ぼっちアートオンライン(再)   作:凪沙双海

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仕事の合間にちょこちょこ書いてました。
暑くなってきたのでみなさん熱中症には気を付けてくださいね


Episode3,part4

「うす」

 

 

「や、ハッチ。相変わらずみたいだナ」

 

 

「お互いにな」

 

 

大衆食堂のような料理屋の隅にて、俺は自分を呼び出した目の前の情報屋に視線を向けた。

相変わらずの喋り方で、ロールプレイ越しのこいつは掴みどころがない。

 

 

「聞いたよ。キー坊とまた暴れ散らかしてるんだってナ」

 

 

「誇張されすぎだろ。別に頻繁にパーティ組んでるわけでもないし、あいつは攻略もだけど自分のギルド育成に忙しいしな」

 

 

だからか攻略するときは効率良くする為に俺と回ってることもあると言えばあるが。

 

 

「そんなしょっちゅう組んでなくても、二人が一緒に戦えば嫌でも目立つってもんサ。オネーサンのところにも良く情報が回ってくるしナ」

 

 

こいつの元に来る情報ってのは、本当にろくでもなさそうというか。取捨選択はしっかりしてるやつだからこそ余計に変なものまで知られてそうだ……

 

 

「ハハ、嫌そうな顔だな、ハッチ。まぁ、二つ名も通り名もハッチは嫌がってるから当然と言えば当然か」

 

 

「別に、他者が俺をどう評価しようが勝手だが……いちいちアレで呼ばれるのはちょっと……」

 

 

"閃光"のアスナ、"黒の剣士"キリト、そして"影纏い"のハチマン。

俺だけ何故か"首斬り"ハチマンなんてものもあるが、まぁ大層な名前がつけられている。探せばリンド達もなんか二つ名みたいなもんあるのかもしれないが。

 

 

「アーちゃんがボヤいてたゾ。二人でばっかパーティ組んでるって」

 

 

「そう言われても」

 

 

そう言われても。思考と言葉がシンクロした。あいつだって遭遇すると無理矢理パーティ組んでくるし、そもそもそうじゃない時はあいつ誰かしらと組んでるし……

 

 

「ハッチはこういうの、耐えられない?」

 

 

「耐える耐えないはともかく、俺にはずいぶんと分不相応な評価を貰ってるよ」

 

 

ため息吐いて答えるとアルゴはクスクスと笑った。普段ケラケラ笑うこいつからは真逆の印象を持たせるような笑い方で、なんか不思議だった。

 

 

「それでも、ハッチに勇気や希望を貰ってる人はいる。

──それは私も同じ。だからみんな絶対に死なないで」

 

 

え、こいつ誰?

なんて思った俺を責めないで欲しい。いつもみたいにおちゃらけた感じもなく真っすぐこっちを見るアルゴはまったく別人で。

 

 

「……なんてナ。

たまには後ろから引っぱたかないとって思ってちょっとしたサービス。みんなの無事を願ってるのはホント」

 

 

「……そりゃどうも。それならこれからも情報をちゃんと分けてもらわないとな」

 

 

「モチロン! コンゴトモヨロシク! だナ」

 

 

なんかどっかで聞いたことありそうな言い方をするアルゴにため息を吐いて会話を打ち切ってお開きにしようとして、ピコンと通知音に邪魔される。

アスナから……? なんだ?

 

 

「ハッチ、アーちゃんからメール来た?」

 

 

「今ちょうどな。お前のとこにもか?」

 

 

「ああ、どれどれ……え?」

 

 

アスナから来たメールはとても簡潔に内容が書かれていて、それでいて俺とアルゴを絶句させるのに充分なものだった。

 

 

「軍が単独でボス部屋に突撃、壊滅的な被害……」

 

 

「……どうやら緊急会議を開くらしい」

 

 

「それはオレっちの方には書いてないナ。攻略組の方でやるのカ?」

 

 

「おそらくな。アルゴ、一応得た情報は後で共有する。コルはいい、そういう問題じゃない」

 

 

「わかった。こっちも今回は無償でやル。ハッチ、さっきのことじゃないケド……本当に気を付けて」

 

 

「言われなくても死ぬのは勘弁だからな。命だいじに、だ」

 

 

これで完全に会話を打ち切って、俺はメールに示された集合場所へと向かうことにした。

地に足付かない浮遊感のようなものが身体に存在していて、否が応でも自分が動揺してくることを教えてくるようだった。

 

 

──キリト side──

 

 

「ハチマンくん」

 

 

がちゃりとドアの開いた向こうに友達の顔を見つけて、アスナがその名前を呼んだ。

いつもよりもっとどんよりしたような目でハチマンは軽く会釈して空いてる椅子に座って大きく深呼吸。さすがのハチマンも平常ではいられなさそうだった。

 

 

「ハチマンくんも来たので、会議を始めます」

 

 

アスナが仕切る形でいつもの攻略会議が始まる。いつもと違うのはいるはずのキバオウや軍の幹部がいなくて、今回はヒースクリフがここにいることだ。

あれだけ騒がれてるし実際上手いので、いることに文句とかはないけど。

 

 

「大まかな話はメールの通りです。軍が自分達だけで25層のボスに挑んで、挑んだ部隊が全滅」

 

 

「誰も転移結晶とかは使わなかったのだろうか」

 

 

「使えなかった可能性もある。結晶禁止エリアなのかもしれないな」

 

 

リンドの疑問にヒースクリフが答える。普通ボスエリアなどは転移結晶を使って離脱ができるはずで、それなら軍の被害もここまでではなかったはず。

全滅したっていう事態から、ヒースクリフの言う事がかなり的を得てる可能性が高くて、全員が口を噤んだ。

 

 

「ここのところ回復も結晶に頼るものが多い。そういったものも無効であるなら、難易度は高くなるだろう」

 

 

「やけに具体的な話をするんだな」

 

 

「推測の域を出てないのは君とてわかっているだろうハチマン君。ただ、事が事だけになるべく楽観しないように推測しているだけだ」

 

 

「……まぁ、それもそうか」

 

 

「そして、この件に関しては私にも非がある」

 

 

「どういうことですか?」

 

 

アスナの問いかけにヒースクリフは頷いてから、

 

 

「ボスの部屋を見つけたのは私だ。そして、その情報を直後会った軍の幹部に話してしまってね。彼らに話した方が情報の広まり方も早いと思っての事だったのだが……名は忘れてしまったが、確かキバオウ君と軍を二部するくらいの地位の者だったはずだ」

 

 

「そういえば」

 

 

表情は変わらないけど、少し気にした様子で話すヒースクリフ。

それを聞いていたハチマンがふと口を開いた。

 

 

「キバオウもやられたのか?」

 

 

「ううん、壊滅した軍の精鋭の中にキバオウの一派はいなかったみたい。今は事後処理に追われてるのと失った戦力的にしばらく攻略に参加するのは無理だと思うわ……」

 

 

「なるほどな。この前、キバオウと迷宮で会ったんだがあいつの取り巻きが言うにはその軍の二派閥化は結構重い亀裂みたいでな。

軍が攻略の最前線でいたいって派閥と安全重視のキバオウ派閥で分かれてたとか」

 

 

「"影纏い"の言葉通りなら今回単独で突撃を仕掛けたのは前者ということか。……馬鹿者が」

 

 

ハチマンの言葉をリンドが続けて怒りを滲ませる。

どんな奴らであれ攻略組において軍の規模は大きく、それをほぼ失った今……空気は重い。

 

 

「とはいえ、やるしかねぇ。クリアするしか道はないんだからな」

 

 

「ハチマン君の言う通りだ。

しかし未知のボスであることも確かだ、早急に挑むというわけにもいくまい」

 

 

「いつもは三日後にボス攻略ですが、今回は五日後にボス戦に臨もうと思います」

 

 

アスナの提案に俺たちは頷いた。

言葉少なめに解散になって、俺も黒猫団のギルドに戻ることにした。ここからはちょっとこっちに本腰入れないとだな……

今の俺には一緒にいてくれる仲間も戦ってくれる友達もいる。死なせたくないし、俺も死ぬわけにはいかないんだ……!




そろそろボス戦に入る予感がしてます。
では皆さんありがとうございました!
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