怪力乱神。
怪異、勇力、悖乱、鬼神の字を取り、まさに古文にして、子、怪力乱神を語らずという。人の理智さえ越えた物の怪をこそ、星熊勇儀そのものを差した。
しかし勇儀とて、得も言えぬ懐かしさに口許が緩む時があった。それを偶然聞けた者は数少ないが、その勇儀を運良く拝めた者は、みな一様に珍しいものを見たと感じる。
とてつもなく強く、人の叡智の埒外に生きる、鬼。
かつて鬼に挑んだ歴史上のつわものたちは数知れず、そしてその殆どが同じように、歴史の陰へ埋もれていった。
だが、ある國の猛者達だけは、怪力乱神に食ってかかった。勇儀の人生観に彩りが添えられた瞬間だったのである。
葦名の地、這う這うの体でそこに辿り着いた星隈童子にとって。その地はまさに僥倖の出会いだった。