ゼルダ「リンク……リンク……その挙動は何なのですかリンク」 作:お前の母ちゃん終焉の者~!
あとティアキン編ではありません(保険)
それと、あんまり面白くない可能性があります(保険)
展開とかが凄まじく雑であるという自覚があります(保険)
書いといてアレですが前編で終わった方が良かった気がしてます(保険)
始めに、火種の弾ける音。次いで、夜が明けていた事に気が付いた。
赤く揺らめく焚火。昼前に用意した筈のリンゴは、既に炭になっている。
未だ勢いを衰えさせない炎に、彼は百年前の…………王国の最期を回想した。
厄災が最初に奪い去ったのは、国家の最終決定を下すハイラル城の本丸だった。
王国を象徴する剣であった彼らが、精強な騎士達が、為す術もなく死んでいった。
────そこに例外は無く。王たる彼もまた、何一つ為せぬままに死んだ。
次に目を覚ました王の前に広がった景色は、火の海に沈んだ千年王国だった。
あぁ、今でも覚えている。混乱、悲嘆、憤怒。不条理に呑まれ死んでいく無辜の民。
逃げ惑う事さえ許されないそれは蹂躙で。既に死した王は、どこまでも無力だった。
繰り返した自問自答と、魂を灼いた後悔の念。己が失態の結末を、見せつけられた。
終わりに傾いた世界。されど、ほんの僅かな希望だけが、残されている。
希望の名を、リンク。退魔の剣に選ばれた少年であり、王の娘、ゼルダの騎士。
百年前のあの日、騎士は命運尽きるその瞬間までゼルダを守り、そして殉じた。
人道に照らすのならば、もう充分だと、安らかに眠らせてやるべきなのだろう。
されど。騎士から死後の安息を取り上げたとしても、彼らは縋るより他になかった。
きっと、あの洞窟から現れる少年は、王の知る者から変質してしまうのだろう。
────それを強いた。ならば、王として、最後の責を果たさなくてはいけない。
その日が来るまで。さしあたって、また新しく焼きリンゴでも作るとしようか、と。
赤い果実を火に近づけた折。不意に、城からの力が僅かに強まったのを感じた。
恐らくはゼルダが彼を導き始めたのだろう。今日が"その日"だったらしい。
直に洞窟から彼が現れる筈だ、と王はアタリを付け、視線を崖上へ向ける。
…………が、しかし。少年が現れる気配が一向に無い。
困惑しながら意識を霧散させ、彼の位置を探ってみれば、既に祠が起動している。
内部にいるのは間違いなくリンクなのだろう…………だが、様子がおかしい。
洞窟から現れなかった事もそうならば、そもそも塔が起動していない事もそう。
現状は既に想定を超えている。王は異常事態を悟り、リンクへと接触を図る事にした。
「ふぉ~っふぉふぉ~い!」
タイミングを合わせ、祠から出て来た彼の前に姿を現す。
百年振りに目にした彼の姿は、かつてのソレと寸分違わないモノだった。
金髪碧眼。少年とも、或いは少女とも見違えるような、中性的な美しい顔立ち。
そして、華奢さとは無縁の、闘争の痕に満ちた肉体。鍛錬の証だった手指。
………………だからこそ。違いがあるとするのならば、身体ではなく精神なのだろう。
「おじいさんだれ? その滑空するやつちょうだい」
「待て待て、二つの事を一度に言うでないわ、最近の若者め。
そも、儂の様な変わり者のじじいよりも、お主の事のほうが重要じゃろう」
────表情が違う。語彙が違う。重心の位置さえ違う。
百年に及ぶの深い眠りは、彼から記憶という記憶を奪い去ったのだろう。
………………最早ここに、ゼルダの騎士であった彼は居なかった。
酷い話だ。こんな物は人格の変質どころの騒ぎではない、
同情するべきではない。当然だ、憐憫の情などを抱ける立場に、王は無い。
故に、努めて何でもない様に言葉を酌み交わす。ただの、奇妙な老人として。
「してお主、一体どうやってこの祠の中に入ったんじゃ?
儂は一度として、祠の扉が開くところなど見た事が無いぞ」
「…………わからない。いいから、さっきの滑空するやつほしい」
「わ、わからないってお主のぉ…………因みにじゃが、これはパラセールと言う」
「わかった、パラセール。パラセールちょうだい、はやく」
「ええい、待たんか! 人の話を聞けい!」
王の問いに対する、要領を得ない返答。
記憶を亡くした事を自覚し、混乱している、といった風情でもない。
蒼碧の瞳が、ただ、少年の意思に揺れている。浮かぶ感情は不安、などではなく。
ともすれば──────これは。
「お主、先程から何を焦っておるのじゃ、行きたい場所でもあるのかの?」
「ある。──────あそこに、行きたい」
指を差した先。彼の目を見て、王は何かがストンと胸に落ちる音を聞いた。
この少年の魂から零れ落ちたもの、それでも抱き続けた
父の抱いた感慨は様々。手放しの賞賛とは、とても言ってやれないモノだったが。
けれど同時に、ある一つの確信を得た。…………あぁ、度し難い話だが、確かに。
──────この少年は、どんな手段を以ってしてでもハイラルを救うだろう。
「パラセールがあれば、あそこにいける」
「………………あぁ、そうじゃろうな。よろしい、では条件を付けよう」
課したお題目は、克服の証をあと三つ手に入れろ、というモノだった。
彼は話を聞いてその場を去った。その後の異常極まる行動も、そう驚くものではない。
世界の歪みを利用したか、或いは、意図的に世界の理を無視したか。
理屈は分からないが、理由なら既に理解した。ならば、それだけで十分だろう。
大した試練を与えたでもない。あの少年は、半日もせず時の神殿へやってくるはずだ。
…………そして、その予想は外れる事無く。昼過ぎに克服の証を集めきり。
夕暮れが訪れるよりも早く、儂の指し示した時の神殿跡へと彼は辿り着いた。
「ふぉっふぉっふぉっ。流石流石…………では、儂の本当の姿を見せるかのう。
──────我が名はローム・ボスフォレームス・ハイラル。かつての王国、その最後の王だ」
仮初の肉体を棄て、霊体へと姿を変える。死したあの日のままの姿。
リンクの目に驚愕の色は無い、微塵の興味も無いと、意志の強い瞳が告げている。
若しくは、初めから知っていたか。…………いや、どちらでも構わないだろう。
ただ成すべきを成すのみ。民を絶望へ導いた、暗愚としての責任を果たさなくてはならない。
例えそれが、年端も行かない少年に、世界の命運を握らせる行為であったとしても。
「今こそ話そう…………百年前に何があったのかを」
兼ねてより、ハイラルの大地は厄災によって脅かされてきたこと。
百年前、我々はその事態に直面し、対策を練り、そして敗北したこと。
我が娘ゼルダが不完全ながらも封印を成し、百年もの時間を稼いだこと。
しかし、その力も弱まり、彼女から託された最後の希望であるリンクが目覚めたこと。
明かした真実。それら全てを告げても、彼はほとんど反応らしい反応を見せなかった。
その手の機能さえ忘れてしまったのか…………いや、これは単に必死なだけだろう。
そして、無駄だと知っていながら、王はカカリコ村の事を告げる事にした。
双子山の先に待つシーカー族の集落。ハイラル王国元執政補佐官、インパが治める村。
きっと彼はカカリコ村に立ち寄る事をしないだろうが、知っておくべき事だろう、と。
「…………さぁ、約束のパラセールを受け取るがよい」
感慨も無く、彼はあれ程欲していたパラセールをポーチへ仕舞い込んだ。
何故この少年が、今更滑空装置などを欲しがっていたのかは分からない。
なにしろ彼は滑空以上に便利な飛行手段を持ち、落下の衝撃も揉み消せるのだから。
けれど、分からないままでいい。
「リンクよ、国を護れなかった儂に言えた義理ではないが…………どうか。
どうか────ガノンを倒し、民を、娘を、救ってやってほしい」
「──────わかった」
言って、異常な挙動で彼は始まりの台地を後にした。思い出すのは、あの瞳だけ。
一意専心。一切の障壁を打ち破る空虚の瞳。きっと、他のどんな人間にも出来ないモノ。
…………あの目は、衝動や、執着などと生易しい感情によるモノではない。
欠落したが故に形成されたモノ。────彼の中に、最後まで残ったもの、それは…………
◇◇◇
厄災ガノンは、太古の昔よりこの世界を滅ぼさんとしてきた存在だ。
ハイラル王城の地下深くより出でて、遍く破滅を導いて来た意思なき災禍。
数万年の昔に封印された魔王、ガノンドロフから零れ落ちた、純然たる瘴気と怨念。
世界を幾度と滅ぼして余りある暴の化身。…………それが、一体なぜ。
──────眼前を焼く爆風。矮小な人の身によって、滅されようとしている。
数時間前、ガノンが巣くう王城内部に、探知できないナニカが表れた。
百年もの間瘴気に侵されたそこは、半ばガノンの体内であると言える。
それ故に、外部へ送られる光情報はともかく、普段は不定形を維持している。
即ち、ここは外界より隔絶された異界であり。全ての事が厄災の思うがままとなる。
…………そんな場所に侵入されて尚、発見までに時間が掛かった理由は二つ。
ひとつは、単純に異常な速度に対応しきれなかったから。
どのような手段を用いたのか、あの生き物の飛行速度は異常の一言に尽きた。
過去、現在、未来。如何な時間軸であろうと、生命には辿り着けない速度。
だからこそ。ガノンは認識に時間が掛かり、発見した際には混乱もした。
────そしてもう一つは、侵入者が余りにも貧弱だった故。
脆弱な装備、虚弱な肉体、暗弱な頭蓋。取るに足らない矮小な命。
王城に巣くったどの魔物よりも弱い存在、手に掛けるまでもなく死ぬ弱者。
物理的な建造物の再構築が遅くなり、多少なり深い所まで侵入されたが、むしろ好都合。
補給も無く、脱出も不可能。ともすれば、何をする必要も無いと、考えていた。
だが、どういう訳か。勝てる筈の無い相手を殺し続け、本丸へと辿り着いた。
そしてまた
…………或いはそれだけならば、"奇跡"で片付けられる範疇の出来事だろう。
しかし。最早そこで、奇跡すらも品切れだ。カースガノンにまで敵う道理はない。
ガノンが一際大きく力を分け与えた存在。万に一つの勝算も無い、のに。
────初めに、不明な手段で"風"が殺された。続き、"水" "炎" "雷"も殺された。
異常だった。倒された結果が、ではない。巫山戯ていたのは、その過程だ。
全ての動作を見切り、攻撃の出を潰す事で、何もさせることなく、無傷で圧倒した。
得体のしれない脅威。結果として、厄災ガノンは不完全な復活を余儀なくされた。
そして、今。自分は矮小なナニカに殺されようとしている。
異常極まる事態。知性を持たないガノンの意思が軋みを上げる。
自身の攻撃は一度と当たらず、敵の攻撃は的確に急所を射抜き続ける、などと。
ただ一度、たった一度刃が掠る程度で死ぬ程度の相手の筈なのに。
苦肉の策として弄した守りの形態さえ見切られ、利用し尽くされてしまう始末。
力場を発生させる瞬間、ほんの僅かな揺らぎが生まれる。
その瞬間に衝撃を加えられれば、一挙に維持能力が瓦解し、熱量が暴走する。
即ち、無防備な状態を晒してしまう事になり、一層の苦境に立たされる。
…………いや、重要なのはそこではない。それ自体は大した問題ではないのだ。
生き物としての体を保つ以上、盤石は存在せず、どこかに綻びが生まれる。
この失態は、飽くまでもそこを突かれたというだけの事。
──────だから、問題なのは。それが、繰り返され続けている事だ。
何度も、何度も、何度も。隙ですらない隙を突き続ける、など。
狂気の沙汰に違いない。そんなモノは、独立した生命には許されない所業だ。
己と他者を合致させ、己を通じて他者以上に他者を知り。
寸分の狂いなく脆弱な点を破壊せしめる、など、自我を持つ存在には不可能。
どうあっても有り得ない。積み重ねた自分自身が、他者による浸食を拒むのだ。
こんなモノは、全ての記憶を失ったとしても
「──────」
まして、この生き物はソレにたった一度仕損じるだけで絶命に至るのだ。
間合いは既に互いの攻撃が届く距離。僅かでも時間があれば、ガノンの勝利に終わる。
…………そして。ふと、厄災ガノンは目の前の存在の顔を、初めて見た。
異形と化したガノンへ向けられる目、眼、瞳。映る感情に、恐怖は無かった。
異常だ、僅かな気の迷いで絶命する状況で、微塵の恐怖も抱いていないなど。
それは勇気ではない。狂気という言葉すらも生温い、けれど何より強いモノ。
──────あぁ、巫山戯ている。
恐らくは、数万年の中で初めて芽生えた感情。
憤りにも似た意思が厄災を満たすのと同時、その体は四散した。
◇◇◇
眼前に現れた巨大な魔獣の威容に圧倒され、彼女の声で目が覚めた。
紅い空の下、ハイラル平原を馬で駆る。短かった旅が終わりを告げようとしていた。
目が覚めて。始めに、少年は自身が"点"である事を知った。
この無機質な空間がどこで、自分が誰で、どうしてそんな場所にいるのか。
記憶が無く、過去が無い。現在すら定かでないのだから、未来だって分からない。
紙の上に、何の脈絡もなく書かれた"点"。先はなく、故に動くことが出来ない。
その場で蹲りたくなる衝動は、けれど、あの声によって消え去った。
………………そうだ。思い返せば、あの時。
"──────目を覚まして…………目を覚まして、リンク"
あの声を聴いた時、自分自身が何をするべきなのかを、理解したのだ。
そして幸運/不運にも、その為に必要な方法は不明な
頭蓋の中に響いた、無機質で、抑揚のない、彼女のソレとは違う不気味な
…………或いは、悪を成す可能性などいくらでもあっただろう。
そうでなくとも、幻聴を疑う程に狂気を孕んだ言葉だった。
シーカーストーンの望遠鏡機能で壁を抜け、壺やリモコンバクダンで空を飛び。
自我を失いかけるような極限状態で世界を滅ぼした厄災を倒せ、などと。
聞く価値の無い与太話、けれど。彼の本能が、張り裂けんばかりに叫んでいた。
…………己の手で目的を達したいのなら、この
──────眼前に展開された三つの聖紋を打ち抜く。
頭の中で次の展開位置がはじき出され、それに沿って移動を開始する。
本当なら、自分は今、こんな場所に立っているべきでは無いのだろう。
行くべき場所なら、いくらでもあった。ハイラル王の語ったカカリコ村も一つ。
………………或いは。この胸を締め付けた四つの事柄についてもそうだ。
────遠く見える活火山を視るたび、隣が何処か寂しくなった。
────雷鳴の音が響くたびに、不明瞭な後悔が全身を満たして。
────雨の匂いが近づくたびに、痛まない筈の傷が熱くなって。
────空を浮かぶ機物を見るたびに、無性に悔しさが込み上げる。
行くべきなのだろう、この思いの残滓の正体を知る為に。
力をつけ、万全な状態を作り上げてから、厄災に挑むべきだったのだろう。
矛盾に違いない。理性で否定した事を、世界を歪めてまで達成しようとするなど。
…………けれど、現実として。狂気に等しい旅路を辿り、彼はここに立っている。
それは、リンクという少年が残した唯一の未練。
記憶という連続性が絶たれた時点で、彼らの同一性は事実上失われている。
謂わば魂の欠落。百年の眠りが彼から奪い去ったのは、即ちそういうモノだった。
だが、それでも。人生の全てが漂白される中でも尚、残った
────展開された聖紋の全てを射抜いた。最早
弱り切った厄災は、自身を覆う怨念の維持すらままならず、己が核を露呈した。
アレを射抜きさえすれば、きっと世界は救われるのだろう。が、興味は無い。
弦を引く指に震えはなく。何の感慨もないままに、彼は。
──────淀みなく。一瞬の内に、光の矢は、厄災を貫いた。
………すべてが終わり、残った人影は二人分だけ。
危機の消えた世界。紅い空は消え、淡い朝焼けだけが、ハイラル平原を包んでいる。
風は止んでいた。息をするのも戸惑うような静寂、虫の鈴音すら届かない場所。
────目の前には、長い髪の少女が居た。朝露に濡れた金糸の髪が揺れている。
世界は彼女の為だけにあるような様相で、泥のついた服でさえ清廉だった。
鈴のような声がする。聞き慣れた、綺麗な声。
「私は…………ずっと見守ってきました。貴方の運命も苦難も、戦いも」
知らない。自分は貴女の事を何も知らない。貴女の人柄も、好きな物も。
どうして自分に後を託したのかも、その後の百年で何を思ったのかも知らない。
けれど、それでも。胸を焦がした衝動だけが、真実を告げていた。
あんな
「ありがとう、リンク。ハイラルの勇者──────私を、覚えていますか?」
しらない、けれど──────あぁ。こうして、もう一度。貴女の傍に、居たかった。
Any%RTAリンク君の心情ってこんな感じかなぁ、というn番煎じの一発ネタ。