ちっちゃくてデカくて可愛い七瀬さんを勘違い元カレから奪って幸せにする 作:烏丸英
(ふっふっふ……! あたしの計画は順調に進行している……! 完璧、そうとしか言いようがないくらいにね……!!)
十一月三十日の夜、あたしは一人満足気に微笑んでいた。
自分でも身震いしてしまうくらいに完璧な計画の進行に酔い痴れていると言い換えてもいい。しかし、これはあたしの過信ではなく、純然たる事実なのだ。
雄介くんと付き合い始めてから早半年……その間、奥手で初心だがしっかりと大事なところでは決めてくれる彼とはゆっくりと、だが確実に関係を深めてきたと思う。
そうしながらも進めていたもう一つの計画、『雄介くん男の子化計画』は着実に実を結んでいた。
大胆なコスプレ写真やアプローチを繰り返すことで、雄介くんをその状況に慣らしていき、えっちなことに耐性を作る。
最初は水着、そこから過激な写真の送信やボディタッチを続けることで、あたしは確実に雄介くんの思春期の男の子としての部分を育成していった。
そして今日の反応……星条旗ビキニの写真を送り付けた時の彼の反応は、過激であることを認めながらもそこまで動じないという、あたし的には若干不満はあるが耐性ができていることを示すものだった。
付き合い始めた当初は水着を着てみせただけでかなり動揺していたあの雄介くんが、スケベな水着を着た写真程度では動じないと言い切ってみせた……これは明らかな成長であり、あたしの計画が成功に向かっている証である。
続く実物提示教育(意味深)ではいつも通りの反応を見せてくれたが、このくらいがちょうどいいはずだ。
写真では満足できないが実物ならば大いに慌てる……そう、このくらいがベスト。それでいい。これこそがベストなのだ。
(仕上がりは確認できた。あとは十二月……クリスマスに勝負をかけるぜ!!)
あたしの心の中の少年漫画主人公がそんなことを言っている。
そう、十一月に行ったいい○○の日にかこつけてのあれこれは計画の進捗を計るための行為……雄介くんの現状を把握するための行動だった。
あたしの真の狙いは十二月二十五日、聖なる夜ことクリスマスに勝負を仕掛けることなのだ。
あたしたちも付き合い始めて半年。
その状態でクリスマスという絶好の機会が訪れるのだから、もうこれは行くっきゃないというか、一歩踏み出すことが当然みたいなところがある。
付き合う前に勇み足を踏んだあたしのせいで色々と迷惑をかけたが、あれから長い時間をかけて雄介くんにたくさん幸せにしてもらったことで心の傷も癒えた。
それを伝えると同時に、彼にしっかりと好きという気持ちを伝えたい……その際、雄介くんが厳格な態度を取って「そういうことはまだ早い!」と言う可能性もあると考え、彼の反応を窺うためにこの一か月を使わせてもらった。
結果は上々、雄介くんも立派に男の子してくれている。
バニーガール衣装も星条旗ビキニコスプレもしっかりと保存してくれたし、興味がないわけではないはずだ。
きっと昔だったら顔を真っ赤にしながらその場で削除して、「もうこんな写真は送っちゃ駄目!」とか言ってきたはずだから、これもあたしの計画の賜物というやつである。
この調子でいけばクリスマスには決戦の日を迎えられそうだと……そう考えるとついつい笑みが浮かんでしまう。
「むふふ……! ふふふふふふふ……っ!!」
「コラ! ひより! 真面目に聞いてるの!?」
「お前という奴は、いくら恋人が相手とはいえ、やり過ぎだぞ!」
……そうだった。あたし今、両親に怒られているんだった。
流石に雄介くんの目の前で星条旗ビキニ姿になって攻勢を仕掛けたのはマズかったと思う。写真に動揺しなかったことについムキになったせいで自制が甘かった。反省だ。
「いいか、ひより? 本当に私たちはお前が雄介くんに変なことをしないか心配で心配でだな……!」
「もしものことがあったら真理恵さんに顔向けできないというか、どうお詫びすればいいのか……!!」
……おかしい。普通、こういうのって男女逆じゃないだろうか?
彼氏に手を出されないか心配する娘親というのが定番なのに、どうして雄介くんがあたしに手を出されないか二人が心配しているんだろう?
いやまあ納得と言えば納得なのだが、自分の親からの信頼のなさにちょっと悲しくなるところがある。
でも仕方がない。これも理解した上であたしは攻勢を仕掛けたのだ、甘んじてこの罰を受け入れよう。
(待ってろよ、クリスマス! あたしの本気を見せてやるぜ!)
「ひより! だからあなた、私たちの話をちゃんと聞いてるの!?」
……とまあ、そんな感じで自分の不始末をこっぴどく叱られながらも、あたしは前向きにものを考えている。
ついに一か月を切った聖戦までの時間をどう過ごすかを考えながら、あたしはとりあえず今日は反省しておこうと考え、両親からのお説教を聞き続けるのであった。
……なお、一生懸命立てた計画も全ては紫村のせいで雄介くんが怪我をしたことでご破算になるということをこの時のあたしは知らない。