セイア「殴り合いだ。歯を食いしばりたまえ、ミカ」 作:Rayu278
あれから、数か月が経った。
怪我の大部分は痕も残らず、ほとんど日常生活に支障のない程度に完治した。
賑やかな窓の外。見慣れた制服と、そのほか多数の見知らぬ人影でごった返すトリニティ・スクエアを見下ろす。
何やらシスターフッドと救護騎士団が揉めていた、という様な話を小耳に挟んだが、
────トリニティの
「────?」
ふと、ベッドの上でスマホが震え、少し遅れて通知音が響く。
モモトーク。メッセージの差出人は、ミカ。
『セイアちゃん、今日、体調どう?』
…そんなに少ないことは無いだろう、と思っていたが…。なるほど、広さと作品数に、人口密度が全く釣り合わない。というかぱっと見、本当に誰もいない。
入り口を入って、右手に見える廊下の、突き当たりの部屋。中央に四角い椅子の置かれた部屋までを見通して、ようやく人影が二つ。
二人で顔を見合わせてから、歩を進めてゆく。
「────あははっ!なに、このロールケーキの絵!」
「如何にも、ナギサらしいね」
「────!?」
分かりやすく、反射的に翼をはためかせて驚き、ばっと振り返るナギサ。
「やっほ~ナギちゃん!セイアちゃんも連れて来ちゃった☆」
「ああ、ここは落ち着くね。ナギサにとっては、不本意だろうが……」
外は人だらけ。視察に出たあの日と同程度に体調が良いと言っても、祭りの空気には流石に胃もたれしかねない。
「ミカさん、セイアさん……」
“元気そうだね、二人とも”
そこで、ナギサの隣にいた先生が口を開く。視界の端で、ミカの身体が文字通り弾んだ。ぴょん、という、擬音が聞こえそうな感じに。
「せ、先生?」
「やあ、先生。謝肉祭を見にくるとは聞いていたが、まさかここで会うとは」
「え、そうなの…?私、聞いてないけど!?」
…おや。てっきり、本人から聞いている物かと。
「お二人とも、わざわざ来てくださったのですね」
「ああ、ミカが提案してくれたんだ。どうせつまらなくて人がいないだろうから行ってあげよう、と言われてね」
「そ、そこまで言ってないよ!?」
「なるほど…ミカさんはそう思っていたのですね?」
…あぁ。
三人の。ミカとナギサ、先生の会話を聞きながら、感慨に浸る。
いつも通り。いつも通りだ。
掴んだ、日常。何の変哲も無く、他愛ない言葉を交わす、友人としての私達。
「────先生に作品の説明をしている途中だったのですが、よろしければ一緒にどうでしょう?」
少しの沈黙を挟んで、ミカがこちらに眩しい笑顔を見せながら。
「うんっ!ナギちゃんの説明、楽しみだね☆」
何の変哲も無く、代わり映えも無く。退屈で、平坦で、平穏で。
何の心配もいらず、無邪気に、友人との時間を楽しめる。
だからこそ、そんな一日一日が、愛おしい。
「────今日は、特別な日になりそうだ」