稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:味八木

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レイフォリア攻撃

 

 

ー第二文明圏グラ・バルカス帝国レイフォル州レイフォリアー

 

グラ・バルカス帝国のレイフォル支配は終焉に近づいていた。レイフォリアでは現地民の反乱にグラ・バルカス帝国軍は対応出来ずにいた。

 

そんなレイフォリアに建てられている統合基地ラルス・フィルマイナでは、毎日の様に起こる空爆で地上は稼働停止にまで追い込まれていた。高射砲陣地はその数を劇的に減らし、破壊された滑走路では民間人も動員して修復にあたっているが、散乱した死体に耐性がない民間人が錯乱してあまり作業は捗っていなかった。時間を無駄に使っていると空襲によってまた瓦礫と死体を生産されるのだ。

 

最早この基地は機能不全に陥ったと判断した司令部は、地下壕に作られた会議室で生き残った幹部達が議論をしていた。

 

レイフォリアに迫る敵軍への対応と入植者を敵軍及び武装蜂起したレイフォル人から守る方法を議論していた。敗北の2文字がすぐ目の前に迫っている。この現状に、陸軍司令ファンターレは胃がキリキリと痛んでいた。航空戦力や対空兵器はとうの昔に破壊され、毎日の様にやって来るムー国の爆撃機が工場を破壊するので、兵器生産も出来ない。

 

機甲戦力はとっくに壊滅し、歩兵で敵の攻勢を凌がなくてはならない。

 

現状を纏めると以下の通りだ。

 

・陸軍司令基地を統合基地ラルス・フィルマイナからダイジェネラ要塞に移転する

・ダイジェネラ要塞にあるだけの兵力を集めて籠城戦をする

・一定の部隊は森林にてゲリラ戦を展開する

 

この様な決定がなされた。現在、レイフォル人による武装蜂起が起きているが、唯一の食糧を確保できるレイフォリアが陥落されないことがこの籠城戦の最低ラインであった。

 

民間人もダイジェネラ要塞に移送することにし、最低限の護衛部隊をつけて、夜間での移送をすることにした。何故なら、レイフォル人の襲撃があっても相手はマスケット銃しか知らない。航空機も夜間は飛ばないという判断から来るものだった。しかし、そんな常識は敵には通じない。

 

日本国の部隊による襲撃を受けて護衛部隊は全滅。民間人を守る彼らは任務を全うすること無く全滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

輸送部隊全滅の報告は統合基地ラルス・フィルマイナに届けられた。基地に残っていたファンターレはこの報告を聞いて血相を失っていた。しかし、更に彼を追い込む報告がなされた。それは、以下の通りである。

 

『こちら最終防衛ライン司令部!日本陸軍及びムー陸軍が次々と防衛線を突破!食い破られている!帝王陛下ばn!』

 

それが東方に設置された司令部からの最後の叫びであった。ファンターレは決断する。

 

「やむを得ん!最終防衛ラインを守る兵士には死守命令を送れ!そして、レイフォリア市内にて反乱軍共の掃討をしている兵士は統合基地ラルス・フィルマイナに帰還せよ!この基地で最後の一兵になっても抵抗を図る!」

 

ファンターレとしても苦渋の決断であった。この命令を受けて、すぐさま行動を開始する兵士達は伏兵に多数遭遇していた。

 

それは、日本国自衛隊に所属する別班である。別班は海外における非合法諜報を任務としているが、その練度はたった一部隊だが、1個師団にも相当する練度を持っている。彼らがレイフォリアに一足先に潜入し、レイフォル解放軍を支援していた。

 

まず、レイフォル人が知らない狙撃と呼ばれる遠くから敵を狙い撃つ戦法でグラ・バルカス帝国の狙撃兵を逆狙撃する。そして、敵戦車には対戦車誘導弾を撃ち込む。レイフォル解放軍には火炎瓶の作り方を別班が伝授していたが、対戦車誘導弾の方が撃破は確実だからだ。

 

強力な戦力である戦車や狙撃兵を失ったグラ・バルカス帝国兵は携帯しているボルトアクションライフルや軽機関銃で対応する。最近の反乱で対処法を確立させていたレイフォル解放軍は素早く瓦礫の陰に隠れる。足止めをした兵士達はラルス・フィルマイナに向けて前進しようとした時だった。

 

別班の隊員が軽機関銃を放ったのだ。もちろん、グラ・バルカス帝国の軽機関銃と比べて威力、精度、連射速度、どれをとっても高性能だ。

 

別班とレイフォル解放軍の伏撃によって時間を消費している内に、東方の最終防衛ラインに築かれた防衛陣地を突破した日本国陸上自衛隊の"12式戦車"に加え、一騎当千の稲荷神が到着したのだ。

 

碌な対戦車兵器を有していないグラ・バルカス帝国軍は無駄な抵抗をして玉砕するか、損害を出して逃げるか、降伏するより他なかった。稲荷神は逃げ出す敵には何もしない。しかし、目についた向かってくる敵には容赦なく狐火を当てる。狐火に当たった兵士は足を止めて火を鎮めるために地面を転げ回る。その隙を射殺される。素早い手際であった。

 

因みに、降伏した者の中には情報技官ナグアノも含まれていた。兵士が足りなかったので、軍属の情報技官であるナグアノも迎撃に駆り出されていたのだった。

 

「言われた通り逃がしましたが、これでよかったのですか?」

「問題ない。精々寿命が少し延びた程度だ。それより、これから面白いショーが見れるぞ」

 

別班の隊員にレイフォル解放軍の一人が問う。レイフォル人は、はぐらかされてしまったが、真意はすぐに分かることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「市街地にて反乱軍鎮圧にあたっていた部隊は順次撤収しています!しかし、道中にて敵の伏撃によって壊滅してしまった部隊もある模様!」

「撤収出来た部隊だけでもいい、今すぐこの基地にバリケードを作るんだ!怪我人だろうが民間人だろうが全員動員しろ!」

 

ファンターレは叫びながら、率先してそこら中に広がる瓦礫を利用して陣地構築に参加している。これを見て、他の将校や将兵も参加する。

 

擲弾筒と呼ばれる小型迫撃砲や奇跡的に生き残った野戦砲を引っ張り出して、あるだけの砲弾を準備する。また、瓦礫を積み上げてバリケードにする。

 

そんな作業を手伝う将兵たちの姿は頭や腕、足に血が滲んだ包帯を巻く者や、軍服が泥に塗れた者が少なくない。彼らは今までの空襲で負傷した者たちだ。だが、人員不足のために引っ張り出されたのである。

 

陣地を構築する間にも市街地から撤退してきた兵士達がやって来る。中には武器を持たず着の身着のままやって来る者もいる。手ぶらな者には小銃や手榴弾を渡すが、武器の数が圧倒的に足りない。大多数の者は拳銃のみの支給であり、それすらも無くなると白兵戦用のサーベルがあればマシというレベルである。

 

中には、小銃は2人に1つと言う何処の赤い国と言う有様であった。

 

そんな中、闇に閉ざされた通りの向こうから敵部隊が近付いてきた。

 

兵士達にも焦りが生じていた。射撃開始のタイミングを計っていた頃、ヒュルルルルルと言う妙な音がした。ファンターレはこの音が砲撃の音だと看破した。

 

耳を劈くような轟音と大地を凄まじい振動が伝わってきて、視界を揺るがした。砲弾が落下したのだ。帝国軍の重カノン砲の攻撃でもここまでの威力はない。ファンターレは艦砲射撃であると今になって理解した。

 

神聖ミリシアル帝国の艦隊がレイフォリア沖20km付近にまでやって来ていた。沿岸砲台もない上、航空援護もないとなれば、敵艦隊に対する有効手段はない。

 

ファンターレは敵の目的を今頃になって悟る。

 

(不味い!敵は敢えて敵兵を一箇所に集めてそこを吹き飛ばすつもりだ!)

 

その考えに至ったファンターレはすぐに命令を下した。

 

「全員に命令!今すぐこの基地を放棄して脱出!ダイジェネラ要塞にいる友軍と合流せよ!敵はこの基地もろとも我々を艦砲射撃で吹き飛ばすつもりだ!我々は敵の罠に嵌ったのだ!繰り返す!今すぐダイジェネラ要塞の友軍と合流せよ!」

 

この命令は、現場に致命的とも言える混乱をもたらした。ただでさえ、敗戦続きで士気は低く、浮き足立っている。敵部隊が接近している中、ファンターレの指示でバリケードを構築しているのに、それを覆す命令が来たのだ。しかも、戦艦の砲弾と敵の銃弾がやって来る中どうやって退避しろと言うのだろう。

 

車輌もない中、生にしがみつく彼らは必死でダイジェネラ要塞方面に走る。しかし、足となる道具がなければ凄まじい揺れの中でマトモに走れる筈もない。煙に包まれる統合基地ラルス・フィルマイナを見ている者達もいた。レイフォル解放軍の者達だ。神聖ミリシアル帝国の魔導艦隊を一目見ようとレイフォリアが見通せる丘には多くのレイフォル人がやって来ていた。

 

「あれが神聖ミリシアル帝国の魔導砲!」

「これ程までに魔導砲を高度化するなんて!」

 

彼らは初めて見る魔導砲の攻撃に興奮していた。グラ・バルカス帝国の巨大な基地は爆煙に包まれ、レイフォリアを煙が覆い尽くす程であった。稲荷神もまた、この光景に興奮していた。稲荷神の脳裏には、ロシア帝国の軍艦ポサドニック号を戦艦大和の主砲攻撃で沈めたのは記憶に残っている。だが、その数年の内に日本国内では戦艦より空母を重視する風潮が起こり、自衛隊の最高指揮権を持つ稲荷神は周囲の説明を受けて空母重視に動いたのだ。それから約1世紀以上経過している。稲荷神がこのド迫力かつ、SFチックな厨二心やオタク魂を燃やすような光景にはしゃいでいた。

 

統合基地ラルス・フィルマイナにいたグラ・バルカス帝国兵は神聖ミリシアル帝国のオリハルコン級魔導戦艦コスモの3連装魔導砲の計9基の主砲攻撃によって壊滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー第二文明圏グラ・バルカス帝国領レイフォル州ー

 

時はレイフォリア市街戦の決行前に遡る。

 

第二文明圏連合軍は、日本国と神聖ミリシアル帝国が主体となって北部、中央部、南部の3つの戦線でレイフォリアを目指す大陸打通作戦ー通称チベスナ作戦ーを敢行していた。

 

そんな中、一番早くレイフォリア付近に到着したのは南部を担当する南方軍集団であった。これは、日本国の航空援護や神聖ミリシアル帝国の空中戦艦パル・キマイラによる援護射撃によるものが大きかった。しかし、この部隊はレイフォリアに一番乗りする事は出来なかった。何故なら、レイフォリア南部の小さな山を丸ごと要塞化した巨大要塞が待ち構えていたのだ。

 

この要塞を攻略するのは手に余る。いや、語弊を言わずに言うと、攻略自体は可能だ。地中貫通弾を使えば済む話なのだが、要塞を破壊した後の後始末だ。流石の戦車でも山岳地帯を突っ切るのは日本国単独なら何とかなるかも知れないが、他の国はそうも行かない。

 

南方軍集団は快進撃を続けているように見えて結構ギリギリな戦いをしていたのだ。何故なら神聖ミリシアル帝国とムー大陸諸国の補給が不足していたからだ。

 

理由としては、補給線の脆さにある。ムー大陸諸国の中で地球で言う産業革命をしているのはムー国とマギカライヒ共同体のみであり、そのマギカライヒ共同体にしても自動車が少なく、機関車で運んだ物資を馬や火喰い鳥と呼ばれる物資運搬に秀でた動物を使役している。このため、歩兵はまだしも、装備類。特に重砲や大量に必要となる食糧の類の運搬が遅れている。

 

神聖ミリシアル帝国軍は単純に本土からムー大陸の最前線まで遠いこと、ムー大陸内に武器弾薬の工場が無いことも理由の一つだ。そして、何より問題なのは神聖ミリシアル帝国のドクトリンだ。神聖ミリシアル帝国は技術面こそ優れているが、それは魔帝の真似である。故に、近代戦における"ゴルド2"などの機甲戦力の使い方がなっていなかったのだ。そもそも、故障の多い兵器というのもあり、これ以上の進軍は難航していた。

 

故に、彼らはレイフォリアに一番乗りする事はなかったのだ。

 

そして、中央軍集団がレイフォリア入りを果たす前日、現状確認のため会議が開かれていた。

 

その内容はレイフォリア攻防戦の概要とダイジェネラ要塞の攻略である。レイフォリア攻防戦の下りは省略するとして、問題はダイジェネラ要塞の攻略である。

 

『私達が所有する確か…地中貫通弾…でしたっけ?それで破壊出来ませんか?』

「ええ。破壊可能です。しかし、先程要塞攻略においてエモール王国から援軍の申し出があったとの事です」

 

自衛隊高官の言葉に集まった面々は疑問符を浮かべた。それは、エモール王国の立地にある。エモール王国は竜人族からなる単一民族で構成されている小国だ。しかし、竜人族特有の多量の魔力と一騎当千と呼ばれる風竜からなる風竜騎士団などの強力な戦力を有している。

 

その反面、プライドが高く援軍は得られないと考えていた。さらに、エモール王国は内陸国であり海軍が存在せず、海外遠征をした事例がない。結論として、エモール王国はこの戦争に関与しない。それがこの場にいる面々の考えだった。

 

その真意はすぐに分かることになる…

 

 






〜コラム〜

ポサドニック号

ロシア帝国が対馬占領事件の際に寄越してきた軍艦。稲荷神のストレス発散として大和型戦艦の主砲攻撃を食らった。この時代の軍艦は前弩級戦艦ですらないのだが、一発で甲板が燃えて、傾いて沈没している。一瞬で轟沈しなかっただけ奇跡である。

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グラ・バルカス帝国の存亡について

  • 徹底抗戦からの無条件降伏
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