは失礼?だが(オレ)の名前は易々と教える訳にはいかないなァ。サーヴァントの真名はそう安くない……そうだろう?何、お前が(オレ)()()()になるなら教えてやってもいい。どうだ?」

 

「残念だけど、アンタの戦利品になるには俺の身体は高すぎてね……!」

 

「ハッ!いいね、気位の高い男はより好みだ……泣かせがいがある!」

 

虚勢を張るも現実は厳しく、サーヴァントの腕がブレる度に紅く光る斬撃が藤丸立香を襲う。必死に避けるがサーヴァントの攻撃はそう何度も避けられるものでは無く、足元、脇腹、頬、腕と斬撃がかすめてどんどん傷だらけになり出血が酷くなっていった。しかし今の藤丸立香の肉体はその程度で動きがにぶることは無い。

 

「んん?ごく普通の人間だと聞いていたが……随分とタフだ。その目、何処ぞの神由来かい」

 

「ガンド!!!」

 

「おっと。懐かしいものを飛ばすじゃないか。フィンの一撃と言っていい密度だ。かなりの魔力量……ふふ、久方ぶりのアタリのお宝かね」

 

手を止めたサーヴァントを見て即座に礼装の補助を起動しガンドを放つ藤丸立香。しかしそれは紅い魔剣に無造作に斬り払われ、軌道をそらされた。

 

起動した礼装から使い終わったアンプルが排煙と共に排莢されるのを確認しつつ、再び思考する。()()のような固有結界を持ち、ガンドを懐かしいと言い、魔剣の類を持つ英霊。ガンドの事を話す口ぶりから恐らくは北欧ゆかりの存在だろうと当たりをつけるも突破口は未だ見つからないままだった。そんな英霊がなぜこのアガルタの海賊の街にいるのかも分からない。

 

(ティアマトの心臓のおかげでアンプルの負荷はだいぶ軽くなった、まだまだガンドは撃てる……けれど、それはアイツが遊んでる限りだ。サーヴァントに本気を出されたら簡単に死ぬ……!ゲーティアの時のような掟破りはもう使えない………仕方無い、か)

 

このまま潜伏するのは無理だと悟った藤丸立香はティアマトを召喚する事を決める。全てが上手くいくとは思ってはいなかったが、こんな最初からイレギュラーが発生するとは思っていなかったと苦々しく藤丸立香は令呪を高く掲げ叫んだ。

 

「お願い、ティアマト……!令呪を以て命ずる、()()()()せよ!!!」

 

怪訝に藤丸立香を見やるサーヴァントは次の瞬間、()()()()()()()()()()

 

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