前世の幼馴染があべこべ世界で幼女として存在してる 作:宇佐見あまの
翌日、ヴィーシャが提案してきたのはレガドニアでの呑み旅行だった。
「帝国にいる時からエイルさんのお祖母様のご活躍を聞いておりまして! ぜひお会いしたいと!」
ヴィーシャが興奮気味にグイグイと勢いよく伝えてくる。
僕の祖母にあたる人物はレガドニアで1番古く伝統のある酒造家である。
父がたまに手伝いに行っているが、今はいとこが経営している。
資金繰りでお世話になったところでもある。
ここ最近は忙しくて会えていなかったが、これを機に感謝を伝えようと思った。
「じゃあさっそく行こうか」
「はい!」
「いってらっしゃい!」「気をつけて行くんだぞ」
ターニャとメアリーに玄関から見送られる。
今回は距離のそう遠くないのだが、ヴィーシャが運転したい! と伝えてきたので、ヴィーシャが運転する車に乗って北へと向かう。
「ターニャさんは乗せたことがあるんですが、他の方はないのでドキドキします」
「安全運転でいけば大丈夫だからね」
緊張した面持ちのヴィーシャを和ませるように、時々会話を挟みながら、僕も車道をよく観察し危なさそうなところがあったらさりげなく伝えていた。
しばらく走行していると、山の麓に一際大きい建物が見えてきた。
店の近くの通りにあるのぼりには僕が考えたゆるキャラ『ぶどうエールくん』が描かれたのぼりが大量に立っていた。
【あのエイルが育った町!】【ようこそエイル町へ!】
「いや、なんかおかしくない?」
町の名前も古くから続く伝統的な名前だから、変わるわけないだろ!
と思ってたが、観光客の多さ、賑わいを見るにとんでもないことが起こっている予感がした。
「エイルさんが愛されてるのが分かりますね〜」
「そうだとしてもおかしくない!?」
ほのぼのとヴィーシャが言うが、これそんなレベル越してると思うんだけど!?
ヴィーシャが綺麗に駐車場に車を停め、二人で手を繋ぎ店の中へと入る。
店内は観光客で賑わってはいたが、店がデカいのでそこまでぎゅうぎゅう詰めではなく余裕があった。
ふんわりと香るブドウとアルコールの香りが心を躍らせる。
ヴィーシャも種類が沢山あり、綺麗に陳列されてるワインを見て子供のように目を輝かせて僕を引っ張ってワインを吟味し始めた。
「ふむふむ、ちょい飲みワインから2Lワインまで……いっぱいありますね!」
「値段もお手頃だから手を出しやすいね。
気になるのはある?」
「はい! このエールワインが気になります!
パッケージにエイルさんの顔写真が付いてるのでやはり妻としては買わなくてはいけないなと!」
「ん? 顔写真?」
エールワインと言われた商品名のワインを手に取り、ラベルを見るとそこには『僕が応援してます!』と書かれた幼少期の僕の写真がプリントされていた。
なんでこうなってるんだ????
「そういえば資金繰りの時に……」
「どうかしたんですか?」
ヴィーシャはカゴの中に大量のワインを詰め込みながら、思考する僕の顔を覗き込んできた。うわ! 嫁の顔が良い!!!
「いやね、祖母から軍資金とか貰う時に写真提供したなって思い出してたんだよ」
「なるほど、エイルさんの子供の頃の写真、義母様から見せてもらいましたが可愛かったですね〜」
それ本人の前であんまり言わないでね……
恥ずかしいからね……
ワインをある程度買った後、いとこと祖母に会ったが相変わらず元気そうだった。
最近はベリーを使ったワインやブドウジュースの試作に夢中なんだとか。
ブドウジュースは未成年のターニャでも飲めるので、試作品を何本か家に送ってもらった。
後は僕が生まれた年のワインを何本かヴィーシャの上司や帝国の貴族にも送っておく事にした。
ただ、なぜかこの年のワインは天使の取り分がとりわけ多かったらしく、取れた量が少なく貴重なんだとか。
ヴィーシャは『家宝にします!』って言ってたけど、飲まれた方がワインも本望じゃないかな……
──────
ワインセラーを巡り終え、近くのカフェでヴィーシャと一緒に一息つく事にした。
いとこの奥さんたちが経営しているカフェで、逆写真詐欺? の料理が口コミで広がってるんだとか。
従業員に案内されて2階の個室の1つへと通される。
「1階も広かったですけど、2階の個室も広いし、綺麗ですね〜」
ヴィーシャが僕の隣に座り、個室を隅々まで観察している。
目をキラキラと輝かせながら見ている彼女は子供っぽくて可愛かった。
確かに個室は観葉植物や目に優しいワントーンで統一された家具で、これは夢中で見てしまうのも分かるかも。
興奮しながらメモを取ってるヴィーシャを椅子へと誘導し、対面に座る。
2人でメニュー表を見ながら、注文する品を相談する。
「このパスタ……美味しそうですよね~」
「確かに。 でも種類が多いね」
パスタだけで10種類ほどある。
その中で2人で食べるとしたら……
「このサーモンパスタとレモンパスタ良いですね!
爽やかな味付けは絶対に外れませんから!」
ヴィーシャが興奮気味に語る。
ヴィーシャは濃ゆい味付けよりも軽く、爽やかな味付けを好む。
それに丁度サッパリしたものを食べたかったので、僕はサーモンをヴィーシャはレモンを頼むことにする。
呼び出しベルを押せば店員がやってきて、注文を聞き戻っていく。
その間、ヴィーシャと一緒にいろいろこの後行きたいところとかを相談しあう。
ここから更に北に向かえば雪が常に降ってるので、ウィンタースポーツを色々できるのでそっちに行くか?
とか、せっかく涼しい場所に来たんだから、2人きりでのんびり散歩するのも良いですね。とか……
話に花を咲かせて、少し休憩したタイミングで料理が届いた。
料理を運んでくれた店員にお礼をし、受け取る。
「わぁ……!」
彩が鮮やかで、新鮮な食材を使っているであろうパスタは既においしそうな匂いが部屋にふんわりと香り、僕とヴィーシャは取り皿にお互いの分を取り分け、そのあとは夢中でしっかりと噛み締めるように食べる。
そっとヴィーシャの方を見ると幸せそうに頬張り、美味しそうに食べている。
その視線に気が付いたのか、ヴィーシャは頬を赤らめて俯いてしまった。
「夢中で食べちゃってました……!」
「おいしそうに食べるヴィーシャが好きだから良いんだよ」
自分で言ってて恥ずかしいけど、事実だからしょうがない。
そんな感じで2人揃ってふわふわした空間を過ごして、食事を終え、外を散策しに行くことにした。
ヴィーシャの運転で今日泊まるホテル近くの街を手をつなぎながら歩いていく。
午後のゆったりとした空気が僕とヴィーシャを1つの店へと誘った。